学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR136話:混成王/電融王(1)

 ※※※

 

 

 

 

 ──シャークウガが作り出した魔法工房。 

 守護獣達は、辛うじてそこに逃れる事でディスペクターをやり過ごしていた。

 しかし、見つかるのも時間の問題である事。

 何より、主たちと引き離された挙句、彼らが改造した姿で現れたことに大きなショックを受けているのだった。

 ──その矢先だった。

 

 

 

 

「……戻った」

 

 

 

 白銀耀を抱えて戻って来たサッヴァークは、まさに一筋の希望に見えただろう。

 

「──んなっ、爺さん!? 白銀耀、無事だったのか!?」

 

 真っ先に駆け付けたのは──シャークウガだった。

 そこにオウ禍武斗が、バルガ・ド・ライバーが集まっていく。

 

「よもやよもやだ、皇帝(エンペラー)のカードも一緒とは」

「これならばまだディスペクターとやらに立ち向かう術があるものでござろう!」

「……いや、その様子では……ただならぬことが起こったようじゃのう、サッヴァークよ」

「……」

「オイ、どうしたんだよ、その顔は……」

『詳しい話は……我からするでありますよ』

 

 全員は驚愕した。

 白銀耀の身体から──チョートッQが現れたからだ。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「……マジかよ……」

 

 

 

 全てを聞いたシャークウガは嘆息した。

 しかし、全員が満場一致で「無理もないだろう」という結論に至る。

 耀は、寝かせてこそいるものの、ずっと目をカッ開いており、譫言のように何かを呟き続けている。 

 心が壊れてしまった。

 その一言に尽きた。

 アカリに裏切られ、仲間を失い、そして──自ら仲間を手に掛けたことで、彼の自我は音を立てて崩れ落ちてしまった。

 もう戻って来ない仲間を、そしてもう戻って来ないあの頃をずっと追いかけ続けている。

 

「……ワシは、後悔しておる。人の子には、あまりにも重荷だったのだ……と」

 

 最初は勇んでいたサッヴァークも、耀の姿を見たことで完全に折れてしまったようだった。

 水晶は彼の心境を表すかのように濁っている。

 どちらにせよ。エリアフォースカードを切り離すことで生き延びた彼らに、抗う術は残っていない。

 

「ッだけど、このままって訳にはいかねえだろ!? 最初の歴史よりもヤバくなってんじゃねえか!! 世界が荒廃するどころか、滅亡して好き勝手に弄られて……!」

「……しかし、白銀耀はただの子供だ! まだ、人間で言えば成人していない子供だったのだ! いや、白銀耀だけではない、探偵も、皆の主も……」

 

 全員は押し黙っていた。

 

「ワシは……エリアフォースカードというシステムは、過酷な運命を彼らに押し付け過ぎたのかもしれぬ……それを分かっていながら、ワシは……!」

「ば、バカ言えよ爺さん……!」

「あやつらとて、好きで戦っていたわけではないのは分かっておるだろう!?」

「ッ……」

「ワシはもう、何が正しいか……分からぬ……どの道、もう探偵は……戻って来ない」

「……やっぱり、ダメか。ディスペクターにされた人間は……元に戻せないでござるか」

「打つ手無し、か」

 

 

 

「……フン、何かと思えば反省会か。随分と余裕じゃのう?」

 

 

 

 暗い雰囲気を打ち破るように──QXが言った。

 

「──相手が、我らの主であるならば。猶更、半端な気持ちで打ち勝つのは難しいぞ?」

「貴様……!」

 

 サッヴァークが掴みかかる。

 しかし。

 全く動揺を見せることなく、

 

「どんな局面であれ、勝利を信じ抜くこと。そこの白銀耀は改変された歴史で友を失っても尚、此処まで戦ってきたのであろう? そしてサッヴァークよ。貴様の主も、一度は守護獣を失いながらも立ち上がった!」

「ッ……」

「我が下僕も同じ。妾は……桑原甲の、相棒を失っても尚消えぬ闘気に中てられて力を貸したのだから!!」

「失ったなら取り戻せば良い……か」

「だが、この状態でどうやって!?」

 

 

 

 

「──歴史をもう一度改変し直せば良い」

 

 

 

 

