学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR135話:感ジョーカーズ

 ウソだ。

 あんなの、元に戻せるわけないだろう。

 何で、人と人が、半分に割れて、縫い合わされてるんだ。

 それで何で生きてるんだ。

 

 

 

 ──その時点でもう、人間じゃないじゃないか。

 

 

 

「ッ……紫月……翠月さん……」

 

 

 

 俺は立ち尽くすことしか出来なかった。

 

 

 最早、怒りも湧かなかった。

 

 

 涙もとっくに乾いていた。

 

 

 

 

「くっすす、不細工な顔ね……目障りだから跡形も無く喰らって、邪帝縫合王」

「どうやら勝手に自滅してくれたようです。これで……GGです。邪帝縫合王ッ!!」

 

 

 

<……試してないループデッキがあるんです。帰ってきたら、その実験台に>

 

 

 

 なんだよ、あんなに生意気に言ってたじゃねえかよ、紫月。

 

 

 どうして、こうなっちまったんだよ。

 

 

 

 俺が分からないのか? 俺の顔も、俺の声も、思い出も、全部忘れちまったのか?

 

 

 

「なあ、紫月……? 初めて、会った時──」

 

 

 

 

 

 

「ギッシャアアアアアアアアアアアーッッッ!!」

 

 

 

 

『マスター!!』

 

 

 

 力が、出ない。

 

 

 

 多頭の怪物を前に、サッヴァークも、手も足も出ない。

 

 

 俺も、成す術なく転がされているだけだ。

 

 

 

 でも、もう、何もかもがどうでも良かった。

 

 

 

 

 ……そうだ。

 

 

 

 

 どうでも、いいや。もう、どうなったって──

 

 

 

「……まだ、くたばってないんですか?」

 

 

 

 ああ、笑うな。その顔で。

 

 

 ああ、喋るな。その顔で。

 

 

 

 その姿で、俺に近付くな。

 

 

 

 近付くな──ッ!!

 

 

 

 

 

「あああああああああああああああああああああああああーッッッ!!」

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「あっ、がっ、あたしの力が……!? 吸収されてェッ!?」

 

 

 

 

 

 

「ひひっ、あははっ」

 

 

 

 耀の口から笑い声が漏れていた。

 その異様な光景を、サッヴァークは固唾を飲んでみていることしかできなかった。

 

 

「白銀……耀……?」

 

 

 

 何故ならば、近付けば自分も飲み込まれてしまいそうな勢いだったからだ。

 

 

 

「やめてよ、ザコザコ!! 謝るからぁっ、今までの事は、謝るからぁぁぁぁ」

 

 

 

「何が、どうなっておる……?」

 

 

 

 

 エッ子の身体は──モモキングに取り込まれつつあった。

 

 

 

 元々がドキンダムの力を持つ彼女の身体を飲み込めば、クリーチャーがどうなるかなど──明白だった。

 

 

 

「愉快だ。今日は、楽しい。こんなに、嬉しい気持ちが、溢れてくるなんて」

 

 

 

「あっは、はははははは」

 

 

 

 

 

「はっぴーっ!! はっぴーっ!!」

 

 

 

 一つの枷が外れる。

 

 

 

 失った、もう戻らないもの。

 

 

 暴走する狂喜によって。

 

 

 

「なんだよ、お前ら……今日は、デュエマ部の活動、ちゃんとやるって言ったろ……?」

 

 

 

 

「ウオラァァァァーッ!! どっせいやぁぁぁーっ!!」

 

 

 

 一つの枷が外れる。

 

 

 失った、もう戻らないもの。

 

 

 果てなき憤怒によって。

 

 

 

 

「おい、何処行くんだよ……ブラン、言ったろ……? 生徒会を、脅したらダメだってよ、ひひっ、あははっ」

 

 

 

「ぴえんぱおおおおおおん」

 

 

 

 一つの枷が外れる。

 

 

 失った、もう戻らないもの。

 

 

 底なしの悲哀によって。

 

 

 

「さびび、さびびびん」

 

 

 

 

「なあ、火廣金……駄目じゃねえか、シンナー使う時は換気しろってさ、ひひ、はは」

 

 

 

 一つの枷が外れる。

 

 

 失った、もう戻らないもの。

 

 

 静寂を拒む心によって。

 

 

 

 

 

