学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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エピローグ:白紙の未来

 ※※※

 

 

 

 

 その後。

 俺は、かつての部室に連行されることになった。

 そして、ブラン、桑原先輩、黒鳥さん、花梨、翠月さんも交えて、これまでの経緯を話すことになったのだった。

 

 

 

「はぁぁぁーっ!? それじゃあ私達は約2年間の間、アカルのことを忘れたまま過ごしてたってことデース!?」

『然りッ!! そうなっていてもおかしくはないでござるッ!!』

 

 

 

 ──小さくなったモモキングが言う通りである。

 実際、龍魂珠をブチ砕いた後俺がどうなったかと言えば、身体自体はエリアフォースカードに守られて無事だったものの、その時空いた穴に吸い込まれ──どこかの世界へ飛ばされてしまったんだという。

 身体が消えたのは、粒子レベルでの転移だったからだとかなんだとか、怖すぎる。

 そして、その状態で歴史が修正されてしまったので、俺という存在がこの世界ではなかったことになっていたのではないか、と推測する。

 

「その後どうしたんですか……?」

「ちょっとまた、色々面倒事に巻き込まれて……モモキングと一緒に色々やってた。元の世界に戻る為にな」

「その色々の内容を聞きたいのデスけど!?」

 

 言わない。絶対に言わない。

 ……出先でも、その世界に迫るデカいクリーチャーをブッ倒した話とかしたら、絶対に怒られそうだし。

 だから、その冒険のことは敢えて心の中に留めておくとする。

 そして、そこで元々皇帝(エンペラー)の守護獣だったのが、完全に実体化したクリーチャーが──

 

『申し遅れたでござるッ!! 拙者、吉備津桃王──モモキングと申すでござるッ!! 不肖、耀氏の護衛を努めさせてもらっていたでござるッ!!』

 

 こいつだ。

 本当に2年間世話になった。

 アカリ戦で振るった力は失ったから、また《勝熱龍》からの育て直しだったけど……今では立派に《勝熱百覇》のカードに成長している。

 

「……でも、チョートッQは何処に行ったんデス!?」

『そうじゃ。あやつの姿が見えん』

「……多分。帰ったんじゃねえかなあ」

 

 あいつは──向こうに着いた時はもう居なかった。

 元々アイツが未来から来たのなら、元の主……未来の俺の所に向かったんじゃないだろうか。

 分からないけど、何となくそんな気がする。

 

「……あいつは、あいつの帰る場所があるからさ」

「……探さなくて良いのか? 白銀」

「はい。きっと、大丈夫だと思うんです」

 

 それに──生きていれば、また会えるかもしれない。

 そんな気がしたのだ。

 

「まあそれでその……漸く、帰って来れた。こんなに早くみんなに会えるとは思ってなかったけどさ」

「早く、じゃないデス! うっうっ、どっちにしても、シヅクとミヅキの卒業パーティ兼、アカルのお帰りパーティになっちゃったのデスよ!! 感情が色々ぶつかり合って迷子デース!!」

「ぐえーっ、ブラン、ギブ!! ギブ!!」

 

 

 

「部長ッ!!」

 

 

 

 折を見てか、火廣金が駆け寄ってくる。

 

「ずっと、謝りたかった。ロストシティでのこと……」

 

 火廣金は進み出るなり、頭を下げてくる。

 そうか。結局──こいつとは仲直り出来ず仕舞いだったか。

 

「俺は……結果的に部長を傷つけてしまった。そればかりか、ずっと部長を逃げていた。……一発、ぶん殴ってほしい」

「火廣金」

「っ……」

「……いいのか?」

「そうでなければ、俺の気が済まない」

 

 くいくい、と頬を指差す火廣金。

 殴れ、ってことか。

 確かにそうだ。けじめは──つけておかないとな。

 

 

 

 

 

 

 げ ん こ つ

 

 

 

 

「ッ……あ”……!! ああああ!! 頭が、割れるッ……割れ……」

 

 

 

 ……取り合えず脳天に叩きこんでおくことにしておいた。

 言いたいことは沢山ある。

 だけど取り合えず一つだけ。

 

「バイク仮面」

「ッ……え」

「バイク仮面とモルネクレディって何なんだよ!? 海外に帰ったとかウソ吐きやがって!! テメェら揃いも揃って雲隠れしやがって!! 俺がどんだけ心配したと思ってんだよ!?」

