学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
「終わった……!」
「あー、もーう、悔しいデース!! ……どうしたデス、アカル?」
「いや、何かおかしくねえか?」
──元より少しおかしいとは思っていたこの大会。
しかし、勝ったのにアナウンスも何も聞こえてこない。
「白銀先輩っ、ブラン先輩っ!」
「紫月か!」
「……何か妙だな。嫌な気配も感じるし」
「暁ヒナタ!?」
紫月。そしてその隣には、暁ヒナタの姿があった。
先の虎の間での試合はもう終わったのだろう。
しかし、恐らく彼らも同じ理由で訝しんで俺達と合流した……ってところだろうか。
ピッ、と指を上げるとヒナタさんはちょっと残念そうに言った。
「よっ。そこの嬢ちゃん、滅茶苦茶強かったぜ。君達の後輩なんだっけ? レンから聞いているよ」
「まさか勝ったんデス、シヅク!?」
「まさかとは何ですか、失礼ですね──って、言ってる場合ではありません」
「……大気中のマナの濃度が上がってる」
俺の中のクリーチャーとしての部分が活性化している。
紫月、そしてブランが目を見開いた。
それを聞いていたヒナタさんも──顔を顰めた。
「……それって。マズくないですか?」
「なんで、なんで今になってマナが活性化しているデス!?」
「……事態は俺が思ってたよりも深刻みてーだな。白銀耀、君は確か……クリーチャーと半分融合してるんだっけか」
「は、はい」
「となると、この状況では君達……そして、守護獣と呼べるクリーチャーの判断に委ねる。俺も昔は相棒と呼べるクリーチャーが居たが、今となってはタダの人間でしかない」
流石ヒナタさんだ。黒鳥さんから色々聞いていたんだろうが、元々クリーチャーの事件に関わっていただけあってか、物怖じしていない。
「つっても、自分が何にも出来ねえのがもどかしいがな……! 自分で言うのもアレだが、俺はプロのプレイヤーだ。俺がこの場に居る事で抑止出来ることもあるかと思ってたが、お構いなしか」
「ってことはヒナタさんは気付いているんですね?」
「ああ。この状況でマナの増幅を引き起こせるようなものを秘匿出来るのは……1つしか考えられないからな」
「──会場の諸君、ご機嫌よう。ONIグループのCEO・デモーニオ・エティケッタだ」
──その場に現れたのは、デモーニオその人だった。
「済まないが、決勝戦は中止だ。最早、そんなものを執り行う必要は無いからね」
「は?」
紫月、キレた!!
「私はかねがね、デュエリストの力というものを信じていてね……ツワモノ同士のデュエルには、強い情動の力が働くと考えていたのだ」
「情動……!?」
「私は今、決勝戦の邪魔をした貴方に強い殺意を覚えてますがね」
「紫月さん抑えて抑えて!!」
「そうだ。そして強い情動の力は、良い鬼の餌となる。……私が手間暇かけて育てた”鬼”……その目でしかと見届けたまえ」
次の瞬間だった。
大気中のマナが震える。
デモーニオの前に現れたのは──巨大なロボットと、巨大な土偶のクリーチャー。
《神ナル機カイ「亜堕無」》と《EVENOMIKOTO》……完全に実体化して質量を持ったクリーチャーだ。
その傍には、ジョン・ドゥとジェーン・ドゥ──ONIグループの二人が傅いている。
「ッ……やっぱり大会そのものが罠だったのか。分かっちゃいたが、放ってはおけねえよなあ」
ヒナタさんの言う通り、俺達が此処に居なければ居なかったで、こいつらの好き勝手になっていたわけで……本当にはた迷惑な連中だ。
イマイチ、どうやって鬼が復活したかのメカニズムは分からないが、座視するわけにはいかない。
「さて。このADAMとEVEはこの地点……ネオエデン島に起点にして鬼の楽園を作る能力を持つ」
「鬼の楽園だと?」
「そうだ! 今に見てろ、世界の全てが鬼になるぞ!」
亜堕無とEVEの目が光る。
その瞬間、強烈な嫌な気が会場全体に広がっていった。
す、すごく気分が悪い。生命的な危険、そして意識を持っていかれそうだ。
ん? なんだ、額がすっごくむずむずするような……。
「あ、あれ、シヅク!? なんか角が生えてないデース!?」
「そういうブラン先輩も角が生えてますよ!? 白銀先輩も!?」
「あれ!? 俺も!?」
世界そのものを鬼にする、って……こういうことか!?
