学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
「──こうやって大会の場で相対するのは……初めてじゃないデスか?」
──向き合う俺達。
目の前に立つブランは、何時になく真剣な眼差しだ。
「……仕上げてきたな、ブラン。今までとは全然違うぜ」
「相手が耀達とあれば、本気を出さない理由は無いデス。油断したら一気にやられちゃいマスからねー」
「それはこっちのセリフだ。お前相手だと何でも見透かされそうな気がしちまうよ」
「……よく言うデスよ。2年も居なくなってたくせに」
「ブラン……」
「私だって寝てたわけじゃあないデスからねー! 例え今日の大会の先に待ち受けているものが何だったとしても。アカル……貴方に勝つデスよーっ!」
シールドが一挙に展開される。……ブランは普段はふざけているけど、マジな時は本当にマジだ。
先攻はブラン。デュエルが──始まった。
「だけどな、ブラン。それはこっちも同じだ。俺は何としてでも──決勝に行く。全力で──お前を倒す!」
※※※
「は、始まっちゃいました……! 白銀先輩と或瀬先輩のデュエル……!」
「……さて。問題は、白銀が既に1戦目でJO退化を使ってる事だな」
「ほんとだよ、アカルったら。最初っからあんな強いデッキを使って、後は何が残ってるんだろう」
「ああ。言い換えれば白銀の残りのデッキは《アルカディアス・モモキング》を使わねえデッキって事だろ? 残りのデッキで白銀が使いそうなのって想像出来んな」
《アルカディアス・モモキング》は、今のデュエル・マスターズにおける超パワーカードの1枚である。
入るデッキには取り合えず脳死で4枚入れておけば、役に立つからだ。
先の試合でこそ耀はバトルゾーンに出すことこそ無かったものの、光以外の呪文を止め、相手の1体目のクリーチャーのタップインを強要する、強力な妨害効果を持つフィニッシャーだ。
しかし。
「……まあ、心配はねーよ?」
ノゾムだけが──ひとり、不敵そうに笑っていた。
「それよりもヤバいのは、さっきも言ったと思うけど紫月の方かもな?」
※※※
「2マナで──《メンデルスゾーン》を発動!! 効果で山札の上からドラゴン2枚をマナゾーンへ!!」
──マナゾーンに落ちたのは《ボルシャック・NEX》と《ボルシャック・ドギラゴン》。
一先ず、初動で蹴っ躓くことは回避できた。
とはいえ、ブランのバトルゾーンには《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》が居る。
コイツの所為で、俺の手札にあるカードの効果が封じられてしまっているのだ。
「なーるほど、赤緑ボルシャック! ……RXとNEXは退化には入らないし、ガイアッシュ覇道や閃だと《アルカディアス・モモキング》を食い合ってしまう、というわけデスね?」
「御明察……!」
「てっきり《バーンメア》でも使ってくると思ったんデスけどねー……残念デス」
「おいブラン、1つ勘違いしてねーか? 俺ぁこのデッキに割と信頼を置いてるんだぜ」
「……ほぅ?」
そして、単純なブーストと物量に特化したこのデッキは、まさに攻撃力の権化のようなデッキ。
速度負けさえしなければ、大抵の防御は突破出来てしまうだろう。
「……じゃあ、このデッキの壁を突破出来るか試してみまショウか! 《
「やっべ……」
「止められるデスか? JO退化を残してた方が良かったんじゃないデスかー?」
「アホか!! メタカードガン詰みしてるそのデッキを退化でどうにかできるわけねえだろ!」
火、水、光。
この3色で、メタカードをばら撒くこのデッキは──間違いなくあのデッキだ。
ブランもまた、2年の間に新しいデッキに手を出したのは知っていたが、まさかここで使ってくるとは。
「かと言ってどうにもならねえんだよな……俺は《ボルシャック・栄光ルピア》を召喚だ! マナを2枚増やし──これで次のターンで8マナだ!」
「ッ……次のターンは無いデスね。だけどっ! 私の方が一歩早かったみたいデスよ!」
タップされる4枚のマナ。
ブランは──笑みを浮かべると、1枚のカードをバトルゾーンへ投げ入れる。
「──《エヴォ・ルピア》召喚! 効果で、カードを1枚引いてその上にコスト5以下の進化クリーチャーを重ねるデスよーっ!」
それは鎧の如く身に纏われ、彗星の如く現れた正義の化身。
そして。
流星群の如く止むことのない猛撃を予期させた。
「それは悪を打ち砕く
《
そのデッキの名はラッカ鬼羅.Star。
