学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
ただの農民の生まれでした。
おとうとおかあは優しかったけど、いつも怖い人が家にやってきてました。
扉を蹴り破って、押し入って、お父さんとお母さんを虐めます。
大切な鍬や、農具を取り上げていきます。
いっつもひもじくて苦しかったです。
それなのに、おとうとおかあは、私にごはんをわけてくれました。
でも、おとうとおかあは、ひもじそうでした。
私がそれを言うと──お父さんとお母さんは、ある日私を都に使いに出しました。
知らない男の人が迎えに来て、そのまま私を大きな建物に連れていきました。
「ここではたらけば、お父さんとお母さんはひもじい思いをしなくてすむよ」
男の人は、そんなふうなことを言っていました。
※※※
痛い。痛い。苦しい。
昨日は、無理矢理首を押さえつけられてやられた。
そうした方が
気持ち悪い。
吐き気がする。
だけど、そんなそぶりを少しでも見せると、殴られた。
ああ、今日もまた買われるのだろうか。
私は可愛いといわれる。
ここで一番可愛いといわれる。
だけど──誰も私を助けてくれない。
前に出ていこうとした子がいた。
その子は首を落とされて転がされた。どこかに売られるらしい。首の無い子を使うスキモノがいるらしい。
だから、逃げるのはあきらめた。生きていれば、いつか帰れると思っていたからだ。
おとうとおかあがやってくるのをずっと待っていた。
今日は後ろだろうか。前だろうか。それとも口だろうか。
考えただけで寒気がする。
しかし、それを全て笑顔に押し込めた。
周りの女の子は、私の味方をしてくれない。
いつになったら、おとうとおかあのところに帰れるんだろう。
いつになったら、終わるんだろう。
いつになったら──いつになったら──いつに、なったら──
※※※
ある日。
客の一人が私を買っていった。
法外な価格を出したらしい。
この機会に逃げてやろうかと思ったけど。大きな牛車を前にしてそんな思考もうせてしまった。
この間も、逃げ出そうとした子が殺されたばかりだった。
何処に行くのかよく分からない。
だけど、此処でない場所ならばどこでも良い。
久方ぶりの外は、とても輝いているように見えた。
おとうとおかあに会えるのは、いつだろうか。頼めば、会わせてくれるだろうか。
「……は、はぁ、何であんさんみたいなのが此処に?」
「同じにされては彼らに申し訳ない。私たちはあまり大きい声では言えない身分なので。神を信じているのは……同じですがね?」
やっと、自由になれた気がした。
ようやく、終わった。待っていれば──終わるのだ。
※※※
何? 此処は?
部屋は全て目張りされていて出られない。
何日間もずっと、此処で閉じ込められている。
犯されるのはもう慣れたつもりだった。慰め物にされるのには飽きたくらいだった。
だけど、それに加えて、身体にも変な札を貼られている。
怖い。私は一体何をされるのだろう。
出してほしい。早く、出してほしい。
おとうと、おかあに、会わせ──
「──そんな目で見るんじゃあない。君はたまたま、器に適合していただけだ」
ずる、ずるずる、と何かが這うような音がした。
黒い泥のようなものが、部屋に入って来た。
「……受け入れたまえ。そして喜びたまえ。君は……神の依巫に選ばれたのだぞ」
「よ、り、ま、し……?」
腕に力が入らない。ろくなものを食べてない所為だ。しばらく不自由ない飲み食いになれていた所為だ。
からだに、力が、入らな──
「あっ、いや、やめて──入って、こない、で」
なにかが。
なにかが私の身体の中に入り込んで来る──
※※※
それから。しばらくしただろうか。
私の胎はみるみるうちに大きくなった。
腹の中に何かが入り込んでいる。
いや、それだけじゃない。まるで、別の生き物が、のたうちまわっている。
「あっ、ぐっ──」
腹が、膨れ上がる。
何かが、私になり替わろうとしている。
内側から、内側から私を──食い破ろうと、している。
「やめっ、やめてぇっ、しん、しんじゃうっ、しんじゃうからぁっ、いだいっ、いだ──」
※※※
──何だコレは。
……人のシガイが、転がっている。
これは、何だ?
妙な執着を覚えるコイツは、何だ?
何も覚えていない。
何も分からない。
私は一体、誰だ?
「……?」
……コイツの胎の中から産まれたのが私だ。
私は……誰だ?
「ああ!! ああ!! 清め給え、祓い給え──」
「……?」
首を垂れているこいつらは──何なんだ?
「ああ、我らが神よ!! 神に比類する者よ!! アメノホアカリ様!! 都で暴れる悪い神から、我らをお救いください!!」
神……?
「我らを照らす灯となれ!!」
……ああ。分かった。
分かったよ。
私が、何を成すべきなのかを。
もし、力を振るえば、私を必要としてくれるのだろうか?
