学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR144話:縫合王(1)

「あっ、あああああ!? 嫌だ、死にたくねえ、死にたく、ねえよ……!!」

 

 

 

 接続王は地べたに転がりながら、灰になって消えていく。

 これで良い。これで良いんだ。

 桑原先輩の身体で、顔で、声で、これ以上──惨めな姿を見たくはない。

 

「あんがとよ、エッ子──お前が居なきゃ、俺は接続王に勝てなかった」

「えっへへへ、人間も少しはあたしのこと見直したでしょ?」

『モモキングダム……恐ろしい切札でありましたな』

 

 

 

「ああああああ!? 助けてくれ!! 助けてくれえええ!! アカ、リ、様ァァァァー」

 

 

 

 接続王の声が消えていった。

 これで──終わった。

 後は、シャークウガの所に戻らないと。

 あいつは一人で待ってるはずだからな。

 

『……マスター。おかしい、であります』

「え?」

『シャークウガの反応が、分からないであります』

 

 チョートッQが狼狽えた様子で言った。

 どうして。そんなはずはない。上のフロアで俺を見下ろしてたじゃないか。

 その後、あいつは何処に行ったんだ?

 

「馬鹿野郎……ッ!!」

 

 まさか。紫月と翠月さんの顔した、あのディスペクターのところに向かったのか!?

 残る王は──思い当たる限りあいつだけだ。

 連結王や混成王、電融王が復活したなら、あいつだってまだ生きていてもおかしくはない。

 急がないと。シャークウガが無茶していなければいいのだが。

 

 

 

 

「──ヒッ、ヒヒヒヒャハハハハ!!」

 

 

 

 ……狂喜に満ちた呻き声が聞こえてくる。

 灰になって消えたはずの接続王の声だ。

 俺は思わず振り返った。そしてゾッとする。

 ロマノグリラと共に、接続王が──再び立っていた。

 

 

 

「生きてる。生きてるぞォォォーッ!! アカリ様様様だぜェェェーッ!!」

 

 

 

 ウソだろ。

 まだ生きているのかよ。

 またあの布陣を突破しなきゃいけないのかと思うと、そろそろ嫌気が差してくるんだが……!

 

『よくよく考えてみれば、ここはアメノホアカリの本拠地! ディスペクターが何度倒しても復活するならば、その場で生き返ってもおかしくないであります!』

「EXライフをゲームの外でやってんじゃねえよ! おいエッ子、さっきのってもう1回ブッ放せるか!?」

「ま、魔力的に無理かも……モモキングダムの力って、あたしの力に依存してるから……」

「エッ子さんんんんッッッ!?」

 

 ヤバい。ヤバすぎる。

 ボルシャックのデッキで、あのデッキ相手に勝てる気がしない。

 モモキングダムのパワーマイナスがあったから、どうにかして勝てたのであって、あれは並みのデッキで突破出来る盤面ではないのだ。

 

「さあ、よくも、やってくれたな……! 今度こ、そ、アカリ様の力でぇぇぇーっ!」

 

 万事休す。

 やるしかない、とデッキを構えたその時だった。

 

 

 

 

「えっ、えええ……あああ……!?」

 

 

 

 

 その時。

 今度こそ接続王の身体は崩壊した。

 砂で出来た象のように、崩れ落ちていく。

 

「体が、体があああ!? 俺の腕が、足が、あたま、なんっで、アカリ、様ァァァ……!?」

 

 ロマノグリラの身体も崩落し、そこには──何も残らなかった。

 

 

 

「……どうしたんだ一体……!?」

『上の方で何かが起こっているのであります……!?』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 前触れなど無かった。

 

 

 

 

 アカリが縫合王に新世界王を意気揚々と披露してみせた矢先だった。

 

 

 

 完全に勝ったと思っていた顔は、疑問と怒りに歪んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんの、つもり……!?」

 

 

 

 

 アカリの胴を、巨大な爪が引き裂いていた。

 

 

 

 爪は彼女の身体を貫き、とめどめなく血が溢れ出ていた。

 

 

 

 

 凶行に及んだのは──縫合王である彼女だった。

 

「……飽きるだの飽きないだのと。オヤツのようなノリで世界を何度も滅ぼされては困りますね」

「っあっ、ぎ、何で……!」

「……新世界王と「王に」に魔力のリソースを回しているならば、本体である貴女自身の守りは実質的に手薄。貴女が先程自白したではないですか。頼んでもないのに、べらべらと」

「違うッ、そうじゃあなっ、ぎゃあああ!?」

 