「怒るのそっち!?」

「たりめーだよ。他人のフリしようと思ったくらいだわ恥ずかしい!!」

「好きでやったんじゃあ……あ”あ”あ”……いたたた」

 

 あれだけはマジで看過できない。

 傍で黒鳥さんが珍しく笑ってるけどあんたも1枚噛んでただろ、知ってんだぞ。

 

「ったく。大事な部員と……幼馴染の心配するに決まってんだろ」

「耀……」

「火廣金の事、見てくれたんだろ? ありがとな、花梨」

「うん……だってさ。というわけで良かったね、緋色っ」

「あ、ああ、痛い……頭蓋が、割れッ……」

 

 取り合えずこれで、長らく解消できていなかったわだかまりも消えた。

 火廣金も、花梨も──無事でよかった。

 京都では神類種を相手に戦ってくれてたみたいだからな。

 

「それより耀」

「ンだよ花梨」

「彼女さんが、すっごい怒ってるみたいだけど?」

「え?」

 

 花梨が指差したのは──さっきからずっとむくれている紫月だった。

 俺に抱き着いたまま離れる様子が無い。

 

「ぎゅーっ……」

「あの、紫月さん? ここ一応人目があるから……そろそろ離してほしいなって」

「ヤ」

「すっかり幼児退行してるデス……」

「あーあ、確かにこれじゃあ紫月ちゃんに負けても仕方ないかー。あたしも見習おうかな? 緋色っ」

「君の本気の抱擁を受けたら肋骨が砕ける……」

なんか言った?

「何でもない……」

 

 ……どうやらすっかり花梨の尻に敷かれているみたいだ。

 2年間で二人の関係も少しは進んだのだろうか。

 まあ、そうだな。

 2年……か。

 あまりにも、短いようで長い時間の隔たりだったな。

 

「ところで紫月さん? そろそろ今度は俺のアバラが逝きそうなんですが」

「逝けばいいです」

「やっちゃえ、しづ!」

「やめて!! 煽らないで翠月さん!!」

「そこをイイ感じに決めるといいぞ」

「了解です師匠」

「ああああ、苦しいと言うかなんというか、すっごい力が強、いたたたたた!?」

 

 どうやら、忘れていた間もずっと、心の中にぽっかりと空白が空いて上の空だったらしい。

 そうだよな。忘れたくて忘れたいヤツなんて何処にもいない。

 それくらい紫月は俺の事を思っていてくれたのだろう。

 だけどそれはそれとしてそろそろ腕の力を緩めてくれませんかね、痛い。

 

「残当ねえ、白銀先輩は責任取りなさい」

「翠月さん!?」

「うーん、やっぱり耀は罪作りだよねっ!」

「花梨まで!?」

「DEATHデース☆」

「ブラン!?」

 

 満場一致で「責任取れ」ムード。

 誰も俺を助けてくれないのか……まあ仕方ないと言えば仕方ないのだけど。

 

「ッ……とにかく! 私、怒ってます」

「何で!?」

「だから……デュエルです。負けた方が勝った方のの言うことを聞く! 何でも、1つ!」

 

 彼女は──自らのデッキを取り出す。

 成程、そういうことか。

 それなら話が早い。 

 

「モモキング! 今回は引っ込んでてくれ。久々に、こいつらを……使ってやりたいんだ」

『了解でござる!』

 

 頼むぞ《メラビート》。久々に出番だ。

 

「シャークウガ。手出しは無用です。本気の、最新の私で行きます」

『おお怖い怖い──マスター、ガツンとやってやれ!!』

「おっと! 久々にシヅクとアカルのデュエルデスよ!」

「ふん、根っからのデュエルバカめ。なんだかんだ理由をつけて、恥ずかしいから怒ってるフリをしているだけだろう紫月」

「師匠は黙っててください!」

「手加減はしねえぞ、紫月!」

 

 カードを並べ、デッキを構える。

 

「やっちまえー、白銀―ッ! 派手にやっちまいな!」

「しづーっ、頑張ってー!」

「部長。次は俺の相手もしてもらおうか」

「あたしもあたしも! 耀と久々にデュエルするから!」

「ならば僕の相手もしてもらおうか」

「ああ! 全員まとめてかかってきやがれっ!」

 

 

 

 

 

「──決闘(デュエル)ッ!!」

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィ、キィ……!!」

 

 

 

 

