学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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JO22話:証

 ※※※

 

 

 

 ──マスター殿、マスター殿!!

 

 

 

 声が、聞こえたのだ。

 

「……モモ、キング?」

 

 アメノホアカリを倒した、あの日。

 俺は──何処かに飛ばされて。

 気が付いたら、良く知らない平原に飛ばされていた。

 俺の前には、全身ピンク色でフルチンのデブドラゴンが立っていた。

 それが──守護獣・モモキングとの邂逅だった。

 

「お前モモキングなのォ!? 何でそんな姿に!?」

 

 曰く。

 桜桃に眠っていたモモキングその人と、守護獣として顕現していたカードが時空の裂け目で混ざり合い──此度、実体化を果たしたのだと言う。

 つまり、このモモキングが桜桃に封じられていたモモキングとして扱って良いのであるが……。

 

「桜桃の中で千年近く寝ていた所為か……メタボになっていたのでござる」

「寝てたからデブったのかよ!? さっきまで召喚した時は普通の姿だったじゃねえか!」

「あれは鎧を着こんだからでござる、普段はコレでござる、でぶっふ」

「ええ……」

 

 それから俺は、流れ着いたその世界で、元の世界に戻るべく行動を開始した。

 そこは、人が文明を築いていながら、当たり前のようにクリーチャーが空を飛び、地を駆ける世界だった。

 

「異世界ってヤツか……所謂」

「つまり某たち、異世界転生しちゃったって……コトでござる!?」

「言ってる場合か!」

 

 無論、半分がクリーチャーと言えど、俺は生身のままで戦えるほど強くはない。

 モモキングの力を借りなければ、とてもでなければ生還出来なかった。

 

「お前も俺も生きて帰らなきゃいけない! そのためには、強くならなきゃな」

「そうでござるが……こんなデブゴンの姿では……」

「うるせぇ! 強くなるんだよ! 俺はマスターだ! 責任を持って、オマエを一人前のモモキングにしてやる!」

 

 画して。

 俺は現地の人に助けられながらも、モモキングと特訓を重ねた。 

 デュエルだけではない。モモキングそのものを一から鍛え直すために、色んな修行をした。

 

「ヒィーッ!! ヒィーッ!! フゥーッ!!」

「オラァ!! カードイラストみてーなスリムなドラゴンになるんだろが!! 子供はオメーの姿見てがっかりだぞ!! つーかその掛け声やめろや!!」

「カッコイイ、ドラゴンに!! なるでござるーッ!! ヒィーヒィーッフゥーッ!!」

「だからやめろや、その掛け声!! 何を産むつもりだ何を!!」

 

 剣戟、基礎体力の訓練、精神統一。

 力の座で教わったものや、現地で聞きかじったものを一通り試す日々。

 そうしているうちに俺も鍛えられていく。

 

「紫月達に……会えるのは何時だ?」

「最強に、なるでござる!」

「そもそも帰れるのか俺……?」

「かつてのような、力を! 鬼を倒せる力を!」

「……いいや、帰ってみせる。絶対に。何年かかっても……ッ!!」

「マスター殿の為に……他でもない、某自身の為に!!」

 

 2年。本当に色々な事があった。

 いろんな出会いと別れがあった。

 だけど、一度たりとも、故郷の事を忘れたことはなかった。

 ずっと、帰還して──仲間達と再会することを夢見た。

 例えあいつらが俺を忘れていたとしても、俺は絶対に帰らなきゃいけないんだ。

 そう胸に言い聞かせ、戦い続けた。

 

「──予言に書かれた最悪の龍。それが来れば、この世界は終わるだろう」

「要するに……そいつをブッ倒せば良いんだろ?」

「しかし、奴は次元に穴を開ける力を持っている」

「都合が良いじゃねえか! そいつを倒して、俺は元の世界に戻る」

「確実に戻れる保証は無いのだぞ? アカル、君はこの世界での生活は保障されてるのだから」

「……だとしても! マスター殿はこの2年間、元の世界に戻ることを目指したのでござるよ!」

「今更、帰らねえって選択肢はない。……名残惜しいって気持ちはあるけどな」

 

 丸々2年経ったその日。

 その世界を揺るがす巨大なクリーチャーが襲来した。

 だけど、もうそいつは──俺達の敵ではなかった。

 神を倒したデュエリストと、鬼を屠った最強のドラゴン。

 それが合わされば、俺達は最強だ。

 

 

 

「はっはっ、やってのけたぜ、モモキング!!」

「某たち、最強でござるな!!」

 

 

 

 次元の穴に落ちる中。

 俺は、相棒に掴まり──ふと、思案した。

 文句なし。何処の誰に見せても恥ずかしくないドラゴンだ。

 

(チョートッQ。見てるか? 俺は……新しい相棒と上手くやってる)

 