 爪が彼女の胸を引き裂き、そのまま地面へと転がさせた。

 縫合王は、無感動な目をアカリに向けている。

 

「何で……ディスペクターは、ご飯も食べない、夢も見ない、あたしを決して裏切らない……魂無き、怪物……あたしの忠実なシモベ、のはずでしょ!?」

「まだ分からないのですか? 貴女、前から思ってましたが……力に頼り過ぎた所為で少々おツムが良くないようですね」

「黙れッ!! 黙れ黙れ黙れ裏切者ッ!! あたしを、創造主であるあたしを、こんなっ、がふっ──」

「裏切者? どの口が言うのです? 自分のしたことを忘れたような口ぶり……そこまで酷い鳥頭でしたか」

 

 血の付いた神獣の腕を──縫合王は引っ込める。

 そして、赫灼の如く怒りに燃える瞳でアカリを睨み付けた。

 

 

 

 

「……先輩を裏切って……みづ姉の、そして私の大事な人たちの身体を……事もあろうに弄んだ貴女を……ッ!! 私が許すとでも?」

 

 

 

 

「……暗野……紫月……ッ!!」

 

 

 

 血塗れの口でアカリは叫んだ。

 目の前に立っているのは、双子を素材にしたディスペクターではない。

 何故ならばディスペクターは魂無き怪物だ。

 そこには──確かに暗野紫月の魂が入り込んでいる。

 

「あの時。あの瞬間!! 龍魂珠と22枚のエリアフォースカードの力で、お前達の魂は封印したはず──」

「だから気付かなかったのです。……たった1人。よりによって私の魂を──貴女は見逃した」

「ただの人間が、あれに抗えるはずがない!!」

「そうですね。私だけの力では──無理だったでしょう」

 

 紫月は目を閉じる。

 そして──

 

 

 

「……最も、ここまで隠し通せたのは──私の守護獣のおかげですが」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 ──数時間前。

 

「っか、身体が消えていくデース!?」

 

 エリアフォースカードが持ち主たちの手を離れた直後。

 動揺する彼らを襲ったのは、周囲のものが消え失せ、そして自らの肉体が粒子となって消えていく怪現象だった。

 

「ブラン先輩ッ!?」

「くそっ、抗えんか……!!」

「師匠!?」

『エリアフォースカードとのリンクが断ち切られておる……!?』

『どうなっておるのだ、一体!? ぐうううう!?』

 

 直後、大嵐が吹き荒れる。

 大地を抉り、木々を消し飛ばすほどの風が巻き起こる。

 1人。また1人、と全員の身体は吸い込まれて消えていく。

 その様を、紫月は黙ってみていることしか出来なかった。

 かつてないほどに大規模な災厄。

 周囲のものが消え失せ、自らの身体も消えていく。

 他の守護獣達も、吹き荒れる大嵐の中、散り散りになっていく。

 

「っ……ごめんなさい、先輩。私、何も出来ませんでした」

「諦めてんじゃねええええええええええええええ!!」

「ッ!?」

 

 吹き飛ばされる中、1人だけ紫月の手を掴むものがあった。

 

 

 

「シャークウガ!? 逃げて! 貴方まで──」

「誰が逃げるかよォォォーッッッ!! テメェを、テメェを死なせるわけにはいかねえんだ!!」

「でもっ……!」

「何とかしてやる、俺は魔術師(マジシャン)の守護獣だ!! 不可能なんて、あるわけねえんだよーッ!!」

 

 

 

 粒子となって消えていく紫月の身体。

 それに向かって、狙いを定めたようにシャークウガは叫んだ。

 

 

 

 ※※※

 

 

 ──あれは、以前。

 ワイルドカードの力で紫月と桑原の魂が入れ替わった時の事。

 

 

「いきなり服を錬成するなんてすごいです、シャークウガ。しかも私のパーカーにさりげないアレンジ」

『そりゃあそうよ、繊維の性質を変化させ、再錬成する……我ながらなかなかよく出来たと思ったぜ』

「……え? 待って下さい、じゃあその繊維は何処から調達して──というか、パジャマ何処行ったんですか? アレみづ姉とのお揃いで大分気に入ってたのですが」

『そりゃおめー決まってんだろ、何から錬成したなんてよ……今着てたパジャマ』

「シャークウガァァァーッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──物質の分解……再構成の応用……ッ!!

