学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR147話:切札たち

 ※※※

 

 

 

「いったたた……ッ! 何が起こった……!? 急に塔が崩れたと思ったら、何なんだあの巨大な龍は……ッ!?」

 

 

 

 バルガ・ド・ライバーは遥か上空を眺め絶句する。

 そこには、星程の大きさの龍が咆哮を上げていた。

 サッヴァークも、そしてオウ禍武斗もQXも。

 皆、戦場と化した空の上を見やる。

 

「最早加勢することもままならぬか」

「ふん、サシに持って行けたのだ。後は強い方が勝つ。それだけであろう?」

「……此処が正念場じゃ……踏ん張れ、白銀耀……ッ!!」

 

 拳を握り締めるサッヴァーク。

 世界は──耀の手にかかっている。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ここで全てが終わる。何度でも終わる。あたしが……何度でも作り変える!! 新しい太陽を!! 空を!! 夜明けを!!」

 

 

 

 巨龍──その胸に納められた龍魂珠からアカリの声が聞こえてくる。

 ヴォルゼオス・バラモルド。

 それが、あのディスペクターの名前。

 5体もの龍を歪に繋ぎ合わせ、そのパーツがバラバラに浮かんでいる状態だ。

 この状態でも今までの王のどれよりも凄まじい力を持っているのに、これが本当に顕現したらどうなってしまうのだろう。

 

「じゃあ、あたしのターン……マナに《新世界王の思想》をチャージ──このカードは3色カードだけど、アンタップインする!」

「ッ……!?」

 

 何だあのカード。

 火、水、自然の3色のカードだが、G・ストライク以外能力がない。

 そしてマナに置かれたらアンタップした……まるでマナに置くためのカードじゃないか。

 

「2マナで《地龍神の魔陣》を発動ッ……!!」

 

 ヴォルゼオスの前に魔方陣が浮かび上がる。

 そこからマナが溢れ出していった。

 水と自然の呪文、そしてG・ストライクを持ってるのか……!

 

「くっすす、まさか追いつけると思ってる? 《魔陣》の効果で山札の上から3枚を見て、《滅印連結ヴァルハルザーク》をマナに置くよ」

「こっちは2マナで《メンデルスゾーン》を発動!! 効果で《ボルシャック・スーパーヒーロー》と《ボルシャック・栄光・ルピア》をマナに置く!」

 

 マナブーストでは追いつけている──はずだ。

 だけどなんだ? 《フェアリー・ミラクル》でも握ってるのか?

 いや、違う。

 あのアンタップするカードを見るに、次の動きは──

 

「じゃあ行くよ? 《新世界王の権威》をマナに置く。そしてアンタップイン!」

『またであります!?』

「4マナで《獅子王の遺跡》! 効果で山札の上から3枚をマナゾーンへ!」

「しまった……マナゾーンにカードが3枚以上!?」

 

 多色だらけのこのデッキで、動きを潤滑にするためのカードか!

 最速で3ターン目に《獅子王の遺跡》の多色マナ武装が成功することなど有り得ない。

 何故なら、2ターン目にブーストを打つための単色カード、そして3ターン目に《獅子王》を打つための単色カードが必要だからだ。

 だけど、あのアンタップする新世界王の~ってカードがあれば、この不可能な動きが可能となる。

 アカリのマナは一気に、4枚から7枚へと跳ね上がった。

 

『次のターンには、相手は8マナであります!!』

「なら──こっちは5マナで《王来英雄 モモキングRX》を召喚!!」

 

 その効果で手札を入れ替えて、そのまま──スター進化だ!

 

 

 

 

<ボルシャック・NEX──ローディング>

 

 

「これが俺の灼熱の切札(バーニング・ワイルド)!! 《ボルシャック・モモキングNEX》ッ!!」

 

 

 

 

 炎が爆ぜる勢いで《NEX》は顕現する。

 それは次に進む意思。

 此処でアカリを斃して、俺達の未来へ進むという覚悟の証だ。

 

「《NEX》の効果発動! 山札の上から1枚を表向きにして、それが火のクリーチャーなら場に出す! 《ボルシャック・NEX》をバトルゾーンへ!」

 

 鎧を身に纏った龍が炎と共に更に現れる。

 《ボルシャック・NEX》は、《ルピア》と名の付くファイアー・バードをバトルゾーンに出す効果を持つ。

 従って、これで更に横にクリーチャーが並んでいくのだ。

 

