学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
「サッヴァーク……!?」
信じられなかった。
真っ暗だった目の前に一筋の光明が差したかのようだった。
いや、文字通り光だったと言ってもいいだろう。
「何でお前が、ここに……!」
「話は後じゃ。あやつに……探偵に勝たないことには始まらん!!」
サッヴァークは俺を睨みつけている。
決意が揺れた俺を激しく叱責するかのように。
「ッ……」
戦いたくない。
傷つけたくない。
しかし。勝たなければ、殺されるのは俺だ。
そうなったら──
「ああ……ああああああああああああああああああああああああああーッッッ!!」
《モモキングRX》が飛び出し、そして《モモキングNEX》へと重ねられていく。
湧いてくるのは怒りだった。
零れてくるのは涙だった。
慟哭が──俺の身体を震い立たせていた。
「《NEX》で《ガイゼキアール》を攻撃する時、効果発動……山札の上から《ボルシャック・モモキングNEX》を出して、更に重ねて進化する」
「なっ!? 2枚目デス!?」
「──効果発動。登場時に《ボルシャック・
「ギッ、EXライフ発動デース!! 多色以外を全て破壊しマース!!」
破壊されるのは一番上の《モモキングNEX》だけ。まだ鎧は残っている。
エンジンの壊れた車のように、吼えながら《NEX》は軽蔑者たちを殲滅していく。
進まねば。
進まねば。
進まねばッ!!
「ぐっ、《ドルファディロム》の効果が通用してないデース!?」
「さらに《
「EXライフ発動……デース!!」
「そして、《ガイゼキアール》に攻撃する時、更に《モモキングNEX》効果を発動……そして、進化」
山札の上──捲れたのは、先程の戦いで回収した《ドルファディロム》だった。
しかし。
そのカードは激しく光り輝き──
「これが俺の
──侮蔑された天聖王の怒りの発露の如く、顕現したのだった。
「アカリ──俺はお前を許さない」
この場には居ない、ヤツに俺は告げた。
熱いものが頬を伝っていく。
ぽた。ぽた、と手に落ちたそれは──赤黒かった。
「俺の手を取ってくれたお前が……俺にとって、どれだけの希望だったか分かるか?」
何もかも奪われた俺の前に、お前が現れた。だけど、結局……皆俺の前から居なくなった。
何で一度俺に取り戻させた。二度も、二度もだ。こんな苦しみを味わうなら……あの時、死んでいればよかった。
「返せよ。俺の仲間を──俺の大事なモノを、返せよアカリーッッッ!!」
炎を纏った《NEX》の拳がジッパーで連結された聖魔の王を打ち砕く。
これで、2体のディスペクターは完全に粉砕されることなった。
そしてシールドのカードがS・トリガー化されているならば、これ以上攻撃する理由はない。
「な、なぜ? 《ドルファディロム》はパワーでは負けてなかったはずデス……!! あの進化体──《アルカディアス・モモキング》がパワーを底上げしたのデスか!? なら、呪文破壊するまでデスよ!! 呪文、《襲来!!鬼札王国》──」
「使えねえよ」
「ッ……!?」
「使わせねえよーッッッ!!」
呪文は唱えられることすらなく、そのまま封じられる。
連結王の口は、完全にふさがれた。
もう、何も言わせない。
その口から、穢れた言葉は紡がせない。
「その身体でもう喋るな。その身体は……俺の仲間のモンだ」
「~~~-ッ!? 呪文が……!!」
「《アルカディアス》の前では、光以外の呪文は使えない! ……光使いのお前なら分かるだろ? それとも……強いクリーチャーの上っ面だけ無理矢理繋ぎ合わせたから、そいつが元々どんな効果持ってたのかも知らねえんだろ連結王!!」
「ッ……!」
「探偵ならばこう言うじゃろう。”見るべきものを見ないから、本当に大切なものを見落とす”のだと。その肉体にはやはり、真実を探求する情熱も無ければ、あの純真な魂も宿っておらぬ」
「それなら《フンヌ─2》を破壊してササゲール!! 《熱核連結ガイアトム・シックス》を召喚デス!!」
<ガイギンガ!! アトム!! GotoDispect!!>
<We are Dispecter>
「ッ……!? 《ガイアトム・シックス》が……!?」
歪に繋げられた冷血のディスペクターは、立ち上がることすらなく跪いていた。
《アルカディアス・モモキング》の聖域が、既に展開されている。
「そしてこれが《アルカディアス・モモキング》の力。そのターンに最初に出てくる相手のクリーチャーはタップして出る」
「ぐぅ! それならせめて!! 《ガイアトム・シックス》の効果発動! 《NEX》を破壊デス!!」
残るのは《RX》と《アルカディアス・モモキング》と《決闘・ドラゴン》、そして《栄光・ルピア》。
もう、進むしかない。
《RX》に《ボルシャック・ドギラゴン》が重ねられる。
「──《ボルシャック・ドギラゴン》で《ガイアトム・シックス》を攻撃する!!」
「でも!! 《ガイアトム・シックス》はEXライフで離れないデース! さらにEXライフの連結が解除された時、《栄光・ルピア》を破壊し、択ばれた《ガイアトム》で相手の手札を破壊して──」
「それがどうした?」
今更もう失うモノなんて何にもねぇんだよ。
