学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR118話:廻神類─樹壊獄

 ※※※

 

 

 

 

 ──同時刻、表の世界。インド最大の都市・ムンバイにて。

 

 

 無数の人々を取り込んだ龍の樹を相手にしていた黒鳥達。

 しかし、肝心の神類種が見つからないまま、時間だけが過ぎていく。

 無論、その間にも龍樹達を討伐しているので、魔力は擦り減っていくばかりだった。

 

「……見ろ、空が……ッ!!」

「……裂け目が、広がっていく、デス!?」

 

 黒鳥が息も絶え絶えに空を指差す。

 インドからも見える空の裂け目。

 そこから見えた。

 ギラギラと輝く1対の眼が──

 

「……あれが、アマツミカボシ、ですか……!」

 

 紫月は想定よりも早い災厄の接近に言葉を失っていた。

 あのままでは、最早出てくるのも時間の問題だろう。

 

「見ろ……ヤツが近付くにつれて、樹のバケモノ達がどんどん活性化していく……!!」

 

 二人は身構える。

 いや、それだけではない。

 地面が揺れていく。

 

『高濃度の魔力反応!! 高濃度の魔力反応!! 気を付けやがれ!! 地面からだ!!』

『来るぞ……神類種が!!』

 

「うええ!! 寝てる場合じゃないデース!!」

 

 サッヴァークに飛び乗る3人。

 すぐさま空高く飛び上がる──

 

 

 

 

「………ーーーーーーッッッッ!!」

 

 

 

 ──言葉にならぬ叫びが聞こえた途端。

 地面を突き破り、無数の手が伸びてくる。

 サッヴァークは障壁を貼りながら、それを躱していく。

 上へ、上へ、上へ。

 

『なっ、何じゃあ、これはぁぁぁぁ!?』

 

 流石の彼も狼狽した。

 しかし、今自分が撃ち落とされれば、背中の3人も無事では済まない。

 そのまま高度を上げていく──

 

「手が沢山!? 山みたいなのが競りあがってくるデース!?」

 

 ──そうしてようやく。

 ブランも、紫月も、黒鳥も──それの正体に気付くことになった。

 空から眺めて漸く全貌が視認出来る程の巨大な神が降臨していた。

 

 それは、今までのどの龍樹よりも巨大な──いや、最早龍樹を全て背中に背負うほどに巨大な神類だった。

 大きさのスケールが違う。

 青い肌に、無数の手。

 三つの瞳、そして──三又の槍。

 その背中には、先程までブラン達が相手にしていた全ての龍樹が生えている。

 

「ッ……ぁ、ああ」

 

 紫月は気を失いそうになった。

 これが生き物である、と頭が認識しない。

 何かの建造物にしても巨大すぎる。

 それは、インドどころか世界をも踏み潰してしまいそうなほどだ。

 アマツミカボシの接近に伴い、インド全域を蝕む破壊の神は遂に覚醒を遂げて地面から姿を現したのである。

 

「こんなに大きいの、どうするデース!!」

「どうにかするしかあるまい!! あんなものを放置していたら世界が滅ぶぞ!!」

『敵性クリーチャーの全貌を把握……何なんだアイツは!? 背中に生えた龍の樹はさながら自分の養分ってか!?』

 

 シャークウガが絶叫する。

 それもそのはず、龍樹の1本1本から凄まじい魔力が感じ取られているのだから。

 

『ワシらが今まで戦っておったのは、神の一部でしかなかったというのか!!』

 

 

 

「ッーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 

 神類種の頭上に浮かび上がるのは、それまた巨大な槍。

 それが、全方位を薙ぎ払っていく。

 すると──空間が裂け、そこからひび割れが起きた。

 その中からは──雪崩れ込むようにして、異形達が漏れ出して来た。

 

「あいつはッ……!? 世界全部を壊すつもりか!?」

『あやつめ……あの裂け目を通して、別の空間からクリーチャーを召喚しおったわ!!』

「クリーチャーを召喚……!?」

「いや、それだけでは終わらんみたいだぞ……!」

 

 見ると、無数の異形達は皆、神に向かって殺到していく。

 その様は、餌に群がる蟻の群れのようだ。

 しかし──問題は、集る相手が神であるということ。

 無数の異形達は、神の身体に触れるなり、溶けて消えていく──

 

『ありゃあマズいぞ!! あいつ、自分で召喚したクリーチャーを自分で吸収して更にエネルギーを溜めてやがる!!』

「強ちバカな話ではないな……以前、鶺鴒に現れたデ・スザーク、ド・ラガンザークも同じことをやっていたからな……ッ!!」

『いずれにせよ、あやつをあのままにしておけば……臨界状態に達した魔力が暴発、インドどころかこの大陸が吹き飛ぶじゃろうのう』

「アジア大陸の危機デースッッッ!?」

「アジアどころか、世界全部だ。アジアが吹き飛ぶほどの爆発が起きたら、終わるぞ」

 