「デッキから《栄光・ルピア》を場に出して、更にマナを増やす!」

「ッ……ふふっ、死に損なった人間如きがあたしに今更勝てると思ってる?」

「思ってるさ!! 思ってなきゃ、今此処には立ってない!! 《モモキングNEX》で攻撃ッ!!」

 

 飛び出す《モモキングNEX》が巨大な爪を振りかぶって、時空に穴を開ける。

 

 

 

 

「俺は《モモキングNEX》の効果で──更に《ボルシャック・クロス・NEX》を場に出すッ!!」

 

 

 

 来たるは最強の”NEX”。

 こいつの炎で、アカリの野望を砕くッ!!

 

「《モモキングNEX》でシールドをW・ブレイク!!」

「……トリガーは無いよ」

「そのまま──《クロス・NEX》でT・ブレイクだ!!」

 

 大剣がアカリのシールドを全て切り裂いた。

 これでシールドは──ゼロだ!!

 

「流石に甘いよ。勝てると本気で思ってる?」

「ッ……!?」

「……S・トリガー。呪文、《ドラゴンズ・サイン》! 効果で手札から《龍風混成 ザーディクリカ》をバトルゾーンへ!」

 

 宙に浮かぶまばゆい刻印。

 そこから、あの水晶と炎がないまぜとなった龍が降臨する。

 あいつは確か、呪文を墓地から唱える効果を持つディスペクターのはずだ。

 

「《ザーディクリカ》の効果発動──墓地から呪文《ドラゴンズ・サイン》を唱えて、手札から光のドラゴンをバトルゾーンへ!!」

 

 

 

<ガルザーク!! ヴァルハラ・パラディン!!>

 

 

 

 

「決定づけられたのは絶対なる敗北の運命」

 

 

 

<──GotoDispect!!>

 

 

 

 

「私の世界で滅んで消えろ。……《滅印連結 ヴァルハルザーク》ッ!!」

 

 

 

 空に浮かぶ印から、それは現れた。

 鎖に繋がれた死の龍と、聖なる龍の組み合わさったディスペクターだ。

 

「EXライフ……連結完了。《ヴァルハルザーク》の効果で《ボルシャック・NEX》をタップするよ」

『折角作り上げた盤面が一瞬でひっくり返されたであります!?』

「ターン……エンド……!」

 

 《ガルザーク》を組み込んでいるだけあって、あのディスペクターもなかなか凶悪そうな面構えをしている。

 気掛かりなのは場のクリーチャーが出た時にタップするというコイツの能力だが、それだけで済むとは思えない。

 

「あたしのターン──5マナで《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》を唱えるよッ!!。効果で、山札の上から3枚を見て、そのうちの2枚をマナに。残りを手札に……ィ!!」

 

 獅子王の号砲が轟く。

 そして、それはアカリのマナと手札を増やすだけではない。

 一挙に俺の盤面をも焼いていく。

 

「そして、マナの枚数は10枚! 《ボルシャック・モモキングNEX》のパワーをマイナス10000して破壊するからねっ!」

「なっ、《モモキング》!?」

「進化クリーチャーを犠牲にして生き残ってもムダ!! パワーが0になったから、進化元の《RX》も破壊だぁ!!」

 

 鎧が溶解し、中に居た《RX》までもが崩壊する。

 例え置換での除去耐性であっても、パワーマイナスには敵わない。

 完全にスター進化キラーのカードだ……!

 

「更に、相手のクリーチャーが破壊されたので《ヴァルハルザーク》のパワーは+6000! そしてあたしのシールドを1枚回復する。これが、合計2回発動する!!」

「パワー+12000、そしてシールドが2枚回復した……ッ!?」

 

 これでアカリのシールドは合計で4枚。

 一挙に巻き返されてしまった。

 しかし、蹂躙劇は終わらない。

 死の臭いを身に纏ったディスペクターが、今度は《クロス・NEX》を狙って飛び掛かり、円状の刃──チャクラムで切り裂いた。

 

「《ヴァルハルザーク》のパワーは19500!! 《ボルシャック・クロス・NEX》を攻撃して破壊!! 更に相手クリーチャーが破壊されたので《ヴァルハルザーク》の効果発動。シールドを追加し、このクリーチャーのパワーを+6000する!! そして、《ザーディクリカ》で《ボルシャック・NEX》とバトルして破壊!! ただし、EXライフであたしだけが生き残るからッ!!」

「盤面が一瞬で溶けた……!?」

「ターン終了時、《ザーディクリカ》の効果発動。呪文を唱えたから、《栄光・ルピア》を破壊して1枚ドローだ!」

 

 これでアカリのシールドは合計で6枚にまで回復した。

 ほぼほぼ、あの《ヴァルハルザーク》が暴れ回ったからだ。

 しかも、場の2体のディスペクターを処理したとしても、シールドは結局元の5枚……ッ!?

