学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
「──《神ナル機カイ 「亜堕無」》だと……!?」
これはまずい──かもしれない。
確かアイツは《奇天烈シャッフ》と同じ、宣言した数字と同じコストのクリーチャーの攻撃と呪文を封じるのだ。
「コストは5を宣言!! 《JO》は次のターン、攻撃出来ねえぜェ! 無様にそこで突っ立っているんだなァァァァーッ!!」
マズい。
これは非常にマズい。
バウンスされた方がまだマシだった。
場に居る《JO》は棒立。一方の俺は、手札に2枚目の《モモキングダムX》が居ないため、まだ退化出来ない。
このデッキ、防御力はハッキリ言って脆弱も良い所だ。
あの《「亜堕無」》とかいうクリーチャーは、よりにもよって攻撃の終わりに手札に戻り、再び場に出るという無限攻撃能力を持つのだ。
一度手札に戻る以上、《JO》と違ってG・ストライクも通用しないのである。
「そして、《「亜堕無」》でシールドを攻撃だーッ!!」
チャカッ、チャカッ、という音と共に──シールドが消し飛び、衝撃波が襲い掛かる。
砲撃だ。
あのロボットの砲弾で──あれ?
「しょうげき、波……!?」
あまりにもそれが「当たり前」の事象で一瞬、疑問にも思わなかったが──こいつの攻撃で今、衝撃波が起こったのか!?
しかも、あのバケモノの鎮座している床が沈んで、割れているように見える。
(やっぱあいつ、実体化してねえか……!?)
となるとまずい。
あいつをこれ以上攻撃させれば、被害が大きくなる可能性が高い。
「攻撃の終わりに《「亜堕無」》を手札に戻す。ターンエンド!!」
「相手の連続攻撃を事前に阻止できるかにかかってる……!」
……正直やりたくないが、こちらも腹を決めるしかないだろう。
「俺は5マナで《JO》を《キャンベロ<レッゾ.Star>》に進化!! これで次のターンの連続攻撃も封じる!!」
攻撃は出来ないから、タダの延命措置だ。
手札には《堕牛の一撃》があるので、次のターン、退化させて攻撃することは出来る。
……最も、また攻撃を止められなければ、の話であるが。
「しつけぇんだよ、オマエェ! 俺っちに気持ちよくデュエルさせろや!!」
「気持ちよくデュエルさせたらその時点でゲームが終わるから仕方ねえだろ!!」
「なら俺っちは4マナで再び《「亜堕無」》を場に出す……!! さあ、コスト5を宣言だ!!」
攻撃の度に《「亜堕無」》は手札に戻り、また次のターンに《JO》を止めてくる。
このままではいたちごっこだ。
「《「亜堕無」》でシールドをブレイク!!」
「ぐおっ!?」
「攻撃の終わりに手札に戻し、ターンエンドだ!」
今度は砲弾が頬を掠め、後ろの機材を壁を爆破した。
……こいつを暴れさせたら、色々マズい。
こうなればやるべきことは1つ。2度目の退化を決めるしかない。
幸い今のドローで、良いカードが手札に来てくれた。
「俺は2マナで──《エボリューション・エッグ》を唱える!! 効果で、デッキから──げっ」
俺は言葉を失った。
無い。何処にも──《モモキングJO》が無いのだ。
《エボリューション・エッグ》は山札からサーチするため、デッキに《JO》があるかも確認できるのだが──もう、無いのだ。
(シールドの中か!? 1枚はマナに置いちまったし……!! 1枚は場にある……!!)
JO退化において投入する《JO》は3枚。
残り1枚の行方は、それしか考えられない。
残るは3マナ。この時点で色んな意味で終わっている。
「ッ……《モモキングダムX》を場に出して、ターンエンド!!」
「ハッハ!! 万策尽きたみてーだなぁ、白銀耀!! これで、お終いにしてやるよ!! 1マナで《アロマの海幻》を出し──《「亜堕無」》に進化!!」
再び場に現れる《「亜堕無」》。
場のタマシードは──4枚。ジャストキルだ。
「登場時に5を宣言! 《キャンベロ》をバインドする! 徹底的に嬲ってやるぜーッ!!」
《「亜堕無」》の砲撃が次々に俺のシールドを薙ぎ払っていく。
攻撃する度に手札に戻り、再び場に顕現。
その後、更に攻撃を繰り返す。
「これで──終わりだーッ!!」
最後のシールドが割られる。
《JO》はやはりシールドにあった。
此処で終わるのか?
(──明日は敵同士ですから)
……終われるかよ。
終わって堪るか。俺にはまだ──
「S・トリガー、《バッドドック・マニアクス》!! 《キャンベロ》を破壊して、《「亜堕無」》を破壊だ!!」
「ッ……ん、なぁっ!?」
──果たしてない、約束があるッ!!
「俺のターン!! 5マナで手札から2体目の《モモキングJO》を場に出す!!」
「がっ、くそっ、な、何で──こんな──こんなヤツに──!!」
「”山に2枚目のJOが無い”なんて低い確率を俺が引いたんだ。デッキに4枚しかない《マニアクス》を引くくらい、許してくれよ」
最も、ちゃんと相手が《マニアクス》のケアしてたら負けてたんだけどな。
此処は理性がブッ飛んでて助かったというか何と言うか、余程場のJOが動き出すのが怖かったんだろうか。
「──《JO》で攻撃する時、効果発動! 《禁断のモモキングダム》にスター進化して、W・ブレイク!!」
「S・トリガー、《ツヴァイの海幻》、《コーライルの海幻》──」
「効かねえよ」
《モモキングダム》はそれらの追撃を避け、再び鎧をパージさせた。
「もう1度《モモキングダム》で攻撃する時──《ボルメテウス・モモキング》にスター進化!!」
「あっ──」
「登場時に相手のシールドを1枚、墓地に送る!!」
落とされたのは──《終末の時計 ザ・クロック》。
……何処までも、紙一重の試合だったな。
「──《ボルメテウス・モモキング》で、ダイレクトアタックだ!!」
※※※
「プレイヤー側の理性がフッ飛んでしまい、《「亜堕無」》の性能を十全に生かせなかった、か。クク、それもまた良し」
全ての試合を見届けたデモーニオは──何故か嬉しそうにつぶやいた。
「屈辱は鬼の力になります。あんなのに使われて、ADAMはさぞお怒りでしょう」
「怒りは、鬼の力になりますのでねェェェーッ!! それはそれで好都合!!」
「……今回の大会は良い。良き試合ばかりで、ADAMとEVEにもエモーショナルなエネルギーが溜まっている」
笑みを浮かべた彼は、培養液に浸かった2枚のカードを見やると──
「次の試合も楽しみだ。我が悲願のため……目覚めてくれよ」
「あばばばば、大変でござる……!! あいつら、鬼のカードを目覚めさせようとしているでござる……!!」
──モモキングは見た。
幸い、彼ら自身は魔導司ではないのだろう。未だにモモキングの姿を視認している様子はない。
事実、彼らからも魔力の類は確認できない。
問題は、培養ポッドに入れられている2枚のカードだ。
先の試合で耀が戦っていた《「亜堕無」》のカード、そして──《EVENOMIKOTO》と書かれたカードが浸かっている。
(見た目こそ同じだが、市井に出回るものとは違う、あの2枚は本物の”鬼”が封じられたカード……!! 目覚めたら大変なことになるでござる!!)
早く戻って、この事を耀に報告せねば。
そう思い、モモキングが踵を返したその時だった。
「──誰だね? そこに居るのは──」