学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
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「怖ェよ、怖ェよアカリ様……俺に、俺にコイツをブッ殺する勇気だとか力だとかその他諸々をくれぇ!!」
ガチガチに全身を鉄板で覆い、身を護る接続王とのデュエル。
開幕早々から、あの桑原先輩の顔から想像できないほどの情けないセリフを吐くコイツを前に、虫唾が走っていた。
「ッ……マジでアカリのヤツ、許さねえ……!!」
「キャッハハハ! ねえザコザコ。怒りの力を爆発させるだけじゃあ、禁断の力に飲まれるよ?」
「!」
「ほら、手札を見てごらん?」
「……いっ、デッキが変わってる!?」
火と、闇のカードばかり。
さっきまで持ってたボルシャックデッキは何処行ったんだ?
「禁断の力には禁断の力をぶつける。そのためには、またさっきみたいに爆発されたら困るんだけど―?」
「……禁断……まさかあの接続王、禁断の力を!?」
「うん。同じ力。だから、半端な力じゃきっと勝てない」
ドキンダムの力は──混成王が持ってるはずだ。
じゃあ、こいつの持ってる禁断の力って、何なんだ……!?
「……全く。あたしが居なきゃどうなってたことやら……頼りにしてるんだから」
「っ……! わりーけど口説こうとしても俺彼女いるから」
「調子に乗るなザコ!! さっさと手を動かす!!」
……よし、深呼吸だ。
何時も通り、戦えば良い。
この歴史を修正すれば、全て元通りになるのだから!
「《
「──俺を守ってくれよ……《Disゾロスター》召喚!!」
互いに初動クリーチャーを出し合う最序盤。
マナを溜め、墓地を肥やし、そしてシールドをも増やす《ゾロスター》を前に、俺は早くも焦りを隠せない。
何なんだあのカード、何で3マナでシールドまで増やしてんだ。
「倒しきれるのか!? EXライフでシールドも増えるんだぞ!?」
『やっぱりボルシャックの方が良かったんじゃないでありますか!?』
「失礼な! じゃあ、早速使っちゃいなよ!! 禁断の力!!」
言った俺は──カードを引く。
そこには、鎖で封印されたカードの姿があった。
まさか、これを使えってのか!?
「……ふふっ、どうした? 怖気付いた?」
「まさか!! 仲間をバカにするやつは俺が許さない!!」
「じゃあ、行くよ! 鳴り響くは禁断の鼓動!! ドキンドキンでダムダムな、禁断の力!!」
ギンッ、とエッ子の目が光り輝く。
力が、カードから流れ込んでくる。
うっかりすると飲まれてしまいそうだ。また、あの時みたいに!
だけど……!
「これが俺の
どくんっ、どくんっ、と鼓動が脈打つ。
抑えきれない程の闇の力。そして、怒り、悲しみ。
それを静かにカードへと重ねる。
鎖がほどけた。2コスト、そしてパワーが99999の進化クリーチャー……!?
確かに禁断のカードに相応しい!
「鳴り響け、禁断の鼓動!! 《禁断
咆哮する《モモキング》。
その身体に次々と黒い鎧が纏われていく。
「っひぃいいいい!? 何だよ!? 禁断の力だと!? あんなもん勝てる、わけがねえじゃあねえか! 助けてくれぇアカリ様!! 俺ァ殺される!! 殺されるゥゥゥーッ!?」
ガタガタと震える接続王。
デッキから進化元を調達して現れた《モモキングダム》は、この軽さでパワー99999のT・ブレイカー。
普通ならこのまま攻撃しにかかるレベルなのだが──
「さあ攻撃──あれ? ……あれっ!?」
カードに手を置いて気が付いた。
重い。
カードが、動かない。
タップしようとしても、カードが横に倒れないのだ。そればかりか持ち上げる事さえできないほど、重い。
たかが1枚のカードだというのに!
