学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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最終章:ゴッド・レジスター編
GR104話:出発


 ──天の裂け目。

 その速報は、すぐさま世界を駆け巡ることとなった──表のニュースでも、そして魔導司達の裏のニュースでも。

 降り落ちた彗星は空を切り裂き、次元の穴を生み出したのである。

 あらゆる天体学者がこの裂け目について論じたが、何かが分かる訳がない。

 否、分かるはずもないのである。

 なぜならば、この天の裂け目は悪神が出づるための前触れでしかない。

 もう三日もすれば──中からは、真なる神類種が姿を現すこと請け合いである。

 太陽を凌ぎ、月さえもかすませる明るき零等星。

 司るは明けの明星。

 その名は天津甕星(アマツミカボシ)──神類種としての名は《明星神類 アマツミカボシ》。

 暴れ神の異名が相応しい、まつろわぬ悪神であった。

 鬼の頭領など、歯牙にもかけないほどに強大な神。

 その所以は──自らが星そのものであるが故。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──全魔導師団に通告ッ!! 全組織は、正体不明の裂け目に厳重警戒せよッ!!」

 

 

 

 ──アルカナ研究会でも、この事態は大きく騒がれていた。

 ここまで大事に至るのは恐らくDGの事件以来だろう。

 無理もない。空に裂け目という表面的な出来事のみならず、既に大気中の魔力が急激に増加しているという異常事態も発生しているのだから。

 それは、クリーチャーが実体化して暴れ出すという土壌が既に出来上がっているという事を意味しているのである。

 

「ギリシャのアテネに、突如大型のエンジェル・コマンド、デーモン・コマンドが多数発生ッ!! それを率いている高魔力生命体も確認ッ!!」

「こっちはインドのムンバイ!! ジャイアントに加え、正体不明の巨大ドラゴンが多数発生!! 今は幽体状態ですが、これらがもしも実体化すれば都市部への被害は甚大、免れません!!」

「日本──京都に高魔力反応ッ!! これは……鬼ではなく、ムートピア!? 海中から多数のムートピアが出現していますッ!!」

 

 それだけではなく、世界各地で既に実体化間近のクリーチャーが大量に現れているという報告が出ている。

 だが、大きく核となっているのはやはりアテネ、ムンバイ、京都の三都市。

 この3つに恐ろしく巨大な何かが出現している。

 しかし、ただのクリーチャーと言う秤では測ることなど到底出来はしない魔力を有するそれらは、クリーチャーを率いて目的不明の進軍を続けている。

 今でこそ実体を伴っていないクリーチャー達だが、もしも実体を得た時が最後。人間の文明は終焉を迎える、と魔導司達は結論を出した。

 

「ッ……どうなってやがんだよ……!?」

 

 トリス・メギスは蒼褪めた顔で叫ぶ。

 何が起こっているのか全く分からない。

 あの小娘──アカリが言っていた世界が破滅する日が急に訪れたというのか。

 

「……ありゃクリーチャーなんてもんじゃない……ッ神の類だ……!! あれだけの数のクリーチャーを率いられるのは、それだけで単体の魔力が臨界状態に達しているということ……ッ!」

「……神類種、か」

「ッ……ファウスト!?」

「……彼らの言っていたことが分かった気がする。我々の敵は……神に比類する者達だ」

 

 ファウストはローブをキュッ、と握り締めた。

 大魔導司である彼女でさえも、少なからず怯えを隠せなかった。

 それほどまでに突如、敵は大軍を成して現れたのである。

 しかし。それでも──

 

「……相手が神であるからと言って、それが諦める理由にはならないッ!! 各員、奮戦せよッ!!」

「……ファウスト」

「そうやって鼓舞するのが、君の仕事だ。トリス──今は君が、アルカナ研究会の長なのだから」

「……ああ、そうだったな」

 

 トリスは画面を見やる。

 この状況を打開しようと、既に彼らも動いているはずだ。

 エリアフォースカードを持った、いけ好かない彼らが──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──状況を整理しよう」

 

 

 

