学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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JO3話:ONI・トーナメント(3)

 ※※※

 

 

 

 夕暮れ。

 俺は涼みながら日の沈む海岸を眺めていた。

 

「何だよ紫月の奴、いつになくやる気になっちまって……」

 

 ……確かに最近燻っていた部分はあるかもしれない。平和ならそれが一番だと思っていた。

 だけど同時に──燃えカスのように、何のやる気も起きなくなっていた。

 燃え尽きたのだと自分では思っていた。

 だけど、これは──明確な目標の消失だったんだと気付いた。

 紫月は、自ら俺にそれを示してくれたのではないだろうか?

 だとしたら紫月らしいやり方だ。

 

(──貴方は、私が全力で倒すに値する相手ですか?)

 

 ……。

 紫月は強い。

 デュエマ部の誰よりも。

 いや、下手をすれば現役プレイヤーの中でも上位に食い込むレベルだ。

 俺の知らない所でCSに参加しては、軽く優勝をもぎ取ってくる程度には実力も高い。

 そんな彼女が、俺を超えるべき相手と見てくれている。

 その理由は単純でシンプルだ。全員倒して1番になりたい。競技プレイヤーならば、当然のこと。

 一方で俺には、その気持ちが欠けていたことは否定できない。命懸けのデュエマばっかりやってた所為か、全力で戦う事に意味を見出せないのだ。

 楽しければそれでいいじゃないか、と思ってしまうのだ。

 

(……さて、僕も久々に練習をするとしようか、あいつにいい加減吠え面かかせてやらんとな)

(悔しいデース! シヅクに、私の事も見て貰うデース!)

 

 黒鳥さんはヒナタさんを超えたいと願っている。ブランだってナメられっぱなしはきっとイヤだろう。どうせやるなら勝ちたいと思っている。

 俺が紫月を超えたいと思う理由は何だ?

 ただ、あいつの超えるべき壁になってやろうってわけじゃない。

 俺は──

 

 

 

「マスター殿ォーッ!」

 

 

 

 うわ、うっせ!!

 耳元からデカい声を飛ばして来るのは──ちっちゃなモモキングだ。

 エリアフォースカードが無くなっても、守護獣は未だに存在している。

 ただ、カードの守護から解放されたからか、最近は各々が好き放題しており、モモキングも俺の手元を離れていることが多かった。

 

「お前、帰ってきてたのか!? しばらく見ないと思ったら……」

「修行もひと段落! レクスターズの力、取り戻してきたでござるよ!」

「そうだったのか!? カードはあるんだから、無理しなくても……」

「いざという時、主君を守れずして何が守護獣でござるか!」

「っ……悪い」

「? 何故白銀殿が謝るでござるか?」

「いや、こっちに帰ってきてから平和だから……俺、気が抜けてたのかもな、って」

「確かに、こっちではクリーチャーが実体化することなど無かったでござるからなあ。平和が一番でござる!」

「だからよ──これ以上強くなることへの意味が、掴めねえんだよ。逆にオメーは、よくもまあ修行が出来るよな……」

「漢が、強くなる事に何か意味を見出す必要など無いでござろう! 敵等無くとも、昨日までの自分に打ち克つために励むのでござる!」

 

 なんか悔しいな。

 俺の周りはこうやってやる気に満ち溢れてんのに、俺だけ……勝手に燃え尽きたまんまだ。

 ……そうか。

 そこに理由付けなんてする理由なんて無かったのか。

 

「俺は……何やってんだろーな。こんな事だから、いつまで経っても紫月に負けっぱなんじゃねえか」

 

 うだうだ考えているのがバカらしくなってくる。

 この燻る思いの正体はきっと──とてもシンプルな答えだったじゃないか。

 現状に満足している? 違う。納得してないからモヤモヤしてるんだ。

 あれだけ命懸けのデュエマを重ねても、未だに紫月に勝てない自分に──ヤキモキしてるんじゃねえか。

 たった一つの簡単な事だったんだ。

 

 

 

(──どんな事でも……負けっぱなしは、つまんねーよな!)

 

 

 

 

 ──あいつに、勝つ俺の姿だ!

 

 

 

「うっし、俺も覚悟決めっか!」

「マスター殿!」

「と言っても、今の俺の実力じゃあ、競技デュエマのガチ勢に勝つには程遠いしなあ」

「それほどまでに強い者が揃っているでござるか」

「ああ。知ってる限り、一番強い面々が揃ってやがるぜ」

 

 ならば、それに対抗できるだけのデッキ、そしてプレイングを磨いておかねばならない。

 だけど黒鳥さん、そして紫月は今回敵だ。

 敵に教えを請いに行くほど、俺もプライドが無いわけじゃあない。

 かと言って、生半可な準備では二人に勝つなんて夢のまた夢だ。

 

「身近にデュエマが強くて教えるのが上手い人……黒鳥さん以外に居たっけなあ」

「マスター殿より強い人選となると限られてくるのでは?」

「競技デュエマと命懸けのデュエマは色々違うんだよ。デッキも精査しないといけねーし……だけど絶対第三者の力が必要だ」

 

 ……そんな都合の良い人居る訳……あ。

 

 

 

「そうだ! 適任者が居るじゃねえか!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「いやぁー、やっぱり日本の鬼は良い。良いよォ。力と……狡知の象徴だから、ねェ」

 

 

 

 ──ONIグループ、代表取締役「デモーニオ・エティケッタ」。

 彼は安楽椅子に座りながら、部屋に飾られた「鬼」を象った金の象を眺めていた。

 

「デモーニオ様……無名のデュエリスト二人……白銀耀と或瀬ブランを何故選んだのですか?」

「あんな奴らをプロと戦わせたところで消化試合でしょォ?」

「……ジョン、ジェーン。お前達は、何も感じなかったのかね?」

 

 ワインをぐびっと啜りながら、デモーニオは耀の写真を指で弾く。

 ジョンとジェーンは訳が分からないと言わんばかりに顔を見合わせる。

 この男の、日本における鬼に対する執心は尋常なものではない。部屋のインテリア、会社の名前、そして──自分の名前でさえも鬼の名を借りる程だ。

 

「──人は皆、鬼になる資格を秘めているものだよ……心に飼った鬼に喰われるか……喰うかの違いでしかない」

 

 蓄えた口髭からデモーニオは笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「”ADAM”と”EVE”の最終調整に掛かり給え。何時目覚めても良いように、ね」

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「はぁ!? オレに競技デュエマの基礎を叩きこんでくれ、だァ!? またまた急だな──耀」

 

 

 

 

「……話は分かったけどよー、大丈夫なのか? え? オレ天才だし。お前くらいに教えるのは別に平気だって。心配なのは、そっちじゃねえんだよ」

 

 

 

 

「悪いけどオレはスパルタだぜ──ノゾム様の現代デュエマの授業、付いてこれるか?」

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