学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
「《ミカドレオ》の召喚時効果……発動です」
獅子の瞳が光る。
紫月の山札の上から4枚が捲られていく。
それら全てが──ディスペクターの王だ。
「《聖魔連結王ドルファディロム》」
天使と悪魔、相反する者同士を繋ぎ合わせた連結王。
「《禁時混成王ドキンダンテⅩⅩⅡ》」
禁断と革命。滅亡の可能性を齎す混成王。
「《零獄接続王ロマノグリラ0世》」
我欲と無欲。高貴なる矛盾を生み出す接続王。
「《勝災電融王ギュカウツ・マグル》」
武力と知力。対局に位置することで極限に至った電融王。
その全てが──紫月の前に並び立つ。
「言ってはなんですが……貴女、どれだけディスペクター作ったら気が済むんですか」
既にこの時点で10体以上犠牲になってるんですがね、と呆れ気味に紫月は龍魂珠に目を向けた。
……やはり、あの珠諸共アメノホアカリを消し飛ばすほかない。
今、この場で。
「ウソ、何で? 何で!? 被造物のくせにあたしに楯突くんだ!!」
「残当です。《ギュカウツ・マグル》の効果を発動。山札の上から4枚を見て、その中からコスト9以下になるように多色クリーチャーを場に出します。《禁断竜王Vol-Val-8》をバトルゾーンへ!!」
「あっ、ぐっ、くそっ、そんなカードまで……!! あたしに全員、歯向かうって言うの!?」
「そりゃあ歯向かうでしょうよ。クリーチャーも、人間も。貴女に都合よく使い潰される道具ではありません。それを……身を以て思い知る時が来たというわけです」
「バカな、バカなバカな! 皆あたしを裏切るっていうの!?」
「裏切ったのは──最初からディスペクターさえも使い捨てるつもりだった貴女の方です。自業自得、因果応報です」
次の瞬間、《ドルファディロム》によってアカリのクリーチャーが消し飛んで行く。
単色である《サファイア》や《鬼丸》、《Ace-Yamata》に《アマテラス・キリコ》が破壊されたのだ。
更に《ドキンダンテ》の効果で《バラデスメタル》の効果も消えていく。
「さて、これで──ターン終了。この時、このターン中破壊されたクリーチャーは合計で4体」
「ッ……あっ……!!」
「残念。次のターンが来ないのは貴女の方でしたね」
へたり込むアカリを前に、《Vol-Val-8》の身体に埋め込まれた《VV-8》の顔が光り輝く。
永久の禁断を前に、次の夜明けなど拝めはしない。
すぐさま紫月のターンがやってくる。
「ターン開始時、《ミカドレオ》の効果発動。場にコスト8以上のクリーチャーは4体以上ある時、《ミカドレオ》の効果発動」
「やめろっ、やめろやめろやめろっ!! そいつの効果は──」
《ドルファディロム》の聖魔入り混じった黒き稲光が、
《ドキンダンテ》の降り注がせた無数の隕石が、
《ロマノグリラ》の放った虚空の魔弾が、
《ギュカウツ・マグル》の放つ怒りの鉄槌が、
《Vol-Val-8》の放つ強大なる斬撃が、
「元より、貴女の得意分野で戦うつもりなどありません。この時点で……私はゲームに勝利します」
そして《ミカドレオ》の放つ神獣の裁きが一斉に放たれる。
「っあああああああ!? ウソでしょう!? アマテラアアアアアアアアアアアアスッ!!」
※※※
「……これで、終わりです」
今の一撃は、例え神であっても耐えられない。
何故ならばこちらも神を縫合したディスペクターなのだから。
アメノホアカリの亡骸は見つからないが、恐らく上半身が消し飛んでいても紫月は驚かない。
「ッ……はぁ……疲れました」
ぺたり、と彼女は座り込んでしまう。
ディスペクターの王5体による一斉攻撃は少なからず彼女にも反動が返ってくるものであった。
しかし、此処で脚を止めるわけにはいかない。
「……龍魂珠を、壊さ、ないと……ッ!!」
「終わってない。まだ、終わってない」
その時だった。
声が聞こえてくる。
龍魂珠から──アカリの声が聞こえてくる。
「ッ……そんな!!」
「よくも、よくも、やってくれたなぁ……!! あたしの身体を、よくも……ッ!!」
紫月は辺りを見回す。