 ──鶺鴒学園の一角にて。

 耀達は、魔導司達と共有された情報を元に最後の作戦を立てつつあった。

 

「アマツミカボシは裂け目が現れてから三日で本体を現す……というのが現時点での魔導司達の見解だ」

「三日、というのに根拠が?」

 

 紫月の問いに、黒鳥は力強く頷いて返す。

 

「裂け目の魔力が現時点では一定の割合で増加している。それが臨界状態に達した時、奴は時空を裂いて顕現するだろうとのことだ」

「……やはり歴史通り、三日がタイムラインか」

「その前に白銀達には残りのエリアフォースカードを集めて貰わなければならない」

「千里眼の持ち主……ククリを探す。せんすいカンちゃんの力で、幽世の門に俺達が潜る」

「メンバーは──言うまでもない、か」

「はい! 私とおじいちゃんで行きます!」

 

 ──先ずはAグループ。

 世界(ザ・ワールド)のカードを探しに行く捜索班。

 俺とアカリの2人だ。

 どの道、せんすいカンちゃんもあまり人を乗せすぎるとキャパオーバーになってしまうし、これくらいが丁度良いだろうとのこと。

 

「そして、現在──アルカナ研究会からの報告によれば、世界各地にクリーチャーが大量発生している。そのうち、3つの地点で大きな魔力の核が産まれている。そこにエリアフォースカードが関わっている可能性も否定出来ない」

「……残りのメンバーで、その調査……ですね」

「ああ。一先ず、京都の方には──火廣金と刀堂が既に向かっている。後は、京都の鬼術勢力と協力してくれるだろう」

 

 ──Bグループは京都に向かう組。

 図らずも伊勢に居た二人が向かってくれた。

 

「となると残りの地点は?」

「……インドとギリシャだ」

「……」

「……」

 

 全員は押し黙った。

 遠い。遠すぎる。

 片やヨーロッパ、片やアジア。

 それにしても何でこんなに離れてるんだ。

 いや、魔導司の飛行艇があるから、それを使えば割と早めに着くらしいんだけど……遠すぎるぞ。

 

「気が遠くなるような場所デスね……」

「そして残るメンバーが桑原、或瀬、翠月、紫月……そして僕、か」

「俺がギリシャに行くぜ」

 

 手をあげたのは──桑原先輩だ。

 

「一回、生のアテネを見てみたくってな。あそこは良い彫刻や遺跡が沢山ある」

「もう、観光気分じゃないですか! 事は一刻を争うと言うのに!」

「……たりめーだよ。これは恐らく前哨戦。アマツミカボシが来るまでの、な」

 

 憤慨する翠月に、桑原先輩はこの程度ではまだ慄くには早いと言う。

 確かに──本番は、アマツミカボシが降り立ってから、だ。

 

「──だけど、クリーチャーに俺達の世界を好き勝手されるのは気に食わねえ。だから──全力で潰すぜ」

「……桑原先輩ったら」

「どうした? 怖気づいたかよ、翠月」

「……なら、私も着いていきます!」

 

 ──チームC。桑原先輩と翠月さん。

 目的地はギリシャのアテネ。そこまでは飛行艇での移動となる。

 

「2人組にすると、手薄になるのは免れないが……」

「ガイアハザード2騎が居るんだ。戦力が手薄とは言わせねえよ。黒鳥さんは──インドの方に」

「……分かった。では、紫月、ブラン。二人が僕と一緒のチームだ」

「Yes!! 任せてくだサイ!!」

「……師匠、お供します」

 

 ──チームD。黒鳥さんと紫月、ブランの3人組。

 こうして、チームは4つに分かたれた。

 

 

 

「……これが、最後の戦いになる──」

 

 

 

 黒鳥さんが、呟いた。 

 確かにそうであってほしい、と願う俺も居る。だけど。

 

「でも、これが最期の日じゃない、でしょ? 黒鳥さん」

「……ああ。頼むぞ白銀」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──間もなく。 

 2機の飛行艇が鶺鴒に現れた。

 これから俺達は3手に別れ、星の神に対抗するための戦いに出る。

 戻って来れるだろうか?

