学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR134話:アルカディアス・モモキング

「サッヴァーク……!?」

 

 

 

 信じられなかった。

 真っ暗だった目の前に一筋の光明が差したかのようだった。

 いや、文字通り光だったと言ってもいいだろう。

 

「何でお前が、ここに……!」

「話は後じゃ。あやつに……探偵に勝たないことには始まらん!!」

 

 サッヴァークは俺を睨みつけている。

 決意が揺れた俺を激しく叱責するかのように。

 

「ッ……」

 

 戦いたくない。

 傷つけたくない。

 しかし。勝たなければ、殺されるのは俺だ。

 そうなったら──

 

 

 

「ああ……ああああああああああああああああああああああああああーッッッ!!」

 

 

 

 《モモキングRX》が飛び出し、そして《モモキングNEX》へと重ねられていく。

 湧いてくるのは怒りだった。

 零れてくるのは涙だった。

 慟哭が──俺の身体を震い立たせていた。

 

「《NEX》で《ガイゼキアール》を攻撃する時、効果発動……山札の上から《ボルシャック・モモキングNEX》を出して、更に重ねて進化する」

「なっ!? 2枚目デス!?」

「──効果発動。登場時に《ボルシャック・決闘(デュエル)・ドラゴン》をバトルゾーンへ……効果で《ドルファディロム》をマナゾーンに飛ばす」

「ギッ、EXライフ発動デース!! 多色以外を全て破壊しマース!!」

 

 破壊されるのは一番上の《モモキングNEX》だけ。まだ鎧は残っている。

 エンジンの壊れた車のように、吼えながら《NEX》は軽蔑者たちを殲滅していく。

 進まねば。

 進まねば。

 進まねばッ!!

 

「ぐっ、《ドルファディロム》の効果が通用してないデース!?」

「さらに《決闘(デュエル)・ドラゴン》の効果で、マナゾーンの枚数以下のコストを持つ《ボルシャック・大和・ドラゴン》をバトルゾーンに出す。そのまま《ガイゼキアール》も攻撃して破壊──」

「EXライフ発動……デース!!」

「そして、《ガイゼキアール》に攻撃する時、更に《モモキングNEX》効果を発動……そして、進化」

 

 山札の上──捲れたのは、先程の戦いで回収した《ドルファディロム》だった。

 しかし。

 そのカードは激しく光り輝き──

 

 

 

 

「これが俺の閃光の切札(ザ・スパーク・ワイルド)……《アルカディアス・モモキング》!!」

 

 

 

 

 ──侮蔑された天聖王の怒りの発露の如く、顕現したのだった。

 

「アカリ──俺はお前を許さない」

 

 この場には居ない、ヤツに俺は告げた。

 

 熱いものが頬を伝っていく。

 

 ぽた。ぽた、と手に落ちたそれは──赤黒かった。

 

 

 

 

「俺の手を取ってくれたお前が……俺にとって、どれだけの希望だったか分かるか?」

 

 

 

 

 

 何もかも奪われた俺の前に、お前が現れた。だけど、結局……皆俺の前から居なくなった。

 

 

 

 何で一度俺に取り戻させた。二度も、二度もだ。こんな苦しみを味わうなら……あの時、死んでいればよかった。

 

 

 

 

「返せよ。俺の仲間を──俺の大事なモノを、返せよアカリーッッッ!!」

 

 

 

 炎を纏った《NEX》の拳がジッパーで連結された聖魔の王を打ち砕く。

 これで、2体のディスペクターは完全に粉砕されることなった。

 そしてシールドのカードがS・トリガー化されているならば、これ以上攻撃する理由はない。

 

「な、なぜ? 《ドルファディロム》はパワーでは負けてなかったはずデス……!! あの進化体──《アルカディアス・モモキング》がパワーを底上げしたのデスか!? なら、呪文破壊するまでデスよ!! 呪文、《襲来!!鬼札王国》──」

「使えねえよ」

「ッ……!?」

「使わせねえよーッッッ!!」

 

 呪文は唱えられることすらなく、そのまま封じられる。

 連結王の口は、完全にふさがれた。

 もう、何も言わせない。

 その口から、穢れた言葉は紡がせない。

 