「ねえ、頑張ったら……皆、アカリの事を認めてくれる? 褒めてくれる? 美味しいもの、たくさん食べさせてくれる?」
「は……ええ、ええ、勿論ですとも!!」
「いずれは我らのために、この腐敗した世を正すために力を振るってもらいますとも!!」
じゃあ、やろうっかなあ。
それで、私を、満たしてくれるなら。
※※※
三日三晩。やり合っただろうか。
アマツミカボシ──空からやって来た槍の神を喰らわんと掴みかかり。
最後は──どうなったかわからない。
空の向こうへと追いやっただけだ。
人間たちは、たくさんご飯をくれた。
たくさん褒めてくれた。
だけど。ごはんがマズかった。だから、腹が立って何匹か干からびさせてやった。
おもちゃがつまらなかった。だから、腹が立って何匹か頭を握り潰してやった。
皆、アカリの言う事を何でも聞いてくれた。
ある日。遠くの方から偉いお坊さんがやって来た。人を殺めてはいけないだのなんだのを言ってたから、
「どうして? 人間だって思い通りにならなかったら人を殺すじゃない。アカリは神なんだから、やって当然でしょう?」
神に楯突くなんて有り得ない。
その場で血を抜いてやった。
※※※
──ある日。
遊興だと言って、私は遠い島に連れてこられた。
遊び飽きたので、そろそろ帰ろうかという時に。
船は、そこにはなかった。
しばらくしたら迎えにきてくれるかと思って待っていた。
どれだけ待っても。
どれだけ待っても。
人間たちは──戻って来なかった。
会いたいなあ。会いたいなあ。
……誰に?
誰に会いたいんだろう、アカリは──
そうだ。アカリは神様だ。
空だって飛べるんだ。都に帰れば──いいじゃない。
「出せッ!! 出せッ!! 出せよォ!! アカリを、此処から、出せェ!!」
出られない。
出られない。
出られない!!
どうやっても此処から出られない!!
結界だ。あいつらが貼ったんだ!!
こんなもの、私が、破れない、はずはない、のにっ!!
「やめてっ、やめてやめてやめて!! アカリを!! 此処からっ、出してッ!!」
──脳裏に過る。
首を押さえつけられて、身体を犯し尽くされた日々が。
これは、誰だ?
「ッ……出して!! 出してよぉ!! アカリを、此処から、出せぇ!!」
──脳裏に過る。
穴倉に閉じ込められ、
そうか。そうか。アカリは──
だましたな
憎い 憎い 憎い
人間が憎い 私をボロ雑巾のようにこき使って、要らなくなったら捨てるのか!!
そんなこと、私が許さない
先ずは船を全て沈めてやった
誰だ? 誰なんだ? 私を裏切ったのは
捨てたのは、誰だ
「ひぇっ、ひぃっ助け──ぐぇっ」
「や、やめろっ、殺さないで、殺さないでくれぇ!!」
「熱い、暑い、あつ──」
「あっはははは!! いいよ!! いい!! そうやって、命乞いをしたヤツから惨めに引き裂いてやるから!!」
真っ赤だ。ずぅっと真っ赤。
まるでお日様みたいだ。
都も、人も、全部真っ赤。真っ赤真っ赤真っ赤。
「──あっははははははははははは!! こんな惨めで愚かな生き物、もう要らない!! アカリが、全部、作り変えてやる!!」
「──そこまでだよ」
声が聞こえた気がした。
また、人間──と思ったその時。
「え?」
いきなり、私の身体が──幾つも千切れ飛んだ。
そして、次々に何処かへと吸い込まれていく。
「対応できるはずはあるまい。これは貴様の知らない西洋の魔術だからな」
き、きいた、ことが、ある……!!
そんな奴が居る、みたいな話を……!!
ああああ!!
身体が!! 私の身体が!!
「あっ、ああっ、いだいっ、いだいぃっ!! ちぎれっ、いっ、ああああああ!!」
「人に仇名す神など、悪魔と何が違う? R.I.P.──貴様はこの中でずっと眠るのだ。永遠にな」
どこ? どこ? 私の腕は? 私の足は? 私の頭は? 目は? 鼻は? 口は?
痛い。痛いよ。痛い。熱い。
どこ……アカリの、身体は……!?
「……二度と戻らんぞ。人に仇名すモノであるならば、この命と引き換えにしてでも封じるのみ……!!」
※※※
「キ、キィ……」
水たまりに映った自分の姿を見て、死にたくなった。
こんなの虫けら同然じゃないか。
これがアカリの姿? こんな姿を人間に晒して、これから生きていくのか?
「コ、コロシテ、ヤル……ホロボシテ、ヤル、ニン、ゲン……!!」
きっと。きっとどれも同じだ。
あの妙なカードに封じられたのはどれもアカリ。
だからきっと、考えていることは同じだ。同じはずなんだ。
アカリを使い捨てて。アカリをあんなカードの中に閉じ込めた人間を──滅ぼしてやるって思いは……同じだ!!
「ナニガ、アッテモ、イツカ、ヒトツニ……!! ソシテ、アイツラモオナジメニ、アワセテ、ヤル……!!」