学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
──試合後、イチエンは倒れてしまい、そのまま現地の病院へと運ばれてしまった。
その顛末も含め、俺は試合終了後に皆に試合中の異変について話すことにしたのであった。
当然、彼らの反応は苦々しいものであったことは間違いない。
「白銀先輩の対戦相手のクリーチャーが実体化した……!?」
「試合開始前から様子がおかしかったけどな」
「クリーチャーの出所が分からんのが歯がゆいな。大気中の魔力は大幅に減少している。奴らはどうやって実体化した?」
凡そ想像は付くがな、と黒鳥さんは続ける。
怪しいのは──やはり大会を主催しているONIだろうな。
「魔導司に何か連絡は──」
「できるわけがないだろう。何かあれば駆け付けてくるだろうがな」
「ヒイロも行方を眩ませてるし……こんな時に限ってーッ!」
「大会はインターネットで中継されている。極力、騒ぎになることは避けたい」
「下手したら、全世界にクリーチャーの事が知られるデスからね……」
「とはいえ、選手の僕達は下手に動けないからな」
「じゃあ、サッヴァークとシャークウガに任せれば良いデスよ!」
ぽん、ぽん、と守護獣2体が現れる。
「シャークウガ。今の時点で何か感じましたか?」
「何にも……まあ俺の探知能力、昔に比べて激落ちしてるし? あいつらがクリーチャー隠してても此処からじゃ分からねえよ」
「ワシも同感じゃ。敵が何処に居るかも分からん。あのイチエンとかいう男からは完全にクリーチャーの気配が消えておるし」
「丁度、モモキングを先に行かせたんだ。3人いれば十分だろ。何かあったらすぐ戻ってきてくれ」
「うむ」
「了解だぜーっ!」
……そう言えば。
そのモモキングがまだ帰ってきていない。
大丈夫なんだろうか。あいつ、今の状態でも滅茶苦茶強いから、あんまり心配はしてないけど。
『──それでは準決勝が始まります! 対戦カードを発表しますので、各選手は集合場所へ移動してください!』
パネルに対戦カードが現れる。
それを見た時、「やはりか……」と黒鳥さんが言葉を漏らした。
無理もない。
この面子だと、絶対に何処かでデュエマ部同士が争うのは確定的であったが、それ以上に──
※※※
「あ”あ”!? 何で耀の試合だけ最後の辺しか映ってねえんだよ!?」
ノゾムがブチ切れながらパソコンを揺さぶっていた。
それを花梨と桑原が引き剥がしにかかる。
弟子の耀の試合を心底楽しみにしていたノゾムであったが、4つの試合の映像は順々に切り替わっていっており、耀の試合だけ最後にダイレクトアタックを決める所しか見られなかったのである。
「生放送なのに、もっと全試合を平等に映せや!! アホーッ!! ボケーッ!! おたんこなーすッ!!」
「お兄、落ち着いて!! 機材の不調って書いてたじゃん!」
「不調なら仕方ねえだろ、刀堂……兄の方!!」
「止めるな桑原!! 耀がJO退化使った事しか分かんなかったんだよ!! 畜生べらんめぇ、弟子の活躍、しかと目に納めたかったぜ」
露骨に舌打ちすると、ノゾムは腕を組んだ。
これからも試合はあるんだからまだ見られるかもしれないのに、余程耀の事を可愛がっていたのだろう、と全員が推察する。
(てかお兄のトレーニングに付いてこられるようなの耀しかいないから、相当嬉しかったんだろうね……)
(モンペ師匠とはこの事かよ……)
まあ勝ったから良いんだけどよー、と彼がぼやいていると、画面が切り替わる。
現在のトーナメント表だ。
この面子では、デュエマ部同士での試合は避けられないと思われていたが──いざ目の当たりにすると、緊張感が走る。
そして、準決勝に進出した4人の名前がシャッフルされて、組み合わせが発表された。
「耀とブランちゃんだ……!!」
準決勝・龍の間。
白銀耀VS或瀬ブラン。
そして──
「しづ……!」
準決勝・虎の間。
──暁ヒナタVS暗野紫月。
「あーあ、しかしどうしたもんかね。ヒナタ先輩……倒せる人居る? これ」
「ていうのは?」