「なあ、何処行った? 紫月……? 皆……?」

 

 

 

 

 周囲に舞うジョーカーズ達。

 

 

 

 それは、白銀耀の滅茶苦茶になった感情に呼応して呼び出されたものだった。

 

 

 

 混ざりあった絵具はドス黒く染まり、もう元に戻らない。

 

 

 

 深く、深く心の深層にまで達した絶望が──世界を滅ぼす星の神の力とリンクし、禁断解放した。

 

 

 

 

「あっ、あたしの、身体がぁぁぁぁーっ!?」

 

 

 

 

 エッ子の身体全てを吸収した《モモキング》の身体は──黒く染まっていく。

 

 

 

 

 

「そうか、皆──()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時。

 全てがはじけ飛んだ。

 

 

 

 周囲には槍が降り注ぎ、突き刺さった場所から禁忌の力が溢れて汚泥となって穢れていく。

 

 

 

 爆心地の中央には──禁断の切札が、星の神となって顕現していた。

 

 

「あれは……禁断の力です……ッ!?」

「マズい、匂いが……滅ぼさなければ!! アカリ様が、怒る……!!」

「邪帝縫合王──ああっ!?」

 

 

 

 槍は多頭の怪物の全ての首を刺し貫き、そのもう一つの命も諸共に滅ぼした。

 

 

 全てを汚染する禁断の槍は理屈も理論も全て飛び越えて破壊する。

 

 

 

 

「ま、まさかっ!? この世界を、この星諸共滅ぼすつもりか、こやつはァッ!?」

皇帝(エンペラー)の力が、マスターの感情に呼応してーッ!? マスター!! マスタァァァーッ!!』

 

 

 

 槍は、邪帝縫合王を一瞬で滅殺した。

 

 

 

 そして、その場を取り囲んでいた無数のディスペクター達も、割れたディスタスも、全て滅ぼした。

 

 

 

 

 白銀耀を爆心地として、日本だった島国を──何も残らない灰へと還した。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あ、いや、いやだ……こんな、爛れた、顔で」

「私達の、身体が、顔が……!!」

 

 

 

 ケロイドのように焼けた顔でのたうち回る縫合王。

 

 しかし、その身体を禁断の文字が蝕んでいく。

 

 

 

 その命が尽き果てるのも時間の問題だった。

 

 

 

 

 

 

 

「いひっ、あはっ、あははは」

 

 

 

 

 それを見ることもせず。

 

 

 白銀耀は笑っていた。

 

 

 もうそこにはない思い出を見ながら。

 

 

 

 そうそこにはない仲間を見ながら。

 

 

 

 

「オイどうしたんだよ、そのデッキ……俺、そんなもん握られたら勝てねえじゃねえか、なあ?」

 

 

 

『マスター!! マスター!! しっかり、するであります!!』

「ッ……こんな、ことが……」

 

 

 

 守護獣達の声も、もう届かない。

 

 

 

「あっははは、どうしたんだよ、ブラン、紫月……? 今から、部活だぞ……? なあ?」

『しっかりするでありますよ! マスター! そっちには、誰も居ないであります!』

「いかん……気が触れてしまった……!!」

『バカ言うなでありますよ! こ、こんなことで……こんなところで、皆の無念を晴らさないわけには……!』

「元より、人の子には大きすぎたのだ!! 世界の命運どころか……エリアフォースカードも……」

 

 悔やむサッヴァーク。

 だが、全てが遅すぎた。

 

「それに気づいていながら……ワシらは……!!」

 

 壊れたオルゴールのように何処かへ声をかける耀。

 それを元に戻す術など、なかった。

 

 

 

 

「いたいっ、いたい、くるしい……熱い、熱いっ……!!」

 

 

 

 

 

 

「あっ、ぎっ……せん、ぱ──」

 

 

 

 そして。

 もはや、誰にも看取られることはない。

 縫合王は──跡形も無く、灰となって消滅した。

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「あっははははははは!! 傑作だなぁ!! わざわざあたしが理由も無く生かしておくと思った? 思ってたでしょ? ねえ!!」

 

 

 

 

 ──全てを、新世界の神は見下ろしながらほくそ笑んでいた。

 

 

 

「おじいちゃん……あたしと一緒に色んな時代を回って、色んなエリアフォースカードを集めたよね? それだけの力を持ったデュエリストを……絶望させたらすごいエネルギーになるんだよ?」

 

 

 もし。

 あの幽世で死んだままだったならば、それで終わり。

 だが、もしもそこから這い上がってくるならば?

