学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR114話:縁神類─世界との縁

「──改めて、私の名はククリヒメ。《縁神類ククリヒメ》。人と人を繋ぐ縁を司る者です」

 

 

 

 

 もうどんなに真面目に取り繕っても遅いよ。

 巫女服を身に纏った少女・ククリヒメは言った。 

 正直、認めたくはない。だけど、俺の中に走る神力の回路がコイツをカミ様だと言っている。勘弁してよ。

 

「私の力は、人の縁を感じ取ること。貴方達が来るということだけはとうの昔に感知しておりました。そして何かを捜しに私の力を頼りにやってきたことも。貴方達が邪悪な存在ではないということも」

「……すげーな、神様って」

「いえ、何となくでしか感知出来なかったのです。私の力は、以前と比べても弱く……いえ、そもそも他の神に比べてもあまり強くはありません。曖昧な概念である人との縁……それを、見通すことしか出来ませんから」

「分かった、分かったからガラガラを仕舞ってくれ」

「今、地上は大変な事になっているでありますよ! 星の神・アマツミカボシが迫ってきているであります!」

「……! アマツミカボシが!?」

 

 彼女は驚きに満ちた表情を浮かべる。

 どうやら常日頃から千里眼で外の世界の事を見通せるわけではないらしい。

 

「知らなかったのか?」

「……とうに、時間の概念など忘れてしまいました。ですが確かに……ヤツが再び迫ってくる日が来たということですね。此処は地上からは隔絶された場所……大いなる力を封じるための場所ですから」

「……そうか。アマツミカボシについて何か分かる事は無いか?」

「かつて。地上で言えば1000年前。星が降り注ぐとともに空に裂け目を作りました」

 

 彼女は雄弁に語り出す。

 

「人はそれをアマツミカボシと呼びました。大火事を都にもたらし、暴れまわりました。神は総じてアマツミカボシに立ち向かいましたが、皆──倒されてしまいました」

「……それほどまでに強いのでありますか」

「ええ。アマテラス神でさえもアマツミカボシには敵いませんでした。私は──遠路の地で、己の無力さを呪いながら、他ならぬ私を信仰する民を守るのに必死でした」

「そう、だったのか」

「ですが毎日、千里眼で都の惨状を見せつけられ……私は弱り切ってしまいました。元々弱っていた千里眼の力は日に日に弱まっていき、私は寝込むようになりました。しかし眠っている間だったとしても、私は力の全てを悪しき者を遠ざけるのに使いました。それしか……出来ませんでした」

「……」

 

 彼女は失意に暮れたような表情を浮かべる。

 無力感に苛まれながら、自分の大事な人を守り続けた。

 それなのにどうして彼女を責められようか。ククリヒメは、人を守る為に戦ったのだ。

 

「すっかり神として弱り切っていた頃。私が目を覚ました時、地上では数年が経っていました。その頃には都で暴れていたものが静まったことが分かりました。そして──私の神としての力が相当に弱まっていることに気付きました」

 

 彼女は胸に手をやる。

 俺たちは彼女に連れられて、山の頂上にある大きな宮へとやってきた。

 その奥からはただならぬ気配を感じる。

 

「──他の神が次々に滅ぼされたことで、地上からは神力が衰えつつあった。そして、私は消滅するか眠るかの二択を迫られました。私は甘んじて運命を受け入れるつもりでいたのです。しかし……その時、私の手元に、あの札がやってきたのです」

「札?」

「はい……それが何であるか、私はモノへの縁を辿って調べました。西洋の力で作られた、強大な神に比類する者が封じ込められたカード……エリアフォースカードである、と」

「その頃から日本にエリアフォースカードはあったのか!?」

「私はカードへの縁を辿り、調べました。それは全てで22枚。日本からも遠い国にも散らばっている。そして、そのうちの1枚が私の下に。そして──私は、カードの力から推測したのです。アマツミカボシを封じ込めるに至ったのは、このカードの力ではないか、と」

 

 彼女は拳を握り締める。

 

「現に、カードからは巨大な神の力。そして、神に匹敵する何かと激しく争った……と言う事が分かりました」

「1000年前に誰かが日本にエリアフォースカードを持ち込んで……」

「アマツミカボシを宇宙へ追放したってことか!?」

「無論、こんなものを放置するわけにはいきません。私は自らの最後の力を使ってこれを海へと身を投げ、幽世へこれを持っていくことにしたのです。しかし……」

 

 彼女は、恥ずかしそうに頬を引っ搔いた。

 ククリヒメは命を絶つつもりだったのだろう。

 カードと共に。

 しかし……そうはならなかった。

 現に彼女は俺たちの前でピンピンしている。

 

 

 

「……私は生かされた、のでしょうね。このカード……世界(ザ・ワールド)に」

 

 

 

 俺たちは目を見張った。

 

「じゃあ、世界(ザ・ワールド)のカードは……この中にあるっていうのか!?」

「ええ、その通りです」

 

 彼女は再び俺たちに向き直る。

 その表情は険しい。

 

「しかし、世界(ザ・ワールド)のカードは私の手にも余りあるもの。私はカードの魔力を身体が吸収したことで生き永らえましたが、同時に辿り着いたこの場所に結界を作り、長らくカードを安置していました」