 声が聞こえた。

 その場の誰でもない声。

 それを前に、全員は身構える。新手か? と。

 しかし──声の主を見て、全員が矛を納める。

 

 

 

 トリス・メギス。かつて、耀達の敵であった魔導司がそこに立っていた。

 

 

 

「……今までだって、やってきたことだろ?」

 

 

 

 ただし、それは彼らの知る少女のものではない。年を取り、杖を突く老いた姿だった。

 

「な、何故、貴様が此処に……!?」

「あたしらのいた時代がとうとう崩壊し始めてな。2018年に何かあったんじゃねえかって思って、タイムマシンに乗ってやってきたら……時間Gメン共に追いかけられることもなくあっさりと着いちまってな、降りたらこの有様だ」

 

 全員は顔を見合わせる。

 思ってもみない助っ人に、全員が再び希望を抱こうとしていた。

 

「誰がやったのか知らんが……この時代で大規模な破壊的歴史改変が行われた所為で、超特大のダッシュポイントが出来ちまったんだよ」

 

 老いたトリスは、げほげほ、と咳き込むと続ける。

 

「まあどの道、あたしらの時代はもうダメだ。未来にまで歴史改変の影響が伸びて来てやがる。何があった? 誰がこんな事を……?」

 

 

 訳を説明した。

 

 

 トリスは──腰を抜かしてしまった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「バカ言えふざけんなや!! ア、アカリが……!? 信じられん……」

 

 

 

 全員がトリスを何とか立たせる。

 流石に彼女と言えど、ショックだったのだろう。

 長年付き添った相手が、まさかクリーチャーであったなんて、と。

 

「ワシらとて信じられん……」

「チッ、悪役としては一流だ。最後の最期まで誰にも怪しまれずに、爪を隠してやがったのか……女優の才能があるぜ」

「褒めてどうする! おいバアさんのトリス、歴史改変を元に戻すならどうすりゃいいんだ!?」

「歴史改変をした元凶をブッ壊せば解決だ。時間Gメンなら、奴らの使うオーラを破壊すれば歴史の流れを修正出来てたろ?」

 

 最も、今回はオレガ・オーラとは比べ物にならないくらい歴史改変の規模が大きい。

 アカリ本人ではなく、歴史を改変した大本となると彼らでも思いつかない。

 全員が手をこまねいていた矢先。

 

 

 

龍魂珠(アントマ・タン・ゲンド)。それが、アメノホアカリを神たらしめている宝具」

 

 

 

 言ったのは──今の今まで耀に吸収されていたエッ子だった。

 

「何と!? 知っておるのか!?」

「……1000年前に戦ったから分かるもん」

「ッ!? じゃあテメェがアマツミカボシ……!?」

「の、端末! あたしは、今はザコザコだもん……人間に吸収されるくらいにはザコザコだもん……」

 

 エッ子の自尊心もバキバキに折れていた。

 主人がディスペクターとして吸収されたことに加えて、先程モモキングの動力源にされたのだ。

 完全に拗ねていた。

 

「……成程。お前、あの日感じた力を同類だ」

 

 トリスはつかつかとエッ子に近付く。

 

「……ん、そうだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──歯ァ喰いしばれ」

 

 

 

 杖を置いたトリスは──思いっきりエッ子を殴り飛ばす。

 

 

 

 老体とは思えない程、強い拳だった。

 

 

 

 そして、顔をしわくちゃにして彼女に掴みかかる。

 

 

 

「テメェらさえ居なけりゃあなあ!! 今頃、ファウストもまだ生きてたんだ!! それだけじゃねえ、白銀耀達だって、真っ当に生きてたかもしれねえんだ!! テメェさえ、テメェらさえ、居なけりゃ……」

「ひっ、ご、ごめん、な、さい」

「あたしの人生は……あたしらの人生は滅茶苦茶だ!! テメェらさえ、居なけりゃ……ロスも、ヒイロも……生きてたんだぞッ!!」

「ッ……」

「お前を助けりゃ、二度とあたしらの世界に手出ししないって約束出来るのか!? 出来ねえよなあ!! だってオマエ、()()だろう!? 世界をブッ壊すことしか頭にねぇヤバンなバケモノが!!」

「う、う」

「出来るモンなら、此処で約束しろ……絶対に、こいつらを、この世界を守るってなぁ!! そのバカみてーな力の使い方をよく考えろって……テメェの主人に、よーく言い聞かせておけェッ!!」

