学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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JO18話:鬼の槍

 ※※※

 

 

 

「主催側と言えど、大会を邪魔する狼藉……許しませんよ」

「……右。30度」

 

 

 

 シャークウガが亜堕無と競り合う。 

 その傍に立つジョンは、何も喋らない。何も語らない。

 ただただ、その砲撃を虚ろな声で指揮するだけだ。

 

「数が多すぎるぜ、マスター!!」

「ッ……やはり、強い……!! ブラン先輩は──!?」

「どっせりゃあああああ、デェェェース!!」

 

 ブランが背中にしがみついたサッヴァークの大剣が、EVENOMIKOTOを突き貫いたのが見えた。

 やはり恐るべきマスタードラゴンの出力である。

 巨大な土偶の鬼は、一度仰け反ると、そのまま傾き、動かなくなった。

 

「流石です……っ!?」

「……17時」

「し、しつこいですね、こっちは……!」

 

 しかし、一方の亜堕無は元々戦艦の如き姿をしているからか強敵だ。

 強固な装甲は、土くれの装甲に比べるとあらゆる攻撃が届かない。

 そればかりか、砲門は幾つも付いているわけで、その気になれば──

 

 

 

「……ウチカタ、ハジメ」

 

 

 

 ──全放射も可能だ。

 砲弾の嵐が飛び交い、瓦礫が襲い掛かる。

 紫月は避ける間もなく──砲弾の雨に追われるシャークウガも追いつかない。

 

「マスターッ!!」

「くっ……!」

「シヅク!! 伏せてくだサイ!!」

 

 その時だった。

 目の前にサッヴァークが急降下。

 そのまま全ての攻撃を防壁で受け流してしまう。

 

「ッ……!! サッヴァーク、トドメを刺してくだサーイ!!」

「御意にッ!!」

 

 ブンッ、と大上段の一閃。

 亜堕無の身体は両断され──そのまま爆散するのだった。

 

「ふふんっ、今度はちゃんと後輩のことを守れたデスよ!」

「ありがとうございます、ブラン先輩……!」

「No,Problem! シヅクもアカルも無茶苦茶するデスから、私がちゃあんと見張っておかなきゃ、デスねー!」

「そうじゃわい。鮫の字も重々気を付けるように」

「うるせーうるせー、わぁーってるよ爺さん──むっ……? 待て! 高濃度の魔力反応──!」

 

 全員の視線は、動かないEVEに向けられる。

 その身体はどくん、どくん、と何度も心臓のように脈打っており──

 

「いかん! 魔力臨界点!!」

「どういうことデース!?」

「爆発する!! 辺り一帯皆鬼になってしまうぞ!!」

「デース!?」

「させねーよ、凍りやがれ!!」

 

 魔方陣を幾つも展開するシャークウガ。

 みるみるうちに土くれの身体は凍えていき、完全に氷の中へと閉じられる。

 そのまま今度こそ動かなくなるEVEだったが、ダメ押しと言わんばかりにシャークウガは水の剣でEVEを水圧で細かく何度も何度も切り刻む。

 そうしてついに、形を保てなくなったからか、EVEは消滅したのだった。

 

「……あっぶねぇー……こんなに戦うなんて、マジで2年ぶりじゃねえか?」

「喜べることではないがな」

「あっ! 角が無くなってるデース! わーいわーい!」

「奴らの無差別鬼化は解除されたようですが……白銀先輩が心配です」

「確かに! アカル、絶対無茶してるデス! あのデモーニオ、まだ手を隠してる気がするデスよ!」

「珍しく意見が合いますね。行きますよ」

「……。ハイッ! 勿論デス! Lets,Go!!」

「……? 探偵」

「大丈夫デス! 気にしないでくだサーイ!」

 

 耀とデモーニオが向かっているであろう場所。

 そこをサッヴァークに案内してもらい、紫月とブランはそこへ駆けていく。

 しかし道中、邪悪な気がどんどん強くなっていき、足を運ぶことすらままならなくなっていくのだった。

 

「ブラン先輩、置いていきますよ」

「ま、待ってくだサイよ、シヅク……」

「──恐ろしい気配じゃ! 以前、伊勢で感じたそれ以上かもしれぬ!」

「これってよぉ、デモーニオってヤツが相当ヤバいクリーチャーを隠してたってことだよな!?」

 

 辿り着いたのは──鬼の間。

 恐らく決勝戦のために用意されていたステージだ。

 そこへ繋がる扉を、シャークウガとサッヴァークが切り刻み、無理矢理押し入った──

 

 

 

「ッ……!」

 

 

 

 そこで紫月とブランは足を止めた。

 巨大な鬼が──その場に立っていた。

 ジャオウガ。以前、伊勢で酒呑童子がその身体を借りていたクリーチャーだ。

 そして、その前に耀が倒れていた。

 

「アカル──ッ!!」

 

