学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR140話:アカリ・アーカイヴス(2)

 ※※※

 

 

 

 

 ──エリアフォースカードの中に封じられたあたしの力は、それでも尚、カードを奥底から蝕んでいた。

 

 

 

 そして、乗っ取れそうな隙のある人間を見つければ、その負のエネルギーを糧にしていつでも外に出られるように仕向けた。

 

 

 

 時には──守護獣さえも乗っ取ったことさえあった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「……くっ、ふふふ、くっふはははははははははは!!」

 

 

 

 

 アルカクラウン。

 愚者のエリアフォースカードの守護獣。

 しかし、その目的は既に神の降臨にすげかわっていた。

 勿論、あたしがコイツの意識を蝕んだからである。

 長い間かけて溜め込んだ執念はこいつを完全に乗っ取ることに成功していた。

 本人は、自分の崇めるゴッドを降臨させたかったんだろうけど、最初っからそんなものなどない。

 エリアフォースカードを全て集める事、それが即ちあたしの完全復活に繋がる。

 こいつは、最初からあたしの操り人形でしかなかった。

 上手く行けばすぐにでもカードは集まっていくはずだった。

 魔導司の精神をのっとって、エリアフォースカードを全て集める算段だったというのに、必要以上に騒ぎを起こし過ぎた。

 十六夜ノゾムの祖父など、殺さなくて良い人間まで殺した所為で要らないところでヘイトを買ったのが良くなかったのかもしれない。

 おかげで、回り回って感情で魔力を跳ね上げる皇帝のカードの持ち主・白銀耀を怒らせた。

 

 

 

 

「このっ、この……役立たずの人形共がァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「誰かを踏み躙って達成する理想郷……んなモンはクソくらえだ!! 俺は……皆と一緒に、日常に帰る。いつもの、あの変わらない日々に――取り戻す。お前の手から!!」

 

 

 

 

 ──その後は語るまでもない。

 あたしの意思も一緒にブチ砕かれ、リタイア。

 愚者のカードは当然のように休眠状態に入ることになったのである。

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 クォーツライト家の愚かな計画は、実に都合が良かった。

 エリアフォースカードを直接、自分達の末子にリンクさせる。

 要は神経中枢を直接つなげるというバカげた施術だ。

 何処の国にもこんなカルト集団はいるのだろう。ドン引きである。

 しかし、おかげさまでロードの意思は──完全に、このあたしの意思にすり替わった。

 頭に働きかければ、人間などすぐに発狂する。

 ロードは、よく働いてくれた。まずは邪魔なクォーツライトの愚かな人間共を皆殺しに。

 そして、或瀬ブランの正義のカードを取り込んでサッヴァークを顕現させる。

 人類の原罪をどうこうとか言っていたが、結局の所無意識にエリアフォースカードを集めていたのはあたしが深層心理から手引きしていたにすぎない。

 ロードも、あたしの操り人形でしかなかった。

 もうこれならば、わざわざあたしが復活させるまでもない。

 人類は終わる。後は終わった世界でゆっくりエリアフォースカードを集めさせれば問題ない。

 はずだったのだが──

 

 

 

「《サンダイオー》の攻撃で、お前の全ては燃え尽きる。シールドも、歪んだ正義も、そして野望も!! 全部だ!!」

「そ、そんな馬鹿な……!!」

 

 

 

 

 またお前か。またお前か。

 よりによって、此処でも白銀耀が絡んできたのである。

 距離が離れていた愚者のカードに眠っていたあたしと、審判のカードに眠っていたあたしが情報共有できるはずもないのだが、偶然にしても出来過ぎている。

 冗談ではない。マジで何なんだコイツ。

 画して、ロードは完全に廃人となり、その後魔導司協会に処刑されたという。

 役に立たないどころの騒ぎではない。何でこいつら揃いも揃って使えないんだ。これだから人間ってやつは。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ……主要なところではこの2つ。

