学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
「──アメノホアカリが行ったのは、
目の前を走る歪な生命体たち。
そこに人間たちの姿はない。
「今ある世界をブッ壊して、新しい世界を造ったってのかよ……!?」
「そーゆーこと」
「……じゃあ、皆は……?」
「……地上の生命体の全ては、新たな世界の生物……ディスペクターと、その眷属のディスタスの礎になった、ってカンジィ?」
俺はへたり込みそうになった。
そんな馬鹿な。
じゃあ、あいつらは?
ブランは? 花梨は? 火廣金は? 桑原先輩は? 黒鳥さんは?
刀堂の所の爺ちゃんや、ノゾム兄や、学校の皆は? 玲奈ちゃんは?
そして──紫月は?
今目の前走ってるのもディスタスね、と言ってるエッ子の説明もまともに耳に入らなかった。
「仮に逃れたとしてザコザコの人間は、この魔力濃度ではまともに生きることは出来ない。今のキミは、半分クリーチャーだから平気だろうけど」
「……あいつらが、あいつらが死ぬわけない。生きてる。絶対どっかで生きてるはずなんだ。だってあいつらには、守護獣が居るんだぜ?」
「あっそ。希望を持つのは勝手だけどさー、それをブチ砕かれた時に自分から死んだりしないでよ? 今のあたしには、人間君が必要なんだから」
無事なのだろうか。
あいつらのことだ。
上手くやってくれていればいいのだが……。
しかし、この状態では──地球の殆どの生き物は死滅したって言ってるようなもんじゃないか。
だってここは最早、俺の知る世界ではない。全く新しいクリーチャーの世界になってしまっている。
これを元に戻す事なんて、出来るのか……?
『さっき、エッ子ちゃん殿は言ってたでありますな?
「アレ? あー、アレは……アカリの持ってた宝の一つ。昔、あたしのご主人様はアレにやられたんだよねぇー……龍を支配する力を持つ珠」
忌々しそうにエッ子は言った。
『その力を解放した、でありますか……』
「そして、今度は……1000年前とは違う。完全にアメノホアカリはその力を熟知してた」
彼女は口惜しそうに空を睨む。
「……まさか、こんな事になるなんて……」
「よく言うぜ、元はと言やぁお前らが……」
「なぁにぃ? ザコザコが文句あんのー?」
「チッ……何でもねーよ。お前のご主人様の力でどうにか出来ねえのか?」
「無理だよー、そんなことも分かんないの? やれるならとっくにやってるってのー」
彼女は俯く。
「……だって、ご主人様はもう──」
「──ウッ、ァァ? アアアアアッ……!!」
その時だった。
呻くような音と共に。
目の前の大地が抉れた。
俺は咄嗟にエッ子を抱きかかえて飛びあがる──
「なっ、んだぁ!?」
「ひぃっ……! ディスペクターの王……!!」
「さっき倒したじゃねえかよ!!」
『さっきのは恐らくトークン……いや、劣化コピーのワイルドカードでありましょう! こいつが、本体であります!!』
砂煙が晴れる。
現れたのは──先程俺達を襲ったディスペクターの王・ドルファディロムだった。
改めて相対すると、見上げるほどに巨大だ。
もうこの星に俺の逃げ場はないと思わせる程に。
だけど、さっきと同じなら──そう思った矢先だった。
「……Fuck!! あーあ。まーた外したのデスかあ? 本当に使えないというか役立たずというかあ。全く以て救いようがないデスねぇ!!」
ひたひた、と足音が聞こえる。
聞き覚えのある声。
俺は思わず振り返る。
「……ブラン?」
思わず呼びかける。
キレイな長いブロンドに、青い瞳。
清廉な顔立ち。何処からどう見ても彼女だ。
俺の知る──ブランだ。
「よ、良かった……生き、て……?」
しかし。
喜ぶことは出来なかった。
その姿は、最早俺の知るものではなくなっている。
背中からは鳥のような翼が生えており、黒い祭服に身を包んでいる。
そして、最たるは──首回りのジッパー。
さっきのドルファディロムを思わせるそれを見て、俺の身体は冷え込んだ。
繋がれている。
ブランの頭だけが残っている。
「ところでYouは、魂の救済に興味はあるデス?」
そこから下は、俺の知らないパーツで構成された人型のバケモノだ。
「っ……ブラン?」
「生き残ってる人間とクリーチャーは残らず
次の瞬間、祭服の袖から鋭利な鎌が現れ、俺の胸目掛けて伸びた。
それをすかさず避ける。
今の──マジで殺すつもりでいったよな……?
