学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR112話:月天神類─壊れた月

 現れたのは、巨大な砲塔が大量に生えた鋼の天使。

 すぐさまその力により、2枚のシールドがアルテミスの前に現れる。

 減っていたはずのシールドはこれで合計7枚となった。

 そして、彼女の場には合計5体ものブロッカーが立ち並ぶ。

 《至宝を奪うのロンリネス》。

 《偽りのを盗むファントム》。

 《明かりに沈むニンギョ》。

 《三日を謡うオラトリオ》。

 そして──

 

「あれが月光王国のキングマスターカード……!!」

 

 ──月壊神、《 と破壊と魔王(サタン)天使(エンジェル)》。

 これでは最早、《ヘブンズ・ゲート》どころの騒ぎではない。

 一気に立ち並んだ敵を前にして、桑原は唖然としてしまう。

 

「《ニンギョ》の登場時効果でカードを1枚山札から墓地へ。これにて一連の処理を終了します」

「ッ……何だってんだよ……!! クソ、こんなにどっから湧いてきやがった……!」

「ターン終了時。《と破壊と魔王と天使》の効果で私のシールドを1枚選んで破壊」

 

 砕け散るシールド。

 しかし、最早この先の展開は分かり切っていた。

 桑原の首筋に汗が伝う。

 神罰の月が、光輝いた。

 

「──オシオキムーン……同時起動」

 

 怪人達が月の加護を受け、一斉に共鳴を始める。

 

「なァ……ッ!? あのクリーチャー達全員がオシオキムーン持ちだってのか!?」

「《ニンギョ》の効果で墓地から2体目の《と破壊と魔王と天使》を手札に加えます。そして、《ロンリネス》の効果でそれを手札から降臨」

「ウソだろ2体目!?」

 

 現れた《と破壊と魔王と天使》は、更にシールドを増やす。

 ターン終了時に破壊されたと思われていたシールドは、またしても増えてしまった。

 残り、8枚。

 

「更に1体目の《と破壊と魔王と天使》の効果で、相手のシールドをブレイク」

「ッ……!」

 

 ガトリング砲が桑原のシールドを一挙に撃ち砕いた。

 だが、それだけでは終わらない。

 

「──《偽りのを盗むファントム》のオシオキムーンで、相手は手札を2枚見ないで捨てます」

「ウソだろ!?」

 

 すぐさま増えたと思われた手札は消え去る。

 《ファントム》が文字通り、盗んでしまったのだ。

 これで桑原の手札は0だ。

 だが、神罰はこれだけでは終わらない。

 

「今度は2体目の《と破壊と魔王と天使》の効果発動。私のシールドを破壊し、オシオキムーン同時起動」

「っ……」

 

 桑原は声も出なかった。

 先程のように、再び《ニンギョ》の効果で墓地からクリーチャーが吊り上げられ、そして《ロンリネス》の効果で場に出されるのである。

 

「《ロンリネス》で3体目の《 と破壊と魔王と天使》をバトルゾーンへ」

「ウ、ソだろ……!?」

 

 ターン終了時の効果は、発動できるクリーチャーが全て効果を発動し終えるまで続く。

 つまり、この流れは後もう1回続くことが確定してしまったのだ。

 しかも──

 

 

「今度は《オラトリオ》の効果で《明かりに沈むニンギョ》を場に出します」

 

 更に、再度《 と破壊と魔王と天使》のガトリング砲が桑原に向けられる──

 

「砲撃、開始……シールドを……ブレイク」

「ぐっああああ!?」

 

 衝撃が伝わり、今度は破片は砕け散って降り注いでくる。

 それをモロに浴びた桑原の衣服は、肉は、裂かれていく。

 

「クソッ……ゲホッ、ゲホッ……情けも容赦も油断も隙もありゃしねえ!!」

「《ファントム》で、もう1度手札を破壊」

「ッ……!」

 

 そして、と冷徹に月の女神は告げる。

 

 

 

「──3体目の《 と破壊と魔王と天使》の効果発動……オシオキムーン、同時発動」

 

 

 

 砕かれるアルテミスのシールド。

 回収されるブロッカー。流石に4体目は居なかったのか、現れたのは2体目の《オラトリオ》であった。

 しかし、それもコスト7以下のブロッカーであるが故に即座にバトルゾーンへ繰り出される。

 そして、三度目の砲撃が桑原を襲う──

 

 

 

「──ロックオン……シールドをブレイク」

「ぐああああああ!?」

 

 

 

 放たれるガトリング砲。

 破片が桑原、そして翠月に襲い掛かる。

 すっかり満身創痍の二人。

 だが、そこに《ファントム》が襲い掛かった──

 

「これで──終わりです」

「……勝手に……終わらせてんじゃねえ……!」

 

 ──しかし。

 怪人の手に手札は届かなかった。

 それはすぐさま光り輝き、桑原のフィールドに展開されていく。

 

「……S・トリガー……《Dの牢閣メメント守神宮》……!!」

「1ターン、耐え抜きましたか。命拾いしましたね……これで、私はターンを終了」

 

 オシオキムーン。

 その効果の1回1回は大したことはないかもしれない。

 しかし、自分のシールドが離れた時という条件である以上、一度連続して発動すれば、このように破壊的な連鎖を齎す。

 現にアルテミスの場には、《と破壊と魔王と天使》が3体。

 更に《ロンリネス》、《ニンギョ》2体、《ファントム》、《オラトリオ》2体……と併せて合計9体ものブロッカーが立ち並んでいる。

 加えてシールドは合計10枚。ちょっとやそっとでは揺るぐような盤面ではなくなってしまった。

 それどころか、このままターンを返せば物量で押し潰される。 

 

(仮にシールドをブレイク出来たとして、あのクリーチャー共のオシオキムーンが同時発動するんだろ? 冗談じゃねえ!!)

