学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
彼の者は、風と共に戦場へと降り立った。
愛馬・《バレット・ザ・シルバー》に跨り、目の前の敵に狙いを定める。
「そんな、馬鹿な。手に入れていたのか、《ジョリー・ザ・ジョニー》を!!」
「うちの師匠がギリギリで手紙で寄越してくれたんだよ。遅れてお前の所にやってきたのは、デッキをちょっと弄ってたからだ。此奴を入れる為にな」
そして、デッキの水文明の比率を多くしたのは、《テンペスト・ベビー》で山札操作をすることが出来るからだ。
ジョーカーズは手札が増えやすいデッキのため、おあつらえ向きの性能と言える。
これで、早期にカウンターするのが狙いだったということだ。
『どーでありますか!! これが我らがジョーカーズのマスターカードでありますよ!!』
「くっ……!!」
「まずは、《バレット・ザ・シルバー》でシールドをW・ブレイク」
銃口が2枚のシールドを捉えた。
すぐさま、銃弾は加速して火廣金のシールドを打ち砕く。
「次に《ドツキ万次郎》でお前の《ダチッコ・チュリス》を攻撃して破壊だ!!」
「そんな、これは――!!」
『やべぇよ、ヒイロの兄貴!!』
これで、あいつのシールドは残り2枚。
そして、クリーチャーも2体――
『マスター、これで決めるでありますよ!』
「ああ、行くぜ!! 《ジョリー・ザ・ジョニー》でシールドをW・ブレイク!!」
《ジョリー・ザ・ジョニー》が銃口をシールドへ向け、撃鉄を引いた。
銃声が轟き、銀色の玉が回転してシールドへ吸い込まれていく。
「この時、《ジョリー・ザ・ジョニー》のマスター・W・ブレイク発動。此奴がシールドをブレイクする度に、相手のクリーチャーを1体選んで破壊する」
シールドを貫通した銃弾は、地面を跳ね返り――そのまま《チュチュリス》の胸を貫いた。
更に、それは火山地帯を模したこのフィールドの溶岩を跳ね返り、最後のシールド諸共《”
標的を撃ち貫く度に、弾丸は加速していく。周囲の溶岩へぶつかり、跳ね返るのをひたすら繰り返す。
「そして、《ジョリー・ザ・ジョニー》の攻撃の終わりに場とマナにジョーカーズが5枚以上あり、尚且つ相手クリーチャーも相手のシールドも無ければ――」
「馬鹿な!! 認めない!! 俺は、俺は『
「――
空を切る音。
ぴゅん、と肉を穿つ音。
弾丸は最後の標的を貫き、戦いの結末は決した。
※※※
空間が崩落し、炎も消えていく。
勝ったんだ。火廣金に――激しい戦いの余韻も冷めないままに、すぐさま旧校舎の廊下が目の前の光景となって戻ってくる。
何というか、全身の力が抜けて――背中から重い重い荷物が降りたような、そんな脱力感が襲い掛かる。
「アカル!!」
「白銀!!」
めいめいに俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
徐に俺は立ち上がると、3人を見回す。
「……勝ったぜ……俺……」
「勝ってもらわなきゃ、困ります、先輩」
「そ、それもそうだな、紫月……」
「でも、やったんデスネ!」
「流石だ。紫月の先輩と言うだけはあるな」
あれ? そういえば、火廣金の奴は何処に行った? 手加減はした。ダメージはかなり減っているはずだが、それでも強力だ、とチョートッQは言っていた。
見回すが、いつの間にかあいつの姿は無くなっていた。
……敵だったとはいえ、心配だな。根っこから悪い奴ってわけでもないし。
その代わりに、エリアフォースカードがフロアに落ちていた。
「火廣金の奴はどうしたんだ?」
「どうやら、エリアフォースカードだけ置いて、さっさと逃げちまったようだな」
『もう、気配を感じられねぇぜ』
「約束を守る辺り義理堅いと言うか、何と言いマスカ……」
「いや、俺も正直言ってやばかった……うっ」
そうだ。