 

 

 

 凄い剣幕を前にして、守護獣達は止めることも出来なかった。

 無理もない。

 彼女が、そして彼女を従える禁断こそが破滅の未来の引き金となったのだから。

 だが、それがこの時代では八つ当たりでしかないということも理解していた。

 しかし──ぶつけなければ気が済まなかった。

 60年間、積もりに積もった怒り、怨み、そして──悲哀をぶつけなければ、トリスは気が済まなかった。

 

「……あたしら人間は、テメェらクリーチャーに食い物にされるために産まれてきたんじゃねえ。その禁断の力、利用価値があるから最期まで利用してやる。覚悟しとけ」

「……う、あ、ひゃい……」

「あたしは諦めねえぞ。お前らはどうするんだ、守護獣」

「ッ……方法があるのか?」

「……精神汚染(マギア・ポリーシャオ)の応用。白銀耀のブッ壊れた心をもう一度元に戻す」

「正気か!! その老いた身体ではとてもではないが──」

「俺がルーターになる」

 

 進み出たのはシャークウガだった。

 

「……マスターを、元に戻せる足掛かりになるなら、俺ァ喜んで力を貸すぜトリス・メギス」

「……へっ、お前とは色々あったが……良いのかい?」

「ああ。昔のテメェは気に食わなかったが、今のあんたは……嫌いじゃねえ」

 

 少なくとも。

 妄信的にファウストに付き従っていたあの頃よりはな、と彼は付け足す。

 

「……恨んでるか?」

「まあまあだぜ」

「ヘッ、そうかい」

 

 廃人と化した耀を前にして、トリスは呪文を唱え始める。

 そして、老いて劣化した彼女の魔力回路にシャークウガが魔力を注入する。

 これによって、完全なる魔法の詠唱態勢と化す。

 

「……後は荒療治になるな。そっちは任せろ」

「ッ! 白銀耀の心の中に入るのか?」

「ああ。強固に思い出の中に閉じこもっちまってるからな──」

 

 

 

 

 その時だった。

 サッヴァークが──叫んだ。

 

 

 

 

「ッ……敵を捕捉ッ!! 超大型のディスペクターが工房目掛けて飛んできておるわ!!」

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「──やれやれ。これでは、追撃し甲斐も無い。よもや、自分からのこのこと出てくるとは」

「ねえねえねえ!! 当然ブッ殺してイイんだよね!!」

「……主君……!! 火廣金緋色……!!」

 

 

 

 片や、ポニーテールを結い、真剣で武装した少女──電融王。

 しかし、その腕はバラバラに切り離され、電磁波で浮かび上がっている。

 

 

 片や、白い将軍の服を身に纏った男──混成王。

 しかし、その首周りはモザイクで何かと繋ぎ合わされている。

 

 

 

 いずれも、刀堂花梨と火廣金緋色を素材としたディスペクターの王に違いなかった。

 

 その前に立ちはだかるのは──シャークウガ以外の守護獣達だ。

 

 

 

「……何だ貴様等? 死にに来たのか?」

「──今まで我らをデュエルに勝つことで守ってきたのは……他でも無い探偵、我らが主だった!」

「それがどうした。主君と同じ場所に逝かせてやる」

「……ワシは……諦めかけておったのかもしれん……ワシらと闘うことを選んだのは、他でも無い探偵だったというのに!!」

 

 サッヴァークは無数の剣を展開する。

 もう迷いはしない。

 

「──我ながら自分のゲンキンさ加減に吐き気がするわい。しかし……探偵を元に戻せるならば──この命を賭けて、ワシは戦う!!」

「ならばその賭けた命諸共滅び果てるんだな」

 

 電融王を目の当たりにしたバルガ・ド・ライバーは歯を噛み締める。

 

「主君に刀を向ける日が来ようとは……守れなかったことを、此処まで痛感させられようとは!」

「ねえねえねえ!! あのドラゴン、すごくムカつく顔してるから斬っていい? なんかすっごい女好きそうってかオッサン臭い!! だから、いいよねえ? ねえねえねえ!!」

「あっ、某やっぱり女好きそうに見えるのね!!」

「だから貴様は知性の欠片も無いと言われるのだ電融王。戦うまでもない。この俺が出てきた時点で、戦いは終わっている」

 