 ──アメノホアカリは再起しつつあった。

 それは、耀に滅ぼされた60年後からやってきた方のアメノホアカリではなく──此処まで一切動きの無かった()()()アメノホアカリであった。 

 自分のあずかり知らぬ間にエリアフォースカードが無くなっている。

 ついでにマナも消え失せた。

 そして神類種たちも死に絶えた。

 だが、それでも力は取り戻しつつある。

 全盛期には遠く及ばない。

 だが、此処まで散々邪魔をしてくれたエリアフォースカードの使い手たちを滅することくらいならば出来る。

 後は、丁度良い人間を喰らうだけのことだ。

 

 

 

 

「はーい確保ー」

 

 

 

 

 かぽっ。

 虫けらの姿の神類種は、いきなりのことで何があったのか分からなかった。

 出ようとしても出られない。

 ガラスの檻に彼女は捉えられていた。

 

「キーッ!?」

「あぶねーあぶねー、まさかちっこいなんてよ……なあ、アメノホアカリ!!」

「トリス、ぬかるナ。そいつ大分狡賢いゾ」

「おうよロス。誰に言ってやがる」

「キーッ!! キーッ!!」

「さーて、ファウストのところにさっさと帰るか。ヒイロのヤツ、今日帰ってくっかなあ」

「キィーッ!! キィーッ!!(出せーッ!! 出せ人間ンンンンッ!!)」

「あれだろ取り合えずもう22分割してみるか? 何が出てくるか楽しみだぜぇ」

「」

 

 ……アルカナ研究会。

 被検体となったクリーチャーがただで出られたことはない。

 一先ず言えるのは、未来永劫二度とアメノホアカリは悪さが出来なかったということである。

 トリス・メギスの邪悪な笑顔を前に、彼女は絶望するしかなかったのだった。

 画して、神類種の野望は今度こそ絶えたのである。

 

 

 

 

 

「……ファウストと……仲間達と仲良くやれよ」

 

 

 

 

「?」

 

 ふと、トリスは振り向いた。

 そこには──誰も居なかった。

 

「どうしタ、トリス」

「いや、なんか婆さんの声が聞こえた気がしたんだが……気のせいか」

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──宇宙。

 その何処かの星の近くで。

 

「あーあ、ひどい目に遇った! でもご主人様が戻ってきてよかったよー」

「……ウゥ」

「今度は、愛のために戦ってみるってのはどう? ご主人様♡」

「ウゥゥ……」

 

 禁断は──唸るばかり。

 しかし、エッ子の意思は禁断の意思。

 それに同調しないドキンダムXでは無かった。

 

「愛と正義の禁断ってのもカッコいいと思わなーい? ねえ?」

 

 エッ子は思い返す。

 人の持つ愛の力が、どれほどの奇跡を起こすかを。

 無軌道で破滅的な破壊も悪くはない。

 むしろ、それこそが自分達の本来のあり方だ。

 

 

 

「だって。ああいう生き方も……悪くないよねー!」

 

 

 

 だからこそ。

 それに抗ってみるのも面白いと思ってしまったかもしれない。

 彼らは──今日も宇宙を進んでいく。

 地球に次にやってくるのは、遠い遠い未来の話かもしれない。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ほーん、今度の相手は……あいあむじゃすてぃすいふゆーうぉんと? ってヤツやな。京都に封印されとった王のクリーチャーや」

「大丈夫? 荷物持った? カードは?」

「アホ!! おかんかお前は!!」

「誰がオカンよ! っ……もう!」

 

 ぷんすか、と怒る芽衣。

 出かけようとする矢継に飛び掛かるなり──抱き着き、そのまま唇を奪った。

 

 

 

 

 

「……オカンはこんなことせぇへんよ……すかたん」

「っ……大胆やなぁ芽衣ちゃん」

 

 真っ赤にしたまま矢継は俯く。

 そんな彼を尻を、思いっきり芽衣は蹴飛ばした。

 

 

 

 

「誰の所為やと思ってはるん! ほら、早く行った行った!」

「はいはーいっ!!」

 

 

 

 こうして。

 神力を操る彼らの日々は続いていく。

 普通とは少し外れた日常もまた、彼らにとっては当たり前のものである。

 

 

 

(はぁ、ホンマにせわしい。鶺鴒から来たあいつらは……今頃、何しとるんやろなあ)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 その後は大変だった。