 たった1枚のカードを希望の糧として這い上がってくるならば?

 

 それは──アカリからしても嬉しい誤算であった。

 

 

 

皇帝(エンペラー)が2枚あるって知った時に、思いついたんだよね……ちょっとだけ、希望を残しておけば……もう1枚の皇帝(エンペラー)を残しておけば、それを手綱にして幽世から登ってくるだろうってね」

 

 

 

 

 

 ──だから突き落とすことにした。

 絶望の果て、その先。狂気の海へと。

 

 

 

 

 結果。

 白銀耀は蜘蛛の糸を手繰るようにして這い上がって来た。

 そして自ら、地獄の釜へと脚を突っ込んだ。

 

 

 自ら仲間殺しを行い、そして完全に発狂し、もう何も出来ない廃人と化した。

 

 

 

 

 最も、その背中を押したのは──他でも無いアカリなのであるが。

 

(まーだってあたし、後はどうやっても勝っちゃうし? ちょっとくらいハンデあげたって良いよね? ま、最初っから勝たせる気もないけど。だからと言って、虫ケラみたいにプチっと潰しちゃうのは芸がないじゃない?)

 

 

 

 

 

 

「……ねえ? ()()()?」

「全く、趣味が悪いですね──アカリ様も」

 

 

 

 左半分が翠月。右半分が紫月。

 

 

 

 

 もう1人の縫合王は──笑みを浮かべてそこに立っていた。

 

 

 半身同士をつなぎ合わせたディスペクターの王。

 

 

 つまり、もう半身同士も存在すると言う事で──

 

 

 

「その代わり、連結王に加えて君達の()()()は消し飛んじゃったけど……」

「くすすっ、いいじゃない。邪帝縫合王なんて、ただの出涸らしだわ」

「……私達の真の切札には及びません」

「だよねーっ、やっぱりあたしの作った王の最高傑作は違うよ。連結王のバカは勝手に突っ走って犬死にしただけだったけど……まあ()()()()()はもっとうまくやってくれるでしょ」

 

 彼女は自らの力の源泉たる22枚のエリアフォースカード、そして龍魂珠を見やる。

 そこには、完全に力尽きた耀の姿が映っていた。

 目は焦点が合っておらず、乾いた笑いを上げながら妄言を吐き続けるのみ。

 そのまま、サッヴァークによって何処かへ抱えられて消えていった。

 

「……楽しみも、遊び場も、駒も……()()()()()()()()()()、全部自分の手で作るものなんだよ? おじいちゃん。いなくなったからって、スネてたらダメでしょー? ねえー? お友達は此処で待ってるよー?」

 

 もうスネるどころじゃないだろーけどね、と廃人と化した耀を珠越しに見ながらアカリは笑みを浮かべた。

 

 

 

 折れた。完全に折れた。殺すまでもない。

 

 

 

 しかし、念には念を入れる。と言っても死に体の兎を全力で追うほどアカリも余裕があるわけではない。

 

 まだ残る王たちに、白銀耀の追撃を命じる。

 そして──最大の懐刀である縫合王には、待てを言い渡すのだった。

 

 

 

 ……切札(ワイルドカード)は最後まで持っておくものだ、他でもない白銀耀がそうだったように。

 

「……君達は……万が一の時に立っていてくれればそれでいいや。期待してるよ? ──《終末縫合王》」

「ええ。楽しみにしておくわ」

「……お腹が空きました」

「えー? 何さ、霞でも喰っててよ。君はあたしの作った完全な生物なんだよ?」

 

 興味がない、と言わんばかりにアカリは縫合王に向かって手を振った。

 合成元の性格が出たか、と心の中で毒突く。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あたしが笑えと言えば笑い、泣けと言えば泣く。それが新世界の生き物──ディスペクターだ」

 

 

 

 

 そういうわけだから、と彼女は残る3人の王を見やる。

 

 

 

 

「……戦いか」

 

 

 

「なぁに? 暴れさせてくれるの、神様?」

 

 

 

 

 

「……二人居れば十分でしょ? 白銀耀及び残りの守護獣の討滅。混成王と──電融王に任せるよ」

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