 だが、それ以外でもエリアフォースカードを暴走させて、持ち主を暴れさせようと画策したが大体白銀耀とその仲間に阻止されている。

 しかし意識がバラバラのカードに封印されているあたしは、まさか同じ相手に邪魔されているとは思いもしなかったのだ。

 全部が全部ではないにせよ、大体白銀耀とその一味の仕業である。

 当然、本体であるあたしも、虫ケラ同然の姿ではいずり回っている毎日。こんなことを知る由もない。

 あたしの身体が全て揃う日はやってくるのだろうかと考えていたある日のことであった。

 

 

 

 

「ザーコザーコ♡ 人間って弱弱♡」

「ドッキンダァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッッッッ!!」

 

 

 

 

 ……先を越された。

 運命のあの日、伝説の禁断──もとい、アマツミカボシが降ってきたのである。

 無論、人間如きで1000年間パワーを溜め続けたミカボシに勝てるはずもない。

 世界は蹂躙された。 

 そして、とうとう見兼ねたのか、日和見主義を貫いて幽世に引き籠っていた神──ククリヒメが世界(ザ・ワールド)のカードを用いてアマツミカボシを倒したのである。

 しかし、その時にはもう遅かった。世界は滅茶苦茶。地形が変わってしまうほどの大打撃を受けていた。

 さて、此処からは後から知ったことであるのだが、やはり下級な神では世界のカードを御すことは出来なかったらしい。

 これは、あたしの意思とは関係なく、最恐のカードである世界(ザ・ワールド)に持ち主が食われてしまったということだ。

 結果、彼女のイカれた母性は地球全てを包括するに至った。

 世界を全て、管理すべき対象として支配する。

 それが──トキワギ機関の設立であった。

 さて。これは厄介なことになった。

 エリアフォースカードの使い手が殆ど死んでしまったことは察するに容易い。

 本体であるあたしも、カードに分散された体が次々に機能停止したことから察知出来た。

 そして、その機能停止したカードをトキワギ機関は回収し始めたのである。

 おまけにあろうことか、レジスタンスが抵抗できなくするために、過去に遡ってエリアフォースカードそのものを消し去ろうとしていたのだ。

 そのためには様々な時代に干渉しなければならないという回りくどい手段を取らねばならなかったとはいえ、あたしからすれば堪ったものではなかった。

 

 そんなことになれば、一生あたしは復活できない!

 

 すぐさま、行動を起こすことにした。

 年月が経つにつれ、この虫ケラの姿でも力が蓄えられるようになっていた。

 今ならば、手ごろな人間を1人乗っ取れば──活動することができるようになるかもしれない。

 しかし、手近にそんな都合の良い人物はいるだろうか。

 トキワギ機関に対抗する意思があり、エリアフォースカードを持っている、そんな人間は最早稀だろう。 

 かと言ってトキワギ機関に出向けば、元々神であるあたしはすぐさまククリヒメに察知されてしまい、抹殺される。それこそ虫の如く。

 何処かに。何処かに居ないのか。

 都合の良い人物は──

 

 

 

 

「……高校生のおじいちゃん……どんな人なんだろうなあ」

 

 

 

 ……居た。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 白銀朱莉は、あの散々邪魔しくさった白銀耀の養子だ。

 しかし、数年前その白銀耀が消えたっきり1人暮らしだったという。

 そして、彼女はロストシティでレジスタンスとしてトキワギ機関に協力する日々を送っていた。

 何時の日か、真に自由なデュエルが出来るような平和な世界を目指して。

 何とも涙がちょちょぎれる話である。

 

 

 

 

 

 ──だが死ね

 

 

 

 

 

 あたしのために死ね。

 その理想を抱えて死ね。

 タイムマシンに乗り込もうとした彼女の死角から──あたしは、そのまま体の中に入り込んだ。

 

 

 

 かつて。あたしが産まれた時のように。

 

 

 

 こいつには、あたしを孕む器になってもらう。

 

 

 

 

「あっ、ぎぃっ、あああっ!? あっ、あああ!? 頭が頭が割れ、てぇっ……!?」

 

 

 

 

 こんな都合の良い機会があるとは!!