 デュエル大会に発展して、結局皆疲れてそのまま帰ってしまって。

 で、何か気を遣われたのか、俺は紫月と二人っきりにされて、帰路に送り出されたのである。

 翠月さんは桑原先輩とデートに行くとか言ってた。多分それも俺達をくっつける口実なのだろう。すっげー態度が露骨だったし。

 モモキングは火廣金が一度アルカナ研究会に持っていくとか言ってたな。

 まあそれもきっと口実なんだろうけど。モモキングのヤツもすっげー察しが良いというか何というか。

 ブランのやつも終始ニヤニヤしてたし。腹立つなあ。

 それで──結局。

 すぐに火廣金とのデュエルになったから、紫月に負けた後、何をお願いするか聞いてなかったんだった。

 でも、気まずい。

 互いに言葉がなかなか出てこない。

 

「……先輩」

「ん?」

「これから、どうするんですか?」

「っ……」

 

 これから……か。

 両親は結局、俺の事を忘れたままらしいから、あの家には帰らない。

 何なら、俺の事を思い出したのはエリアフォースカードの使い手と、魔導司達だけだという。

 それ以外の人が俺の事を思い出すかは未知数らしい。俺との縁が強かった人から思い出していくんじゃないか、とのことだが分からないようだ。

 少なくともしばらくはまだ、普通の生活は出来ないだろう。

 火廣金曰く、神類種討伐の英雄はそれなりに丁重に扱ってもらえるだろうとのことだ。なんなら魔導司の仕事を手伝わせてくれるらしいとか。あんまり危険なのは御免だけど。

 人並み以上の生活は要らないが、お世話になる必要はありそうだ。戸籍とかの問題もあるし。

 

「……何にも、考えてなかった」

「はぁ……先輩らしいです」

「あー、でも高校は卒業しておきたかったなあ……大学も行きたかったし」

「……」

「本音を言うならさ。2年経っててほしくなかったよ。俺……同級生とフツーに卒業したかった」

「……先輩」

「本当はもっと早くお前達に会いたかった。寂しがらせてるかと思ってた。まあ、違ったんだけどさ……そこは、安心だけど」

「……」

「俺さ……今からでも、皆と同じところに行けるかなあ」

「行けますよ。先輩は……世界を救ったんですから」

 

 そう言った紫月の声は、きっと震えていた。

 

「でも、でも……紫月は、先輩に多くは求めません」

「?」

「普通とか、成績が優秀とか、デュエルが強いとか、いい仕事に就いてお金をたくさん稼ぐとか、求めません」

 

 たった一つだけ、と彼女は告げる。

 

 

 

 

「もう、居なくならないでください。たった、それだけです」

 

 

 

 

 彼女は泣いていた。

 分かってる。

 もう居なくなるつもりはない。

 つーか、離さない。もうこの手を。

 

「ッ……」

「あったり前だ。やりたいこと、やらなきゃいけないこと、たくさんあるからな」

「……はいっ」

 

 まだやってないことが、やり残したことが沢山ある。

 先ずは、それを一つ一つ、やっていこう。先の事を考えるのはそれからだ。

 

 

 

 

 

「……先ずはさっきのリベンジだ! 今度は向こうで鍛えたデッキで勝負だぜ」

「先輩らしいですね……でも負けませんよ。私……強いですから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──隣には、紫月がいる。仲間がいる。一緒に戦ってきたカード達がいる。

 それだけで今は充分だ。

 人生はお先真っ白。

 これから、俺の色にまた塗り替えていくんだ。

 

 

 

 

 ……そうだろ? 相棒!

  

 

 

 

 

 

                

         ──学園デュエル・マスターズWildCards(完)




ここまでのご愛読、ありがとうございました! 
ここで学園デュエル・マスターズWildCardsは完結です。後に、登場人物1人1人にフォーカスした後日談的な回を更新するかもしれませんが、それはまた後の話ということで一先ずはこれで終わりです。正真正銘の終わりです。いやマジで長かった。新章デュエル・マスターズが始まってから更新を始めた小説で、行き当たりばったりのデコボコで此処までやってこれたのが奇跡のようです。
なんせ長編を1つも完結させたことのない自分でしたが、今まで書いた中で最も長いこの作品が最初の完結作で良かったと思ってます。マジでいつエタるか分からなかった……。
とかく、積もる話は沢山ありますが耀の冒険の完結に乾杯。きっと彼はこれから、誰も知らない未来を歩んでいくことになるでしょう。きっとそれはそれで茨の道には違いないと思うのですが、必死に変えた歴史が無駄ではなかったと思える人生であることは保証されてると思います。
それでは皆さん、またどこかの作品で会いましょう。ではでは。
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