醜悪に歪んだ顔。
そして、赤く光る片目。
俺の知っているブランの身体に、全く別の魂が入っているかのような──
「キャハッ」
「……?」
「キャッハハハ、救済! 救済救済救済ィィィ!! 魂は死んで救済されるのデス!! キャッハハハハ!! ドルファディロォォォム!!」
「ッ……何が、救済だよ! 俺が分かんねえのか! ブラン……!」
次の瞬間だった。
ドルファディロムが周囲のディスタスのクリーチャーを踏み潰していく。
「なっ……!?」
「死んで、救済なの、デェェェーッス!!」
そして。
ドルファディロムの魔力が一際強くなっていくのを感じる。
殺したクリーチャーの力を吸収したってのか。
『魔力反応臨界!! マスター!! こいつ、ここら一帯ごと消し飛ばすつもりでありますよ!!』
「ッ……!」
「救済の……ドルファディロム砲、デェェェェェェーッッッス!!」
周囲の空間が白く染め上げられていく。
そして、極太の黒い稲光が放たれた──
「──っは、ぁ、はぁ──!」
気が付けば。
周囲のクリーチャーも、そして火山も消し飛んでいた。
残っていたのは焦土のみ。
その中央に──ブランとドルファディロムが立っている。
し、死ぬところだった。
「ちょっとザコザコ!! ボーッとしてんじゃない!!」
「っ……わ、るい……」
エッ子だ。
こいつが引き上げてくれなければ死んでいた。
助けられたのか。
『そんな……ブラン殿が……!』
「あれぇ? まだ救済されていない魂が居るデスねぇ? 救済……救済、救済!!」
ブランとドルファディロムは、再び先程の極光を放つべくエネルギーを溜め始めている。
二度目は無い。
「じゃあ、此処で大人しく殺される? ザコザコ人間」
「……それは……!」
……ない。
有り得ない。
この命は、何の為に、誰に託された?
アカリを倒す為じゃないか。
だけど──アカリを倒しても、あいつらは戻ってくるのか?
「……考えろ、考えろ考えろ考えろ白銀耀……!! 俺は、俺は……!!」
『マスター!! しっかりするでありますよ!! しっかり……うう』
「ふーっ、ふぅーっ……!!」
泣きそうな声のチョートッQ。
過呼吸気味になりながらも。
目の前の光景から逃げたくなりたくも。
鳴り続ける左胸を必死に握り潰して、俺は叫ぶ。
弱気になっちゃダメだ。弱気になっちゃダメだ、ダメなんだ。
立ち向かわなきゃ……!!
「救済……何言ってやがんだテメエは……!」
「うーん? 理解出来ないのデス? 肉体に囚われる限り全ての命は罪に囚われていマース!! だから、その檻を破壊することで救済とするのデスよ!!」
「介錯なんて……まっぴらごめん被るぞ……迷探偵……!」
かつてのロードみたいなことを言いだした彼女を、俺は睨みつける。
「……お前が一番嫌いだったのが、そういう胡散臭い言葉だろーがよ……!! 思い出せよ……!! 目ェ覚まさせてやるぜ、ブラン!!」
「仕方ないデスねェ。なら、デュエルで救済してやるのデス!! 白銀耀!!」
<Wild……DrawⅣ……EMPEROR!!>
※※※
──ディスタス。
それはエッ子曰く、ディスペクターの供物であり、何時でもその命をディスペクターに捧げることの出来る種族。
この新たなる世界に於いて、覇権種族であるディスペクターに捕食されることで魔力を供給する、割れた存在。
欠けたその身体は、陶器のような部分で補われている。
「──救済の時間デスよ!! 《勇聖アールイ─2》を破壊し、ササゲール2!!」
故に。
その最期は儚い。
一瞬でガラスのように砕け散り、バラバラになった身体がディスペクター降臨のためのエネルギーとなる。
<ガイアール!! オルゼキア!! GotoDispect!!>
「──神速の太刀は魔刻の訪れを告げるデス!! 《魔帝連結ガイゼキアール》!!」
<We are Dispecter>
「ッ……!!」
現れたのは、《ガイアール・カイザー》の上半身と《魔刻の斬将オルゼキア》の下半身を持つ歪なる龍だった。
