学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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JO4話:大会前夜(1)

 ※※※

 

 

 

 ──大会、3日前ッ!!

 

 

 

 

「ずももももも……」

「それを口で言う人は初めて見たんデスけど……」

 

 暗野紫月はナーバスであった。

 憂鬱どころの話ではない。

 隣で見ている或瀬ブランは気が気でない。理由は大方察せられる。

 彼女の口から聞く前に、お供の守護獣・シャークウガが現れた。

 

「なぁー、見てくれよ或瀬ブラン、うちのマスター、デュエマしてない時大体こんなだぜ、どうすりゃいい?」

「バカノジョに付ける薬なんて無いデショ」

「先輩!?」

 

 苛々しながらブランはブチッ、と裂きイカを噛みちぎった。

 大会が終わったら、またアルコールの量が増えそうだ。一生やってろ。勝手にやってろ。

 

「正直、最近先輩があんまりにもアレだったので、焚きつけようとは考えていたんです……でも、先輩に対して久々にあんな態度取って嫌われてないか心配で……ずももももももも……」

 

(実はデュエマ修行中にもっと可愛い娘に出会っちゃってさァ、わりぃ! 別れてくれ!)

 

「って言われたらどうしよう、ずもももももももももも……」

「もっとアカルの事を信じてあげてくだサイよ、アカルがシヅク以外の女の子に靡くと思ってるデース?」

 

タイトル「彼女からのパワハラが酷いので別れた結果、やっぱりモテモテになった件」

 

「ってなったらどうしよう、ずももももももももも……」

「ちょっと前に流行ったパワハラヒロイン系のなろう小説の読み過ぎデショ」

「だってぇ……この二週間、連絡何も取ってないし、先輩からも何も無いですし……”俺、しばらく修行するわ!”って来たっきり」

「せめてもう少しライバルとしての格を保っていてほしかったデスね……そんなんじゃあ、私がらくらく勝っちゃうデスよ?」

「……それとこれとは別問題です」

 

 周囲の気温が一気に下がったような気がした。

 ギン、と紫月の目の色が、文字通り殺意を帯びたそれに変わる。

 

 

 

「──大会中はどうせ全員敵ですので。誰が相手だろうと、潰します。確実に」

「ッ……それでこそ、シヅクデスよ」

 

 

 

(でも、すっごく怖いデス、この変わり様!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「多分、この辺なんデスよね……」

「迎えが来るんでしたっけ。何も無い港ですが」

 

 揚子港。大会出場選手は此処で待機せよ、とのことであった。

 

「貴様等も来ているか」

「黒鳥サン!」

「ONIの迎えの船が来るらしいな。後は白銀だけだ。そう言えば翠月は?」

「見送りに来るとか言ってましたが、断りました。もう子供じゃあないですよ」

「それもそうか……と、噂をすれば」

 

 向こうから近付いてくるのは──船だ。

 ……それも、小型客船というべきだろうか。

 絢爛とした装飾に身を包んだクルーザーが近付いてくる。

 

「っ……何だこれは趣味の悪い」

 

 そして船の横には金色に輝く鬼の頭がぶら下がっている。

 変なところに金を使うお金持ちだなあ、と若干引きながら、3名は寄港したクルーザーを眺めているのだった。 

 そもそも黒鳥達は鬼に嫌な思い出しかない。

 以前、伊勢に現れた鬼類種とジャオウガがどうしてもチラ付くのである。

 

「なあ、僕はアレ以来鬼を見ると気分が悪くなるのだが……ゲロ袋は何処だ」

「ONIの社長が日本の鬼が大好きみたいなんデスよ!」

「名前もイタリア語で鬼を表すデモーニオ……デュエマの鬼はデモニオ、でしたか。本名じゃなくて源氏名ですね」

「典型的な日本好きな傾奇者……そうであってほしいがな」

「考えすぎデスよ! クリーチャーは地上のマナが大幅に減少したことで、もう復活出来まセン! そして、酒呑童子を封じた殺生石は厳重に京都で保管されてるんデスから!」

「そ、そうだな……すまない」

 

