学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
「──沸き立つのはいいが……そう、うかれているばあいではないぞ?」
言ったのは──アマテラスだった。
「わらわがこうして実体化しているということは……世界にまりょくが溢れ出しつつあるということ。ほかの神が目覚めるといったこともありえる」
「……そ、そうか……」
「これから我々がたたかうのは、神! 正真正銘の神である! 相手は、恐ろしく強い! 下手をすれば、この世界が滅びるやもしれぬ!」
その先は──知っている。
破滅の未来、2078年だ。
これから待ち受ける敵は、きっと今までとは比べ物にならない相手になるだろう。
「だけど、俺は引き下がらない! 引き下がったら……全部終わりだ! 俺は未来を変えるために、今此処に居るんだ!」
「ふむ、未来……か。未来など神にでもわかる者はごくわずか。その未来をあたかも分かっているかのような口ぶりだな」
「……いや、変える。俺達の生きる未来に変えてみせる」
俺とアマテラスは──しばしの間見つめあった。
そして彼女は何処からともなく扇子を取り出し、広げた。
「天晴である! 神を前にしても尚、一切おのれの歩みを止めないそのふとうふくつさ、良し! もし必要なものがあるならば……ククリに会うが良い!」
「……ククリ?」
「ククリって……誰デス?」
「”縁”を司る女神である! それは、モノのあるべき場所も見通すことができる千里眼のもちぬし! かのじょに聞けば、おぬしたちの探し物も見つかるやもしれぬぞ!」
「探し物……もしかして、エリアフォースカードもか!?」
「ククリの千里眼のちからは、我が保証しよう! しかも、やつはにんげんに友好的な神! きっと、手助けしてくれるにちがいない! ……もっとも、昔からはずかしがりで、かんたんにはあえぬと思うが……」
「どうやったら会えますか!?」
「……世界のはて、うらの世界」
「……え?」
アマテラスの云った事が、俺達にはしばらく分からなかった。
「奴は普段、この世ではない場所で眠りについておる! うらの世界……すなわち幽世のその先である!」
「幽世って……!」
思い当たる場所が一つだけある。
かつて、ロード達と戦った、幽世の門だ。
その先に──ククリは居るというのか。
「ともかく! わらわの言えることはただひとつ! 幽世に行って、ククリに会うのだ! そうすれば、なんじらの探しているものは見つかるであろう!」
「……分かったよ、アマテラス」
「では、わらわは──久しぶりにこの世をみてまわるとしようか!」
「……え? 行っちゃうんですか?」
「うむ! それに……何かほかにもなんじらの力になれるやもしれん! それをさがすとしよう!」
言った彼女は──ぴょいっ、と軽く飛ぶと──そのまま力の座から飛び立ってしまうのだった。
「何かあった時はわらわをよべ! わらわは今こそ非力な神……しかし、その”せきむ”は果たすつもりであるぞ!」
※※※
「マスタァァァーッ!!」
──力の座を出発する日。
俺の元に、すっかり回復したチョートッQが飛びついて来た。
元々俺が持っていた、1枚目の
「良かったであります、良かったであります! すっかり元気MAXでありますな!」
「あっははは……まあでも、浮かれてる場合でもないんだけどな」
……諸々の事情は、此処を離れてから話すとしよう。
この伊勢での旅は俺達にとっては、とても大きな成果をもたらしてくれたから。
それはきっと、長い話になること違いない。
「……世話になったな、巌流齋老師」
「うむ! こちらこそである! にょほほほほ! ツンツン頭の小僧! なかなか見込みのあるモノノフになるぞ! 死んだらワシと一緒に修行するか?」
「あ、あはははは……丁重に遠慮します」
巌流齋老師は最後まで愉快に笑っていた。
