学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
熱い。
考えているだけで、髪の毛先が焼けてしまいそうな熱だ。
溶岩か、はたまた勝負がこうさせているのか――それは俺には分からない。
だが、先攻1ターン目のマナチャージを終えた時、俺は奴から漏れ出でた闘気に気圧されていたのは間違いないと言えるだろう。
「1マナで《ホップ・チュリス》召喚」
『ヒャッハー!! ヒイロの兄貴、任せるっス!!』
飛び出してきた火鼠がスケートボードに乗って甲高く鳴く。
あいつの相棒のクリーチャーか。
1マナでパワー2000とは……なかなかのスペックと言えるだろう。
速攻デッキらしい挙動である上に、滑り出しが速い。
「やっぱり出てきやがったか……!」
『おやおや? まさか臆しているでありますか、マスター』
「おめーはどうなんだよ、チョートッQ。まさかビビってんじゃねえだろうな?」
相変わらず癪に障る新幹線野郎だ。
すかさず問うてやったが、返ってきたのは意外な返答だった。
『当然……ビビってるでありますよ! 流石に、今まで相手とは格が違う……気を引き締めてかかるであります!』
「だな。俺もビビってるけど、それだけじゃねえってことを思い知らせてやらぁ! 俺のターン、2マナで《ヤッタレマン》を召喚!」
ジョーカーズの紋章が浮かび上がり、《ヤッタレマン》が飛び出す。
『ヒイロの兄貴! 性懲りもなく、前回と同じ戦法を使ってるっス! ワンパターンッス!』
「やれやれ、成長も無ければ進歩も無い連中だ」
そういうと、火廣金も2枚のマナをタップする。
「――この俺に速さで勝負することが愚かだという事を、思い知らせてやる。《ステップ・チュリス》を召喚」
熱風が吹いた。
今度は、マントを羽織った火鼠が火文明の紋章から飛び出す。
更に、火文明の紋章が共鳴し合うように輝いた。
「強襲戦だ。思い知らせてやれ! 《ステップ・チュリス》はビートジョッキーが場に2体以上あればスピードアタッカーを得る! シールドを攻撃だ、《ステップ・チュリス》!」
「っ!? マジかよ!?」
ガラスが割れるような音諸共、1枚目のシールドが砕け散る。
「更に、《ホップ・チュリス》は自分のクリーチャーが攻撃していれば、攻撃する事が出来る。そのまま、さらにもう1枚のシールドをブレイクだ!!」
「マジかよ……!」
割られる2枚目のシールド。
2ターン目から、もうシールドが3枚になってしまった。
これがビートジョッキーの速攻戦法――!
前回の火廣金は、《スパイク7K》でワンショットキルする為か、1ターン目と2ターン目は攻撃をしなかったけど、今回は積極的に攻撃してきている。
だけど、これだけ攻撃してるってことは、やはり俺をなるべく早い段階で倒す算段が出来ているんだろうな。
「お前には特別に、俺の[[rb:極悪軍隊> バッドアーミー]]の恐ろしさを思い知らせてやる。覚悟は出来ているのだろうな?」
ごくり、と俺は息を呑んだ。
この間は何も出来ずに蹂躙されたけど――
「それなら、受け止めて跳ね返すだけの話だ! 俺のターン、《ドツキ万次郎》を召喚! その効果で、相手のタップされているクリーチャーを山札の下に送る!」
「チッ。各隊遭遇戦用意!! 戦闘に備えろ!!」
グローブ型のクリーチャー、《ドツキ万次郎》が拳を放って《ステップ・チュリス》を粉砕する。
「更に、《ヤッタレマン》で《ホップ・チュリス》を攻撃して、相打ちで破壊だ!」
爆音をかき鳴らす《ヤッタレマン》。
辛うじてボードに乗ってひき潰すも、《ホップ・チュリス》も遅れて爆散する。
『ギャインッ!!』
「っホップ!!」
『アニキぃ……やられたっス』
「成程な。場数を減らしてきたか。お前はどうやら、我が切札の《ガンザン戦車 スパイク
「……!」
確かにそれは紛れもない事実だ。
あの物量で押されれば、今度こそ俺は負ける。
だけど、奴はまだ出て来ることが出来ない。それだけ、《チュチュリス》と《ダチッコ・チュリス》によるコスト軽減の相乗効果は大きい。
それに、こうしてクリーチャーを減らせば被害は減らせる。
「まあ良い。俺のターン」
ターンは火廣金に渡った。この状況で、あいつが何を出してくるか次第だが――
「《一番隊 チュチュリス》を召喚。これで、俺のビートジョッキーのコストはマイナス1される。悪いが、これ以上の邪魔はさせない。俺達、魔導司の邪魔も、この進軍の邪魔も」
「邪魔? こっちの邪魔をしてきたのは、元々そっちだろ」
『そうでありますよ! 何で突っかかって来るでありますか!』
「逆に問おう。お前は何故そこまで、自分の手で他人を助ける事に拘る」
「俺が助けたいと思ったから助ける。俺の運命を決めるのは、俺だけだ!」