ない。何処にもアカリの身体が無い。
だとすれば何が起こったかは想像に容易い。
あの龍魂珠がアカリの身体を吸収したのだろう。
「こうなったらァ、あたしの……あたしの力を丸ごと……Volzeosに……ッ!!」
融合した五元龍神の胸に、龍魂珠が収まっていく。
紫月はミカドレオを顕現させようとしたが──もう、そんな魔力は残ってなかった。
「あたしに歯向かう失敗作共め!! 滅ぼしてやる、滅ぼしてやるぞ……ッ!! この世界も、もう1度作り直しだァァァーッッッ!!」
※※※
「なっ、何だ!?」
塔を駆けのぼっていた俺は、ただならぬ揺れ方をする床に足をとられていた。
何かが爆発したような音だった。
壁が軋んで崩れかかっている。
床も崩落しかかっている。
これは、塔全体が──崩れようとしているのではないか。
「ま、マズいんじゃない!?」
「マズいって言われてもどうすんだ!?」
『うーん、このままでは全員瓦礫に押し潰されてペシャンコ☆ でありますな』
「久々にそのウッゼぇノリ聞いたわ!! クソが!! どうやったら出られるんだよ!?」
「あたし無理」
『我実体化しても拳がスカるでありますな』
「あああああ!! どうするんだーッ!?」
『落ち着くでありますよ! 今のマスターは我と一心同体!』
──そうか。
だとすれば、パンチの一撃で壁を崩すことだって造作ないはずだ。
ダンガンオーの力を使えばいける。
「おっらぁ!! ……いっでぇ!!」
『あーあ』
「あーあじゃねえよ!! すげぇいてぇんだけど!!」
『我と心を共鳴させるでありますよ!』
「共鳴ってどうやって──」
「ねえ、上!! 上見て上!!」
「え?」
『え?』
俺はふと言われるがままに上を見る。
上の階の床が──丸ごと落ちてくる。
「うおおおおおおおお!! 何とでもなれええええええええ!!」
『ぎゃあああああああ!! 何とでもなれでありまあああす!!』
叫んだのはきっと同時だったと思う。
拳は一瞬でレンガの塔をブチ砕き、そのまま俺達は雪崩れ込むように外へ飛び出したのだった。
なるほど、きっと共鳴ってこういうことだったんだろう。息を合わせろとかそういう意味合いだ。簡単だね。
問題は──俺には羽根がない。そのまま空へ飛び降りる形になったのであるが。
「落ちるあああああああああああああ!?」
「脱出は出来たね!」
『出来たけどこのままでは全員落ちてペシャンコ☆ でありまあああす!!』
「どうにかならねええのかあああああ!?」
『サンダイオーの力を顕現出来れば……』
「いきなり言われて出来るかアホーッ!!」
崩れていく塔。
その瓦礫を躱していく。
サッヴァーク達は無事だろうか。
そもそも俺は助かるのだろうか。
「ッ……くそっ、誰か──助け──ッ!?」
その時。
視界に落ちていく影を見た。
黒いローブを身に纏い、落ちていく誰か。
その顔を見た時。
「……紫、月……ッ!?」
俺の身体に、血が駆け巡っていった。
分かっていた。
相手は紫月の顔をしただけのディスペクターだなんてこと。
それでも──何処か胸がざわついて、飛び出さずにはいられなかった。
「紫月ーッッッ!!」
背中に羽根が生えたようだった。
拳が重機になったようだった。
足が、推進器になったようだった。
例え魂がそこに無くとも、大好きな女の子の身体が地面に落ちていく様がガマン出来なかったのかもしれない。
俺は一目散にとんだ。
目の前を塞ぐ瓦礫を拳で砕き、脚場にして飛んだ。
そして──その身体を抱きとめたのだった。
「ッ……」
なんて声を掛ければ良いか分からない。
翠月さんと紫月の顔が半々で繋ぎ合わされた縫合王の身体であることは間違いない。
だけど、抱きとめずにはいられなかった。
その身体はボロボロで、顔は焼け爛れていた。
目はぱっちりと閉じて、目を覚ます様子はない。
『マスター、こいつは……敵でありますよ! 紫月殿の顔を……!』
「それでも放っておけるかよ!! ……塔の爆発に、巻き込まれたのか……!?」
「……先、ぱい……?」
驚いて俺は彼女をとり落としそうになった。
小さく、彼女の唇が動いていた。
それも──俺のことを呼んでいる。
聞き間違えでは、ないよな……!?
