学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第14話:迷宮無しの迷宮決闘─ラビリンスデュエル

※※※

 

 

 

「って、ちょっと待ってくだサイ! いつものデッキと全然違うデス!?」

 

 ブランとパンダネルラ将軍のデュエル。 

 しかし、手札を引いた途端にブランは顔を顰めた。

 いつもとデッキの内容が全く違うのだ。具体的には、光、それもメタリカ種族1色であった。

 

『そりゃそうじゃ、ワシの率いる”メタリカ”軍団デッキじゃからな』

「ちょっと! Stop! 今からデッキ変えられないのデスカ!?」

『無理じゃな』

「Why!?」

「ふん、こっちから行くぞ!」

 

 涙目のブランを差置き、早速動き出したパンダネルラ将軍。

 先攻2ターン目の彼は、早速2枚のマナをタップする。

 

「出でよ、《森の特効隊長 ペンペン中尉》!」

 

 現れたのは軍服を着たペンギンのクリーチャー。

 愛らしく、マスコット感さえ感じさせるのはドリームメイト故か。

 

「うぅ~、あまり気乗りしないデスケド……こっちは2マナで《一番隊 クリスタ》召喚デス!」

 

 ともかく、一番コストの低い《クリスタ》を繰り出すブラン。

 現れたのは鉱石のようなクリーチャーであった。

 

「ならば我がターン、《野生設計図(ゲット・ワイルド)》を唱える! その効果により、山札の上から3枚をオープン!」

 

 《野生設計図》はコストの違うクリーチャーを捲った3枚の中から手札に加える呪文。

 そのまま手札補充をするつもりなのだ。

 

「そしてコストの違う《猛烈元気バンジョー》、《囚われのパコネコ》、《クラッシャー・ベア子姫》を手札に!」

「っ一気に手札が!」

「更に、《ペンペン中尉》でシールドをブレイクだ!」

「っ!」

 

 ブラン、残りシールド4枚。

 早速押されている状況だ。

 

「……私のターン、2マナで《緑知銀 フェイウォン》召喚! その効果で《フェイウォン》をタップして……1枚ドローデス!」

 

 ――ナルホド、このデッキ、この種族の力……ちょっと分かりましタ!

 カードを引いたブランは宣言する。初めて使ったデッキではあるが、彼女の読み込みの速さと注意深さが合わさり、早速使いこなしつつあった。

 しかし、そんな彼女を待つ間もなくパンダネルラ将軍は動き出す。

 

「私のターン! 4マナで《猛烈元気 バンジョー》召喚! その効果で、山札からドリームメイトを1体選び、手札に加える! 加えるのは当然、《独裁者ケンジ・パンダネルラ将軍》よ!」

「うー……切札が見えマス……」

「そして、《ペンペン中尉》でシールドを攻撃だ!」

 

 襲い掛かるペンギンのクリーチャー。

 サーベルを抜き、そのまま躍りかかるが――

 

『さあ、此処からだぞ探偵! 迷宮は恐れるものではない、味方に付けるものだ!』

「ハイ!」

 

 ブランに直感が走る。

 確かに使ったことのないデッキではあるが――

 

「《フェイウォン》の攻撃誘導(Attack Induction)発動デス! 《フェイウォン》をアンタップして、その攻撃を《フェイウォン》に誘導しマス!」

 

 マントを羽織った銀人が迷宮を作り出す。 

 そして、飛び込んだ特効隊長を幻惑のもとに――引き裂いた。

 

「バトル! パワー1000と1500で、こっちのWinデスネ!」

「ほう! やるではないか」

 

 攻撃誘導。それは、メタリカのクリーチャーが持つ能力の1つだ。

 自身をアンタップすることで、自身またはタップしている他のクリーチャーに相手の攻撃対象を変更するというもの。

 これが、メタリカの攻守万能を実現させているのである。

 

「……私のターン! 2マナで《奇石 ソコーラ》を召喚デス! そして、《フェイウォン》でシールドを攻撃しマス!」

「フン、その程度……痛くも痒くも無いわ!!」

 

 言ったパンダネルラ将軍は、カードを引いた。

 そして、《バンジョー》の頂に自らの切札を叩きつける。

 

 

 

「動物園での姿など、仮の姿よ!! 進化せよ我が分身、《独裁者ケンジ・パンダネルラ将軍》!!」

 

 

 