 黒鳥が苦虫を噛み潰したように言った。

 しかし──神は既に動き出しており、止まる様子がない。

 あのペースでは、ムンバイを飛び出してインド全域、それどころかアジアを踏み潰していきかねない勢いだ。

 かと言って、近付ける相手ではない。

 この距離ではデュエルエリアを開きに行くどころの話ではないのである。

 

「ならっ、水晶漬けにして動きを止めるデスよーッ!!」

「……仕方ありません。魔力を補充します」

正義(ジャスティス)、フルパワーッ!!」

魔術師(マジシャン)、フル稼働です」

 

 サッヴァークの身体が、変化し、サッヴァーク†と化す。 

 更に、シャークウガを通して送り込まれた魔力がサッヴァークを満たしていく。

 

「──オラァ、爺さん!! ぶっ放してやりなァ!!」

「ぬぅ……これで止まってくれい!!」

 

 そして、空中に浮きあがった何本もの水晶の剣が次々に地面へと突き刺さっていき、そこから巨神の身体を水晶漬けにしていく──はずだった。

 

「ぬぐうぉっ!?」

 

 直後。

 突き刺さっていた水晶の剣がひとりでに消滅していく。

 そして、水晶化していったのは──サッヴァークの身体だった。

 

「んなっ、馬鹿な……!?」

「サッヴァーク!? 大丈夫デス!?」

 

 腕が、そして足が凍るようにして水晶になっていく。

 巨神へと向けた

 

「罰当たり……ということかのう!!」

「おいおいまさかありゃ、高度な魔力反射ってかあ!? 因果律を弄ったのか、それとも事象事態を捻じ曲げたってのか!?」

「ど、どういうことデース!?」

「つまり……天罰。神へと触れる行為そのものが罰せられるということか……!!」

「じゃあ手出しできないじゃあないデスか!!」

 

 

 

 

「ッーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 直後、再び薙ぎ払うようにして三又の槍が振り回される。

 空間には次々に穴が開いていき、そこからクリーチャーが雪崩れ込んでムンバイを蹂躙していく。

 最早都市だったかどうかも分からないほどに大地は荒廃していった。

 巨神であるがゆえに、物理的に止めることは不可能。

 そもそも質量面でも優に全周3kmを超えるほどの巨体を守護獣2体程度が押し留められるはずがない。

 いや、そもそも数を増やしてどうにかなる相手でもない。

 仮にエリアフォースカードの使い手の守護獣総出でもあの巨神を止めることは出来ないだろう。

 

(あんなのが出てきた後に、まだアマツミカボシが控えてるってことデショ!? どうするのデース!!)

 

(あれをどうにかできるビジョンが全く思い浮かばん……! 魔導司の援軍が居れば、と思ったが今では彼らが居なくて良かったとまで思える……皆殺しは免れんぞ!?)

 

(……諦めない。諦めたくない。だけど……!! どうにかなるんですか、これは……!?)

 

 弱音が胸の中に渦巻いてくる。

 動きこそゆっくりだが、確実に巨神はこちらの心を蝕んでいた。 

 雪崩れ込んで来るクリーチャー全てを相手にしている余裕など最早無い。

 しかし──

 

 

 

(いえ、先輩なら……絶対に諦めたりしない!!)

 

 

 

 ──紫月は、折れる寸前に思いとどまる。

 未来に連れ去られた自分を助けたのは誰だったか。

 不可能を可能にしてしまった、ある少年を思い出す。

 歴史を変えられても尚、仲間達を助け出すまで1人で戦い続けた彼を思い出す。

 それに比べれば何だ。

 しかし。

 手だてが思い浮かばない。

 こちらの戦力と相手の戦力があまりにかけ離れ過ぎている──

 

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーー!! ーーーーーーーーーーーーーーーー……!?」

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

 巨神の身体が、真っ二つに両断されたのは。

 

 

 

「え?」

 

 

 

 3人は、拍子抜けしたように口を開いていた。

 都市を飲み込むほどの神の身体が、いきなり裂け、そして地面へ斃れたのである。

 その間、凡そ2秒足らず。

 神を背後から両断した好々爺は豪快に笑い飛ばして見せる。

 

 

 

「──デカいのは漢の浪漫……しかし聊か、肉弾戦には弱いとみたのう。貴様が神でなければ、稽古の付け甲斐があったろうに!! のーっほっほっほっほ!!」

 

 

 

 

 黒鳥は。紫月は。ブランは。

 そして守護獣2体は。

 突如乱入したスケール外にして想定外の助太刀を前にして言葉を失う。

 

 

 

 

「およ? 見慣れた顔がおるのぉーう!? なんじゃなんじゃ、シケた顔しおってからに……」

 

 

 

 

 

 

 

「ジジイが山までシヴァ狩りに来たというのに……此処からが……神退治の本番じゃぞう? のう?」

 

 

 

 

 ──こちらを見るなり、巌流齋老師は高らかに笑い飛ばしたのだった。

 その背後には、老師自らが従える夢幻の龍の姿があった──

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