学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR111話:月天神類─月壊魔天

 ──桑原に相対するアルテミスは、最早体内の異物でしかない二人を排除すべく即座に動き出した。

 しかし、激しくではない。

 じわり。じわりと神罰執行の態勢を整えていく。

 

「《魔王(サタン)天使(エンジェル)のカナシミ》を発動……相手の手札を捨てさせ、こちらはシールドを手札に加えます」

「くそ、《ラ・トビ・トール》が!?」

「何をしたのか知りませんが……貴方達が私を倒すことなど、不可能。神の威光の前に散りなさい」

「たかが手札を1枚削ったくらいでチョーシに乗ってんじゃねーぜ!! 俺ァ3マナで《魂フエミドロ》を唱える!!」

 

 山札の上から2枚が捲られ、桑原のマナは一気に増える。

 一方で、相手のハンデスによって手札が削られている以上、何処かで手札補給をしなければ息切れは必至。

 だが、今の桑原の表情には──迷いが無い。

 

「何故なのです。人が、私に抗う? 理解が不能です」

「……さあな! テメェらの好き勝手にさせてたら……傷つけられる人がいる。それは見過ごせねえってだけだぜ!」

「? 人を生かすも壊すも神の勝手……それが自然の摂理というもの。《ケンザン・チャージャー》を使い、ブロッカーの《闘魂の精霊ウェルキウス》を手札に加えて、チャージャーでマナを増やしましょう」

「天門かッ……だけど、そのデッキは俺には効かねえよ! トリガーなんざ怖くねえ!」

 

 相手が防御型のデッキならば、守り切れないだけの毒を撃ちこめば良い。

 空亡との試合でも通用した戦術だ。

 即座に桑原は4枚のマナをタップし、切り返す。

 

「……力を貸せ!! QX!!」

『クックック……漸く、その言葉が聞けたぞ。呪縛からは……解き放たれたか?』

「……ああ。目ェ覚まさせて貰った!!」

 

 浮かび上がるⅧの字。

 そして、刻まれるのは(ストレングス)の紋章だ。

 満を持して、女王が堂々と降臨する。

 

 

 

霞む目に静謐なる死を(シュプレマティスム)──《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)》!!」

 

 

 

 現れたQXはその毒針を勇ましく振るう。

 《QX》に貫かれたシールドは、相手の山札の上から4枚目に刺しこまれる。

 従って、S・トリガーは当然発動しない。

 カウンターを得意とするヘブンズ・ゲートデッキには効果覿面とも言えるクリーチャーだ。

 それはアルテミスも分かっている──はずだったが、

 

「……心外ですね。まさか、そちらが攻撃してくるのを大人しく待つとでも?」

 

 動じる様子はない。

 相手は神。ただのデッキではないのだろう、と桑原は思い直す。

 

(QXだけで勝てるちゃあ思ってねえが……一体何をしてくるつもりだ? 皆目見当がつかねえぜ……!)

 

「我が孤独は貴方の孤独……私は《至宝を奪うのロンリネス》を召喚」

 

 突如、極光が戦場を照らす。

 現れたのは──海賊のような容貌のエンジェル・コマンドだった。

 

「月明かりが照る頃に、神罰を──《ロンリネス》は相手の呪文のコストを1増やします。小細工は私には通用しません」

「しかもブロッカーか……まあ想定内と言えば想定内だけどな!!」

 

 言った桑原は引いたカードを見て、少し苦い顔を浮かべる。

 《ローリング・トラップ》。パワー5000以下のクリーチャーをマナゾーンに送るが、《ロンリネス》のパワーは6000。半端に高い。

 しかし、その呪文の上に付いているクリーチャー面ならば此処で活用することができる。

 

「俺は5マナで、《ツムリカルゴ・ラ・でんでんIII世》を召喚!! 効果で墓地の《ラ・トビ・トール》と《コンダマ》をマナゾーンへ!!」

 

 雄たけびを上げ、巨大なカタツムリの異形が姿を現す。

 図らずも墓地のカードを利用する結果となり、桑原のマナは次のターンで8枚となる。

 一方で、手札は残り1枚。かなり心許ない。

 

(そして、《ロスト・ソウル》を撃つのは、間に合わないか──ッ!!)

 

(先輩、難しそうな顔をしてる……!)