『マスターの言う通りでありますよ! マスターは自分のやり方で自分の生き方を貫き通す――皆それに、共鳴したのであります!』
「そして、お前の[[rb:極悪軍隊> バッドアーミー]]は、この俺が破る!! これが、今の俺の答えだ!!」
この状況。次のターンには、もう奴の切札が出てきてもおかしくはない。
だが、マナが溜まっている今なら奴を止める手段はある。
「《バッテン親父》召喚! 此奴の効果で、相手のクリーチャーが自分を攻撃するときにタップすれば、相手の攻撃を止められる!」
「……長引かせるつもりか」
「ああ。これで次のターンに《スパイク7K》を出してもトドメまではいけないってことだ。そして、《ドツキ万次郎》でシールドをブレイク!!」
ようやく、かすり傷と言った所か。
あいつのシールドは残り4枚。一方の俺は3枚。
その時、俺は凍り付くような感覚を覚える。
火廣金が浮かべていたのは――あの、悍ましい嘲笑だった。
「我が|極悪軍隊> バッドアーミー]]が極悪たる所以……これより、殲滅作戦・[[rb:B・A・D《バッド・アクション・ダイナマイト》を開始する」
「バ、バッドアクション……ダイナマイト?」
「俺は『
飛び出した火鼠。
俺は身構えた。来る。あいつの切札が――
「そして、
「……!?」
「その効果で、此奴を召喚するコストをマイナス2する代わりにターン終了時に破壊する。更に、《チュチュリス》の効果でコストをマイナス1。そして、《ダチッコ・チュリス》効果で更にコストをマイナス3し、1マナをタップ」
ってことは、合計コストは7――《スパイク7K》を召喚するわけじゃない!?
そう思った途端に、目の前に火柱が上がった。
俺は思わず身構える。
「情け無用。作戦名は
咆哮が上がった。
ボードに乗っかった猿人がその姿を現す。
そして、奴が吠えると共に、俺の肌が震え、骨が軋み――
「《”
――戦場が、爆炎に包まれた。
そして、《バッテン親父》が一瞬で蒸発する。
「なっ……!?」
「これが
そう言って、彼は最後の1マナをタップした。
焼けつくような焦燥感。
そして、最後の手札に秘匿されていた奴の最終兵器が姿を見せた。
「マスター
「っ……!? 何言ってんだ!?」
『マスター、気を付けるでありますよ!! 来るであります!!』
この気配は、さっきの《”
じゃあ、これは一体――!?
「教えてやる。これが火のマスターカードの力だ」
火廣金がカードを目の前に投げた。
そして、奴の手から炎が迸り――カードを握ると一気に燃え上がる。
浮かび上がるのは、”MASTER”を銘打たれた金色の紋章。
それを食い破り、解き放たれた猛獣が姿を現した。
「――
※※※
『――炎のようだが、炎じゃない。どうやら本当に魔法らしいが、確かに人を寄せ付けないためか、熱を持っているぜ!』
シャークウガが苦い表情で叫んだ。
弾き出されたブラン、紫月、桑原は炎の壁の前で立ち往生していた。
魔力で作られた炎の異質さに、妙な感動を受けつつも、同時にこれを消す手段が無いという事にも気づき、3人は立ち尽くすしかなかった。
これでは、耀の戦いがどうなっているのかは分からない。
だが――
「3ターンキルを決められているなら、もうとっくのうちに終わっているはずですよ」
「デモ、相手は以前手も足も出なかった相手デスヨ? 心配デス……」
「こんな言葉がある」
桑原は炎の先を見つめながら、確信を持った表情で言った。
「――”男子三日会わざれば刮目して見よ”――あいつの成長は、思ったよりもはえーんだよ」
「まだ丸三日経ってないと思うのですが先輩」
「そ、それはともかく、だ。テメェら、俺達が白銀を信じてやらないでどうする」
「”あのカード”……通用するデショウカ……?」
「さあな。分かんねーよ、んなことぁ。だけど、あいつは折れなかったぜ。どんな苦境に立たされても、な。それに、黒鳥さんが言っていたことがある」
紫月とブランは彼の方に向き直る。
これは、桑原がレンと美術のことについて話していたついでに飛び出した話題なのであるが――
「あいつは――絶対に曲げられないし折れない、1本の芯が心の中にある、と」
※※※
轟と燃える灼炎。
そして、全身に取り付けられた鎧。
目玉の付いた歯車が睨み、剣の意匠を取り入れたボードに飛び乗って宙を駆けるその猿人は、さながら孫悟空を連想させる。
青白い鬣がゆらゆらと燃えるように揺れ、顔にはマスクが取り付けられていた。
「な、何だよ此奴――」
成す術なく、俺は立ち尽くすしかなかった。
目の前の炎は、あまりにも強大だった。
これが、火のマスターカード、《”
「これがビートジョッキーの速攻戦法。コスト軽減を連鎖させ、展開した軍勢で包囲殲滅戦を行う。悪いが、貴様の敗北だ、白銀耀。《”
つまり、このターン俺に殴り掛かってくる軍勢は全部で4体――そのうち2体はW・ブレイカーじゃねえか!?