 そして、俺のクリーチャーは全滅だ。

 もう、1体も居ない。

 

「くっ、あははははは!! 元通り。元通りなんだよ、おじいちゃん!!」

 

 アカリの高笑いが龍魂珠を通して聞こえてくる。

 

「覚えてる? おじいちゃんが最初にあたしと会った時のこと!」

「……最初……」

「そうだよ。最初の最初。時間Gメンのシー・ジーにおじいちゃんが追い詰められていたあの時のこと」

 

 ──そうだ。

 時間Gメンによって、歴史が書き換えられて、皆がデュエマを忘れてしまった。

 それが全ての始まりだった。

 そして俺はその時、一緒に戦ってきた仲間も、一緒に過ごして来た部活仲間も、そして──思い出も。

 全て、いっぺんに失った。

 俺だけが世界に取り残されるという形で。

 

「歴史改変を受け付けない特異点のおじいちゃんは、一人ぼっち。それを助けたのがあたしだったよね?」

「ッ……何が助けた、だ、いけしゃあしゃあと!!」

『誰の所為で今、こんなことになってると思ってるのでありますか!!』

「でも考えてみてよ、おじいちゃん。今の状況。あの時と似てない?」

「……!」

「仲間はもう居ない。世界は変わり果てた。そしてそこにおじいちゃんは一人ぼっち。たった一人っきり!」

 

 彼女は手を広げてみせる。

 自らの新世界を誇示するかのように。

 そしてそこに俺の居場所はない、と示すかのように。

 

「……結局の所。頑張っても無駄だったんだよ、おじいちゃんは」

「ッ……」

「今のシールドを見て? 墓地へ送られたクリーチャー達を見てよ? ほうら、全部ムダだったでしょ?」

 

 墓地のカードを見やる。 

 《モモキングRX》に、《モモキングNEX》。

 そして、《ボルシャック・クロス・NEX》。

 普段ならば勝負を決めていてもおかしくないクリーチャー達。

 それらが全て、無惨にも破壊されている。

 

「デュエリストは同じことの繰り返し。今持ってるデッキを手に入れて、それでも満足できなくなったら更に強いデッキに変える。それの繰り返し。お爺ちゃんも例外じゃない」

「……」

「でも、それで勝てなかったらさ、今まで見捨ててきた他のカードに申し訳が付かないと思わない? 意味が無かったと思わない? 折角手に入れたカードが全部、ムダだったってわけ。慣れないドラゴンデッキで頑張ってたみたいだけどさ、大人しくGRの入ったジョーカーズを使えば良かったんじゃない? 折角集めてきた切札達が泣いてるよ」

「ッ……違う」

「あたしが散々強化してあげた、あのジョーカーズで! 《バーンメア》で! 《ジョラゴン》で! 戦ってれば、違ったかもね? 自分のデッキが信じられなかった?」

 

 違う。そうじゃない。

 あのデッキも間違いなく、大切なカード達だ。

 今まで歩んできた俺の軌跡だ。

 だけど──

 

「このデッキにしたのは意味がある……ッ!! 《モモキング》は俺にとって、誰も知らない未来を切り開く剣だ!! 俺が運命に抗って、未来に抗って進んだ証拠なんだ!!」

「でも。おじいちゃんは結局あたしには勝てない。あの《ドルファディロム》を見て悟っちゃったんでしょ? 今までのジョーカーズで勝てる相手じゃない、ってさ」

「ッ……」

「そのための《モモキングRX》だよね。でも、それも負けちゃった今。どうやってあたしに勝つの? 言っとくけどあたし、まだ切札何にも出してないよ? まだ前哨戦だってのにさ、切札を使いきっちゃってどうするのかなあ? かなあ?」

 

