学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
「主催側と言えど、大会を邪魔する狼藉……許しませんよ」
「……右。30度」
シャークウガが亜堕無と競り合う。
その傍に立つジョンは、何も喋らない。何も語らない。
ただただ、その砲撃を虚ろな声で指揮するだけだ。
「数が多すぎるぜ、マスター!!」
「ッ……やはり、強い……!! ブラン先輩は──!?」
「どっせりゃあああああ、デェェェース!!」
ブランが背中にしがみついたサッヴァークの大剣が、EVENOMIKOTOを突き貫いたのが見えた。
やはり恐るべきマスタードラゴンの出力である。
巨大な土偶の鬼は、一度仰け反ると、そのまま傾き、動かなくなった。
「流石です……っ!?」
「……17時」
「し、しつこいですね、こっちは……!」
しかし、一方の亜堕無は元々戦艦の如き姿をしているからか強敵だ。
強固な装甲は、土くれの装甲に比べるとあらゆる攻撃が届かない。
そればかりか、砲門は幾つも付いているわけで、その気になれば──
「……ウチカタ、ハジメ」
──全放射も可能だ。
砲弾の嵐が飛び交い、瓦礫が襲い掛かる。
紫月は避ける間もなく──砲弾の雨に追われるシャークウガも追いつかない。
「マスターッ!!」
「くっ……!」
「シヅク!! 伏せてくだサイ!!」
その時だった。
目の前にサッヴァークが急降下。
そのまま全ての攻撃を防壁で受け流してしまう。
「ッ……!! サッヴァーク、トドメを刺してくだサーイ!!」
「御意にッ!!」
ブンッ、と大上段の一閃。
亜堕無の身体は両断され──そのまま爆散するのだった。
「ふふんっ、今度はちゃんと後輩のことを守れたデスよ!」
「ありがとうございます、ブラン先輩……!」
「No,Problem! シヅクもアカルも無茶苦茶するデスから、私がちゃあんと見張っておかなきゃ、デスねー!」
「そうじゃわい。鮫の字も重々気を付けるように」
「うるせーうるせー、わぁーってるよ爺さん──むっ……? 待て! 高濃度の魔力反応──!」
全員の視線は、動かないEVEに向けられる。
その身体はどくん、どくん、と何度も心臓のように脈打っており──
「いかん! 魔力臨界点!!」
「どういうことデース!?」
「爆発する!! 辺り一帯皆鬼になってしまうぞ!!」
「デース!?」
「させねーよ、凍りやがれ!!」
魔方陣を幾つも展開するシャークウガ。
みるみるうちに土くれの身体は凍えていき、完全に氷の中へと閉じられる。
そのまま今度こそ動かなくなるEVEだったが、ダメ押しと言わんばかりにシャークウガは水の剣でEVEを水圧で細かく何度も何度も切り刻む。
そうしてついに、形を保てなくなったからか、EVEは消滅したのだった。
「……あっぶねぇー……こんなに戦うなんて、マジで2年ぶりじゃねえか?」
「喜べることではないがな」
「あっ! 角が無くなってるデース! わーいわーい!」
「奴らの無差別鬼化は解除されたようですが……白銀先輩が心配です」
「確かに! アカル、絶対無茶してるデス! あのデモーニオ、まだ手を隠してる気がするデスよ!」
「珍しく意見が合いますね。行きますよ」
「……。ハイッ! 勿論デス! Lets,Go!!」
「……? 探偵」
「大丈夫デス! 気にしないでくだサーイ!」
耀とデモーニオが向かっているであろう場所。
そこをサッヴァークに案内してもらい、紫月とブランはそこへ駆けていく。
しかし道中、邪悪な気がどんどん強くなっていき、足を運ぶことすらままならなくなっていくのだった。
「ブラン先輩、置いていきますよ」
「ま、待ってくだサイよ、シヅク……」
「──恐ろしい気配じゃ! 以前、伊勢で感じたそれ以上かもしれぬ!」
「これってよぉ、デモーニオってヤツが相当ヤバいクリーチャーを隠してたってことだよな!?」
辿り着いたのは──鬼の間。
恐らく決勝戦のために用意されていたステージだ。
そこへ繋がる扉を、シャークウガとサッヴァークが切り刻み、無理矢理押し入った──
「ッ……!」
そこで紫月とブランは足を止めた。
巨大な鬼が──その場に立っていた。
ジャオウガ。以前、伊勢で酒呑童子がその身体を借りていたクリーチャーだ。
