学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR126話:晴天神類─サンセット

 ※※※

 

 

 

「これで、終わりだ」

 

 

 

 

 神としての権能を全て投げ打った。

 その上での勝利だった。

 クリーチャーとしての、ただのアマテラス・キリコとなったアマテラスは、消し炭と化したであろうアカリの方を見やる。

 そして──自らの寿命が、もう長くないことを察していた。

 只のクリーチャーは、この地球上では長くこの姿を保てない。

 

「……済まなかった。私が……1000年前、終わらせていれば──」

 

 

 

 

「──済まなかった? 終わらせていれば?」

 

 

 

「──ッ!!」

 

 

 

 声が、聞こえてくる。

 完全に消し飛ばしたはずの声が聞こえてくる。

 アマテラスの眼前に──

 

「……あの日。あの時。オマエがいれば……アカリの苦しみを止められたと思ってるの? アマテラス」

「疑問……な、なぜ。何故生きて……いる?」

 

 ──アメノホアカリは、立っていた。

 

「ふふんっ……エリアフォースカードの魔力が……アカリへのダメージを肩代わりしたんだよ。すっごく痛かったけどねッ!!」

「驚愕ッ……!! 神の一撃を喰らって、立っているのか……!? 神の姿と名を捨てた一撃が……神を滅ぼせないなら、それは、何だと言うのだ……!?」

「アカリが何枚エリアフォースカードを持ってると思ってんの? 既に7枚!! 正直ヤバかったけど、もう神がどうこうしてアカリを斃せる段階じゃあない!!」

「疑問ッ!! 無理矢理奪った魔法道具であるそれらを……何故貴様が従えられるッ!!」

「……当然。このカードの力、かな」

 

 言った彼女は、Ⅳ番。

 皇帝(エンペラー)のカードをアマテラスに見せつける。

 それが何なのか、アマテラスも勘付いた。

 あの日、あの時。

 鬼を──酒呑童子を討伐した少年が持っていたエリアフォースカードだ。

 

「……疑問ッ!! 何故、そのカードを持っている……ッ!!」

「持ち主が死んだから。そして、自動的に所有権はアカリに移った」

「……激昂ッ!! 貴様、手に掛けたのかッ!! 鬼退治をした、あの少年をッ!!」

「この皇帝(エンペラー)がどういう権能か分かる?」

「……ッ!?」

 

 太陽が。月が。魔術師が。正義が。そして、世界が。

 全てが皇帝(エンペラー)のカードを前にして回っている。

 

 

 

 

「……他のエリアフォースカードを従えるチカラ。文字通り、皇帝の権威の象徴。それこそが、皇帝(エンペラー)の本質だよ」

「ッ……!!」

 

 

 

 

 何度でもデュエルで叩きのめしてやる、と起き上がるアマテラス。

 しかし、もうクリーチャーの姿ではアカリに立ち向かう事すらできなかった。

 たった一度のチャンスを無駄にしたことを──彼女は激しく悔やむ。

 既に彼女は他のエリアフォースカードをモノにしてしまっている。あまりにもリソースの差が大きすぎる。

 

「……アマテラス。アカリは……全部自分の所為だと思って、自分の責任だと思う所……あたし、すっごくキライ」

「……何だと?」

「だって。あんたが死んだから、アカリは生み出された。あんたが不甲斐なかったから……アカリは……ッ!!」

 

 アマテラスの細い首にアカリの右手が伸びた。

 

 

 

「ガマンしたのに……頑張ったのに……人はアカリを見捨てたッ!! だからアカリは人に復讐するッ!! 世界に、神に復讐するッ!! これはアカリの戦いなんだッ!!」

 

 

 

 アカリは叫び散らす。

 

「あんたが今更何を謝ろうが、関係ないッ! あんたにあたしを裁く権利なんて──無いんだッ!!」

「……過ちが、ある」

「……は?」

「過ち、が、あるのだ……」

「……何だと?」

「アマツミカボシを止められるのは、我ほどの力を持った神……しかし、()()()我が居なくなったら、誰がアマツミカボシを止める……?」

「……」

()()()()()()()……多くの命が救えるならば……と、人の過ちを……見過ごした……それが、我の罪だ……」

 

 止められなかった。

 止められるわけがなかった。

 アマテラスは回顧する。

 神道に通じた人間たちが、「万が一」の時のために何をするつもりだったかを。

 そのための「神を降ろす研究」を。

 そして、そこに生じる犠牲を。

 それが如何に非人道的な行為であるかを。

 全て彼女は知っていた。

 

「人の手で神を生み出すために、どのような犠牲が生じるかを、知っていた……」

 

 それを──必要悪である、と見逃した。

 自分とて、人間に助けられた身であることを知っていたからである。

 

「驕っていた……我が勝てば良いこと、と思っていた……結局、我はアマツミカボシに敗けた……犠牲を、拡大させた……!」

「ッ……ふざけてる……!! 必要な時にあれだけ使い潰して、要らなくなったら捨てる? 後ろめたくなったら謝って終わり?」

「……すま、なかった、すまなかった……止められなかった……人間が、我の愛した人間が滅ぶのを見るのは……耐えがたかった……!!」

 

