学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR127話:灯神類─新世界秩序(1)

 ──スイス。

 ヨーロッパの中でも、随一の武力を以て、あらゆる組織に参加しないと言う姿勢を貫く中立国家。

 それ故に、ニュートラルな国家組織の拠点が置かれることも多い。

 それは──魔術の世界に於いても同じである。

 あらゆる世界中の魔法組織を統べる魔導協会の本部はこの場所に設立されており、特に警戒度の高い魔法道具のうち数点はこの場所に収められている。

 

「神類種確認ッ!! 確かにきますッ!!」

「敵の狙いは魔法道具だ!! 決して犬死するんじゃない!! 死守せよ!!」

 

 ──使い手に渡っていないエリアフォースカードもまた、例外ではない。

 

 

 

「有象無象の虫けらが何匹居ても無駄だよ?」

 

 

 

 

 

 故に。

 凶神の号令の下に、蹂躙が始まった。

 まるで赤子をあやすかのような歌声が響き渡る。

 灯神類の背後からは──神歌の歌姫が顕現していた。

 先程、まさにアマテラスから吸収した切札だ。 

 その歌声が鼓膜に響いた時、魔方陣を展開していた魔導司達の首が下へもたげていく。

 その場だけではない。

 恐らく施設に居るであろう残りの魔導司達にも。

 ひいては、スイス中にアマテラス・キリコの歌声が響き渡る。

 

「あっ、ああ……? こんなやつ、どうやって戦えば良いんだ……?」

「……眠い。眠ぃ、よぉ……」

「もう、どうでも、いいや……」

 

 

 

「ざぁーんねん。君達は何も出来ずに無駄に命を散らすんだよ」

 

 

 

 魔法を唱えようとしていた者達の首がへしゃげ落ちた。

 スクラップのように背骨がへし折られ、鮮血がその場に迸る。

 凶悪に目を光らせた修羅の頂のゼニスが、誇りも慈悲もなく鎧に覆われた脚を無気力に首をもたげた魔導司目掛けて次々に振り下ろしていく。

 まるで工場のように、淡々と虐殺は進められていった。

 5分と戦線は持たなかった。

 アマテラス・キリコによって戦意を完全に失った魔導司達は、歌姫が異次元の穴をこじ開けて呼び出したクリーチャー達によって蹂躙されていったのである。

 しかしその様を──アカリは、何処かつまらなさそうに見ていた。

 

「……つまんない」

 

 ギリッ、と歯を噛み締め、そして理不尽に子供の如く当たり散らす。

 

 

 

 

「つっっっまんないなぁぁぁーっ!! もっと悲鳴を上げてごらんよ!! 無様に地面に這いつくばって泣き叫んでみせろよさあ!! きったない泥水啜って、命乞いしてみろよ!!」

 

 

 

 彼女の声を聞く者は誰も居なかった。

 施設の中も、外も。

 既に蹂躙され尽くしていたことを、彼女の周囲を舞うエリアフォースカードの数々が物語っていた。

 クリーチャー達が皆、アカリの前に跪いて頭を垂れる。

 そして、献上するかのようにして──エリアフォースカードを差し出した。 

 

 かつてアルカナ研究会が保管していたカード達。

 

 

 

「お勤めご苦労であーる♪ さーてと。いっぺんに手に入ったなあ……あまりにも上手く行きすぎて、つまらないくらいだけど──ん?」

 

 

 

 まるで札束でも数えるかのように彼女はカードを確認していく。

 

「ふぅん、これって……」

 

 彼女は白紙のカードを取り出す。

 かつて、刀堂ノゾムが所持していた未覚醒のエリアフォースカード。

 だが、そこに力が加わる事で──それは姿を変えていく。

 

「──この時代の(ザ・ムーン)……!」

 

 にやり、とアカリは笑みを浮かべた。

 (ザ・ムーン)(スター)は、ダブってこそ居るものの強力な魔力兵器に違いはない。

 取り込んでしまえば、更に大きな力を手に入れられる。

 何故ならば、この中に封じられているのは元々自分の身体なのだから。

 

 

 

 

 

 

「──世界を纏めて焦土に、そして新たな世界へと作り替える!! アカリが自由に生きられる、アカリのための世界を!!」

 

 

 

 

 これだけの数のエリアフォースカードが集まったのだ。

 最早結果は見えていた。

 アルカナ同士は本質的に引き付け合うサダメ。

 ましてや、カード達を従える力を持つ皇帝(エンペラー)があるのだから尚の事。

 この地球上にあるすべてのエリアフォースカードが、彼女の下に集おうとしていた──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「な、なんだ!? (ストレングス)のカードが勝手に!?」

隠者(ハーミット)のカードも……!?」

「ぬっ、先程アルテミスから回収したエリアフォースカードが……!?」

 

 

 

 その日。

 

 

 

 

「──なにっ!? どうしたの、戦車(チャリオッツ)!?」

「どうした刀堂!?」

「火廣金っ、助けて!! 戦車(チャリオッツ)のカードが──言う事を聞かない!!」

「何だと!?」

 

 

 

 

 全世界に散らばった全てのタロットの大アルカナが。

 

 

 

 

「ッ……まるで、流れ星のように……集まっていく……カード達が……!!」

 

 

 

 

 それが空目掛けて集まっていく様を、彼らは眺めているしかなかった。

 

 

 

 

 全ての摂理を、法則をも捻じ曲げる存在。

 

 

 

 

 新たな世界を造り出すほどの力を秘めた22枚のカード。

 