「《ボルシャック・ドギラゴン》はシンカパワーでアンタップする──ッ!!」
次々にシールドへ雪崩れ込んでいくドラゴン達。
S・トリガーも、G・ストライクも、連結王を救済することはしなかった。
《アルカディアス・モモキング》の剣に雷光が溜められていく。
「《アルカディアス・モモキング》で──ダイレクトアタック!!」
※※※
「──あ、ぎ、あ……!?」
極光が迸ったその後には。
連結王が斃れていた。
消滅する聖魔連結王、そして──ブラン。
「ブランッ!! ブラン!!」
何度も、何度も揺すり起こす。
しかし。連結王は──虚ろな目でこちらを見るばかりだった。
もしも彼女が何か悪い力に囚われているのならば。
これで、解かれるはずだ。
これで、終わるはずだ。
しかし。
「っあ、救済……なぜ、救済を拒絶するの、デス……?」
連結王は、譫言のように呟くばかりだった。
「ブラン、しっかりしろよ……」
「探偵!! ワシが、分からんのか!!」
「呪いあれ!!」
その指が俺の喉目掛けて伸びた。
しかし。
それは──すんでのところで止まった。
そして、連結王は壊れたオルゴールのように紡ぎ続けていた。
「呪いあれ……アカリ様の新世界を穢すモノに……呪い、あれ……!!」
力尽きるまで、その呪いの文言を──
「……ウソだろ」
動かなくなった連結王を──ブランの姿をした彼女を抱きかかえる。
「何で……」
「……ぐっ」
「何とか、何とか言えよサッヴァーク!! テメェがくたばった時に誰が一番泣いた!! 誰が一番……苦しんだと思ってやがる!! テメェのマスターは……」
「これしか、手立てがなかったのだッ!!」
サッヴァークの怒号が響く。
「混ざりあって真っ黒になった絵具を……どうやって元に戻すか、分かるか……?」
『……サッヴァーク殿……?』
「なんで……なんで、こんなことに……!!」
灰になって消えていく彼女を横目に、サッヴァークは苦々しく言った。
「……アメノホアカリは……全ての世界にあるものを崩壊させ、再構成した。我らはエリアフォースカードの支配からリンクを断ち切ることで逃れたが、人間である探偵たちは……」
「ふっざけんじゃねえぞ!! それを守るのが、テメェら守護獣じゃねえのか!! あいつらがどんな思いで戦ってたのか分かってんのか!! それを仕方ねえで済ませて堪るか!!」
「ッ……ワシらとて!! 黙って指を咥えていたわけではない!!」
実体化した彼が襟首を掴む。
ギン、と宝石のような目が俺を睨みつけていた。
「ありとあらゆる手を尽くしても……バラバラになって、あの宝玉に吸い上げられた人間をどうにかする手立てなど……なかったのだ……」
「龍魂珠……!」
「あたしのご主人様も、それにやられた!! 吸い込まれて、二度と戻って来なかった……」
それに皆は──あの異形に混ぜ合わされたってのか!?
「それこそがヤツの……あの神類種の策略だと理解したのだ……あやつは、ワシらを絶望させて諦めさせるために、わざわざこのような手の込んだ真似をしたのだろう」
「っ……」
『仲間を何よりも重んじるマスター。そして、主を重んじる守護獣。それらを同時に絶望させる術……守るべきものを、あの姿で出すことだというのでありますか……!?』
「……うむ」
そんなの、どうすれば良いんだ。
もうこの世界には──俺の守りたかったものなんて、何ひとつ残ってないってことじゃないか──!!
「それを分かってて!! 俺に介錯紛いの事をさせたってのかよ……サッヴァーク!!」
「ッ……どうしようも、なかった……!!」
「どうしようも、なかった!? テメェがそれを言うのかよ!! あいつが……あいつがぁ、どれだけ、お前の事を……!!」
「……見つけたのです」
冷徹な声が響き渡る。
振り返るとそこには──ローブ姿の少女が立っていた。
そして。
その背後には──無数の首を持つ異形が佇んでいた。
継ぎ接ぎに縫い合わされた悪意の塊。
それを従える少女。
それを前にして、俺も、チョートッQも、サッヴァークも言葉を失うしかなかった。
「紫月……?」
「……? ふふっ、誰の事か存じませんが……」
「──
紫。そして──翠。
「……おい待てよ、翠月さん……か……?」
『マスター……あの異形……!!』
ローブの下の身体は、何処か歪だ。
女の身体には違いない。
だが、左半分は豊かな女性らしいもので。
そして右半分は華奢な少女のようなものだ。
そして、全く同じのようで──何処か異なる2つの違う顔が繋ぎ合わされている。
左半分は、深淵を覗き込むかのように冷たい瞳。
右半分は、慈悲や慈愛で覆い隠した、残忍さを秘めた猟奇的な瞳。
ゾッ、とした。
その意味を理解した時。
彼女達がどのようにして混ぜられたのか理解した時。
俺の中で──何かが爆ぜた。
「なんで、だよ……なんでぇぇぇーっっっ!!」
※※※
──夜空と、暗い海に浮かぶ半分の月。
それは、悪意の糸で繋ぎ合わされていた──もう、2つは離れることはない。永遠に一つ。
「シロガネアカル……随分と不細工な顔で私たちを見るのね……? その造形、キライだわ」
「……彼からは絶望のニオイがします。深く、煎りこんだ絶望の……味がするでしょう」
「ならやるべきことは一つ」
「本能のままに」
「──私たち縫合王の手で、喰らい尽くすとしましょう」