黒鳥さんに貰った《ジョリー・ザ・ジョニー》が無ければ、俺は間違いなく負けていた。
それほどに、火廣金は強かった。
『マスター!! やった、やったでありますよ!! 我々は勝ったのであります!!』
「そうだな……チョートッQ。お前達ジョーカーズのおかげだ」
本当、危なかった。
回想すると力が抜けてしまう程だ。
よく、あれだけの猛攻を耐えきって反撃が出来たな、と自分も思う。
「……火廣金先輩……またエリアフォースカードを狙ってくるのでしょうか」
「恐らくそうだろう。だが、仲間もいるらしいし、いずれ相対する事もあるだろうぜ」
「正直、不安になってきまシタ……」
また、戦う事があるのだろうか。
正直、俺としてはもう戦いたくない相手だ。あの速攻戦術は胃に悪すぎる。
だけど――
「――上等だ。その時は、また戦うだけだ」
確かにエリアフォースカードは返ってきた。
だけど、俺達は何処か、それを素直に喜べずにいたのだった――
※※※
「く、クソっ……馬鹿な……!」
火廣金緋色は、ずたずたにされた心を引き摺るように旧校舎の壁に寄り縋って歩いていた。
転移呪文を唱えたが、敗北のダメージで結局遠くまで移動が出来なくなっている。
流石にマスターカード。ダイレクトアタックではなく、エクストラウィンにせよ、体全体に食らった負担は大きい。
そして、それを使役する側もまた然りだった。
それ故、火廣金は二重のダメージを負っていたのだった。
火廣金は校舎の壁に寄りかかる。
完全に、体力など失っていた。
――白銀耀め……!! おのれ……おのれ……奴は俺が……!!
※※※
「……耀」
少女はふと、息を漏らした。
幼馴染の少年が抱えていた重荷は、すぐに明らかになった。
思っていたよりも唐突に、そして突然に。
あの日現れた火廣金緋色を名乗る少年は、彼女を救うと共に言った。
『お前達の事を俺は知っている。お前の幼馴染の事も、だ』
『どういう……こと』
『要するに、だ。白銀耀は――この化け物と戦っている。お前に黙って、な』
覚えている。
忘れていないはずがない。
一時期、自分に取り付いていた言いしれない何か。あの時耀は暈したが、今ならわかる。
自分を助けたのは他でもなく、耀なのだと。
疑惑は確信に変わり、同時に無力感へと溶けた。
「……じゃあ、どうすんの……」
自分には、何もできない。
エリアフォースを持っておらず、火廣金のように魔導司でもない彼女がそう思うのも無理はない事であった。
「――あたしは、どうすれば良いの?」
火廣金は止めると言った。
戦っている耀を。それは、彼女が耀を心配しているからではなく――自分達の上司の命令だからだ、と。
だが、どうしても――花梨には、耀を、そして彼を取り巻く仲間達を止める気にはなれなかったのだ。
しかし、それは同時に耀を危険に晒す事になる。
矛盾する2つの思念は、胸を締め付けていく。
行き詰まりは、閉塞感を生んで彼女を苦しめた。
「……どうすれば、いいんだろ――」
剣道部の用具を背負い、彼女が旧校舎の角を曲がった時だった。
「!!」
花梨は仰天した。
顔から血を流し、壁に寄りかかるように倒れている火廣金。
何があったのかは分からない。
だが――
「ちょっと、大丈夫!? 何があったの!?」
やるべきことは決まっていた。
足と声は、頭で考える前に働いていた。
うぐ、ぐ……と呻くような声を発する火廣金は、いかにも痛みで喘いでいるようだった。
――助けてもらった恩があるし――
「しっかりして! 今、家に運ぶから――!」
「っ……君は……!」
「喋らないで! すぐ助けるから!」
そう言うと花梨は、無理矢理火廣金に肩を貸し、そのまま暗くなっていく帰路を急ぐのだった。
※※※
――画して、運命は動き出す。
様々な思惑が交錯し、謎は深まる中、彼らの戦いは何処へ向かっていくのか。
2人の少年の激突は、世界の法則を揺るがす事件の発端に過ぎない。
そう。全てはまだ、始まってすらいないのだ。