 しかも、とても心地のよい身体だ!!

 

「ぎぃっ、ああっ、痛いっ、痛い痛い痛いっ、おじいちゃんっ、おじいちゃんっ」

 

(くっすすす、そんなに怯えなくて良い)

 

「っ……ああ!?」

 

(これで、あたしは、お前。お前はあたし……お前の脳をじっくりと乗っ取る)

 

「とめてぇっ、とめてぇぇぇっ」

 

 

 無様に鼻水を、涙を垂らし、床に這いつくばっているのだろう。

 

 目は白くひん剥かれ、充血しきっている。

 

 くっすす、なんて良い顔をするのだろう。

 

 しかし、やめない。

 

 もう少し、この苦しむさまを見ていたい。

 

 それに……せっかく良い身体を手に入れたのだ。使わない手は無い!

 

 

 

(大丈夫……しばらく、お前の脳は使わせてもらうよ。誰も怪しまない。あたしは白銀朱莉として、振る舞う。エリアフォースカードを全て集める、その時までは)

 

 

 

「っぃひぃっ、ひぃっ、あああああっ、死んじゃうっ、あああ!! 殺してッ、殺し、てぇぇぇぇ」

 

 

 

 

 

 

(あっははははは! 心配しなくても此処でゲームオーバーだよ)

 

 

 

 

 

(白銀朱莉は此処で死ぬ。この身体を……このあたし、アメノホアカリが使わせてもらうから)

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 こうして。あたしは、白銀朱莉として過去に飛ぶことに成功した。

 後は、面倒なトキワギ機関を度々内部崩壊させるべく、他のカードに働きかけていたくらいだろうか。

 節制(テンパランス)(ザ・ムーン)太陽(サン)恋人(ラバーズ)のカード。

 これらは少なからず持ち主が破滅するように働いてくれたはずだ。

 そして、あたしは違和感なく白銀耀達の仲間に溶け込んでエリアフォースカードを回収していく。

 2078年では既に完全に失われてしまったカードも、過去の世界でならば回収可能だ。

 この際時間が継ぎ接ぎでもいい。22枚のカードが揃えばそれで良いのだ。

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

「……どうやら、世界(ザ・ワールド)のカードを手に入れられたようですね、おじいちゃん!」

 

 

 

 

 あたしは何時も通りの笑みで、おじいちゃんに笑いかけた。

 

 

 

 散々邪魔してくれた彼に向かって、笑ってやった。

 

 

 

 お前の敗けだ、と。

 

 

 

 

 そして──とっくに死んでいた白銀朱莉の身体を完全に脱ぎ捨て、神として復活したのである。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「そして、散々邪魔してくれた恨みは晴らしてもらうよ、おじいちゃん」

 

 

 

 

 完全に復活し、龍魂珠の力が使えるようになったあたしは──今度こそ、世界を造り変えることにした。

 なすすべもなく、地球上の全ての生命体は身体が崩壊し、龍魂珠に吸い込まれていった。

 唯一、守護獣だけは取り逃したが、それでも時間の問題だ。

 幽世にいるであろう白銀耀も、もし生き残っていたらあたしを止めにやってくるだろう。

 でも、もう彼があたしに勝つ術はない。

 というより、もうあたしは勝っている。

 このまま後は、白銀耀が絶望して無様に死ぬ様を見届けるだけだ。

 

「だから、おじいちゃんが大好きな仲間の顔で……ディスペクターの王を作ったんだよ? 喜んでくれなきゃダメじゃない」

 

 いずれにせよ。

 あたしの目的は果たされた。

 このまま時間が経てば、この大規模な歴史改変は完遂される。

 

 

 

 でも、エリアフォースカードを22枚手に入れたあたしを止められる奴なんて、もういない。

 

 

 

 

 あたしは……もう、既に新世界の神になっているのだから。

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