 轟!! という音と共に、地面が隆起した。

 そこから溢れんばかりの力が脈動し、大地から軍服と二角帽を被ったパンダの支配者が姿を現した。

 

「で、出てきましタ……!」

「そして私で、《緑知銀 フェイウォン》を攻撃――するとき、効果発動! 山札の上を全てのプレイヤーに見せて、それが進化ではないドリームメイトかビークル・ビーならば場に出せる!」

 

 表向きになるカード。

 それは――

 

「出てこい、《流れ星ムサシ》!!」

 

 飛び出したのはバイクに乗った狼のようなクリーチャー。

 こちらもファンシーさを感じさせる外見だが――

 

「此奴の効果で、お前がパワー3000以下のクリーチャーで攻撃する時、そのクリーチャー破壊する!」

「ええ!?」

「ははは!! 余所者よ跪け!! 此処はサファリ帝国、我らがルールよ!!」

 

 まずい、とブランの首筋に冷や汗が垂れた。

 彼女の場にはパワー3000以下のクリーチャーの《クリスタ》と《ソコーラ》しかいない。

 ビートダウンしようにも、《ムサシ》をどかさないことには、無残に破壊されるだけだ。

 

「っそれなら、1マナで《赤攻銀カ・ダブラ》、召喚デス! ソシテ、《カ・ダブラ》の効果で自身をタップしマス! さらに2マナで《青守銀 モルゲン》召喚!」

 

 《赤攻銀 カ・ダブラ》は1マナでパワー7000という破格のスペックと引き換えに、タップして場に出る上にクリーチャーが他に2体以下だとアンタップできないクリーチャー。

 そして《モルゲン》は《フェイウォン》同様攻撃誘導能力を持つクリーチャーだ。

 更に――

 

「呪文、《ジャスト・ラビリンス》! 私のクリーチャーを好きな数だけタップし、自分のタップされているクリーチャーの数だけカードを引きマス! 《モルゲン》と《ソコーラ》をタップして、3枚ドローデス!」

 

 《ジャスト・ラビリンス》はメタリカの攻撃誘導と相性の良い呪文だ。これで、攻撃せずとも《モルゲン》はタップされた。

 さらに、ブランは元々タップされている《カ・ダブラ》の分も含めて3枚手札補充したことになる。

 

「ほう……読めたぞ」

 

 独裁者は卑しい笑みを浮かべた。

 

「次のターン、私が攻撃して来たら《カ・ダブラ》に攻撃誘導をさせようというのか。それで私を自爆させるつもりだな?」

「……」

「悪いが、そうは行かんのだよ!!」

 

 叫んだパンダネルラ将軍はカードを引くと、勝利を確信したような笑みを浮かべた。

 

「5マナをタップして、《光器ペトローバ》召喚! その効果で、ドリームメイトを指定し、パワーを+4000させる! これで《ケンジ・パンダネルラ将軍》のパワーは1万、《ムサシ》のパワーは8000だ!!」

「っ……!」

 

 現れたのは機械のような女性のクリーチャー。

 その能力は、メカ・デル・ソル以外の種族を1つ選び、そのパワーを+4000させるというものであり、更に自身は選ばれないというもの。

 即ち、軍団に勝利をもたらす光だ。

 

「さあ、《パンダネルラ将軍》でシールドを攻撃! その時、攻撃時効果で山札の上を確認し、それがドリームメイトかビークル・ビーなら場に出す!」

 

 表向きになったカードは《猛烈元気バンジョー》。

 そのまま、絵本の登場人物の如く飛び出してくると、山札から更に夢の住人を呼び出した。

 

「《バンジョー》の効果で《森の指揮官コアラ大佐》を手札に!」

 

 ブランは目を見張った。

 《コアラ大佐》はO・ドライブで、召喚時に火のマナと光のマナをタップすれば「W・ブレイカー」と「攻撃できない効果を無効化」する能力を自分のクリーチャー1体に与える。

 そして、当然それは自身にも付与されるので、《コアラ大佐》は実質5マナのSA持ちW・ブレイカーということになるのだ。

 ――デッキに火と光を入れていたのはそういうことだったんデスネ……! まずいデス、打点が……!

