学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR128話:灯神類─新世界秩序(2)

 ──思わず制服のブレザーを、そしてカッターシャツを脱ぎ捨てた。

 銃で穿たれたはずの俺の左胸は煌々と青い光を発していた。

 ぽっかりとこじ開けられたその穴を塞ぐかのように。

 

「……これしか、無かったのでありますよマスター」

「……これしかなかったって、どういうことだよ……!!」

「心臓を破裂させられたマスターは、そのままでは死ぬしかなかったであります。だから……失ったマスターの心機能を補うために、我が全ての魔力をマスターに移植したであります」

 

 移植……?

 全ての魔力って事は……こいつは、自分の力を全て俺に流し込んだって事か?

 

「アカリ殿にバレないようにやるのが難しかったでありますが……なんとか、成功したでありますな」

「っ……ふざけんな!! お前はどうなるんだ!! お前は──」

「……マスターが居ない守護獣は、デュエルも何も出来ない。そればかりか、アカリ殿がエリアフォースカードを支配下に置いた場合、我も何時アカリ殿に利用されるか分からないであります」

 

 チョートッQは、笑いながら俺の方へ近づいてくる。

 一歩、また一歩。

 おぼつかない足取りで。

 

「バカ野郎……何てことしやがんだよ……俺は……俺はまた一人で、戦わなきゃいけねえのかよ……!」

「1人ではない、でありますよ……我の力は、マスターの心臓に……こうして、共に闘えるなら……」

「ッ……」

「……この命は、最初から……マスターの……ために……だから……マスターの、仲間を……」

 

 がくり、と崩れ落ちるチョートッQ。

 

 

 

 

「……超超超・可及的、速やかに……」

 

 

 

 

 言葉は続かなかった。

 小さな守護獣は、そこで完全に消え去った。

 沈黙がその場に横たわる。

 

「……この戦いが終わっても、漠然と一緒に居るのかと思ってたけどよ……そんなわけ、ねえよな」

 

「……何で、こんなことになっちまったんだよ……こんなことなら、もっとお前に優しくしときゃよかった」

 

「俺、お前と冒険すんの……結構楽しかったんだぜ? 平穏とか平和とか大事とか言ってたけど……俺の日常ッて、何時の間にかお前ありきだったんだな」

 

 大事なものは、失った後で初めて分かる。

 

「……チョートッQ。俺が終わらせてやる。超超超・可及的速やかに──アカリをブッ飛ばす」

 

 ぐっ、と左胸を掴む。

 彼の全ての力が注ぎ込まれた心の臓の熱を確かめるかのように──

 

 

 

 

 

『うん、やっぱりその意気でありますよマスター!! 超超超可及的速やかに、アカリ殿をブッ飛ばしにいくでありますよ!! うむ!!』

 

 

 

 

 ……おい待てやコラ。

 俺は掴んだ胸から手をゆっくりと離す。

 そして耳を塞いだ。

 

『いやーしかし、人間の身体と言うのも悪くないでありますなー、うんうん』

 

 ゾッとした。

 消えたはずだったよな?

 消えたんだよなオマエ?

 何で頭ン中から声が聞こえてくるんだ。オイ。答えろ。

 

「……おいチョートッQ。説明しろ」

『いやー、だから先程説明した通りでありますよ。我は守護獣としての力を放棄し、クリーチャーとしての魔力全部をマスターに譲渡したのであります』

「それは聞いていた。それで? その次は?」

『その結果、我とマスターは文字通り一心同体になっちゃったと言うか……マスターは半分人間で半分がクリーチャーになったと言うのでありますか……』

「……で?」

『つまり今のマスターは半分が人間で半分が我というわけでありますな!!』

「ああああああああああああああ!!」

 

 俺は絶叫してその場に手を突く。

 台無しだ!! 全部台無し!! 

 返せ!! 俺の純情とか涙とか、その他諸々!!

 頼むから眠っててほしかったよ、思い出の中で永遠に!!