 横付けしたクルーザーに桟橋が掛けられていく。

 現れたのはゴシックな服に身を包んだ少女であった。

 

「──お待たせしました。ONIのジェーン・ドゥと申します。……人数、1名足りませんね?」

「そう言えば、白銀が居ないな」

「もーう、アカルはどうしたんデスか!?」

「……耀君」

 

 紫月の胸中は穏やかではない。

 彼が戦いから逃げることは無いだろう、と思っていつつも──燃え尽きた彼を見ている以上、一抹の不安が過る。

 

「残り10分で全員乗って貰わないと、失格ですよ」

「うぐっ……それもそうだろうな。スケジュールが押しているだろうに、申し訳ない」

「何で黒鳥サンが謝ってるデスか。アカル、大丈夫デショウか?」

「スマホで呼ばなかったのか」

「最近スマホの電源も切ってるみたいなんデスよ」

「修険僧か!?」

 

 全くアイツは、ヘンな所で真面目だ、真面目なのは良いが限度というものがあろうに、とブチブチ呟く黒鳥。

 

 

 

「ッ……すいませーん、遅れましたァ!」

 

 

 

 そんな声が響き、全員が振り向いた。

 現れたのは──白銀耀その人であった。

 ただし。目はすっごく隈が出来ていたが。

 

(すっごくやつれてるデス~~~!?)

 

「ちょっと道に迷っちゃって、あはは……」

「耀君……!?」

 

 いの一番に飛び出したのは、紫月だった。

 

「あ? 紫月かー? へっ、大丈夫。大会まで寝りゃあ平気だってもんよ」

「そうですけど、一体この2週間何してたんですか!? あれだけ頑丈な耀君が……そんなになるなんて」

 

 答えずに力無く笑ってみせる耀。

 紫月どころか、全員動揺を隠せない。

 

「……やれやれ。貴様。大会前に体調を崩すのはナシだぞ」

「あっはは、すいません、それは大丈夫ですよ……」

「これで全員揃ったデスよ!」

「了解です。では参加者一同は船に乗ってください。これから約1日のクルーズに入るので」

「丸一日……」

 

 こくり、とジェーンは頷く。

 

 

 

「──そして、十分に休息していただいた後、ONIの所有するリゾート地”ネオエデン・アイランド”にて、ONIトーナメントを執り行います」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「具合はどうだ?」

「いや、本当の本当にに疲れただけですよ、はふぅー」

 

 マッサージチェアーにもたれかかり、目には濡れたタオルを敷く。

 これが本当に凝った肩と疲れ目に効くのだ。此処がクルーズ船で本当に良かった。

 

「しかし、あのアカルが此処までへばるなんて……」

「んー……まあ、そうだな、ノゾム兄に特訓付けて貰ってたんだよ」

「ノゾムが貴様に稽古を……!? ……あいつめ」

「そ。誰に頼むのか悩んだけど、ノゾム兄が一番かなって思ってさぁ。結果、すごいしごかれたんだけど」

「何をしたんだ一体……」

「競技デュエマの全てを叩きこまれてきたんですよ。後は内緒」

 

 頭がいてー。本当にいてー。

 だけど、明日にはきっとコンディションは元に戻っているはずだ。

 その辺りの管理も計算に入れてスケジューリングしたのだから。

 流石理系というべきだろうか。ノゾム兄と過ごした2週間は、キツかったが……きっと強者が相手でもまともに戦えるようになったことは間違いない。

 

(その分限界間近まで極限まで絞られたんだけどな……)

 

「でもノゾムサンの特訓でどんなカンジなんデショ!」

「オススメはせんぞ……ハッキリ言って、そもそもあいつに付いていけるプレイヤーが居らんだろう」

「ふぇ?」

「ノゾム兄は……理系。超の付くエリート理系だからな……後は察しろ」

「うへぇ……アカル、数学苦手だったんじゃ──」

 

 耀は腕を組みながら言った。

 

 

 

 

「──そこまでしなきゃ勝てないと思ったんだよ、特に……紫月にはな」 

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