学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
「──ONIグループの主催する大会──ONI・トーナメント。参加人数は合計で8人」
その他一切の事は現時点では不明だ。
ONIは世界的にも有名なゲーム企業で、デュエル・マスターズの大会でも協賛金を出していた。
そして、デュエマの大会そのものを主催することも珍しい事ではない。
しかし問題は、その人選である。
「8人のトーナメントで、そのうち俺の身の回りの人が俺を入れて3人……!?」
「貴様も思っているだろうが、もっと強いプレイヤーなど山のように居る」
「黒鳥サンなら、招待されてもおかしくないデショ? その筋だと、伝説の闇文明使いって言われてマスしねー!」
「ううむ、僕は最近何の実績も出していないから、何ともだ。まあしかし、こうして選ばれた以上は……やるだけのことはするさ」
「この面子の中で優勝出来るか? って言われたらどうなんデス?」
黒鳥さんは参加表明をしているアカウントの中から1人を指差した。
そこには──暁ヒナタという名前が書かれていた。
サングラスを頭に掛けた陽気そうな男。
他でもない。それは、かつての黒鳥さんのライバルにして、今世界で最もデュエル・マスターズが強いと言われる男だ。
「他も強いが……ヒナタは特に強敵となるだろう。最も、弱気になる理由にはならんがな」
「奮い立ってるデスね! 珍しく」
「当然だ」
黒鳥さんは絵筆に黒い絵の具をべちゃっ、とつけると──キャンバスに向かって乱暴に✕の字を刻む。
その下には──油絵で太陽が描かれていた。
「──振って湧いたと言えど、あのバカを地に落とすチャンスが来たのだ。この僕が逃すと思うか?」
ぞくっ、と肌が粟立つ。
弱気で悲観的な所があった以前の黒鳥さんからは考えられない程、精力に満ちているように見えた。
こりゃ勝てっこないかもしれない。
「ONIは元々、上位層のプレイヤーを招待して、大会を主催することが度々あったのだ。無作為に選んでいたようだがな」
「俺達上位層でも何でもないですよ」
「そうだ。何故、貴様や或瀬を選んだのか……ましてや僕だってそうだ。少し注視する必要がありそうだ」
「戦わされる向こうも、”何でこんな無名のプレイヤーが……”って思ってそうデスね」
「そうだな。此処まで露骨だと、何かあるのではないかと思ってしまうが……」
「謎デス……」
「師匠、居ますか?」
当たり前のようにアトリエの扉が開く。
そこに居たのは──だぼだぼのパーカーを腰に巻いた、ラフなTシャツ姿の少女。
首にはヘッドフォンが掛けられている。
無論、誰だと論じる必要は無かった。
「紫月!? お前まで何で此処に!?」
「あれ、耀く──白銀先輩!? それに……ブラン先輩も」
「シーヅクー! ラフな格好もベリベリキューッッット!」
「やめてください、暑苦しいですっ! 今はもう6月ですよ!?」
ブランに引っ付かれるのを鬱陶しがりながら、紫月は──何かをガサゴソとカバンから取り出す。
「道端で、怪しい男にこんな招待状を渡されたのですよ。近かったので、師匠の家に相談しに来たのです」
「大丈夫だったのか!?」
「それは平気です。確か、ONIのジョン・ドゥと名乗っていました」
「警察に行くべきだろう貴様……道端って、あの会社の倫理観は色々どうなっとるんだ」
「私もそうしようと思ったのですが、ONIの公式サイトから本当に参加者専用ページにログイン出来たので……」
一体何なんでしょうね、と紫月は肩を竦めた。
「あのジョン・ドゥとかいう男……どうやって招待客の居場所を突き止めているんだか」
「師匠も……」
「実はここにいる4人は全員が大会に招待されてんだよ。俺ン家にもONIの社員が来たんだ」
※※※
事のあらましを全員で共有することにした。
参加者は8人。
そのうちの半数が此処にいる4人。
そして、残る4人の中には世界最強クラスのプレイヤー・暁ヒナタが居る。
ONIが並み居る強豪の中から、無名のプレイヤーを選んだ意図が分からない。
などなど……。
「分かんねえだろ? 黒鳥さんみたいに実績のある人ならともかく、俺ァ此処最近店舗大会でも優勝出来てないんだぜ?」
「まるで最近でないなら優勝出来ていたような言い方だな」
「うぐっ……」
「ま、漸く世間が、この私の才能に気付いたのデスね!」
「それも絶対に有り得ん」
紫月は──しばらく思案していた。
そして、
「確かにONIの思惑は分かりません。しかし、大会が本当に行われるものであることは事実です」
「だけどな紫月さんや、流石に怪しくねえか?」
「──つまり、全員ゴッ倒せば万事解決、というわけですね」
「紫月さん?」
おっと雲行きが怪しくなってきたぞ?
「──師匠に、暁ヒナタ。超えるべき相手の多い今回の大会……これで燃えなくて何時燃えるというのでしょう?」
「紫月さん!?」
「いつになくシヅクがやる気デース!?」
「何時もの事だろう」
この師匠、あまりにも塩対応である。
暁ヒナタ相手とは偉い違いだ。
「──そして白銀先輩」
「いっ!? 俺!?」
「何を腑抜けた顔をしているのですか。いえ……最近の腑抜けっぷり、余りにも目に余ります」
「ぐっ……それは否定できない」
「今回の大会。例えONIに如何なる思惑があろうと、私は本気で挑ませて貰います」
「っ……」
「そして。相対するならば。私は貴方を全力で倒します」
スイッチが入るとこうなんだよなあ、紫月は。常に強者との本気の勝負を望んでいる。
そしてその強者の中には、俺も入っているのだ。間違いなく。
「私はしばらくデュエマの修行に入ります。それでは」
完全にやる気が入ってしまった紫月を前に、俺は何も言えずに背中を見送るしかなかった。
お、俺の意思は……。
「尻に敷かれているな、貴様も……」
「ゲームになると人が変わりますからね、あいつ」
「だが、こういった場で無ければ出せない全力があることも事実だ」
「……」
「いやぁーっ、私も漸くシヅクより強いって証明できる時がやってきて楽しみデスよ!」
「……歯牙にも掛けられてないぞ貴様は」
「デース!?」