学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
羽根が劇場を彩る。
そこに現れたのは美の化身。
毒々しい色の羽根に包まれた美の不死鳥は甲高く笑いを上げ、火廣金を見下ろしている──
「キングマスターカード……ッ!」
「かつて鬼に美学を奪われた哀れな不死鳥が居たわ──桃太郎に倒され、完全に覇気を失ったコイツをワタクシが配下に加えたってワケ!」
つまり。
不死鳥のクリーチャーは、この悪神に囚われているのである。
その目は虚ろで、何も見えていない。
悪趣味に彩られた自らの姿さえも。
それが火廣金には──痛ましく映っていた。
「《ヲヲロラシアタァ》の効果でカードを3枚引くわ!! さあ、終焉の時間よッ!! 《傾国美女 ファムファタァル》をビビッドローで召喚!! 《ファムファタァル》の効果で、自分のクリーチャーのパワーを+6000し、「スピードアタッカー」「パワード・ブレイカー」を与えるわ!」
「一斉攻撃、というわけか……ッ!!」
「美美美美美!! 先ずはQ・ブレイカーになった《ヲヲロラシアタァ》で攻撃よッ!!」
一挙に隕石が降り注ぎ、火廣金のシールドが4枚、砕け散る。
「かっは……!?」
爆炎が巻き起こり、彼の身体が吹き飛ばされた。
「言っておくけど、《メテヲシャワァ・ヲヲロラシアタァ》の効果で、ワタクシの手札のコスト以下のクリーチャーは場に出せない……クリーチャーのS・トリガーは、使えないわッ!!」
「ッ……!」
頭が揺れる。
あの爆発の所為だ。
目がチカチカする。
全身からは既に血が流れており、あのキングマスターカードがどれ程の魔力を秘めているかを思い知らされる。
恐らくダイレクトアタックを喰らえば、命はない。
(だが、俺は……それでも、立たねば……ッ!)
起き、上がれない。
《メテヲシャワァ》のロックでクリーチャーのS・トリガーや、呪文のS・トリガーによってクリーチャーを出すことは封じられている。
しかし、それでも──
「出せない、だけだッ……!! 出さなければ、問題ないッ……!!」
「美ッ!? 何を言っているの? そのデッキには、このクリーチャー達を止めるような呪文は──」
「──G・ストライク……《アイボー・チュリス》!!」
「美ッ!?」
次の瞬間、《プロタゴニスト》の動きが止まる。
択ばれないはずの結晶龍の身体が硬直し、そのまま膝を突いたのだ。
「バ、バカな、何が、起こったの……!?」
「G・ストライクは相手のクリーチャー1体を攻撃不能に陥らせる……これは召喚ではない!! 見せるだけで発動する効果だ!!」
「なっ、何です、ってぇ……!? でも、まだ打点は足りてるわ!! 《アワンデス》でシールドブレイク!」
「更にもう1発……G・ストライク──《ダチッコ・チュリスター》!! 《ファムファタァル》を攻撃不能にする!!」
「……ッ!!」
トリスに渡されていたカードが、役に立った。
召喚が出来るわけではないが、相手のロックをすり抜けて確実に相手のクリーチャーの攻撃を止める事が出来る。
これがG・ストライクの力。
鳳凰は幾ら攻撃しても火廣金に勝つことは出来なくなった。
「美美美美美!! まあ良いわ!! 消耗しきったアナタに、ワタクシを倒すことなんて不可能よ!!」
喀血した自らのそれを拭いながらも、火廣金は起き上がる。
しかし、先程の衝撃波によるダメージは想像以上のものだった。
立ち上がるのがやっとで、カードを握る事すらままならない。
場にはクリーチャーは1体も居ない。
そして、相手は大量のクリーチャーを展開しているので、このターンで決めるしか勝ち筋は無い。
更に、残るシールドは2枚。
だが──
「魔導司を……
──それでも火廣金の闘気は消えはしない。
「……1マナで《ホップ・チュリス》を召喚ッ!」
「そんなモブを今更出したところで──」
魔力の出力を限界まで上げる。
血を全て魔力に変える。
長引かせはしない。神を討つため、此処で最大の一撃を放つ。
「魔導司を……そして、俺のカード達を……
「ッ!?」
「コストを自力で3軽減、更に火のクリーチャーである《ホップ・チュリス》を出しているため、更に3軽減……2マナをタップ!!」
例え、相手が神であろうとも。
斃れた仲間の決意を背負っているのだ。
袂を別った仲間が何処かで戦っているのだ。
自分が恥ずべき戦いをしてどうする?