あれだけの壮大な話を聞かされても動じていなかったのは、肝が据わってのやら信じていないのやら、だが……。
「ともあれ! 何かあれば、儂らが力になるぞ! 困ったときは力の座を頼るが良い!」
「うちも待ってはるよ! あのアマツミカボシってヤツが来た時……うちも力になりたいから!」
「……爺さん……メイ……」
「白銀さんっ! ほんま、おおきに!」
「……ああ。勝ってみせるよ!」
流石に、未来の話がどうとかはピンと来ていなかったメイだったが……神との戦いの際には力になってくれるらしい。
手を振り、俺達は──互いの無事を祈り、力の座を後にしたのだった。
※※※
俺達は──再び電車に乗り込む。
一度、鶺鴒へ戻る為に。
「……長いようで短い戦いでしたね。先が見えないのは相変わらずですが」
紫月が言った。
確かにそうだった。
終わってみれば短い一週間だったが、これは最後の戦いの始まりに過ぎなかった。
「神とやらが……どれほどまでの力を持つのかが問題だ」
「Yes! 今までの敵よりも強いのは間違いないデス! なんてったってGODデスから!」
「……先を見れば果てしないのは当然だ。だが……活路もある。俺達は、それを拾っていくしかない」
言った桑原先輩に──全員の視線が集まった。
「……桑原先パイ、結局帰るんデス!?」
「俺にずっとあの場所に居ろってのか!!」
「先輩……そういえばみづ姉には結局謝ったのですか?」
「へ? そういや、あれからずっと顔合わせてないような」
「書庫でブラン先輩と乳繰り合ってたらしいじゃないですか……ケダモノ」
「アレは誤解って言ったデース!!」
「なのに信じてくれねーんだよ!!」
……桑原先輩も大変なんだなあ。
ところで、その翠月さん……さっきから黄昏た様子で窓の方の席にぽつんと座っている。
アレは完全に露骨に怒ってますよアピールだな……。
「ふーんだ、先輩の浮気者……」
とか言って頬に肘を突いている。
いいかげん許してやれよ……拗ねたらなかなか元に戻らないのは、妹と同じだな翠月さんは。
「……仕方ありませんよ、みづ姉、怒らせたら本当に怖いんです」
「クッソー!! 俺ァどうすりゃいーんだーッ!?」
「どうするのだアレは」
「痴話喧嘩は犬も食わないデス」
うん、俺も正直放っておいて良いんじゃないかって思う。
「そうだ黒鳥サン!! カリンとヒイロはどうなったデース!?」
「あの二人は先に力の座を出たぞ」
「ウソでしょ!?」
最早隠しもしない。
火廣金と花梨は、結局別行動のままだ。
しかも和解すら出来ていない。
「……黒鳥さん。何であの二人が……火廣金の奴は海外にいったんじゃなかったんですか?」
「……察してやれ。あいつとて、素直ではないんだ」
……正直、俺としては火廣金のやつを一刻も早く問い詰めてやりたい気分だった。
だけど──それが今のあいつの気持ちなのだろう。
「だが、どんな形であれ貴様等の窮地にあいつは駆け付けてきた。修行にもやってきた。それだけは……言える」
「……ヒイロ……」
「火廣金先輩……」
「刀堂は──自分がきっかけである手前、火廣金に付き合ってやらないと気が済まないのだろう。アイツが居なければ、本当に火廣金は独りに──」
「あいつ……」
俺は思わず漏らした。
「……俺達は……デュエマ部の仲間だってのに……」
「白銀先輩……」
「……だけど、それが今あいつの取った選択だってなら──俺に出来る事は一つだけ、か」
──信じて待つ。
多分、それしか出来ることはない。
「マスター……!」
「今回の件で分かったんだよ。例え離れていても、道を違えても……俺達が同じもので出会った仲間であることには変わりねえんだってな」
「……アカル……!」
「先輩……」
「だから俺も、信じて待つ。あいつが帰ってくる、その時までな!」
俺もやるべき事をやろう。
あいつが──安心して戻ってくるようにするために!