 そんな一抹の不安を抱く俺達。

 だけど、その手には切札を。

 傍には仲間を手にしている。

 だから、負けるつもりはない。これは、未来を変えるための最後の戦いなのだから。

 

「──白銀先輩っ」

 

 出発、十分前という時になって。

 紫月が俺の方に駆け寄って来た。

 

「……試してないループデッキがあるんです。帰ってきたら、その実験台に」

「待てや紫月さんや!?」

「……何かおかしかったですか?」

 

 ……この雰囲気で言うことじゃなかったよな!?  

 いや、まあ、彼女らしいと言えばらしいんだけど──

 

「ったく、本当にブレないなお前は……」

「……ブレないままじゃなきゃ、やってられないですよ」

「……そっか」

「だから、先輩。絶対に──帰ってきてください」

「へっ、それはこっちのセリフだ」

 

 本当ならば、ずっと一緒が良かったに違いない。彼女もそうだろう。

 だけど。それだと、きっと互いに庇い合ってしまうから。 

 互いに甘えてしまうのを知っているから。

 だから──この戦いの果ての日常に俺達は全てを託す。

 

 

 

 

「──なーに辛気臭い感じにしてるんデスか!」

「「どわあい!?」」

 

 

 

 間を裂くように──突っ込んできたのはブランだ。

 ったくコイツもコイツで空気を読めないというか、何というか……。

 

「あっれれー、もしかしてお楽しみ中デシタ?」

「帰れバカ!! いや、さっさと行け!!」

「私、シヅクと同じチームデスからネ~!」

「ったくムカつくな……」

「あはは……」

 

 再び集まる3人組。

 この時を駆ける戦いが始まった時。こうして3人でまた集まれる時が来るのがとても恋しかった。

 そして、もっと言えば──ワイルドカードを巡る戦いが始まった時、この3人でこんな戦いに巻き込まれるだなんて思わなかった。

 それが波紋を広げるように多くの人に広がって行って──今はこうして、未来を変えるための最後の戦いに挑もうとしている。

 

「なあブラン」

「ハイ?」

「……あんがとな。此処まで付き合ってくれてさ」

「な、何デスカ、アカル! 今際の別れじゃないんデスから! それに、まだ何も終わってないデス!」

「紫月も。俺を……受け入れてくれて。俺を……信じてくれて、ありがとう」

「……改めて言われるとむずがゆいです」

「……俺、やっぱお前らが居なきゃダメだったんだなーってのが……分かったんだよ。今回の戦いでさ」

 

 ああ、やっぱり。

 俺達はデュエマ部なんだ。

 何処まで行っても──

 

「……火廣金の奴が居てくれれば、もっと良かったけどな」

「……きっと、ヒイロも同じこと思ってるデスよ」

「だと良いけどな」

 

 もう、負い目なんて感じていない。

 俺達は──此処まで自分達の力で立ち、戦ってきた。

 

「ふふん、我らの事を忘れても困るでありますよ!!」

「ったく、うちの部長サマは辛気臭くて困るぜ!!」

「そうじゃのう。これが最期ではないのだからの」

 

 飛び出すチョートッQ。シャークウガ。サッヴァーク。

 そうだ。

 コイツ等も含めて、デュエマ部──か。

 

「行くぞ、デュエマ部!!」

「おーっ、です!」

「Yes! 張り切っていきマショーッ!!」

 

 俺達は手を重ねる。

 その場に居ない一人の重みを感じながら。

 それぞれの無事を祈るのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「──タイムダイバー、起動ッ!! (スター)、エンゲージ!」

「……アカリ、頼むぜ。いよいよ世界(ザ・ワールド)のエリアフォースカードの場所を拝む時だ!」

「はいっ! 此処まで……本当に長かったですからね!」

 

 タイムダイバーは、深海を超速で潜行する。

 かつて封じられた幽世の門の座標を目掛けて、そのまま潜るのみだ。

 その先に潜む神──ククリが示すエリアフォースカードの場所を聞き、必ず回収しなければならない。

 