「そういえば白銀耀。お前、確かマスターカードを持っていないんだったな。無様な事だ。負け犬は、構築済みデッキのカードにでも甘んじてれば良いんだよ」
そう言って、火廣金は《”
「情け無用、包囲殲滅戦開始!! 《”
飛び掛かる猿人。
2枚のシールドが、飛び散った。
残る俺を守るシールドは1枚。
くそったれ!! 好き放題言いやがって――!!
「《ダチッコ・チュリス》で最後のシールドをブレイク!!」
ぱりん、と最後のシールドが割れた。
やばい。また負けるのか!?
皆にあれだけ助けてもらって、あれだけ悔しい思いをして、あれだけ頑張ったのに――また、負けるのか!?
『――あたしは、耀のやってることに間違いは無いと思うよ』
いつも隣に居てくれた幼馴染の花梨。
『後輩のピンチだ。少しくらい、先輩に恩返しさせてくれ』
俺に協力をしてくれた桑原先輩。
『きっと、アカルならやってくれる――根拠は無いデスケド、そんな気がシマス』
何だかんだで、俺の事を信頼してくれているブラン。
『――私は、不安はありませんよ。先輩にこれを託します』
そして、俺にエリアフォースを託してくれた紫月――
「くそっ……!!」
引かねえと――ここで引かねえと、負けてしまう――引かなきゃ、いけないんだ!!
『――信じろ。恐れず、引き金を引け』
――何だ? 今の声。
風が吹いてきた。
不快だった熱風が、そよ風に変わって――でも、心地よい。
自信が、湧いてくる。
まだ、負けてない。
俺は──此処で勝つっきゃねえんだ!
「そうだ。引いてみなきゃ、何も始まらねえよな!!」
砕け散ったシールド。
収束する光。
捨てる神あれば、拾う神がいる。
俺はもう、負けるわけにはいかないんだ!!
「――S・トリガー、《金縛の天秤》!! その効果で、お前のクリーチャーを2体選び、攻撃もブロックも出来なくさせる!!」
「何っ……!?」
思わぬカードに驚いた様子を見せる火廣金。
同時に、《チュチュリス》と《”
「何だ、そのカードは――!? 水文明のS・トリガー……!? それにしても、なぜ《金縛の天秤》……!?」
「止められたんだから、何でも良いだろ? 首の皮1枚だけど、繋げてやったぜ」
「まあ良い。……ターン終了時に《”
げっ……マスター
それで、
だけど――
「こっちも効果発動だ!! お前がこのターンにクリーチャーを3体以上召喚していた時、俺の手札から《バレット・ザ・シルバー》をバトルゾーンに出す!!」
俺の手札から飛び出したのは黒銀の銃馬。
それが火廣金に銃口を突き付けた。
「何だ? それがお前の新しい切札か?」
「へっ、まあ見てなって。《バレット・ザ・シルバー》は登場時と攻撃時に山札の上を捲って、それがジョーカーズならバトルゾーンに出せる。それ以外なら手札に加えるぜ」
山札の上を表向きにする。
カードは《テンペスト・ベビー》。ジョーカーズではないので、手札に加える。
「俺のターン、ドロー」
カードを引いた俺は、3枚のマナをタップした。
「まず、《テンペスト・ベビー》を召喚!! 此奴の効果で、手札を2枚引いた後に手札から2枚を山札にセット!」
「山札操作――ま、まさか――」
そう。《テンペスト・ベビー》は登場時にカードを2枚引いた後に、手札からカードを2枚山札の上に置く山札操作能力を持つサイバー・ウイルス。
つまり、これで俺は《バレット・ザ・シルバー》の効果で好きなクリーチャーが出せるということだ。
「お楽しみは此処からだ!! 《バレット・ザ・シルバー》でシールドを攻撃――するとき、効果発動!! 山札の上を表向きにして、それがジョーカーズならバトルゾーンに出す!!」
そうだ。
俺の運命は俺が決める。
他の誰に言われる筋合いは無い。
他の誰かが決めたレールに従うつもりはない。
捲れ上がったカードが、俺の眼前へ飛び出す。
そして、弾丸の如く――黒銀の銃馬へ向かっていく。
押されるのは金色のMASTERの紋章。
西部劇のヒーローを思わせる風貌に、銀色の鋼の身体を持つ、夢が生み出したヒーロー。
「撃ち抜け、