 

「大丈夫ですか……!? 先輩……!」

「大丈夫って……!」

 

 心配していられるような状態ではない。

 目の前の敵に集中していて見ていなかったが、翠月もシールドの破片を浴びて傷ついている。

 

「っ……」

「……先輩?」

「……だから言ったのに……」

「私の怪我を心配してるんですか? ……心配要らないです。先輩と一緒だから」

「……あークソ……!!」

 

 力を入れて、彼は立ち上がる。

 

「後悔しても知らねえからな」

「何度突き放したって答えは同じです」

「……バッキャロウ……なら、やってやろうじゃねえか!」

 

 猶予は1ターン。

 《メメント守神宮》の効果で次のターン、相手の軍勢を止める事は出来る。

 しかし、10枚のシールドと9体のブロッカーをどうにかできる手段をこの2手の間に揃えなければならない。

 

「……勝率は絶望的。妾の毒針は全く役に立たぬ。……くっふふ、面白いのう」

「そうだな……思い通りにいかねえってのも、案外悪くねえのかもしれねえ」

「貴方達は狂ってるのですか? 自分の命がかかった戦いで……手札はゼロ。フィールドの軍勢はあまりにも貧弱……それでどう戦うのですか?」

「だからと言って諦める理由にはなりません! 私達はまだ立ってます!」

「そうだな……奇跡とやらに賭けてみるかよ!!」

 

 カードを引く桑原。

 

「……成程な。此処で来るか!!」

「……何?」

「教えてやるぜ、神様よ。まだ勝ち目があるかもしれねえってことをな」

 

 刻まれるのは、マスターの刻印。

 桑原は、そして翠月は。

 漸く手にした自分達の光明を──突きつける。

 

「──《始虹帝 ミノガミ》、召喚!!」

 

 その時。

 空に虹がかかった──現れたのは、黄金の繭から生まれ出でた不死身の皇帝。

 神々しい光に包まれたそれは、大きく羽根を伸ばし、戦場を飛び回る──

 

「なっ、何だ、このカードは……!?」

「《ミノガミ》の攻撃時の効果発動! 山札の上から3枚を表向きにし、それらがツインパクトカードであれば──全てマナゾーンに置く!!」

 

 捲られたカードは──《マッド・デーモン閣下》、《コンダマ》、《レレディーバ・グーバ》──全てツインパクトのカードだ。

 一気に桑原のマナは、7枚から10枚へと増える。

 

「更に、《ミノガミ》はこの効果でマナに置いたカードの数×5000、パワーがアップします!!」

「攻撃先は、《と破壊と魔王と天使》だ!!」

「させません。《ニンギョ》でブロック。……理解出来ません。人間が神に勝つことなど不可能です」

「俺はこれでターンエンドだ!!」

「……私のターン」

 

 カードを引いた瞬間──アルテミスのクリーチャーは全てタップされる。

 このターン攻撃することは出来ない。

 しかし──それでも、桑原のシールドを吹きとばしながら手札を破壊することくらいは出来る。

 

「私は、《に彷徨うアビス》を1体召喚。そして、ターン終了時に《と破壊と魔王と天使》3体の効果が起動」

 

 砕け散るアルテミスの3枚のシールド。

 《ニンギョ》の効果で墓地から回収出来るクリーチャーこそもう居ない。

 しかし、こうしてブレイクしたシールドから、更に新たなるクリーチャーが呼び出されていく。

 

「《ロンリネス》の効果で《限りなく透明に近いワルツ》、《を象るデスサイズ》、2体目の《ファントム》をバトルゾーンへ……」

 

 《メメント》でタップしても尚、更に3体のブロッカーが追加で現れる。

 シールドの枚数も相まって、とてもではないが突破出来るような状態ではない。

 

「そして、《アビス》のオシオキムーン発動」

 

 その身を犠牲にする《アビス》。 

 しかし──無数の銃火器が宙に浮かび、現れる。

 

「──その身を犠牲に、相手のアンタップしているクリーチャーを破壊!!」

「ッ……《QX》に《ツムリカルゴ》が!?」

「そして、最後に貴方を守る盾を消し飛ばしましょう」

 

 ガトリング砲を構える3体の《と破壊と魔王と天使》。

 彼らが全てのシールドを吹きとばす──

 

 

 

 

「……これで、終わりです」

 

 

 