「その身体でもう喋るな。その身体は……俺の仲間のモンだ」

「~~~-ッ!? 呪文が……!!」

「《アルカディアス》の前では、光以外の呪文は使えない! ……光使いのお前なら分かるだろ? それとも……強いクリーチャーの上っ面だけ無理矢理繋ぎ合わせたから、そいつが元々どんな効果持ってたのかも知らねえんだろ連結王!!」

「ッ……!」

「探偵ならばこう言うじゃろう。”見るべきものを見ないから、本当に大切なものを見落とす”のだと。その肉体にはやはり、真実を探求する情熱も無ければ、あの純真な魂も宿っておらぬ」

「それなら《フンヌ─2》を破壊してササゲール!! 《熱核連結ガイアトム・シックス》を召喚デス!!」

 

 

 

 

<ガイギンガ!! アトム!! GotoDispect!!>

 

<We are Dispecter>

 

 

 

 

「ッ……!? 《ガイアトム・シックス》が……!?」

 

 歪に繋げられた冷血のディスペクターは、立ち上がることすらなく跪いていた。

 《アルカディアス・モモキング》の聖域が、既に展開されている。

 

「そしてこれが《アルカディアス・モモキング》の力。そのターンに最初に出てくる相手のクリーチャーはタップして出る」

「ぐぅ! それならせめて!! 《ガイアトム・シックス》の効果発動! 《NEX》を破壊デス!!」

 

 残るのは《RX》と《アルカディアス・モモキング》と《決闘・ドラゴン》、そして《栄光・ルピア》。

 もう、進むしかない。

 《RX》に《ボルシャック・ドギラゴン》が重ねられる。

 

「──《ボルシャック・ドギラゴン》で《ガイアトム・シックス》を攻撃する!!」

「でも!! 《ガイアトム・シックス》はEXライフで離れないデース! さらにEXライフの連結が解除された時、《栄光・ルピア》を破壊し、択ばれた《ガイアトム》で相手の手札を破壊して──」

「それがどうした?」

 

  

 

 

 今更もう失うモノなんて何にもねぇんだよ。

 

 

 

「《ボルシャック・ドギラゴン》はシンカパワーでアンタップする──ッ!!」

 

 

 

 次々にシールドへ雪崩れ込んでいくドラゴン達。

 S・トリガーも、G・ストライクも、連結王を救済することはしなかった。

 《アルカディアス・モモキング》の剣に雷光が溜められていく。

 

 

 

 

「《アルカディアス・モモキング》で──ダイレクトアタック!!」

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

「──あ、ぎ、あ……!?」

 

 

 

 極光が迸ったその後には。

 連結王が斃れていた。

 消滅する聖魔連結王、そして──ブラン。

 

「ブランッ!! ブラン!!」

 

 何度も、何度も揺すり起こす。

 しかし。連結王は──虚ろな目でこちらを見るばかりだった。

 もしも彼女が何か悪い力に囚われているのならば。

 これで、解かれるはずだ。

 これで、終わるはずだ。

 しかし。

 

「っあ、救済……なぜ、救済を拒絶するの、デス……?」

 

 連結王は、譫言のように呟くばかりだった。

 

「ブラン、しっかりしろよ……」

「探偵!! ワシが、分からんのか!!」

 

 

 

「呪いあれ!!」

 

 

 

 その指が俺の喉目掛けて伸びた。

 しかし。

 それは──すんでのところで止まった。

 そして、連結王は壊れたオルゴールのように紡ぎ続けていた。

 

 

 

「呪いあれ……アカリ様の新世界を穢すモノに……呪い、あれ……!!」

 

 

 

 

 力尽きるまで、その呪いの文言を──

 

「……ウソだろ」

 

 動かなくなった連結王を──ブランの姿をした彼女を抱きかかえる。

 

「何で……」

「……ぐっ」

「何とか、何とか言えよサッヴァーク!! テメェがくたばった時に誰が一番泣いた!! 誰が一番……苦しんだと思ってやがる!! テメェのマスターは……」

「これしか、手立てがなかったのだッ!!」

 

 サッヴァークの怒号が響く。

 