この場に居る全員が、鬼みたいに角が生え、そして爪が鋭くなっている。
そして、この俺自身もだ。
「それが鬼化の前兆だよ!! 今に理性がブッ飛び、身も心も本当に鬼になるぞ!!」
「でも、こっちには守護獣が居るデスよ! 亜堕無とEVEを倒せば全部解決デース!!」
「そうだと知って君達を招待した! 後でじっくり、守護獣も鬼にするためにな! ──白銀耀、暗野紫月、或瀬ブラン!! 君達の連れてきたネズミはこっちで預からせて貰っているよ」
「げっ、まさか捕まったのかあいつら……!」
「それにしても弱っちい連中だったよ! 亜堕無とEVEには手も足も出とらんかったわ!!」
道理でこの期に及んでも戻って来ない訳だ。
……でも、あいつらがそう簡単に無策で捕まるとは思えないんだけどな。
「この通り、彼奴らには痛い目を見せて檻の中にブチ込んでおいたよ! モモキング、シャークウガ、サッヴァークだったかな? 奴らが鬼になっているところを見るが良い!!」
会場の特大モニターに光が灯る。
そこに映し出されていたのは、目の細い鉄柵に囲まれた檻だった。
中は──がらんどうの空っぽであった。
その場は沈黙に包まれる。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……あっるえェェェーッ!? ネズミ共ァァァーッ!?」
今までの勝利確定のような余裕が消え失せ、一気に驚愕の顔に変わるデモーニオ。
そりゃそうだろう。亜堕無とEVEの顕現によって、大気中のマナが増幅したってことは──
「──1つ、瞳を光らせた」
亜堕無の身体に無数の光の剣が突き刺さる。
「──2つ、不死身の桃の龍」
EVEが激流に押し流され、場外へと転がっていく。
「──3つ、醜い悪の鬼」
颯爽とそれはデモーニオの、そして俺達の前に現れた。
「退治してくれよう……モモキング!!」
刀を構え、本来の姿へと戻ったモモキングがデモーニオの前に相対していた。
サッヴァークも、シャークウガも、本来の等身で実体化している。
マナが増幅したことで、守護獣本来の力を取り戻したのだ。
「流石だぜモモキング!」
「な? 某に任せておいてよかったでござろう?」
「無事だったのデスね!」
「なぁに、この程度は何ということはないわい」
「おいマスター! 角が生えてるぜ! まるで鬼みてーじゃねえか!」
「心配なんてありませんよ。あの亜堕無とEVEを倒せば、全部解決です」
デュエマ部3人。
そして、その守護獣が揃い踏みだ。
戦力としては申し分ない。
「ぐっ、おのれっ……!」
「観念しろデモーニオ。お前のやろうとしていたことは、あまりにも無茶だぜ。世の中全部が自分の思い通りに行くだなんて思わない事だな」
「……お前達、亜堕無とEVEでこの場を抑えていろ!」
あっ、あいつ自分だけ逃げやがった!
後に残るのは、亜堕無とEVENOMIKOTO、そしてそれを操るジョンとジェーンだけだ。
「……」
「……」
二人は何も言わずにクリーチャーを差し向ける。
無差別に砲撃を行う亜堕無。
全身からビームを放射するEVE。
その猛攻をサッヴァークがバリアで防ぎ、シャークウガが氷の剣で抑え込む。
「白銀先輩。此処は私達が」
「こんなやつら、けちょんけちょんにしてしまうデース! アカルはデモーニオを追って下サイ!」
「俺はレンと合流して避難誘導をする。頼むぜ──白銀耀!」
「ああ!」
サッヴァークが亜堕無と、そしてシャークウガがEVEと組み合う。
その隙を縫って、俺はモモキングと一緒にデモーニオを追いかけるのだった。
※※※
「──おのれ、きやつらめ……! よもや、あれほどの力を持つとは思わなんだ……!」
「やはり貴様では非情な鬼にはなりきれんかったな、デモーニオ」
「黙れい! 俺様は鬼になると決めたのだ……力を貸して貰うぞ──ジャオウガ」
「我を呼び出すのか?」
ネオエデン島で最も高い場所。
それは、このONIスタジアムの屋上特設ステージ──「鬼の間」だ。
その中央で独りデモーニオは槍を握り、悔恨に満ちた顔で空を眺めていた。
「デモーニオ!!」
何とか間に合ったようだ。
俺はモモキングと一緒に、デモーニオに相対する。
しかし、その姿を見て言葉を失う。
彼は自らの腹に槍を突き立てていた。
「邪魔立て結構!! どうせ、鬼には誰も勝てん!! 直に鬼が世界を覆い尽くすからな!!」
その身体を槍が貫く。
血しぶきが上がり──それがデモーニオを包み込む。
俺達はその禍々しい変貌を見ていることしか出来なかった。
「マスター殿、この気は……!」
「間違いねえ、2年越しにこんな所で会いたくなかったぜ」
「やはり某らは鬼と戦う運命……!」
立ち竦むしかなかった。
──俺が今までに戦った中でも苦しめられた敵・酒呑童子が使っていたキングマスターカード。
「ジャハハハハ!! 久々に会いたかったぞ、吉備津桃王──いや、モモキングよッ!!」
その名は鬼の王・ジャオウガ。全てを蹂躙する、破壊と怨みの権化だ。