「グゥォッ……!?」
そして、《モモキングダム》も苦しそうに呻いている。
進化クリーチャーのはずの《モモキングダム》がその場から一歩も動く様子が無い。
まるで、鈍重な鎧の重さに足をとられているかのようだ。
「ケッ? ……ケッヒャハハハハハハ!! アカリ様の加護が無いテメェに、禁断の力が使える訳ねえだろが!!」
「オイこいつ態度急に変わったぞ!!」
『相手が下手と分かったとたんに強気になるタイプでありますな』
「禁断の力は、そのドラゴンには重すぎるんだよ!! 幾らパワー99999でも、動けなきゃ世話ねーぜ!!」
「……ッ!」
そんな、はずはない。
幾ら禁断の力と言えど、主人を奪われて悲しんでいたエッ子が覚悟して俺に力を渡してくれたのだ。
『でもマスター、アカリ殿の件……』
俺の思考が読める一心同体のチョートッQが怪訝そうに囁いてくる。
確かに、あのアマツミカボシ──ドキンダムの端末である彼女は、本来なら俺達の敵だった存在だ。
だけど。
「……俺は、エッ子を信じる。例え何回人に裏切られても……隣に立ってる仲間も信じられねえようなヤツは、勝てる戦いにも勝てない! 勝てるわけがない!」
「ッ……ザコザコ……なんでそこまで」
「俺が信じられるのはぁ、アカリ様だけだぜぇぇぇ!! さあ、俺を守ってくれよ!!」
4枚のマナがタップされていく。
接続王の場に、更なるディスタスが現れる。
ディスペクターに捧げられる生贄となる供物が──
「来なすったぜ!! アカリ様の力の一端……ドラゴン・オーブ、《
「ッ……
あれはアカリの宝具のはずだ。
それを預けられているという事は、やはりこの接続王。ただでは済まない力を持っているのだろう。
「効果発動! 山札の上から5枚を見て──その中からカードを1枚マナに置く。ターンエンド!」
「くぅ、ただのザコザコじゃない……こいつ、ササゲール2を持ってるんだけど!?」
「さっさと破壊すれば良いだけだ!」
俺は──3枚のマナをタップした。
「《トップギア》1軽減──3マナで《轟速ザ・Re:ッド》を召喚ッ!!」
現れたのは、レクスターズとなった《轟速ザ・レッド》。
相も変わらないバイクに跨った姿で戦場に駆け付ける。
しかし、《モモキングダム》は封印されているわけではない。
コマンドが出てきても、動けるようになるわけではないはずだが──
「グオオオオオオオオオッ!!」
カードが1枚、山札から《モモキングダム》に吸い込まれて消えた。
そして、その巨体が咆哮を上げる。
「カードを吸収した……!? 力を、溜めてんのか!?」
『ッ……レクスターズの力が、《モモキングダム》に溜まってるであります!』
「なら、このままドンドン行けば問題ないな! 《ザ・Re:ッド》攻撃時、侵略発動!!」
生憎《レッドゾーン》なんて入ってないけど、ジョーカーズの新たな侵略を見せてやる!
「進化! 《富士山ン<ジャック.star>》! コスト4以下のカードを破壊だ!」
飛び出したのは《ジャック・アルカディアス》の鎧を身に纏った《富士山ン》。
怒号と共に戦場を踏み荒らし、そのまま《
「ッ……ああ!? テメェ、よくもアカリ様のカードを!!」
「そのまま──シールドをW・ブレイク!」
拳を握り締めた《富士山ン》の打撃がシールドを叩き壊した。
これで、残るシールドは4枚。
「侮辱だ……屈辱だ……アカリ様のカードをゴミのように破壊し、事もあろうにこの俺に向かって刃を向けるだと!? なんて、残虐で非道で人の事を何とも思ってないヤツなんだ!! 殺される殺される、殺されちまうよ!!」
「なあマジでグーパンしに行っていいか?」
『マスター、抑えて抑えて!!』
「だから、罰ゲームは受けて貰わねえと──なぁっ!! S・トリガーだぜ!!」
砕かれたシールドが光り輝く。
そこから、クリーチャーが飛び出して来た。
「──ブロッカーの《霊宝ヒャクメ─4》! 効果でマナを増やし、テメェの手札を破壊する!」
「っ……4ってまさか、ササゲール4……!?」
「その通りだぜェェェーッ!!」
即座に《ヒャクメ》の身体が崩壊していく。
そして、その力を吸い上げ──虚無の力を魔銃に接続した王が君臨しようとしていた。