「混ざりあって真っ黒になった絵具を……どうやって元に戻すか、分かるか……?」

『……サッヴァーク殿……?』

「なんで……なんで、こんなことに……!!」

 

 灰になって消えていく彼女を横目に、サッヴァークは苦々しく言った。

 

「……アメノホアカリは……全ての世界にあるものを崩壊させ、再構成した。我らはエリアフォースカードの支配からリンクを断ち切ることで逃れたが、人間である探偵たちは……」

「ふっざけんじゃねえぞ!! それを守るのが、テメェら守護獣じゃねえのか!! あいつらがどんな思いで戦ってたのか分かってんのか!! それを仕方ねえで済ませて堪るか!!」

「ッ……ワシらとて!! 黙って指を咥えていたわけではない!!」

 

 実体化した彼が襟首を掴む。

 ギン、と宝石のような目が俺を睨みつけていた。

 

「ありとあらゆる手を尽くしても……バラバラになって、あの宝玉に吸い上げられた人間をどうにかする手立てなど……なかったのだ……」

「龍魂珠……!」

「あたしのご主人様も、それにやられた!! 吸い込まれて、二度と戻って来なかった……」

 

 それに皆は──あの異形に混ぜ合わされたってのか!?

 

「それこそがヤツの……あの神類種の策略だと理解したのだ……あやつは、ワシらを絶望させて諦めさせるために、わざわざこのような手の込んだ真似をしたのだろう」

「っ……」

『仲間を何よりも重んじるマスター。そして、主を重んじる守護獣。それらを同時に絶望させる術……守るべきものを、あの姿で出すことだというのでありますか……!?』

「……うむ」

 

 そんなの、どうすれば良いんだ。

 もうこの世界には──俺の守りたかったものなんて、何ひとつ残ってないってことじゃないか──!!

 

「それを分かってて!! 俺に介錯紛いの事をさせたってのかよ……サッヴァーク!!」

「ッ……どうしようも、なかった……!!」

「どうしようも、なかった!? テメェがそれを言うのかよ!! あいつが……あいつがぁ、どれだけ、お前の事を……!!」

 

 

 

 

 

 

「……見つけたのです」

 

 

 

 

 冷徹な声が響き渡る。

 振り返るとそこには──ローブ姿の少女が立っていた。

 

 

 

 そして。

 その背後には──無数の首を持つ異形が佇んでいた。

 継ぎ接ぎに縫い合わされた悪意の塊。

 それを従える少女。

 それを前にして、俺も、チョートッQも、サッヴァークも言葉を失うしかなかった。

 

 

 

 

「紫月……?」

 

 

 

 

「……? ふふっ、誰の事か存じませんが……」

 

 

 

 

 

 

「──()()()は縫合王」

 

 

 

 

 紫。そして──翠。

 

 

 

 

「……おい待てよ、翠月さん……か……?」

『マスター……あの異形……!!』

 

 

 

 ローブの下の身体は、何処か歪だ。

 

 

 

 女の身体には違いない。

 だが、左半分は豊かな女性らしいもので。

 そして右半分は華奢な少女のようなものだ。

 そして、全く同じのようで──何処か異なる2つの違う顔が繋ぎ合わされている。

 

 

 左半分は、深淵を覗き込むかのように冷たい瞳。

 

 

 右半分は、慈悲や慈愛で覆い隠した、残忍さを秘めた猟奇的な瞳。

 

 

 

 ゾッ、とした。

 

 

 

 その意味を理解した時。

 

 

 

 彼女達がどのようにして混ぜられたのか理解した時。

 

 

 

 俺の中で──何かが爆ぜた。

 

 

 

 

 

「なんで、だよ……なんでぇぇぇーっっっ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 ──夜空と、暗い海に浮かぶ半分の月。

 

 

 

 

 それは、悪意の糸で繋ぎ合わされていた──もう、2つは離れることはない。永遠に一つ。

 

 

 

 

「シロガネアカル……随分と不細工な顔で私たちを見るのね……? その造形、キライだわ」

「……彼からは絶望のニオイがします。深く、煎りこんだ絶望の……味がするでしょう」

「ならやるべきことは一つ」

「本能のままに」

 

 

 

 

「──私たち縫合王の手で、喰らい尽くすとしましょう」

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