 混成王が手を交差させると、その背後からは巨大な時計盤が現れる。

 

 

 

「禁じられた奇跡を前に……滅び去るが良い──禁時混成王ッ!!」

 

 

 

 次の瞬間だった。

 

 

 

 周囲の空間が裂けていく。

 そこから現れるのは、5体のバラギアラのゼニス。

 そして、リンクを繰り返す闇の王たち。

 それをいっぺんに踏み潰して現れる覇王ブラック・モナーク。

 融合した進化クロスギア。

 超銀河弾が数百発くらい同時に顕現し、そして世界のどっかの森は4回くらい燃えた。

 

「こ、降参でござる……」

「バルガ・ド・ライバァァァーッ!?」

 

 突如現れた災厄の権化の顕現を前にして、流石のバルガ・ド・ライバーは両手を上げざるを得なかった。

 無理もないと言えば無理もないのであるが。 

 障壁を貼って超銀河弾を止めているサッヴァークは真っ青になりながら、追加の障壁を生成する。しかし、間に合わない。

 

「あーもう、混成王!! こんなんじゃあたしの出番がないじゃない!!」

「貴様が戦うまでもないということだ。脳筋は引っ込んでいろ。禁断の神……アマツミカボシ──正式名称・ドキンダムXを取り込んだ、我が禁時混成王の前では全てが滅亡の歴史を辿る」

「コムズカシクテワカンナイ」

「つまり、超・強い」

「すっごく分かりやすい!! あたし強いの大好き!! 強いから混成王も好き!!」

「俺は知性の無い貴様が嫌いだがな」

 

 ブラックモナークと切り結ぶバルガ・ド・ライバー、そしてバラギアラゼニスを抑え込むオウ禍武斗を横目に時計盤から無数の光が降り注ぐ。

 

 

 

 

「……これで──チェックメイトだ」

 

 

 

「しまっ……!!」

 

 

 

 

 サッヴァークは上を見やる。

 

 

 

 そちらには障壁を貼っていない。超銀河弾の死角だ。

 

 

 

 真上から貫かれる──

 

 

 

 

 

「──奴隷共ッ!! 此処はこの(オレ)が引き受けてくれようぞ!!」

 

 

 

 

 

 ──そう思った時だった。

 

 

 

 雷光は全て撃ち落とされていく。

 

 

 

 

 そこに立っていたのは──

 

 

 

「《Theジョギラゴン・アバレガン》だと……!? しかもこの力は……!!」

「ねえねえねえ!! あたしコイツと戦いたい!! ブッ殺して良いよね、混成王!!」

「バカを言え!! 敵は……何だこれは? シロガネアカルは、廃人状態のはず……!!」

 

 

 

 ──白銀耀だった。

 

 

 

 

「……やっべー、途中で呪文止めた所為で()()()目覚めちまった」

「目覚めちゃったの!?」

 

 工房から外を覗き込むトリスにシャークウガが叫ぶ。

 施術の途中で、耀が急に外へ飛び出してしまったのである。

 恐らく、彼の中に眠るもう1つの皇帝の正体が。

 抑圧され、隠されてきたものが──再び目覚めたのだ。

 

「おい、奴隷ッ!! (オレ)のデッキはあるか!!」

「!? いや、デッキならヌシの腰に──」

「そっちではないッ!! (オレ)に相応しいデッキがあるであろう!!」

「まさか……!」

 

 

 

 サッヴァークは、ギリシャで回収した耀のデッキを目の前の彼に投げ入れる。

 

 

 

 耀の姿をした何者かは、正解と言わんばかりに笑みを浮かべるとそれを手に取った。

 

 

 

 そして、改めて混成王と電融王の前に立ちはだかる。

 

 

 

「……貴様。名を名乗れ」

「ねえねえねえ!! ブッ殺してイイ? イイよねえ!!」

「奴隷共が!! 皇帝である(オレ)に問うてみせるか!!」

 

 

 

 耀は──否、耀の中に潜む彼は叫ぶ。

 

 

 

「──(オレ)皇帝(エンペラー)。武を以て、覇を成し遂げる者ッ!! 大アルカナⅣ番、皇帝の名を冠す者なりッ!!」

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