 

『それにしても、マスターがそこまで我にクソデカ感情を抱いていただなんて……いやー、照れるでありますなー、ぽっ』

「うっげぇぇぇぇ、オロロロロロロロ」

『ギャーッッッ!! 吐くのはやめるでありますよ!! この身体一応我も入ってるのであります!!』

「やめろ……やめてくれ……!! てっきりもう消えたもんかと……!!」

『我そんな事一言でも言ったでありますか?』

「言ってねえな、クソが!!」

 

 バカだった。

 マジで俺がバカだった。

 こいつ、この野郎にお涙を求めた俺がバカだったのだ。

 ……まあ、でも、よくよく考えたら消えるよりはましだったのかもしれない。

 でも俺の身体、また魔改造されてるんだよな!! 俺のあずかり知らぬ場所で、俺の許諾無く!!

 ジョギラゴン然りコイツ然り、俺の身体を何だと思ってるんだ!? 巣穴じゃねえんだよ!!

 

『まー、マスターの怒りもごもっとでありますなあ、まあでも将来はこういうボランティアとかどうでありましょう?』

「思考を読むな思考を!!」

 

 

 

『どうやら……死んだふりが上手いのは、私だけではなかったようですね』

 

 

 

 声が聞こえてくる。

 これは──ククリヒメ?

 てっきりあの時、アカリに撃たれて死んだもんかと思っていたが……。

 

「っ……ククリヒメ!! お前も無事だったのか!!」

『無事というわけではありませんが……肉体を破壊され、既に概念として幽世に留まっている状態。ゴブちゃん達もただのカードになってしまいました』

「……そうか、だけど良かったぜ……死んだわけじゃなくって。なあククリヒメ、お前はあのアカリについて何か分かる事はないか?」

『思い当たる節が無いわけではありません。未来を見通せなくとも、過去からの縁を辿れば……』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『……恐らく、かつて人間たちが開発していた人造の神類種でしょう。そして、アマツミカボシを封じたのは22枚のエリアフォースカードではなく……』

「神を殺すために作られた神であるアカリってことか……」

 

 坂田さんが言っていた神道のタブー。

 それは、人間がかつて神を降ろそうとしたことだと言っていた。

 だけど、それは実際は倒されたアマテラス神に代わる神を作り出すことだった。

 そうして作られたのが──アカリ。《灯神類アメノホアカリ》だ。

 

『神殺しの力は、本来殺せないものを殺す力。幽世という生と死の曖昧な場所でなければ、私もこうは喋れていなかったでしょうね……』

「俺の蘇生も、此処が幽世だから上手くいったってことか? ゾッとするぜ……」

『アカリ殿は、エリアフォースカードに封じられていた自身の力を求めていたであります。22枚のエリアフォースカードが封じたのは、アマツミカボシではなくアカリ殿だったのでは?』

「その可能性はあるな……エリアフォースカードに22分割して封じられた魔物ってのは……アカリの事だったのか」

『とかく。私は既に、存在を維持するので手一杯。この子達を守らねばなりません』

「大丈夫だ。ククリヒメには世話になったし……それに、結局お前が今まで守ってきたエリアフォースカード、守れなかった」

『気に病むことはありません。私に出来ることはもうありませんが……せめて、このカードを貴方に』

 

 その時だった。

 俺の手元に現れたのは──皇帝(エンペラー)のカードだった!

 

「なんで、皇帝(エンペラー)が!?」

『アメノホアカリが気付く前に隠しておいたのです。貴方の持つカードが2枚に分かたれているのは気付いていましたから』

「マジかよ!! 助かったぜククリヒメ!!」

「これなら、まだ対抗する目があるでありますな!」

 

 後は、幽世から脱出するだけだ。

 アカリが居ない今、どうやって出るかは分からない。

 だけど……此処まで来れば、もう足踏みしていられない。

 早く外の世界に出ないと──

 

 

 

 

「なぁーにぃ? これがもしかしてぇ、人類の最後のキボーってヤツゥ? ただのクソザコにしか見えないんだけどォ?」

 

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 俺たちは空に目を奪われていた。

 

 

 

 

 幽世に──穴が開いている。

 

 

 

 そこから──少女が降って、目の前に現れた。

 

 

 

 

「……くすすっ。なんか頼りないなぁー、ざーこざーこ♡」

 

 

 

 

 

 目を逸らしたくなるような露出度のボンテージで身を覆っている少女は、俺を見るなり小ばかにするように笑みを浮かべた。

 頭からは妙な形状の角が生えている。これ、どっかで見たような曲がり方だな……。

 それにしても、幽世から降ってくる辺り、どう見ても普通の人間の女の子ではないのは確実なのだが、妙に強さというものが感じられない。

 クリーチャー? それとも……神類種なのか?