「アカリ様の切札を破壊し、あまつさえ俺様の生存権を、脅かした……事、後悔、しやがれェェェ!! 7マナをタップ!!」
「7マナ……ってことは11コストの超巨大獣が来る!?」
それは、何処からともなく現れた。
真なる頂天のゼニスである《シャングリラ》を玉座として座る存在、《ロマノフ》。
2体が高貴なる矛盾で繋ぎ合わされた存在。
「騒乱の理想郷は、虚無の魔銃に撃ち抜かれて現出する」
──空間に無数の穴が空いた。
<
<YourScreamKing!!>
「──《零獄接続王 ロマノグリラ0世》!!」
<We are Dispecter>
「EXライフ──接続完了」
※※※
「がっ、はぁっ……!?」
分かっている。
敵うはずなど無いことは分かり切っているのだ。
だとしても。だとしても単騎で立ち向かわなければならない理由があった。
全身に纏わりついた4体の神獣が、シャークウガの身体を蝕んでいく。
相対するは、双子が半分に繋ぎ合わされた存在・縫合王だった。
「”俺”に敵対する者は問答無用で断罪する。それが、この終末縫合王の力です」
「くすすっ、他の王たちと比べてもらっては困るわ」
「な、るほどなぁ……!」
魔力の量も桁違いだ。
恐らく、他の王たちを束ねても縫合王には勝つことが出来ないだろう。
それもそのはず、あの終末縫合王は《「俺」の頂ライオネル》と《神帝》という強大極まりないクリーチャーを互いに繋ぎ合わせているのだから。
「だけど、それがっ、諦める理由になるってのかよッ!! あァッ!?」
「ッ……何故? 貴方は此処に犬死にしに来たのですか?」
「……マスター、これが最後だぜ。正真正銘の、最期、シャークウガ様のマジックショーだ……ッ!!」
ぜぇぜぇ、と息を切らせながらシャークウガは杖をもう1度握り締める。
「あん時、あんたと俺が出会ったのは……運命、だったのかもしれねえな……!」
くじ引きのデッキに入り込んでいたエリアフォースカードとシャークウガ。
それを、翠月が紫月に手渡したのが全ての始まりだった。
類稀なるデュエルの才能を持つ紫月。一瞬でシャークウガは彼女を見初めた。
「翠月の姉ちゃんと……マスター。二人が居なきゃ、俺は此処には居なかった……!!」
「一体、何を……」
「誰かと勘違いしているのではないですか?」
「……一目惚れ、だったんだぜ……あんたの知識!! 才覚!! 全てが一流だ!! 魔術師の守護獣である俺のマスターに相応しいって悟ったんだ……運命だぜ!! この出会いのためなら、俺様は何を犠牲にしても良いって悟ったんだよッ!!」
肩を、そして膝を神獣が蝕んでいく。
その歯が肉を抉り、魔力を吸い取っていく。
「だけどなっ、あんたの優秀さなんざこの際関係ねえ……俺ァ……俺ァ、放っておいたらどっかに行っちまいそうなあんたを……守るって決めたんだ……!! 分かるか? 今此処で、あんたを救えるのは……俺だけなんだぜマスター!!」
口から血が漏れてくる。
限界が近付いてくることなど分かっていた。
「守護獣の役目は何だッ!! 主たるエリアフォースカードと──その持ち主を最期まで守り切ることだろーがッ!!」
目の前の縫合王に向かって叫ぶ。
「守るってのは何も身体だけじゃねえ!! 主のプライドを!! その覚悟を!! 尊厳をッ!! それを傷つけるヤツを許さねえってことだぜッ!!」
守れなかった? もう遅い?
いや、違う。
シャークウガは、それでも尚自らの使命を投げ捨てることはしない。
「それが俺達の使命だッ!! その守護獣が……やる事なんて、たった1つだろーがァァァァーッッッ!!」
彼は──自らの武器たる杖を投げ付ける。
そして縫合王が怯んだその一瞬で、距離を詰めていた。
拳が、歪なる双子に一撃を喰らわせる。
──しかし。
「……届くはずがない。その程度で、私達を倒せるはずがない」
その拳は、平手に受け止められていた。
そして、4つの神獣に魔力を食いつくされたシャークウガは膝を突く。
最早、目の前に立つ彼女の姿すら見えはしない。
瞬きする度に、歪な双子の姿を──自分が最も敬愛するマスターに幻視した。
ああ、これで終わりだ。為すべき事は全てやった。
「……愛してるぜ──俺の、マスタ──」
力が抜けていく。
彼の身体は──灰のように消えていった。