「EXライフ! 連結完了、ガッチャンコ、デェース! さあ、あの人間を救済するデスよ、《ガイゼキアール》!!」
「またまた新しいディスペクターであります!!」
「《ガイアール・カイザー》まで……!」
「先ず、破壊された《アールイ─2》は、手札からコスト4以下のクリーチャーを場に出す効果がありマス! 《神官フンヌ─2》をバトルゾーンへ!」
現れた《フンヌ─2》はスピードアタッカーだ。
既に、このターンで早速シールドを3枚削り取るつもりなのだろう。
「──まずは《ガイゼキアール》で攻撃する時、アタック・チャンス発動デース!」
「!」
「《聖魔王秘伝ロストパラダイスワルツ》!! その効果で自分のシールドを1つブレイクし、相手のシールドを1枚ブレイクしマース!! そして、私のシールドは──S・トリガーになりマース!!」
「はぁ!? S・トリガー化だと!? じゃあ、そのシールドは──」
「Yes!!」
ブランは凶悪な笑みを浮かべると、砕かれたシールドを迷うことなく場に出した。
「その穢れた肉体を滅ぼし、魂を浄化するデス!! 聖魔の連結、その目に焼き付けるが良い!!」
<
「──不徳の秩序で断罪デス!! 《聖魔連結王 ドルファディロム》デェース!!」
<You Scream”King”>
<We are Dispecter>
さっきと、同じだ。
正義と不徳が相食んで連結された歪なる王。
コイツの効果で、俺の場の単色クリーチャーが破壊されるだけではなく、単色呪文が唱えられなくなる。
幸い、クリーチャーは《栄光・ルピア》しか居なかったから無事だけど──呪文が禁止される。
そして今はまだ後攻4ターン目。こんなに早く出て良いクリーチャーではないのだ《ドルファディロム》は。
「さっきとは真逆!! 肉を切らせて骨を断つビートダウンのついでで《ドルファディロム》が……!!」
「《ドルファディロム》のEXライフ!! 連結完了……ガッチャンコ、デース!!」
シールドがさらに追加される。
これで6枚。あのアタックチャンス呪文で減ったのはチャラになってしまった。
「今度は相手のシールドが全てS・トリガーになってるでありますよ!」
「ディスペクターを引いたら、シールドが増える……!! しかも《ドルファディロム》が居る所為で、むやみに攻め込めない……!!」
かと言ってターンを渡せば、確実に負ける。
いや、それどころか──既にジャスキルまでの打点が揃ってしまっている。
神速の太刀が襲い掛かった。
シールドが砕かれ、破片がブレザーを裂いていく──
「バラバラ!! バラバラなのデスよ!! キャハッ、キャハハハハハハハッ!!」
完全に、怪物になっちまったのだろうか。
ただの洗脳だとかそういうのとは訳が違う。
今のアイツの中には、色んな何かが混ざり過ぎている。
それは皮肉にも、神力を身に着けたことで相手の力の本質が見極められるようになったからこそだった。
姿かたちこそアイツに違いない。
だけど──頭が、目の前のブランをブランだと認識することを許さない。
「マスター!! シールド!! シールドを見るであります!!」
「俺は、俺は……!!」
「マスターッ!!」
殺される。
今度こそ殺される。
分かっている。分かっているのだ。
だけど──バケモノになった仲間と相対した時。
その先に待っているのが殺すか殺されるか、と理解した時。
どうしてこんなに冷や汗が出るのだろう。
「最大出力のドルファディロム砲!! 消し飛ぶ、デェェェーッッッス!!」
『──白銀耀ッ!! しっかりせんかッ!!』
「ッ!!」
突如。
声が頭の中に響き渡った。
殴られたような衝撃と共に──砕かれたシールドが光り輝いた。
<G・ストライク──>
突如。
《ドルファディロム》と《フンヌ─2》の身体が硬直し──
『貴様はどうして戻って来たッ!! 言ってみよ!! 友の決意を無碍にして志半ばで散る事こそが、本当の不徳であろうがッ!!』
<──
「サッヴァーク……!?」
──煌めく正義の龍が、俺の前を立ち塞ぐようにして降り立っていた。