 ともあれ出てくる感想はただ一つ。

 

「何だコイツ……」

 

 これである。

 さっきから色々起こり過ぎである。

 

『出てくるなり失礼な輩でありますな……!! 恐らく敵でありますよ!!』

「ざーこざーこ♡ あんたなんかが私に勝てると思ってんの?」

『オアーッ!! 今の我はマスターと一心同体! お前なんて一撃でありますよ!』

「やめろ!! 俺の身体なんだぞ!!」

『ッ……この空気は……』

 

 ククリヒメの声が震えている。

 幽世の壁を突き破り、突如として降臨した何者かを目の当たりにして。

 

「知ってるのか、ククリヒメ!?」

『私が間違うはずもありません……! この気配、この神力……アマツミカボシのものです……ッ!!』

「ッ……な!? アマツミカボシィ!?」

 

 何てことだ。

 俺が寝てる間に、あの悪神はとうとう目覚めてしまったというのだろうか。

 それにしてもなぜ、地上ではなく幽世にやってきたのだろう。

 あまりにも色々起こりすぎて理解が追い付かない。

 

『ミカボシィ? 何それダッさぁ♡ それって、あんた達が勝手に呼んでる名前でしょぉ? 私の()()()()は、もっとこう、ドキンドキン♡ でダムダム♡ なカッコいいスパダリ的な名前なんだけどぉ?』

『勝手に呼んでる、でありますか……?』

「どういうことだ?」

『まあ、脆弱ですぐ死んじゃうヨワヨワな人間たちには理解できないだろーけどね♡』

『……確かに、アマツミカボシは神話の神から、人間が取って付けた名前でしかありませんから……』

 

 ……そういえば、アマツミカボシは空からやって来たと聞く。

 つまり、元はただのクリーチャーだったってことだ。

 勿論、地球に住む俺達はそいつの名前を知る由もない。

 アマツミカボシが、ただ俺たちが呼んでいる名前だったとしたら?

 そいつの本当の名は──

 

『ねぇねぇ、それよりもさぁー、一つ良い?』

 

 キャハッ、と小悪魔のように笑う少女は──空を指差した。

 

 

 

 

 

『……()()、あんた達でどうにかならなーい?』

 

 

 

 

 

 

 

 あまりにも歪な何かが、少女を追いかけるようにして幽世の海へと降ってきた。

 悪魔の神と、聖霊の王。

 相反するはずの見覚えのあり過ぎる2体のクリーチャーが、繋ぎ合わされた異形。

 かといって、かつての融合獣のように融け合った姿ではない。

 まるで無理矢理混ぜ合わされたような、気味の悪さを感じる──

 

「アルファディオスと、ドルバロムの合体クリーチャー……!?」

『何でありますかアレェーッ!?』

『アレに追いかけられてきちゃって……てへっ♡』

「てへっ♡ じゃねーよ!! 何連れて来てんだテメーは!」

 

 アカリの次はコイツかよ!

 幽世にはバケモノしかやってこないのか。

 だけど、恐ろしい力を感じる。

 モモキングやジャオウガのようなキングマスターカード……それらと同格だ。

 

「あんな奴、斃せるのかよ……!?」

『あー、やっぱりどうにかならないんだぁ♡ ザーコザーコ♡』

 

 

 

 げんこつ。

 

 

 

 

「……オイこら。助けてほしいなら相応の言い方があるよな?」

『ひぐっ、ぐすんっ、うぇえ、ごめんなさい、助けてください……』

『今のマスターの拳骨は、我の力も乗ってるからクリーチャーにもフツーに効くでありますよ』

 

 やめてくれ。

 自分の身体が人外に近付いてるのって割と心に来るモンがあるんだぞ。

 

『……マスター。此処まで来たからには、もう立ち止まってられないでありましょう!』

「ああ。もう1枚の皇帝(エンペラー)が此処にはあるんだ! やってやろうじゃねえか!」

 

 聖霊と悪魔の連結された異形が飛び掛かる。

 それに向かって──俺は皇帝(エンペラー)のカードを翳した。

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