 

「そして、《パンダネルラ将軍》でシールドをW・ブレイク!」

「この時、《モルゲン》の攻撃誘導を発動しマス! 対象は、《カ・ダブラ》デス!」

 

 再び築き上げられる迷宮。そこに迷い込む《パンダネルラ将軍》だが、巨大化したペン状の杖が、一瞬で銀人を粉砕してしまう。

 

「ハハハハハ!! 勝利の女神は、我らがサファリ帝国に加護を与えてくれているぞ!! 今度は《ムサシ》でシールドを攻撃!」

 

 バイクに乗った狼の獣人が、ブランの2枚目のシールドを叩き割った。

 さらに、《ムサシ》のバイクから燃える炎のオーラが沸きあがる。

 

「そして《ムサシ》がタップしている時、お前のクリーチャーは必ず攻撃しなければならない!」

「えっ……!?」

 

 ブランは再び盤面を見た。

 今の彼女の場には、《ソコーラ》と《クリスタ》、《モルゲン》の3体がいるが、《ソコーラ》と《クリスタ》のパワーは3000を満たない。

 

「デモ、《ムサシ》の効果で攻撃したら破壊されてしまいマス……!」

「そういうことだ、ハハハハハハ!!」

 

 ――私が勝利するには……あの《ペトローバ》や《ムサシ》、後に続くドリームメイト軍団を何とかしないといけないデス……いつものデッキなら……。

 

『見くびるなよ、探偵』

「!」

 

 ワンダータートルの重い声が響いた。

 

『我らがメタリカはこれしきのことではやられはせん。迷うな。カードを信じるのだ』

「……カードを……」

 

 彼女はカードを引く。

 そして、はっと何かに気付いたような顔を浮かべると、マナのカードを全てタップする。

 ――整いマシタ! 全てのカードは、役者は、この時の為に!

 

「推理ショーの幕開けデス! 5マナで、《クリスタ》をNEO[[rb:進化> evolution]]、《星の輝き 翔天》!」

 

 現れたのは全身が鉱石に覆われたゴーレムのようなクリーチャー。

 

「そして、お望み通り《ソコーラ》で攻撃! その時の効果でシールドを1枚追加しマス!」

「だが、《ムサシ》の効果で《ソコーラ》を破壊だ!」

「今度は《モルゲン》で攻撃!」

 

 《モルゲン》のパワーは3500。

 《ムサシ》の効果では破壊されず、その攻撃はパンダネルラ将軍へ突き刺さる。

 

「シールドをブレイクしマス! そして、《翔天》でも攻撃デス!」

 

 これで、パンダネルラ将軍のシールドは残り2枚になった。

 だが、それでも不敵に独裁者は笑っていた。

 このターンで彼はブランにトドメを刺す準備が出来ている。

 

「馬鹿め!! 犬死だ!! このターンに皆殺しにしてくれるわ!!」

「……それはどうでしょうカ?」

「何だ? なぜ虚勢を張れる?」

 

 ふふん、とブランは笑みを浮かべる。

 そして、帽子に手を掛けると芝居がかった調子で突き付けるように言う。

 

「では、証拠を見せてあげまショウ! Next turns hint――発動、《星の輝き 翔天》の効果!」

 

 次の瞬間、《翔天》の身体が光り輝くと共に空間に入り組んだような迷宮が構築される。

 

「相手のターンの初めに《翔天》がタップされていれば、手札からコスト8以下の光のクリーチャーをタップして場に出せマス!」

「な、なにィ!?」

 

 そして、輝く明かりと共に降り立つのは迷宮の番人。

 背中の甲羅は入り組んだ大迷宮、尻尾の砂時計に宝石で創られた体躯――

 

 

 

「導き出せ、一筋のAnswer! 迷宮の中にある唯一つの真実を示す時! 

召喚(Summon,this)――《大迷宮亀 ワンダータートル》!」

 

 

 

 迷宮の中に、一筋の光明。

 巨大なる僕が吼えた。

 

『グルァァァーッ!! ラビリンス発動! 我が主のシールドがお前のシールドより数が多いので、我がメタリカの軍勢はこのターン、場を離れないぞ!』

「何ィ!?」

 

 これが、メタリカの持つ能力、ラビリンスであった。

 相手よりも自分のシールドが多ければ発動する能力だ。

 

「そして、《ワンダータートル》は相手のクリーチャーが攻撃しなければ、全員タップする能力も持ってマス!」

「小癪な!! ぐぬぬぬ……!! こうなれば、《ホップステップ・バッタン》と《ペンペン中尉》を召喚し、《猛烈元気 バンジョー》で攻撃だ!」

 