※※※
「ところでマスター。何時の間にか
「え? だからこれは、あの偽者から出てきて……」
「マスターの守護獣は我だけでありますよ! この浮気者!」
「してねーよ気持ち悪いやめろ寄るな近付くな!!」
新幹線頭を押さえつけながら俺は叫ぶ。
実際、あの時は守護獣まで顕現した。
しかし──あれ以来、もう1枚の
「マスター……確かに、守護獣はしっかり顕現したのでありますな」
「いや、その後に鬼を封印して……その後は何ともだ」
結局、あの一戦限りだったってことか。
《モモキング》は今も俺のカードとして手元に残っている。
だけど、意思が疎通できる様子も無い。恐らく、本当にただのカードに戻ったのだろう。
「
「チョートッQは何も知らなかったのか?」
「いや、我も何も……今まで2枚のカードが1枚にまとめられていたことも驚きであります」
彼は首を横に振った。
どちらにせよ、俺の
謎は明かされたが、まだまだ深まるばかりだ。
「……そうか」
「ともあれ、帰ったら先ずは幽世の門を再び調べてみるべきだな」
「ふっふーん、アカリをお呼びでしょうか!」
明るい声が響き渡る。
気が付くと──そこには、アカリが立っていた。
……ちょっと待てや。どっから侵入した。事と次第によっては不法乗車だぞ……と言おうと思ったが、コイツには常識なんて通用しないも同然か。
「アッカリー!! 久しぶりデース!!」
「ギャーッ!!」
「あらあら、アカリちゃん……やっぱり可愛いですね……」
「やめて!! 姉空間を一瞬で形成するの!! アカリ、出られなくなっちゃ──おじいちゃーん!!」
「一生そこでオモチャにされてろ」
「おじいちゃん!?」
早速抱き着かれて愛玩動物にされている孫。
まあ今までこっちが大ピンチだってのに出てこなかった分は、多目に見よう。コイツを責めるのはお門違いだ──故に、これでチャラで。
「しかしどうしたんだ? ここにきてお迎えかよ? こちとら大変だったんだぞ?」
「いえいえ、こちらも今まで独自に動いていたので……それよりも! 今回の旅の成果を聞きたいのですが、おじいちゃん!」
「……
……アカリは押し黙った。
遅れて、絶叫が車内に響き渡ったのだった──
※※※
「──ぜぇ、ぜぇ、叫びつくしました……1000年分くらい……」
「止めろバカ!! 普通に迷惑だったわ!!」
耳元で叫ばれて気絶しているブランと翠月を俺は指差す。
二人共しばらくは目を覚まさないだろう。哀れ。
「で? どうするんだ。残りのエリアフォースカードを集めるのにはピッタリだと思うんだが」
「……しかし、幽世の門。行ってみる価値はあるかもしれません。カンちゃんなら、それが可能ですから!」
アカリは
確かに、せんすいカンちゃんならばあの海の底に沈んでいる幽世の門をくぐることも可能だろう。
「今の所、残るカードは……
「……残りのカードをいっぺんに集めることが出来なくとも、
「はい! 歴史上によれば、ワイルドカードの氾濫を止めたのは
「だが相手は神類種……アマツミカボシ。神話でもかなり強大な悪神として名高い。そして歴史の上で僕達は一度敗れている。そう簡単には行かんだろう」
「だけど、確実に今までの歴史から私達は変わってきているデス!
「そして、大きな力を持つ天体のカードは空亡が持っていたはずだ」
黒鳥さんは肩を竦める。
そ、そういえば……。
「……一緒に探せば良いと思いますよ」
「え?」
「そのククリという神が、本当に千里眼を持っているならば、残るエリアフォースカードの場所は全て分かるはずです」
「……空亡が倒れた後に所在不明の
場所的には空亡が陣取っていた伊勢の可能性が高い。
そちらは今、魔導司達が総動員して探し回っているのだという。
だけど、こんなに探して無いとなると、誰かが持ち去った可能性もあるのではないかとか。
「──火廣金と刀堂も件の2枚について探しているはずだ」
「あいつら……任せるしかない、か」
「そして現代の
幸い、
残るカードは
現代では溶岩の中にあるが故に回収不可能の
「……ともあれ、先ずは幽世の門にいかなきゃ始まらねえってか」
「やるべきことは分かりました。残りの3枚のカードを、アマツミカボシが来るまでそろえるべきです」
「でも時間はあまりねえな。ワイルドカードの氾濫が起こったのは4月1日……この日までに、カードを揃えないと──」
「おいっ、何だあれ!?」
誰かがそう言った。
俺達の視線は車窓に向く。
ぞくり、と肌が粟立った。
車両に乗っていた全員が、いや──この日、誰もがそれを目撃していただろう。
「……おい、ちょっと待てよ」
俺は呟く。
今は──3月20日。
まだ、あの日まで10日以上あるというのに。
昼の星一つない空に、一筋の彗星が現れる。
それが──青い空を赤く切り裂いた──
「……始まった……!」
アカリの言葉が、その場に居た全員を戦慄させた。
──俺達の、神々との最後の戦いが幕を開けた。
歴史上のそれよりも遥かに早く──それは降臨しようとしていたのである。
まつろわぬ星の神──アマツミカボシが。
──次回。
G・レジスター編最終章「ゴッド・レジスター篇」開始!! デュエル・マスターズWildCardsの軌跡、最後まで見逃すな!!