「……紫月……? 紫月……なのか?」
※※※
意識が、少しだけ戻って来た。
そうか。私は今、先輩の腕の中にいるのか。
目が、見えないけど、彼の声は分かる。
あの優しい体温も分かる。
だけど、もしここで先輩を呼んだら、先輩は悲しむだろうか。
この身体に私の魂が宿っていることを、なんて説明すれば良いだろう。
でも、ダメだ。
もう、言葉を紡ぐ気力もない。
先輩。大好きな先輩。私が何処に行っても──やっぱり先輩だけは私を見つけてくれるのですね。
でも、もう先輩の姿も見えない。
アメノホアカリのことを笑えませんね。
これもきっと報いなのでしょうか。先輩を泣かせた報いなのでしょうか。
一番傍に居て欲しい時に、私は先輩の傍に居なかった。居てあげられなかった。
そのツケが回ってきたのでしょうか。
ああ、そうやって声を上げて泣かないで。
私は──やったんです。自分に出来ることをやり切ったんです。
……そうですか。やっぱり……どうやっても、私は先輩を悲しませてしまうのですね。
……ああ、言わせてほしかった。最期に、せめて──貴方と一緒に居たかった、と──
※※※
縫合王は──何も言わなかった。
まるで希うようにして俺に抱き着いていた。
そして、そのまま──消えていった。
灰のようになった彼女は腕の中で零れ落ちていく。
俺はその体温を感じられなくなるまで、腕を──動かさなかった。
「ッ……!!」
縫合王の身体に紫月の意識が僅かに残っていたのかは分からない。
だけど一つだけ言える事がある。
「俺が……取り戻す。お前の身体も、魂も……ッ!! こんなクソったれた運命をブチ壊して……取り戻す……ッ!!」
俺は──空を睨む。
崩落した塔から、巨大な何かが現れていた。
いや、それはどんどん膨れ上がるように大きくなっていく。
「見ィ、つけぇ、たァァァァァーッッッ!!」
何だアレは。
幾つもの龍を繋ぎ合わせたような巨大なディスペクター……なのか。
だが、その胸には巨大な珠が収められている。
声はそこから聞こえてくる。
「龍魂珠……!! ってことはあれは、アメノホアカリ!?」
「ッ……何なんだよ、あの姿は!?」
「もう、もう許さない!! この世界諸共お前達を滅ぼしてやる!! 金輪際生まれ変われないように、輪廻の輪から消し飛ばすッ!!」
怒号にも似た声が飛んできて、体中を震わせる。
だけど──好都合だ。
よりによって目的の龍魂珠を引き下げてやってきてくれたんだからな。
「あいつ、暴走してる……デカすぎる力を抑えきれてない!!」
「行くぞエッ子、チョートッQ!!」
『応、であります!!』
「これがラストバトルってわけね!!」
星さえも飲み込まんほどの巨大なディスペクター。
戦力差はハッキリ言って絶望的かもしれない。
だけど──負けるわけにはいかない。
この戦いに、仲間達の身体が、魂が、そして俺達の世界が掛かっている。
「……力を貸してくれ、モモキング!! そして……
「滅べ、滅んでしまえェェェーッ!! お前達は此処で──終わりだァァァァーッッッ!!」
叫ぶ巨大な龍に向けて、俺は
「終わったりしねえよ。俺達の歩んできた道は……これからも続いていくッ!!」
『新世界に逃げたようなヤツに、我がマスターは負けないであります!!』
<Wild……DrawⅣ──EMPEROR!!>
「──勝負だアカリ!! 俺達の世界を……仲間を!! 返してもらうぜ!!」