 

 

 それが揃った時──世界は、生まれ変わる。

 

 

 

「ごめんなさい、先輩……」

 

 

 

 

 ぽつり、と紫月は呟いた。

 

 

 

 

「私……何も、出来ませんでした……」

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

<Ⅰ魔術師(マジシャン)

 

<Ⅱ女教皇(ハイプリエステス)

 

<Ⅲ女帝(エンプレス)

 

<Ⅳ皇帝(エンペラー)

 

<Ⅴ教皇(ハイエロファント)

 

<Ⅵ恋人(ラヴァーズ)

 

<Ⅶ戦車(チャリオッツ)

 

<Ⅷ正義(ジャスティス)

 

<Ⅸ隠者(ハーミット)

 

<Ⅹ運命の輪(ホウィール・オブ・フォーチュン)

 

<Ⅺ(ストレングス)

 

<Ⅻ吊るされた男(ハングドマン)

 

<ⅩⅢ死神(デス)

 

<ⅩⅣ節制(テンパランス)

 

<ⅩⅤ悪魔(デビル)

 

<ⅩⅥ(タワー)

 

<ⅩⅦ(スター)

 

<ⅩⅧ(ザ・ムーン)

 

<ⅩⅨ太陽(サン)

 

<ⅩⅩ審判(ジャッジメント)

 

<ⅩⅩⅠ世界(ザ・ワールド)

 

<0──愚者(ザ・フール)

 

 

 

<Wild……Cards……>

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「……っあれ?」

 

 

 

 

 俺は、起き上がる。

 目を擦り、何も無かったかのように上半身を起こした。

 死んだ。

 確実に死んだのだ。

 だとすれば、此処は死後の世界に違いない──はずだった。

 ……また、あの場所だ……何でだよ? 俺、アカリに撃たれて……全部、夢?

 ……いや、そんなはずはない。

 目に入って来たのは、焼き尽くされた祠だった。

 全部、夢じゃない。

 慌てて周囲を見回す。

 アカリ──は居ない。居たら俺はもう1回殺されていてもおかしくない。

 

「……やっと、起きたでありますな、バカマスター……」

「っ……チョートッQ!?」

 

 声がして振り返った。

 そこには──相棒が肩で息をしながら浮かんでいた。

 

「アカリ殿が、我を見逃したのが、幸いだったでありますよ……!」

「何で……無事だったのか!」

「恐らく守護獣の我を殺すことで、皇帝(エンペラー)のカードの出力をリセットするのを嫌ったのでありましょう……!」

「じゃあ、エリアフォースカードは取り込まれたままってことか……」

 

 1枚でも恐ろしい力を持つエリアフォースカード。

 それを今、彼女は何枚も持っている。

 だけど、いまいち俺は状況が理解出来ていない。アカリはいきなり裏切り、そしていきなりエリアフォースカードを奪っていった。

 その理由は確か──アカリが神類種で、その身体の一部がエリアフォースカードの中に封じられているから……!

 

「信じられねえ……何で……!!」

「我も信じられないであります。彼女は恐らくこの時間旅行の間、ずっと我々を欺いていた。いや、下手をすれば……何年もの間、未来でレジスタンスたちを欺いていた可能性があるであります」

「未来の俺は何にも気付かなかったのかよ!!」

 

 思わず叫ぶ。

 マズい。このままでは、あいつらが──俺の仲間が危ない。

 

「とにかく生きてて助かったぜ! どうにかして幽世を出て、向こうに戻らないと──チョートッQ、一緒に此処を出る方法を考えるんだ、今までみたいに──」

「……」

「ダンダルダには変身できるか!? ムリならサンダイオーだ!! あの出力なら、此処をブチ破れるはずだ」

「……すまないであります、マスター」

「……? どうした、チョートッQ」

「……我は多分……一緒に行けないでありますよ」

 

 ……何言ってんだよ?

 撃たれたのは俺で、こいつは生きてて……。

 

「……何で……そんな事言うんだよ?」

「我、マスターが頼ってくれるの……すごく、嬉しかったであります……カッコよく戦わせてもらって……マスターの傍で戦うのが、誇りだったであります」

「……待てよ。そんな今生の別れみてーなことを何で言うんだよ」

「……だから、マスターにだけは生きていてほしかったのであります。マスターなら……生きていれば、必ずアカリ殿に勝てると……信じているから」

「……何で」

 

 分からねえ。  

 分からねえよ。

 何で今、そんなことを言うんだ?

 体の中が冷え込んでいく。

 これからって時に、こいつは──

 

「説明しろよッ!! 何でそんな事、言うんだよ!? お前はいっつも……いっつも一言多いくせに……何で……!! 二人共生きていた!! 後は、どうやって此処を出るか考えるだけ! んでもって、アカリをブン殴る!! 皆を助ける!!」

「……」

「もうワケ分かんねえよ!! アカリは裏切る!! 幽世には閉じ込められる!! お前はヘンな事を言い出す!! ヘンな事だらけで、もう、頭がおかしくなりそうだ!!」

「……マスター」

「俺達今までどんなピンチも乗り越えて来たじゃねえかよ!! だから今度も一緒に超える、それだけじゃねえかよ……!!」

 

 チョートッQは首を横に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……マスターは確かに死んだであります」

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 そんな、はずはない。

 今、俺の胸は確かに鼓動を刻んでいる。

 この身体には確かに熱が籠っている。

 ……待てよ。

 この鼓動は? 熱は?

 

 

 

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