此処からが──正念場だ。
※※※
──虎の間。
そこでは、既に紫月とヒナタのデュエルが静かに進行していた。
互いにマナブーストと手札を整え、一瞬で相手の首を掻くかどうかの試合だ。
「レンの弟子って聞いてたけど、女の子……ねえ。あいつ、変人だから苦労しただろう?」
「実際そうですね。否定しません」
「……つっても、苦労したのはあいつも同じっぽいな」
「はぁ?」
「あいつが心変わりした理由がちょっと分かる気がするんだよ」
苦笑しながら、ヒナタはカードを引く。
「──君。
「……」
闘気が。
そして──必勝への覚悟が。
何より、強者との戦いへの渇望が紫月からは漏れ出している。
だが、それを受けて尚、暁ヒナタという男に動揺は見られない。
「で──俺に勝てると思ってる? 本気で」
「負けると思って試合に挑むバカは居ないと思いますが」
「上等。この質問すると日和って口籠るヤツの何て多い事か──不甲斐なく思ってた所なんだよな」
少なくとも、レンは絶対俺相手に日和ったりしねえよ、と彼は続ける。
「言葉だけではありませんよ。きちんと。実力で証明してみせます」
「へぇ」
嬉しそうに暁ヒナタは笑みを浮かべる。
紫月は6枚のマナをタップする。
バトルゾーンには《天災デドダム》のみ。
しかし、手札は潤沢だ。
一方のヒナタ側もマナは次で7枚となる。
大きな動きは見せていないが、このターンが勝負の分かれ目となることを紫月は察していた。
「6マナをタップ。呪文──《ヘブンズ・ゲート》!! その効果で《闘門の精霊ウェルキウス》2体を、バトルゾーンへ!」
天国への門が開く。
そこから現れるのは、紫の剣を携えた天使たち。
更にその力により、天国の門から軍勢が現れていく。
「《ウェルキウス》の効果で、手札からブロッカーを出します。ただし、このブロッカーは光のクリーチャーでなくて構いません」
「……来るか」
「──半分の月と月が縫い合わされる時。獅子の怒号、帝の嘆きを聴け」
紫月がそう呟けば、彼女の背後に──恐るべき神帝と、頂点の獅子が縫い合わされた異形の王が顕現する。
4つの首には神獣が縫合され、中央に座する獅子の顔が怒りのままに咆哮した。
「王は来たれり、終焉の時。《終末縫合王 ミカドレオ》」
「来やがったな……ッ!!」
ヒナタの口角がにぃと上がる。
召喚でなければクリーチャーを大量に効果を発動できないものの、次のターンになれば紫月は自動的に勝利する。
天門に採用する事で、EXウィンを狙う構築にしたのだろう。
「EXライフ、縫合完了です」
シールドは6枚。
ブロッカーは現時点で3体。
否──もう1体、増える。
(おもしれぇ──久々に手応えがありそうじゃねえか──もう1体は──!?)
「そして。2体目の《ウェルキウス》の効果を解決」
フィールドが漆黒に染まる。
黒い渦が現れ、そこから無限の力を持つ夢幻の龍が降り立つ。
「それは虚にして現。無限の零へと還りましょう──《∞龍ゲンムエンペラー》」
※※※
「《ミカドレオ》に《ゲンムエンペラー》!?」
「《ゲンムエンペラー》は師匠の切札で……《ミカドレオ》はしづの切札!」
「こいつらが揃えば百人力!! 幾らなんでも突破出来ねーだろ!!」
「……駄目だ」
ノゾムが顔を青くして言った。
「確かに暗野紫月の判断は正しい、自分がコンボデッカーだから、相手はビートダウンを自分との対面でぶつけてくるだろう、という前提で天門を用意したんだろうけどよ」
「何だ? 何か問題あるのか?」
「……ヒナタ先輩は、ランプの動きをしている。マナを溜めて、相手を一撃で殺しに行っている」
「まさか……《オールデリート》か!?」
「オレもキリコデリートかと思ったんだけど、あのデッキなら初動に呪文が混じるのは有り得ねえ」
ヒナタがこれまで撃ったのは《地龍神の魔陣》に《κβバライフ》だ。
デッキ内の呪文の数を極限まで減らして、《甲型龍帝式キリコ³》で一撃必殺の呪文《オールデリート》を打つ【キリコデリート】では考えられない構築である。
となれば、ブロッカー4体を乗り越えるだけの展開力を行い、更にS・トリガーもケアしながら勝たなければならない。
「ヒナタ先輩は、全ての守りを貫通して一撃で勝つつもりだ。あるいは、あの子は……それを見越してるのか? しかし……」
「……勝てるわよ。勝てるもん」
翠月が泣きそうな顔で言った。
「……しづ。お姉ちゃんが……応援してるから」
※※※
「次のターンは無い、か」
一度目を瞑ると──ヒナタは呟いた。
「……残念だな。