 

「水文明の技術力と魔法……それに加えて闇文明の力、ナメんじゃねええええ!!」

 

 シャークウガの杖に、粒子となった紫月が吸い込まれていく。

 そのまま彼は、嵐から離脱したのだった。

 

 

 

 

「煉成「リアニメイト・ブレイン」!!」

 

 

 ※※※

 

 

 

 

『……全く無茶苦茶しますね、シャークウガ』

「……我ながらよくやったよ……」

『ですが、流石に皆さん、この様子では……』

「言い出せねえよなあ……マスターだけ助かったなんてよ……余計に気落ちさせるだけだぜ」

 

 

 

 項垂れるサッヴァーク達。その様子は悲痛そのもので見ていられない。

 工房を用意しながらも、シャークウガはこれからどうすべきかを考えた。

 頼みの綱は幽世に行った白銀耀だけ。

 エリアフォースカードは皆失い、守護獣達の力はガタ落ち。

 そして、あの合体生物・ディスペクター相手には大きな苦戦を強いられる。

 好機が来るまで隠れ潜むしかない。

 シャークウガは──紫月の魂を、カードに変換して裾の中に隠した。

 

「……安心しろよマスター」

『?』

「俺は守護獣だ。あんたの身体を取り戻すまで、しっかり役目を果たすぜ」

『……大丈夫でしょうか。白銀先輩だって……』

「オメーが彼氏の事信じてやんないでどうすんだよ!」

『ですが……此処まで先輩が来れるかも分かりません。チョートッQも無事か分かりませんし……』

「だから何だってんだ!」

  

 シャークウガは繰り返すように、紫月のカードに呼びかけた。

 

 

 

「死ぬわけねえだろ……白銀耀は、殺しても死んだりしねえ!! 俺達が……一番分かってるだろ!!」

『シャークウガ……』

「それまでは、俺が死ぬ気でマスターを守り通す。良いな?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──そして。

 狙いは唯一つだった。

 

 

 

『成程。ブラン先輩たちの身体は、魂を抜かれてああやって怪物の素材にされたのですね』

 

 

 努めて冷静だが、かなり怒気が籠っている。

 声色だけで怒っているのは明白だった。

 

「だけどよ、これはチャンスだぜマスター」

『はい。ディスペクターの力を逆利用すれば、アメノホアカリに大打撃を与えられるやもしれません』

「一か八かだがやってみる価値はあるだろ」

『アレの性格の悪さのことです。きっと私の身体のディスペクターだって……また出てくるはず。その時が……あいつの最期です。高くなった鼻をへし折ってやります』

 

 ただ一つ、と彼女は後悔するように言った。

 

『先輩に私が生きていること言わなくていいのでしょうか……私が生きていると知れば、先輩も……』

「かもな。だけどそうなったら、あいつは絶対にテメェを守ろうと俺の傍に来る。それじゃあ作戦の意味がねえ」

『……ですね』

「それに話なら……夢の中で出来ただろ?」

『……物足りなかったです』

 

 拗ねたように彼女は言った。

 耀の精神に──紫月のカードをアクセスさせたのは、シャークウガによるものだった。

 

「……だよな。だけどもうひと踏ん張りだ。頑張ろうぜ」

『シャークウガは、こういう時……いっつも頼りになりますね』

「だろ? 惚れ直したか?」

『調子に乗らないでくださいフカヒレ』

「しょぼん」

『……冗談ですよ。頼りにしてます、シャークウガ』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 そして。

 シャークウガの特攻によって、紫月のカードは縫合王へと吸収させられた。

 それにより、魂無き怪物に──再び元の魂が戻ったのである。

 

「……ちく、しょう……ッ!! リソースを、あたしの回復に……!!」

 

 アカリの傷は癒えていく。

 しかし、それでも尚ダメージは蓄積されていた。

 王達はもう復活できなくなったが、そうでもしなければ目の前の暗野紫月を倒すことなどできない。

 今や彼女は、ディスペクター最強の王の力を手に入れた白銀耀の仲間と化したのだから。

 

「冗談じゃない!! このあたしを欺くなんて!!」

「貴女が言いますか貴女が」

 

 それに、と彼女は続ける。

 

 

 

「……シャークウガに繋がれた命。ムダにはしません。必ず……此処で貴女を倒します」

「言ってなさい? あたしの破壊神の力で……今度こそ魂諸共砕く!!」

 

 

 

 アカリの背後に不死鳥の如く羽根を広げた破壊神が現れる。

 だが、紫月も臆する様子はない。

 自らに与えられた力を最大限に引き出すだけだ。

 あの新世界王が誕生する前に──

 

 

 

「……力を貸してください。終末縫合王!!」

「破壊してやる……暗野紫月!!」

 

 

 

 塔の頂上にて一足先に、紫月による神との決戦が幕を開けた──

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