 ──静かに呟く。

 都市をも蒸発させかねないほどの一斉射撃。

 

 

 

 

「諦めなさい。人間が神に敵うなど……」

「何か言ったか?」

 

 

 

 しかし──それでも、彼らは立っていた。

 傷だらけでも、尚、肩を支えながらも、足を引きずりながらも──立っていた。

 

「ッ……バカな。おかしい。異常です。何故、人間如きが立っていられるのです」

「知ったこっちゃねーよ……強いて言うなら、同じ痛みを感じてるから、じゃねえか……?」

「あの日、誓ったんです……先輩の辛さを……私も分かち合う、って……! だから、このくらい、へっちゃらです……!」

「精神論でしかない。そんなもので神に勝てるなら──」

「苦労はしない、ってかあ? ハッ、だろーな……だけどよ、ひっくり返せちまう……そんな気がすんだよ……!」

 

 桑原は不敵に笑ってみせる。

 ラストターン。

 最後の1枚を引く桑原の手に、翠月の掌が重なった。

 

 

 

 

「……ドローッ!!」

 

 

 

 その1枚は──きっと、(ストレングス)の加護を受けたのかもしれない。

 引いたカードを、桑原は躊躇なく使った。

 もう、どの道これに賭けるより手は無いのだから。

 

 

 

 

「……ラストワード……ッ!! 《天上天下双極∞(ツインフィニティ)》!!」

 

 

 

 

 アルテミスの表情は分からない。

 だが、確かに彼女は戦慄したようだった。

 山札の上から3枚を表向きにし──ツインパクトであれば呪文面を使う。

 最も、何が出るかは運次第なのであるが──捲れたツインパクトは2枚。

 しかし。

 

 

 

「……十二分だッ!! 先ずは《ギガタック・ハイパートラップ》!! 効果で互いのプレイヤーのカードを全てマナゾーンへ消し飛ばすッ!!」

「なっ……!?」

 

 最大にして最凶の罠が女神を襲う。

 桑原の場の《ミノガミ》、そしてアルテミスの場の全てのクリーチャーが──消えた。 

 鋼の天使であるキングマスターカードも、それを護衛する天使や悪魔たちも皆、消し飛んだ。

 

「そ、そんな、バカな……!!」

「《天上天下双極∞(ツインフィニティ)》の効果で唱えたツインパクトは場に出てきます!」

「《ハイパー・ギガタック》をバトルゾーンへ!」

「わ、私の、不死身の軍団が……!?」

「何べんでも言うぜ。不死身とか不滅とか、そんなもんは有り得ねえ。人も世界も芸術も、いつかは変わる。そして滅びる!!」

「ッ……!」

「だけどな……俺達が死ぬのは少なくとも、今日じゃねえんだよ!!」

 

 桑原は2枚目のカードを突きつける。

 

「呪文、《「深淵より来たれ、魂よ」》!! 墓地から進化ではないクリーチャーを全て場に出す!!」

 

 一挙に、手札から墓地に落とされたクリーチャー、そして《QX》が奈落の底から起き上がって来た。

 これまで散々煮え湯を飲まされた分が爆発したかのように女王は高笑いを上げる。

 

 

 

「オッホホホホホ!! 大義であったぞ。さあ、皆の衆よ! あの月の女神を撃ち落とすのじゃ!」

 

 

 

 墓地からは《デスカール》、《ツムリカルゴ》、《QX》に加え、更に《コンダマ》、《レレディーバ・グーバ》、《キングダム・オウ禍武斗》、《偽りの名 ナンバーナイン》が現れていく。

 あまりにも呆気なく、そして不条理な逆転。

 全てが上手くいっていたはずなのに、一瞬で崩されたことへの怒り。

 ──月の女神は狂ったように叫んだ。

 

「アテネは……私を見捨てたというのですか……!! 何故、私がこのような仕打ちを……!!」

「終いだぜ、女神サンよ。神の時代は終わってたんだ。とっくの大昔にな」

「どっちにしたって間違ってたんです。誰かを犠牲にするやり方なんて……」

「私は、諦めません……!! 私は、私は、ワタシハ──何故、ナゼ、何故、何故──」

 

 壊れた機械のように呟くアルテミス。

 それを見て、QXは──毒針を突きつける。

 

「……力に溺れて、自分をも見失ったか。哀れよのう、見ておれぬわ」

 

 悪あがきと言わんばかりに4体目の《と破壊と魔王と天使》を召喚するアルテミス。

 しかし、それだけで最早止められるはずがない。

 集結したガイアハザードを前に、蹂躙されていく。

 抑え込むことなど出来るはずがなかった──

 

 

 

 

「《Q.Q.QX》でダイレクトアタック──ッ!!」

 

刺し貫く甘美なる終焉(スティング・ジ・エンド)

 

 

 

 

 ──毒針が、アルテミスの身体へと撃ちこまれる。

 すぐさま、女神の身体は無惨にも崩れ落ち──砂のように消えていった──

 

 

 

 

「ァ、ア……わ、たしは……何故、アレホドの、魔力を、集めていたのですか……?」

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