 ぎゅるる、と音を立ててアカリの背中から幾つもの蛇が伸びる。

 

 

 

「滅ぶ。滅ぶよ。人は……神は……クリーチャーは……全部、滅ぶッ……!! アカリという犠牲を生み出したことでッ!! 滅ぶんだッ!!」

 

 

 

 蛇が、アマテラスに喰らいつく。 

 女神はもう、抵抗しなかった。

 その血を、肉を喰らい尽くした時。

 青い返り血がアカリを覆っていた。

 

「……は、はは、勝った……アマテラスに……勝った……ッ!!」

 

 

「……勝った? 本当に……?」

 

 

 

 太陽神の亡骸を前にして。

 アカリは、先の敗北を思い返す。

 負けた。

 負けていた。

 もしも、エリアフォースカードが無ければ。 

 負けた時の保険を用意していなければ。

 アカリは──アマテラスに滅ぼされていた。

 

「あっ、ああ、あ……ッ!!」

 

 

 

 

 負けたのだ。

 自分は、アマテラスに。

 そして、彼女の命を奪った今──もう二度と、アマテラスに勝つことが出来ないのだと、思い知った。

 

 

 

 あれほど憎悪し、あれほど嫌悪し、あれほど超えたいと誓った相手だったのに。

 

 

 

 結局──ただの一度も、まともに彼女に勝つことなど出来なかった。

 

 

 

 そして。

 アカリは──言葉に出来ない気分に襲われる。

 

 

 

 

 

「あああああああああああああああああああああああァァァーッ!! アマテラァァァァァァァスッッッ!!」

 

 

 

 

 

 少女の絶叫が響き渡る。

 虚しい。

 心にぽっかりと穴が開いたような気分だった。

 叫び、叫び、叫び続ける。

 そうしてひとしき──叫び終わったとき。

 

 

 

 

 ──神は、誓ったのである。

 

 

 

 

「……強く、なるんだ……犠牲者の、ままじゃ、ダメなんだ……ッ!!」

 

 

 

「このままじゃ、ダメなんだ……ッ!! エリアフォースカードに頼ってるようじゃあダメなんだ!!」

 

 

 

 

「100%の力じゃあ、ダメなんだ……人間を滅ぼして……アカリを苦しめたこの世界を……」

 

 

 

 

 ピキ。ピキピキピキ。

 

 

 

 彼女の頬に罅が入る。

 

 

 その肌の色は、白く染まっていく。

 

 

 

 太陽の神を取り込んだことで──

 

 

 

 

 

「──全部、作り替えてやる……ッ!! アカリが……太陽に、なるんだ……ッ!!」

 

 

 

 

 

 ──その身体は、更に神化していくのだった。

 

 

 

 

「……エリアフォースカードの、匂いがする……ッ!! 分かる、分かるよ……ッ!! 皇帝(エンペラー)!!」

 

 

 

 

 神は、笑みを浮かべる。

 皇帝(エンペラー)のカードを通して、他のカードの在処が分かる。 

 かつて、耀が何度も使ったその力を──今はアカリが使っている。

 

 

 

 

「……魔術師共の巣窟に……行こう……ッ!! 西洋の魔術師は……皆殺しだ……!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「白銀が、死んだァ!?」

「……かもしれない、だ」

 

 

 

 

 ──インドを離れ、すぐさまギリシャへと向かった黒鳥達。

 シャークウガのワープ魔法を駆使し、何とか彼らと合流することに成功する。

 これまでの経緯を話すと、桑原と翠月は驚愕したような表情を浮かべ──そして顔を見合わせた。

 

「……いずれにせよ、あいつは幽世からこちらに帰って来れていない」

「……一緒に行ったアカリちゃんが敵になったから……」

「クソッ!! あんにゃろ、俺達の事をずっとダマしてたってのかよ!!」

「悔しいですが……誰も、アカリさんのことを疑いきることなんて出来ませんでした。未来から来た……ただ一人の仲間でしたから」

 

 紫月がきゅっ、と胸の前で手を合わせた。

 耀が何処に居るのか。

 本当に無事なのか。

 幽世に向かう術は他にあるのか。

 

 

 

 そして──アマツミカボシを、アメノホアカリを斃す術はあるのか。

 

 

 

 分からない事が、先の見えない事が多すぎる。

 

 

 

「……残った奴で、どうにかするっきゃねぇだろ」

 

 

 

 桑原が拳を握り締める。

 今まで何のために耀が戦って来たか。

 そして──こともあろうにそれを裏切ったアカリを許しておくわけにはいかない。

 

「でも、エリアフォースカードが奪われたら……!!」

「エリアフォースカードが無けりゃ戦えねえってのか!? アルカナ研究会の奴らに、どうにかしてもらうとか……クソッ!! 結局俺達だけじゃあ、何にも出来ねえってのかよ!?」

「……魔力量が違い過ぎる。仮にデュエルで勝ったとして、斃せるかは別問題だ……!!」

「俺達ゃ、このままで良いってのかよ!?」

 

 壁を殴りつける桑原。

 

 

 

 

「……白銀……こんなところで……死んでんじゃあ、ねえぞ……ッ!!」

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