 

 一緒に戦うと言ったものの、ゲームの主導はあくまでも桑原が握っている状態だ。

 翠月は固唾を飲んでそれを見守るしかない。

 ……否。

 

「ッ……翠月!?」

 

 その手を、翠月は握っていた。

 ずっと──戦ってきた、その手を。

 

「……だいじょーぶです、先輩。先輩は負けません……! 私が、傍に居ますから!」

 

 そうだ。

 いつも、彼女は傍に居ようとしてくれた。

 晴れた日のそよ風のように、隣に立っていた。

 何を不安に思う必要があるだろうか?

 ──答えは否だ。力強く、桑原は宣言する。

 思った通りに動けなくとも、必ず勝利へ辿り着く道筋は見えている。

 

「……俺は、これでターンエンドだ!」

「……終末の時は来ました」

 

 言った彼女は──6枚のマナを、浮かび上がらせる。

 光と闇。

 混濁し、そして相反した2種類の力を。

 

「この私を前にして臆さない人間など居ません……我が月は狂気の月……誰もが畏怖する夜の光……」

 

 譫言のようにアルテミスは呟く。

 自らの成り立ちを考えれば、自分が生命をも超越した存在であることは誰も否定することなどできない。

 なぜならば、自らは夜の空に浮かぶ月の信仰が生み出した神。

 

「あの空に浮かぶ月のように……私もまた、永遠に不滅であるべきなのです」

「永遠に不滅なものなんてねえんだよ、生憎な!」

「神とは不変である……そうあるからこそ、そうあるべき存在……」

 

 アルテミスのプライドは既に傷つけられていた。

 桑原に自らの力を打ち破られたその時に。

 故に決意した。

 必ずや、自らの力に靡かぬ人の子をこの手で滅すると。

 

「認めない。人の心の強さなど。認めない。人の力など……必ずやこの手で、人の世を終わらせてみせる……呪文《黙示録、それはラグナロク》」

「なっ!?」

「効果により、私のシールドを全て墓地へ置く!!」

 

 轟!!

 そんな音を立てて、アルテミスのシールドが燃え尽きていく。

 しかし同時に、彼女のシールドは再び蘇っていった。

 

「その後、こうして墓地に置いた数よりも1枚多く、私の山札の上から1枚をシールド化する!!」

「シールド交換ついでに、シールドの数そのものも増やしたってのか!?」

「それだけではありません」

 

 ギラリ。

 

 アルテミスの声が妖しくその場に響く。

 

 

 

 

「《至宝を奪うのロンリネス》……オシオキムーン発動!!」

 

 

 

 暗闇しかない空間に──満月が現れた。

 ただならぬ空気に桑原と翠月は身構えた。

 《ロンリネス》の構えた拳銃が虚空に穴を開ける──

 

「我がシールドが砕かれた時、手札からコスト7以下のブロッカーを呼び出す……そして、この効果は4回誘発する」

「ッ……そうか!! 墓地に置かれたシールドは4枚……!!」

 

 稲光が戦場を焼く。

 現れたのは、異形の怪人たち。

 

 

 

「《偽りのを盗むファントム》、《明かりに沈むニンギョ》、《三日を謡うオラトリオ》を降臨!!」

 

 

 

 更に、と彼女は続ける。

 

「《オラトリオ》の効果でカードを1枚引きます……そして、これがコスト7以下のブロッカーならば最後の降臨を執り行う」

 

 足りない手札を、後から出したクリーチャーのキャントリップで補う行為だ。

 捲られたカードが──

 

 

 

 

「……良いでしょう。これこそが神の意思。これより、神罰を執行する」

 

 

 

 ──《ロンリネス》の力により、即座に降臨する。

 現れたのは──キングマスターカードの証たる金の刻印だ。

 

「あれって、白銀の《モモキング》と同じマーク!?」

「我に忠実なる月光王国の勇ましき将よ。来たりて、愚鈍なる人間を滅せよ!!」

 

 神光と暗黒。

 その2つを兼ね揃えた昏き神兵が目覚めようとする。

 自らの敷いた摂理に反する不条理な人間を滅ぼすべく、女神の怒りを発露すべく。

 それは──降臨した。

 

 

 

「我は影。我は光。照らすも翳るも我が掌に。

全ては月の赴くまま──《 と破壊と魔王(サタン)天使(エンジェル)》」

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