「全軍前へッ!! 龍の星を継ぐ魔神が拓いた、大いなる勝利への覇道ッ!! スター……進化ァァァーッッッ!!」
「ッ進化、ですってぇ!?」
炎が燃え盛る。
そして、宙に刻まれるのは──キングマスターを示す黄金の刻印。
いずれ勝利へと至る龍帝のオーラを纏い、魔神は高みへと至った──
「
既に限界など、超克した。
後は光の速さで撃ち貫くのみ。
「《ガイアール・ブランド》……ですってぇ!?」
「……これはスター進化クリーチャー……過去のクリーチャーの力を受け継いだ、アルカナ研究会最後の切札ッ!! 貴様等神を名乗る不届き者を誅する星の鉄槌ッ!!」
《ガイアール・ブランド》が戦場を蹴る。
そして、《ファムファタァル》を、《プロタゴニスト》を、そして《メテヲシャワァ・ヲヲロラシアタァ》を潜り抜け、神速の拳をシールド目掛けて放つ──
「打ちぬけッ!! 《ガイアール・ブランド》でシールドをW・ブレイク──ッ!!」
「ぐぅっ……トリガー無し……!? でも、その超魔力……アナタ自身にも大分負荷が掛かっているわよね!?」
「ッ……!!」
「それに、アナタの場にもうクリーチャーは居ない……ッ!! トドメは刺せないわッ!!」
「居るさッ……最後の1体が……!! 《ガイアール・ブランド》の効果発動ッ! このクリーチャーは攻撃の終わりに破壊される──」
「何かと思えば自滅ねッ!!」
……火廣金は一瞬、笑ってみせる。
「次発装填……再突入……!!」
次の瞬間だった。
スケートボードに乗った小さなネズミが──鳳凰の心臓目掛けて突貫し、貫いた。
「カッ、ハ……!?」
何が起こったのか、鳳凰には分からなかった。
もう、火廣金の場にはクリーチャーは他に居なかったはずである。
にも拘らず、最期のトドメの一撃が神である自らを貫いた。
身体が焼けながら崩落していく。
高純度の炎の魔力に貫かれたことで、再生が追い付かない。
幾ら再生しても、体が燃えているので、そのたびに鳳凰は地獄の苦しみと共に燃え尽きていく──
「い、イヤッ!! イヤよ!! どうして!? 何が起こったのッ!?」
「……《ガイアール・ブランド》の効果だ。攻撃の終わりにこのクリーチャーを破壊するが……スター進化クリーチャーの進化元は生き残る」
「ッ……!?」
「そして、《ガイアール・ブランド》は残ったクリーチャーをアンタップし、スピードアタッカーを与える……ッ!!」
「かっ、あっ、ああ!? イヤ!! イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤァァァァァーッ!?」
ペキッ、ペキッ、と割れていく水晶の身体。
その度に鳳凰の羽根が次々にはげ落ちていく。
虚飾に覆われた姿が焼け落ちた時──残ったのは、水晶の身体を持つ龍の姿だった。
「イヤッ!! 熱いッ!! 熱い熱い熱いッ!! 見ないでッ!! 見ないでェェェェーッ、ワタシはッ、ワタシはッ!! 完璧で美しい、
「……哀れだな。そうやって、ずっと──演じていたわけだ。ウソの自分を」
「何百年も力を蓄えて、漸く神の力を手にしたッ!! なのにッ!! なのにッ!! こんなっ、こんな姿はッ、姿なんてぇっ、嫌ああああああああああああああああああああああああああ」
絶叫を上げながら──不死鳥ですらなかった、鳳凰を名乗る神擬きは燃え尽きた。
「……虚飾と、ウソを幾ら身に着けようと……何にもなれやしない、か」
火廣金は、落ちていた《メテヲシャワァ・ヲヲロラシアタァ》のカードを拾い上げる。
最初は鬼の王に。
そして次は──不死鳥を騙る結晶の龍に。
このカードは、ずっとそうやって利用され続けていたのだろう。
しかし、もうこのカードを縛る者は居ない。何処にも。
「……もう良い。君は……自由だ」
そう言って火廣金がカードを手放すと──《メテヲシャワァ・ヲヲロラシアタァ》──神のシモベたるキングマスターカードは、眠りにつくように消え失せたのだった。