 踏み込もうとしたその時。

 ジャオウガの放つオーラがひとたび、更に強くなる。

 それと同時に、サッヴァークとシャークウガの身体が掻き消えてしまった。

 

「どうしたデース!?」

「ち、力が出ん……!!」

「あのジャオウガの力の所為だ……!! デンジャラスだぜ……!!」

「私達だけでも……!」

「あっ、待つデスよシヅク!! ッ……痛……!! シヅク!!」

 

 ブランの脚からは──赤黒いどろどろが流れていた。

 しかし、紫月は構わず走っていく。

 耀が、危ない。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ジャハハハハハ! モモキングは頂いたぞ!! ぐぅっ……!?」

 

 

 

 勝ち誇ったように笑うジャオウガだったが、突如高笑いが止まる。

 こっちは倒れたまま起き上がることもままならないが──何か起こったのは確かのようだ。

 身体が、痛い。

 炎に焼かれた上に、衝撃をモロに喰らった所為か、フラフラで頭が痛い。

 

「ぐぅっ……ぐお、まだ力が……!!」

 

 見上げると──その身体がどろどろと溶けていく。

 そして、元のデモーニオの姿へと戻ってしまうのだった。

 それと同時に周囲のマナが大幅に消えていく。

 ……不幸中の幸いだ。まだ、ジャオウガは長い間、その姿を顕現させ続けることが出来ないのか。

 

「ッ……ハァ、ハァ……!! 大したものだよ、ジャオウガ!! だが、利用価値のあるものを処分しようとするのはいかんなぁ」

 

 つかつか、と歩み寄ると──デモーニオは俺に向けて槍を取り出した。

 

「モモキングを……かえ、せ……!!」

「返せと言われて返すバカは居らんよ」

「モモキングを……!!」

 

 もう、嫌なんだ。

 相棒が居なくなるのは──嫌なんだ。

 

「かえせぇよォ……!!」

「相棒を奪われたのは君が弱い所為だよ」

「ぐッ……!!」

「ていうかさ? 何でまだ生きてんの? 起き上がれてるの? おかしくない? あぁ! 君は、クリーチャーと融合しているんだったな?」

「ああ、そうだよ……ッ!! 俺は半分、クリーチャーだ……ッ!!」

「奇遇だな。この槍には、刺したものを強制的に鬼にする力があってね。君を刺したら、どんな鬼になるか……楽しみだよ」

 

 まずい。

 まずすぎる。

 モモキングだけじゃなくて、俺まで鬼になるのかよ……!

 そうなったら、あいつらは──俺と戦う事になっちまう。

 最後の力を振り絞り、立ち上がる。

 逃げなきゃ。

 どうにかして。

 どうにかして、逃げ、ねえと……この場から……!

 

「おい、待てよ。最期に聞かせてくれねーか、オッサン」

「あ? 何だね」

「何でこんな事してまで、他の人を鬼にしたがるんだ……!? 何か深い理由があるんだろうな? 鬼が好きなだけなら、額縁の鬼でもずっと眺めてりゃあ良いだろが」

「──黙り給え」

 

 ギラン、とデモーニオの目が光る。

 

「……人は鬼だ。弱きを喰らう鬼だ。だから俺様も鬼になる。それだけの事だ」

「本当にそれだけか?」

「それだけ? 俺様が鬼になる理由──」

 

 それを言いかけ、デモーニオは──口を止めた。

 

 

 

 

「────。……忘れたよ、そんなもの。忘れると言う事は、大したことが無いということさ!!」

 

 

 

 衝撃が腹に襲い掛かる。

 蹴っ飛ばされたのか。

 気持ち悪さも込み上げてくる。

 

「ッ……がほっ、おえっ……」

 

 喉から何かが溢れ出てくる。

 噎せそうになる。

 黒い血が混じりの吐しゃ物が床にぶちまけられた。

 

「っ……? ッ……ああ」

「あ、ああああーッ!! 汚い汚い!! これだから庶民は!! 私のステージになんてものを吐いてくれるんだね、君はッ!! 高かったんだぞぉ、これぇ、全部大理石にするの大変だったんだから」

「ぉっ……ぎっ……テメェ……!! テメェの所為だろが……!!」

「さっさと立ち上がれ!! 立て立て!! この場でブチ抜いてくれるわ!!」

 

 最後の力で膝立ちになる。

 だけど、もう動けない。

 一歩も歩けない。

 

 

 

 ブンッ!!  

 

 

 

 槍が大きく振り上げられる。

 身体に力が入らない。

 ダメだ。もう、逃げられない──

 

 

 

「──そして、鬼になれィ!!」

 

 

 

 

 

 

「耀君ッ!!」

 

 

 

 

 

 身体が突き飛ばされた。

 そんな気がした。

 一瞬の浮遊感と共に。

 

 

 

 

「し、づく……ッ!?」

 

 

 

 

 彼女は。

 

 

 

 紫月は──

 

 

 

 

 槍に、貫かれていた。

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