 どのみちこのターンでは決められないと見たのか、軍勢を増やして、一番パワーの低い《バンジョー》を突撃させてその場を凌ごうとするパンダネルラ将軍。

 しかし、この盤面。彼が如何なる選択を取ろうとも関係は無かった。

 

「《翔天》をアンタップして、攻撃誘導(Attack Induction)発動デス! バトルさせるのは、タップされている《ワンダータートル》!」

 

 迷宮から突如現れた《ワンダータートル》は、侵入者を一踏みのもとに粉砕する。

 そして――

 

「《ワンダータートル》がバトルに勝った時、効果発動! 山札から4枚を捲って、その中からコスト6以下の光のクリーチャーを場に出しマス!」

「なっ!?」

 

 迷宮には新たな刺客が現れる。

 

「《予言者マリエル》召喚デス! その効果で、もうパワー3000以上のクリーチャーは攻撃できまセン! 《ペトローバ》が裏目に出ましたネ!」

「ぐ、ぐぬぬ!! しかし、それではそっちも攻撃できないではないか!!」

 

 現れたのは《予言者マリエル》。自分のクリーチャーも含めてパワー3000以上のクリーチャーの攻撃を封じる効果を持つ強力なクリーチャーだ。

 これにより、《ペトローバ》でドリームメイトを強化し続けていたパンダネルラ将軍は、もうクリーチャーで攻撃が出来なくなってしまった。

 そして、それはパワー3000未満のクリーチャーが《マリエル》以外場に居ないブランにも言えることだ。

 しかし。

 

「ふふん、残念ながら私の推理の方が一歩リードデス! 私のターン、《マリエル》で攻撃――するとき、革命change発動! 《音精 ラフルル》と《マリエル》をchangeデス!」

「なっ!?」

 

 これで、ブランの場からは《マリエル》が離れた。

 よって、彼女のクリーチャーは再び攻撃出来るようになったということになる。

 

「シールドをブレイクデス!」

「ぐぬう!! 馬鹿な、これは――!!」

 

 独裁者は酷く狼狽した。

 そして、雪崩れ込むようにしてメタリカの軍勢が押し寄せる。

 《ワンダータートル》を先頭にして――

 

「《ワンダータートル》で残りのシールドをW・ブレイク!!」

「お、おのれ!!」

 

 次の瞬間だった。

 割られたシールドが光となって収束する。

 

「S・トリガー、《閃光の守護者 ホーリー》!これでお前のクリーチャーを全員タップだ!」

「ふふん、甘いデスネ……」

 

 これでパンダネルラ将軍は一見、猛攻を耐えきったかのように見えた。

 しかし――

 

「――相手のターンの最初に《翔天》の効果発動デス! 《マリエル》をタップしてバトルゾーンに出しマス!」

「なっ……!!」

 

 これにより、再びパンダネルラ将軍は動きを封じられることになる。

 もう、攻撃するという選択肢すら奪われてしまったのだ。

 

「革命changeと《翔天》の効果、そして《マリエル》……これらを組み合わせることで相手は攻撃できず、自分は一方的に攻撃できるというロックコンボデス!」

「は、初めて使うデッキではなかったのか!? 今の間に、それを――!?」

『それについては、流石にワシも驚いたわ。だが、この探偵の底力……並大抵のものではない』

「ふふん、シャーロック・ホームズは言ってるのデスヨ。全ての捜査の基本は観察であると! デュエマでも同じデス! 初めて使うデッキでも、注意深くカードの種類と効果を組みあわせて考えれば、力を引き出せるということデスから!」

 

 もはや、何も出来ない非力な独裁者。

 それを前に、迷宮の光が激しく差し込む。

 

「《ワンダータートル》の効果発動! 相手のクリーチャーが攻撃しなかったので、全てタップしマス!」

「お、おのれ、こんなことが……私のサファリ帝国が……」

「貴方の悪行も、ここまでデス!」

 

 カードを引いたブランの取る行動は唯一つ。

 この哀れな独裁者にたった1つの真実――即ち、自らの勝利を突き付けることであった。

 

「《マリエル》でダイレクトアタック!」

「通らないぞ!! 《ムサシ》の効果で3000以下を全破壊だ」

「そして、これで私のクリーチャーの攻撃制限も解除されマシタよ!」

 