そして、その前に耀が倒れていた。
「アカル──ッ!!」
踏み込もうとしたその時。
ジャオウガの放つオーラがひとたび、更に強くなる。
それと同時に、サッヴァークとシャークウガの身体が掻き消えてしまった。
「どうしたデース!?」
「ち、力が出ん……!!」
「あのジャオウガの力の所為だ……!! デンジャラスだぜ……!!」
「私達だけでも……!」
「あっ、待つデスよシヅク!! ッ……痛……!! シヅク!!」
ブランの脚からは──赤黒いどろどろが流れていた。
しかし、紫月は構わず走っていく。
耀が、危ない。
※※※
「ジャハハハハハ! モモキングは頂いたぞ!! ぐぅっ……!?」
勝ち誇ったように笑うジャオウガだったが、突如高笑いが止まる。
こっちは倒れたまま起き上がることもままならないが──何か起こったのは確かのようだ。
身体が、痛い。
炎に焼かれた上に、衝撃をモロに喰らった所為か、フラフラで頭が痛い。
「ぐぅっ……ぐお、まだ力が……!!」
見上げると──その身体がどろどろと溶けていく。
そして、元のデモーニオの姿へと戻ってしまうのだった。
それと同時に周囲のマナが大幅に消えていく。
……不幸中の幸いだ。まだ、ジャオウガは長い間、その姿を顕現させ続けることが出来ないのか。
「ッ……ハァ、ハァ……!! 大したものだよ、ジャオウガ!! だが、利用価値のあるものを処分しようとするのはいかんなぁ」
つかつか、と歩み寄ると──デモーニオは俺に向けて槍を取り出した。
「モモキングを……かえ、せ……!!」
「返せと言われて返すバカは居らんよ」
「モモキングを……!!」
もう、嫌なんだ。
相棒が居なくなるのは──嫌なんだ。
「かえせぇよォ……!!」
「相棒を奪われたのは君が弱い所為だよ」
「ぐッ……!!」
「ていうかさ? 何でまだ生きてんの? 起き上がれてるの? おかしくない? あぁ! 君は、クリーチャーと融合しているんだったな?」
「ああ、そうだよ……ッ!! 俺は半分、クリーチャーだ……ッ!!」
「奇遇だな。この槍には、刺したものを強制的に鬼にする力があってね。君を刺したら、どんな鬼になるか……楽しみだよ」
まずい。
まずすぎる。
モモキングだけじゃなくて、俺まで鬼になるのかよ……!
そうなったら、あいつらは──俺と戦う事になっちまう。
最後の力を振り絞り、立ち上がる。
逃げなきゃ。
どうにかして。
どうにかして、逃げ、ねえと……この場から……!
「おい、待てよ。最期に聞かせてくれねーか、オッサン」
「あ? 何だね」
「何でこんな事してまで、他の人を鬼にしたがるんだ……!? 何か深い理由があるんだろうな? 鬼が好きなだけなら、額縁の鬼でもずっと眺めてりゃあ良いだろが」
「──黙り給え」
ギラン、とデモーニオの目が光る。
「……人は鬼だ。弱きを喰らう鬼だ。だから俺様も鬼になる。それだけの事だ」
「本当にそれだけか?」
「それだけ? 俺様が鬼になる理由──」
それを言いかけ、デモーニオは──口を止めた。
「────。……忘れたよ、そんなもの。忘れると言う事は、大したことが無いということさ!!」
衝撃が腹に襲い掛かる。
蹴っ飛ばされたのか。
気持ち悪さも込み上げてくる。
「ッ……がほっ、おえっ……」
喉から何かが溢れ出てくる。
噎せそうになる。
黒い血が混じりの吐しゃ物が床にぶちまけられた。
「っ……? ッ……ああ」
「あ、ああああーッ!! 汚い汚い!! これだから庶民は!! 私のステージになんてものを吐いてくれるんだね、君はッ!! 高かったんだぞぉ、これぇ、全部大理石にするの大変だったんだから」
「ぉっ……ぎっ……テメェ……!! テメェの所為だろが……!!」
「さっさと立ち上がれ!! 立て立て!! この場でブチ抜いてくれるわ!!」
最後の力で膝立ちになる。
だけど、もう動けない。
一歩も歩けない。
ブンッ!!
槍が大きく振り上げられる。
身体に力が入らない。
ダメだ。もう、逃げられない──
「──そして、鬼になれィ!!」
「耀君ッ!!」
身体が突き飛ばされた。
そんな気がした。
一瞬の浮遊感と共に。
「し、づく……ッ!?」
彼女は。
紫月は──
槍に、貫かれていた。