学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
──紫月とアカリのデュエル。
「3マナ。《天災 デドダム》を召喚。マナ、手札、墓地を一斉に増やします」
「ッ……ディスペクターの分際であたしに歯向かうなんて!!」
毒突いたアカリは、3枚のマナを支払う。
アマテラスから奪い尽くした力を用いて、一刻も早くケリをつけねばならない。
「3マナで《ボルシャック・栄光・ルピア》を召喚! 効果で山札の上からマナに置いて、それがドラゴンならもう1枚マナブースト!」
マナに落ちたのはドラゴンの《偽りの王モーツァルト》。
それにこたえて、更に1枚マナにカードが置かれる。
「落ちたのは《天変》……流石に早いですね。しかし、貴女が与えた縫合王の力が──貴女の首を絞めることになるのです」
紫月の手に迷いは無い。
怒りに染まった瞳は、新月に潜む帝の呪いを引き起こす。
「──呪文、《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》。効果で山札の上から3枚を見て、その中から2枚をマナに。1枚を手札へ」
さらに、と彼女は続ける。
「効果発動。マナの数×1000。相手クリーチャーのパワーをマイナスします。《栄光・ルピア》を破壊です」
「ッ……!?」
アカリは思わず紫月のマナゾーンのカードを見やる。既に7枚。次のターンで8マナだ。
破壊されたザコに興味はない。
問題は、既に彼女が切札を出す態勢を整えつつあることだ。
「っはぁ、はぁっ……ウソ、でしょ……!? 遅れをとってる……あたしが……!」
それほどまでに自分が注いだ力は大きかったのか、と彼女は後悔の念を滲ませながら敵を睨む。
いや、それだけではない。
初めて自分が手にしたはずのデッキを、あたかも長年使いこんだデッキのように使いこなしている目の前の少女が異常なのだ、と悟る。
マナゾーンのカードを見やる。
先程の《オリジナルフィナーレ》で《生命と大地と轟破の決断》がマナに落ちている。
マナから唱える事で次のターンでもう1度ブーストをかけることが出来るのは目に見えて明かだ。
そればかりかマナから《デドダム》をもう1度場に出す事も出来る。
(これが、暗野紫月……魔術師のエリアフォースカードに選ばれた少女……ッ!! 冗談じゃ、ない!!)
「こんな事、こんな事は許されるはずがない!! あたしが後れを取るはずがない!」
彼女は狂ったような笑みを浮かべた。
そうだ。相手がブーストを繰り返して来るならば、それを遅らせれば良い。
「呪文、《焦土と開拓の天変》!! 効果で山札の上から1枚をマナに置いて、相手のマナを1枚破壊するッ!! 破壊するのはマナにある《生命と大地と轟破の決断》!!」
「ッ……ランデスに訴えてきましたか」
「言ってろ! お前達のディスペクターはあたしが全部作ったんだ! あたしがそれに負ける訳無いでしょ!」
ぜぇぜぇと息を切らせながら、彼女は笑みを浮かべてみせる。
負けるはずがない。相手は人間だ。
しかも自分は神だ。負けるはずが──
「では6マナで《Disアイチョイス》を召喚。その効果で、マナゾーンから《
「……は?」
「その効果で墓地に落としておいた《砕慄接続グレイトフル・ベン》を蘇生します」
それは紫月を守るかのように顕現する。
王龍の鎧をその身に纏った大地の化身だ。
それによって彼女の墓地から一気にマナゾーンへカードが雪崩れ込んでいく。
「あっぐっ、そんな……!!」
「マナに《天変》が見えた時点で、そう来るだろうと思ってました。最初っからランデスさせるつもりでマナに置いたのです。ビマナのようなデッキでマナから唱えるこのカードを本当にマナから唱えたら……その分マナの増え方が鈍くなりますからね」
「ッ……!! そんな、強力な呪文を捨て石にしたっていうの!?」
「それならば、手札にある《Disアイチョイス》からの《
「あっ、ああ……!!」
「《ベン》の効果で、マナから《霊宝ヒャクメ─4》を召喚。相手の手札を破壊し、そしてマナを1枚増やします。これでターンエンドです」
《グレイトフル・ベン》は1ターンに1度、マナからクリーチャーを召喚する能力を持つ。
それがディスタスならば、コストを支払う必要が無くなるのだ。
「っ……白銀耀や、アマテラスとは違う……ッ!! 何なの!? 神を相手にプレッシャーとか感じないの!?」
「さあ、この肉体の所為か、それとも溢れかえる貴女への怒りの所為かは分かりません。ただ一つ言えるのは──私のデュエマは最強の闇使いに教わったもの。そう簡単に破られるわけにはいきません」
「言ってろ……その盤面はすぐに返してやるッ!!」
アカリは6枚のマナをタップしてみせる。
先程受けたダメージに加え、新世界王に回している所為でマナのリソースが安定しない。
そればかりか、ディスペクターに裏切られたという事実が彼女の精神を少なからずかき乱していた。
いや、それだけではない。
先程から沸き立つような焦燥感と嫌な感覚が何なのか、アカリには分からなかった。
「いや、まだだッ……!! あたしは、負けるわけにはいかないんだッ!! 勝ち確まで持ってきたのに、ここで全部ひっくり返されるなんて有り得ないッ!!」
飛び出したのは《イザナギテラス》。
アマテラスを捕食したことで取り込んだクリーチャーだ。
その力を──紫月に向けて撃ち放つ。
文字通り神へと成る進化の力。
「《イザナギテラス》を召喚して、そのまま進化……ッ!! 見ているかアマテラスッ!! これがお前の持っていた力!! それを……あたしが使うんだ!! 屈辱だろうッ!?」
虚空へ向けてアカリは叫び散らす。
その身体は、太陽の光の如く輝き──そして君臨する。
「我こそは、新世界の王神であるぞッ!!