「オレの当初の予想は、耀が準決勝でヒナタ先輩かレン先輩に負けて、決勝があの二人の頂上決戦だったんだよ」
「自分が鍛えた弟子なのに?」
「しょーじき勝ってほしいとは思ってるよ? それとこれとは話が別でしょ。相手はヒナタ先輩だからな……」
ぽりぽりとノゾムは頭を掻く。
その分析はあまりにもシビアでドライだ。
他の選手ならともかく、とでも言いたそうであった。
「ヒナタ先輩は突拍子もないようなデッキをぶつけてくる時さえあるからな。完全に読み切れない」
「と言う事は紫月ちゃんが一番勝ち目があるってこと?」
「……レン先輩でも止められない人が、あの子に止められるかっつーと……微妙でしょ」
※※※
「……マジですか」
紫月は心の準備が出来ていない、と言わんばかりに呟いた。
その対戦相手は──暁ヒナタだ。
今回の大会で目下最強と噂をされている相手となる。
「……はぁ。決勝ならともかく、準決勝。運が無いですね、私も」
「おいおい、あたかも俺達が相手なら決勝に進めてたって言わんばかりだな」
「全員倒すって言ったはずですよ」
「デース!?」
「……それでも、やはり……辛いものは辛いですね」
改めて見ると、チャラそうな見た目の割に──目が据わっている。
底知れない余裕。どんな相手でも100%全力なんて出すことは無いんじゃないかと思わせる程の掴み所の無さ。
あれは間違いない、歴戦の猛者だ。とはいえ当然と言えば当然か。あの黒鳥さんのライバルなのだから。
……そんな事は紫月も分かっているだろう。
それ以上に、インターネット上で生中継されている試合だから、
だったら、俺から言うことなんて……限られてる。
「おい紫月」
「何ですかもう」
ナーバス気味に紫月は言った。
やっぱり結構プレッシャー感じてるな。プレイヤーとしての冷徹さを見せていたけど、虚勢を張ってたところもあるみたいだ。
「決勝で会おうぜ」
「っ!」
これだけ言い残し、俺は──準決勝のステージへと一足先に進むのだった。
※※※
「ちょっとアカルー! 大会でデートの約束しないでくだサーイ!」
「うるせー、決勝に行くのは俺だ」
「あー、そういうこと言っちゃうんだ!」
──先輩たちの喧騒が通路の向こうに消えていく。
紫月は拳を握り締めた。
何時も通り。あくまでも何時も通りのプレイングをすれば良い。
そう願うように呟くが──だんだん身体が勝手に震えてくる。
「……紫月」
「?」
肩に手が置かれた。黒鳥だった。
「貴様の強さは、僕達が分かっている」
「分かってます。分かっていても……」
「……そうだな。じゃあ、とっておきの弱点を僕が教えておこう」
「何ですか?」
怪訝そうに紫月は自らの師匠を睨む。
大抵、こういう時の彼は「美学」だのなんだのと毒にも薬にもならないことを言い出すのがお決まりなので、あまり期待はしていない。
「──ヒナタのヤツはマンホールに落ちて学校を休んだことがある」
「えっ……」
「あと、《フォーエバー・メテオ》を《天下五剣・カイザー》と騙されて買わされたことがある」
「ええ……」
「それと
「ぶふっ──」
もう、それで紫月は我慢が出来ず、噴き出してしまった。
真顔で白けているノゾム、そして必死に止めようとしているレンの姿が思い浮かぶ。
とんでもない言い間違いである。
「あの時は自らをフォローしようと凄くあたふたしていたな」
「何ですかそれ……今、笑わせないでくださいよ……」
「今ので分かっただろう? 世界レベルのデュエリストとて、無敵ではない」
「も、もうやめてください、師匠……真顔で、つらつらと、やめて……」
「……少しは、リラックスできたか?」
「え? ……あ」
「良いか、確かにヒナタは強い。今の僕よりも……きっと、強い。だが、人間の範疇だ。決して、コンピューターやクリーチャー、神類種じゃあない」
「……!」
「バケモノ相手に戦ってきた貴様等の誰かが、必ず──あいつを倒すと、僕は信じている。ましてや貴様は多くの競技勢と戦ってきた。何よりも──」
黒鳥は一呼吸置くと、確かに言ってみせた。
「──貴様は……僕の、黒鳥レンの一番弟子だ。太陽を落とすのは貴様だ、紫月」
「……はいっ」