 慣れないドラゴンデッキ──確かに、この新世界に突入してからずっとそれで戦ってきた。

 最初はデッキを無くしたことによる成り行きだった。

 サッヴァーク達が拾ってくれた元のデッキが手元にある今、それで戦うべきだったかもしれない。

 きっと、ジョニーやシルバーならばひっくり返せたかもしれないとも過った。

 

「モモキングは死んだ!! NEXも死んだ!! そして、仲間も皆死んだッ!!」

 

 龍魂珠が──妖しく輝く。

 その中からアカリの声が響いていく。

 

 

 

 

「もう1つの皇帝(エンペラー)が必死に生み出したんだろうけど、結局……大したことは無かったよね! 残念でしたぁぁぁーっ!!」

 

 

 

 

 

 そんなはずはない。

 もう俺は──迷わない!!

 

 

 

 

「テメェの言う事に、もう耳なんて貸さねえよ!! まだ勝負は終わっちゃいない!! 始まったばっかだ!!」

『モモキングは今やジョーカーズ全ての意思を継いだ王!! そして、モモキングは間違いなくマスターが自らの力で手に入れた正真正銘のワイルドカードでありますよ!!』

 

 

 

 そうだ。チョートッQの通りだ。

 何でそんな簡単な事を忘れるわけがない。

 モモキングだって──ジョーカーズなんだ。

 俺の……俺達の、立派な切札じゃないか!!

 

「悪いけど……俺は、このデッキでお前と闘うことに後悔も無ければ負い目もねぇよ!!」

「ッ……はあ?」

「ジョーカーズは、切札達を意味する言葉。俺が今まで進んできた軌跡の証! デッキのカードだけじゃない。俺を此処まで成長させてくれた、今までのデッキのカード全てが俺の切札だ!!」

「意味が分からない!! デッキに入ってないカードの、何が切札だっていうの!?」

「経験が!! 知識が!! そして、思い出が!! 仲間が!! 俺が……未来へ進むためのアクセルになる──」

 

 俺は一歩踏み込んだ。

 

「同じじゃねえんだよアカリ。あの時と何にも同じなんかじゃない。変わってないなんてことはない。悔しかったって思いが、辛かったって思いが、俺を……此処まで引き上げた」

「何を今更!! これから死ぬのに威勢だけは良いんだからねえ、笑っちゃうよ!! 全部無駄になって消えちゃうのにさ!!」

 

 無駄になんてならない。無駄になんてしない。

 嬉しかったことも。

 悲しかったことも。

 楽しかったことも。

 辛かったことも。

 それが全て、俺の力になったんだ。

 

 

 

 

 

「全部だ。今までの全てが……お前を撃ち抜くための弾丸になるんだッ!!」

 

 

 

 

 

 手に取ったカードは──燦然と輝いていた。

 それが来たのは必然とさえ思えた。

 ベルトにぶら下げているもう1つのデッキケース。

 継ぎ足し継ぎ足しして、最早原型が無くなったジョーカーズのデッキに触れた。

 

 

 

「力を貸してくれ……皆!!」

『我らの殿(しんがり)はモモキングッ!! 未来の、次世代の、そして──新時代の王でありますよ!!』

 

 

 

<ジョーカーズ・ローディング>

 

 

 

 

 モモキング!!

 

 モモキング!!

 

 モモキング!!

 

 

 何処からともなく。

 声援が聞こえてくる。

 全てのクリーチャー達の歴史を継承し、そしてジョーカーズ達の想いを背負った存在。

 赤き鎧を身に纏った龍が、無数の刀を顕現させた。

 その1本1本に、ディスペクターにされていたクリーチャー達の顔が刻印となって刻まれていく。

 

 

 

 

「オメーが有象無象と斬って捨て、ゴチャゴチャにしたクリーチャー達の……怒りを、悲しみを!! 全てこの刀に込める!!」

『さあ皆の者よ照覧あれ!! これぞ時の波をも超え、いずれ来たる栄光の未来へと至る切札の王(ジョーカーズ・キング)!! 王の中の王の誕生であります!!』

 

 

 

 

 これが──前に進むということだ、アカリ!!

 全部背負って進むということなんだ!!

 痛くて、辛くて、苦しかった日々も、楽しかった思い出も、そして今まで手にしてきたカード全ても!!

 

 

 

 

 

「行くぞ!! 俺の切札(ワイルドカード)──《未来王龍 モモキングJO》ッ!!」

 

 

 

 

 全部背負って、進むということだ!!

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