絶唱──巻き起こるは神の歌!! 《神歌の歌姫 アマテラス・キリコ》ッ!!」
紫月も流石に息を呑む。
《キリコ》。かつて、余りの強さにプレミアム殿堂に指定されたサイバー・コマンド。
その源流を組む恐ろしいクリーチャーが目の前に現れたことに驚きを隠せない。
「よりによって《キリコ》……押し潰しに来ましたね」
「攻撃時の効果発動──神歌繚嵐ッ!! 神世太陽ッ! さあ、神の歌に引き寄せられるは荒れ狂うドラゴン達ッ!!」
《キリコ》の歌声が響き割る。
そして次元に裂け目が現れ、次々にドラゴンが降り落ちてくる。
「先ずは《暴嵐竜
暴君龍の怒号と共に全てのクリーチャー達が奮い立つ。
「《八頭竜
多党の龍の咆哮により、大地が沸き立つ。
「《勝利宣言 鬼丸「覇」》ッ!! 《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》ッ!!」
そして、かつて強力過ぎて禁じられた切札の龍が飛び出す。
だが、それだけでは終わらない。
アカリの切札たる破壊神に、聖霊龍が合成されようとしていた。
<ヘヴィ・デス・メタル!! バラディオス!! GotoDispect!!>
「例え王が相手でも、神には誰も敵わないッ!! 敵うはずがないッ!!」
紫月は目を覆いそうになった。
不死鳥の如く羽根を広げる神。
破壊神ヘヴィ・デス・メタルだ。
しかし、その左腕である《ヘヴィ》は切り離されており、そこにあるはずはない聖霊龍が収まっている。
「今ッ!! あたしの世界が核融合して
<We are Dispecter>
「全ては極光の下に消える。《神龍連結バラデスメタル》ッ!!」
現れたのは──破壊神と聖霊龍のディスペクター。
それを前にして、《グレイトフル・ベン》も《ヒャクメ》もタップされてしまう。
「《バラデスメタル》の閃光を前に抵抗は無力。全てのクリーチャーは次のターン、アンタップしない!」
「っ……成程。確かに全体フリーズ持ちは珍しいですね」
おまけにパワー24000のワールドブレイカー。
EXライフで耐性も持っており、決して揺らぎはしない。
「それだけじゃない! 《バラデスメタル》のEXライフが離れた時、相手クリーチャーを全てタップする! そう簡単に突破出来ると思わないでよ」
「確かに強力なデッキです。しかし……先に《アマテラス・キリコ》で攻撃するのが弱点ですね」
「はぁ!?」
言ったはずだ。
先程、突破は難しくないと言ったばかりだ。
にも拘らず暗野紫月は、この盤面で既に次のターンが返ってきたことのことを考えている。
それがどれほどアカリにとって屈辱的だったかは想像に容易くない。
「抜かせーッ!! そのまま《キリコ》でT・ブレイク!!」
「ケアも何もないシールドに突っ込むことがどれほどのリスク行為か教えてあげましょう。S・トリガー……《ルシファー》で相手ターンをスキップ」
「ッ……!?」
驚いて目を見開くアカリ。
すぐさまそこで彼女のターンは終わる。
龍神も、殿堂の切札も、最恐の鎧竜も攻撃することなく彼女の手番は飛ばされた。
「そんな、馬鹿な……!?」
「例え大型を何体並べようが勝てるとは限らない……デュエル・マスターズをナメないでいただきたい」
「ッ黙れ! 《バラデスメタル》が居る限り、あんたに次のターンはやってこない!!」
「次のターンがやってこないのはどちらか、試してみましょうか?」
紫月は──10枚のマナをタップしてみせる。
彼女は自らの顔の左半分をなぞった。
自分の身体に縫い合わされた、片割れの顔。
そこに伝う、無いはずの涙を。
「……みづ姉。どうか力を貸してください」
そして、自らを繋ぎ合わせる悪意の糸を──目の前の暴れ神を倒す為に、ぶつける。
「半分の月と月が縫い合わされる時。獅子の怒号、帝の嘆きを聴け」
<
<YourScreamKing!!>
「……深淵へと還りなさい──《終末縫合王 ミカドレオ》」
<We are Dispecter>