 パンダネルラの顔が青褪める。

 空間を揺るがす咆哮が――大自然の独裁者の野望を打ち砕いた。

 

 

 

「《大迷宮亀 ワンダータートル》でダイレクトアタック!」

 

 

 

※※※

 

 

 

 画して。

 奪われたペットは匿名のタレコミによって見つかり、(無論我らが探偵の仕組んだことであることは言うまでもないのだが)全て元の場所へ戻っていったという。

 健康状態も、かの独裁者の配下と一心同体と化していたからか、それらが消えた後は全て元通りであり、何もかもが滞りなく上手く運んだのであった。

 

「本当に助かったぞ、お前達……ミミィも無事この通りだ」

「すっかり元気そうデスネ! 良かったデス!」

「全く、一時はどうなることかと思いましたが」

 

 ある昼下がりの公園にて。ペットによる賑わいが戻ってきた此処でデュエマ部の面々は集まっていた。

 にゃあ、とミミィは一声鳴くとブランに顔を摺り寄せる。

 

「so cute! かわいいデス!」

「それにしても、あれだけの数のワイルドカード……我ながらよく捌けたと思いますよ」

『エリアフォースカードは強い魔力を持っている。ワイルドカードの手に渡れば、ああやって仲間を引き寄せちまうのさ』

「アカルも、お疲れ様デシタ!」

「誰の所為だと思ってるんだ!! 誰の所為だと!!」

『全くでありますよ!』

 

 俺は思わず怒鳴る。

 本当に間一髪であった。クリーチャーの大群に追いかけられている所を紫月と桑原先輩が見つけなければ、今頃どうなっていたか分からない。

 あの後、必死になって走り回ったのが嘘のようだ。

 

「ま、これも全部ワンダータートルのおかげデスネ!」

『何を言っておる、探偵』

 

 くかぁ、と小さな欠伸をすると宝石亀は言った。

 

『ワシは、恩返しをしたかった、それだけだよ。亀の恩返しというやつじゃ』

「えへへ……」

『それにしても、また増えてしまったでありますなあ』

 

 チョートッQは言った。

 シャークウガも頷く。

 

『エリアフォースカードも、これで3枚目か』

「これでデュエマ部全員がエリアフォースカードを持ったことになるのですか」

「喜ばしいことじゃねえか。後輩に俺も負けてられねぇな」

「ふふん! これで私も立派な戦力デスネ!」

 

 得意気に言うと、ブランは宝石亀を高く持ち上げる。

 

「これから、よろしくお願いしマスネ! ワンダータートル! 貴方は私の助手デス!」

『成程……助手か、面白い。乗ったぞ――探偵』

 

 こうして、探偵とクリーチャーの奇妙な絆は深まった。

 迷宮を味方に付ける探偵が、ここに生まれたのである。

 

 

 ※※※

 

 

 

「あの日――」

 

 火廣金は思い返す。

 刀堂邸に居た人物の姿に、彼は引っ掛かりを覚えていた。

 

「……流石に予想外だった。まさか、あの男があの場所に居るとは――」

 

 要注意リスト、と書かれた書類を彼はまとめる中、1枚の写真に目を留めた。

 そこには――あのメッシュの髪を持つ青年があった。

 

「首尾よく進んでいるか? ヒイロ」

「……」

 

 声が聞こえた。

 振り返ると、そこには見慣れた白衣の少女が居た。トリスだ。

 

「まさか、お前が敗けるなんて思わなかったよ。あたしゃ」

「……」

「何だ? 落ち込んでるのか? 柄にも無い」

「いや、そういうわけではない。だが、俺達が今やっていることに意味はあるのか――あの方が、どうしてあそこまでエリアフォースカードを恐れるのかが分かりかねてくる。それと、今のこの状況を取り巻く人物だ」

「確かに大物揃いではあるわな」

 

 にたにたと彼女は笑った。

 

「特に――『不和侯爵(アンドラス)』の存在が大きすぎる。あいつが何を考えているか分からない以上、慎重に動かねばならない」

 

 舌打ちすると、火廣金は書類に向かった。

 分かり切っていることだ。そんなことは。表舞台から消えたはずの人物ばかりが今回の件に関わっている気がするのだ。

 

 

 

「……ヒイロ。そろそろ、あたし達も動くとするよ。なあ? 良いだろ?」

「……好きにしろ」

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