「結界……って?」

「ふふっ……この島全てです」

「マジでありますかぁ!?」

 

 神のやることはスケールが違う。

 最も、それは世界(ザ・ワールド)の力を得て、彼女の魔力がある程度戻っていたのもあるのだろうが。

 それでも……この場所が全てククリヒメのテリトリーであるという俺の推測は間違っていなかった。

 

「これが……私が知る、アマツミカボシと世界(ザ・ワールド)のカードの全てです。貴方達は大方、迫るミカボシを倒す為に世界(ザ・ワールド)を持っていくつもりなのですね?」

「ああ……」

「貴方達は長らく、このエリアフォースカードを手に今まで戦ってきたのでしょう。さて、何故このカードを求めるのです?」

「ッ」

「貴方の覚悟を……お聞かせください。さもなくば、私が許しても世界(ザ・ワールド)は貴方に力を貸さないでしょう」

 

 俺の覚悟……そんなものは決まっている。

 今までの事を俺は話した。

 未来からやってきた、デュエマを消そうとするやつらの事。

 そして、アマツミカボシがもたらす破滅の未来の事。

 何が何でも、それを止めたいということを。

 

「未来……道理で私が知覚できないわけです」

「……そうなのか?」

「はい。私は同じ時間軸のものは見通せても、外の時間からやってきたものはハッキリと見通せないのです。貴方達が此処へ来たのは、未来のお孫さんと未来の技術のためなのですね」

「ああ。信じてくれないか?」

「大昔……たまにそういうことがあったもので。驚きはしませんよ。私も力を失っていなければ……未来を見通せたでしょうね」

「起きてたのかよ……」

「大体、今回の出来事の全貌が明らかになってきました。私の力で地上の様子が見通せないのは、異なる時間軸から様々なものが錯綜しているから……ですか」

 

 どうやらククリヒメには、アカリやせんすいカンちゃんのことは分からなかったらしい。

 だから、どうやって此処に来たのか大分気になっていたようだった。

 

「凡そ分かりました。して、そこまで長い旅路の先に貴方が求めるものは?」

 

 俺は力強く言う。

 

 

 

 

「俺は、皆とデュエルが出来る未来を守りたいんだ!! そのために、此処まで来た!!」

「おすすめはしませんよ」

 

 

 

 ピシャリ、と彼女は跳ねのけた。

 扇が、俺の胸元を差している。

 

「……人の子には余りあるものです」

「ッ……それほどまでに恐ろしいモノなのでありますか?」

「ええ。この私ですら直接使うことを躊躇い、今までずっと封じ込めてきたものです。貴方が使えば、()()()()()()()()()かもしれませんよ?」

「戻って、これない」

「はい。世界(ザ・ワールド)の力は、神が使ってもそのものを強く変異させるでしょう。仮に私が使えば──それはもう大きな力を手に入れるでしょうね。アマツミカボシと同等の」

 

 彼女は憂うように言った。

 

 

 

「でも……それを使った私はきっと、二度と元の私には戻れない。そう確信しています。それだけの力をこのカードから感じるのです」

「戻ってくる。絶対に」

 

 

 

 俺は、自分に言い聞かせるようにククリヒメに告げた。

 

「……じゃなきゃ、今までの戦いが無かったことになっちまう。それだけは嫌だ」

「成程。カードの力を跳ね除け、戻ってくると? この私が恐れる代物を?」

「俺には……皆が居てくれる。今まで出会ってきた仲間が」

 

 一度俺は、煩悩に呑まれた。

 もう1人の俺、そしてもう1枚の皇帝のカード。

 そして、俺自身の心の闇に向き合ってきた。

 だけど……戻って、来れた。

 

「俺には取り戻したい日常がある。それを……強く願ってるんだ」

「我も一緒であります! マスターは1人じゃない。ずっと、我らが付いているのであります!」

「……そう、ですか。戻ってきたい日々がある。そうやって強い気持ちがあれば……人の想いが神の力を超えるのかもしれませんね」

 

 彼女は小さく頷いた。

 

 

 

 

「貴方の覚悟。しかと聞き届けました。しかし──」

 

 

 

 その時だった。

 周囲の茂みが、木々がざわめく。

 彼女は扇を開き、何かに呼びかけるように念じた。

 すると──周囲から獣のような影が幾つも飛び出し、彼女の手元でカードになっていく。

 

「では、貴方の力を確かめるため。デュエル……遊興にて見極めましょう」

「……デュエル!?」

「引き籠ってたのに分かるのでありますか!?」

 

 オイ、俺も思ったけど失礼すぎるぞチョートッQ。

 

「幽世には……流れ着いたクリーチャーが多数居ます。そこから、私は儀式であるデュエルを学びました。外では人が遊興としていることも」

「……成程な。だけど手加減しねえぜ」

「ふふっ。そうですね──ですが私、遊興ではムキになってしまうタチでして」

「来るでありますよ、マスター!!」

「ああ!!」

 

 一陣の風が吹いた。

 俺はエリアフォースカードを構える。

 ククリヒメとの一騎打ちのデュエルだ。

 相手は神。恐らくかなり厳しい戦いになるだろう。 

 

 

 

「暴れる拳よ、私の下に集いなさい。……縁神類ククリヒメ……参ります!!」

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