「しかし幽世の門、ですか……」

「かつて、ロードが魔力を大量に供給する為に開いた場所だ。そこから、サッヴァークをたくさん呼び出した」

「複製品、ですか」

「そんな感じだな。一歩間違ったら世界は終わってた」

「……お爺ちゃんが居なかったら、人類何度か滅んでないですか?」

「……ゾッとしねえな」

 

 あの事件以降、幽世の門は封じられ、再び海の底に沈んでいたと聞いていた。

 まさか幽世の門が比喩でも何でも無く、本当に異界への道とは思わなかったのであるが。

 

「お爺ちゃんの今までの戦い……本当に険しいものだったんですね」

「考えてみればみるほどそうだ……何で戦えてたんだろう、って思えるくらいだ」

 

 まあ、理由なんて考えるまでも無い。

 きっとあの頃の日常を取り戻したいから、の一言に尽きる。

 デュエマがただのゲームだったあの頃に戻す。

 仲間と笑い合える日常に戻す。それだけなんだけどな。

 

「まあどうせ諦めたらゲームオーバーだったんだ。俺は後悔していない。これからも……突き進むだけだ」

「……そう、ですか」

 

 アカリは笑みを浮かべた。

 

「……私も、お爺ちゃんの進む道を応援します」

「アカリ?」

「お爺ちゃんの進む道に、私は……残り続けるから」

 

 こいつ──まさか。

 いや、未来を変えるって言っていた時点で分かり切っていたはずだった。

 これが最後とコイツも分かっているんだ。

 未来を変えると言う事は、白銀朱莉という存在も消失することを──彼女が分かっていないはずがない。

 

「お前は──」

「此処まで来たのを、無駄にするつもりですか?」

「……ッ」

「私は……覚悟を決めて、この時代に来ましたから」

 

 だから、最後まで……一緒に居てください。

 朱莉はそう言っていた。

 

「……視えました! 幽世の門──ッ!」

「……って、なんかアレ開いてねえか?」

 

 話によると、封印されたと聞いていたんだけど──

 

 

 

 ──開いている。

 

 

 

 幽世の門が──ッ!!

 

 

 

 

「うわあああ、マスター!! ヤバいよヤバいよ!! 引きずり込まれるーッ!?」

 

 

 

 せんすいカンちゃんが叫んだ時にはもう遅く。

 

「おいッ!? これコントロール効いてないんじゃねえか!?」

「……ヤバいですね! 諸々の機能がマヒしてます」

「ウッソだろオイ!? じゃあこのパターンって、まさか──」

 

 機体が、地の底へと引きずり込まれていく。

 そして、その先は重力など知った事あるかと言わんばかりに俺達はコクピットの中でミキサーにかけられたかのようにかき混ぜられ──

 

 

 

 

「あばばばばばばばおろろろろろろろろろろろろ」

「マスタァァァァーッ!?」

 

 

 

 

 ──いやあ、死ぬかと思ったね。

 恐らく最初の時間航海以来かもしれない。

 なんせかき混ぜられ過ぎてバターになるかと思ったわけだしさ。

 え? アカリ? しっかり自分だけシートベルト付けてたよ……。

 まさにこれが台無しって奴だ。

 

「うえ、ッげほっ、この流れも久方ぶりじゃねえか……」

「……」

「……アカリ? どうしたんだ?」

「……来たん、ですね」

「……うん、感じるよ、マスター」

 

 (スター)のカードが反応している。

 俺達は急ぐようにして、タイムダイバーを降りた。

 周辺には酸素はあるようで、生身で活動するのは問題ない──ってか、最早物理法則などあてにならない異空間らしいとは聞いていた。

 聞いていたのだが──

 

「……何だ此処」

 

 ──俺は言葉を失った。

 

 

 

 幽世の先。裏の世界。

 そこに広がっていたのは──山。

 幾つもの鳥居、そして宮が乱立する集落。

 神を祀るために存在するかのような場所だ。

 

 

 

「……この先に居るんだな。神類種が──」

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