(お前にも会わせてやりてぇよ……)

 

 ……モモキング。お前は、俺が1から育てた守護獣だ。だから、そう簡単に負けたりしねえって信じてる。

 必ず迎えに行く。

 だから──待っててくれ。

 

 

 ※※※

 

 

 

「……紫月……」

「……大丈夫です。耀君が無事だっただけで、紫月は……十分です」

 

 うわぁ、やっぱり露骨に落ち込んでるな。

 

「本当に気にしてねえヤツがこんな所で、たそがれてるわけねーだろ」

「……やっぱり、耀君には分かっちゃいますよね」

「お前は行き詰まったら、必ず夜の海を見に来るからな」

「……私もあの時。何が最善か分かりませんでした。でも、気が付いたら足が──止まらなかったんです」

「俺も同じ立場ならそうするよ」

「……でも、その結果……足手まといになってしまいました」

 

 彼女の声は上ずっている。

 やはり、自分の最大の武器である知識、経験、そして感情が奪われたのが余程キているんだろうな。

 

「俺はお前が敵にならなくて良かったって思ってるけどな」

「あっ、それは……確かに」

 

 ……もう二度と。

 俺の手でコイツを傷つけることになるのはゴメンだ。

 

「……はぁ。高望みしすぎたでしょうか」

「奪われたなら取り返せば良いだろ? お前が今、此処に居るなら……まだいくらでも希望はある」

「私今、ブラン先輩に3タテされるくらい弱いんですよ?」

「ブランだって強くなってるからな」

「まあ、それは認めてあげても良いですが……デュエルの強さは、私にとって誇りだったんです。これでも自分の強さに自信と自負は抱いていましたから」

 

 だからこそ、アイデンティティ……か。

 確かに、俺もこいつの無条件な強さに助けられてたところはあるしなあ。

 

「悪い、無神経だったな」

「いえ。耀君は……励ましに来てくれたでしょうから。耀君だって、モモキングが奪われてショックでしょうに──」

「勿論、取り返さなきゃいけねーよ。だけどあいつはな、これでも長い事俺と一緒に居るんだ」

「……信じてるんですね。モモキングが簡単に鬼に負けたりしない事を」

「ああ。言っちゃ悪いかもしれねえが、純粋な魔力量と戦闘力なら、サッヴァークやシャークウガよりも強いんだぜ? 俺が向こうで鍛えに鍛えたからな」

「耀君はズルいです。2年間の間……何があったんですか?」

「……色々だよ?」

「色々じゃ分かりません。正直、モモキングに嫉妬してます……」

 

 あ、多分、普段なら割とキツめに怒られてるところだ。

 

「……ごめんなさい。ちょっと、情緒が不安定でした」

「俺も悪かったよ」

 

 俺は──語ることにした。

 あのアメノホアカリとの戦いの後、何があったのかを。

 それを信じられない、お話の中のようだ、と驚きながらも紫月は聞いていてくれた。

 そして「やっぱり向こうでも無茶苦茶したんじゃないですか」と言ったのだった。

 

「……わりぃ、気を遣わせたくないから黙ってたんだ」

「遣うに決まってるじゃないですか!」

「そうだろ? 俺は……帰ってきて、ただ、皆と再会したかっただけだからな。あっちでの思い出は俺とモモキングの胸の中に秘めておけばいいって思ったんだ」

「……!」

 

 最も、結局全部元通りにはいかなかった。

 この世界の時間もしっかり2年進んでいて、その間に変わってしまったものはあまりにも多い。

 

「……ごめんなさい」

「良いんだって。黙ってた俺も悪いしさ。辛いことばっかだったわけじゃねえよ。だけど……やっぱお前らに会えないのが一番キたよな……」

「先輩は……本当に、私達と一緒に居られるだけで満足だったんですね。それを私は……無理矢理」

「いや、ダレてたのは事実だからな。久々にデュエマを鍛える機会が出来て良かった。命のやり取りを伴わないデュエルの楽しさってやつ、思い出せた気がするよ」

「……それをONIの奴らは……許せないです」

「紫月……」

「でも、今の私じゃ……鬼月には……勝てない」

 

 プライドの高い紫月にとってはデュエマが今までのように出来なくなったこと自体にショックを受けている。

 傍に居てくれれば良いって言ったって「そういうことじゃないんですが?」って返されるのがオチだろ。

 かと言って、弱体化している今、下手に戦いに向かわせてもそれはそれで危ないんだよな。

 だけど足をケガしてるブランと、守護獣の居ない俺だけじゃあ戦力的に不安だし……。

 本音を言えば、これ以上紫月に危ない事してほしくないんだけど、それはきっと彼女が許さないだろうしなあ。どうしたもんか。

 ……そうだ。

 

「勝てないと思うなら、勝てるように考える……いつものオマエならそう言うと思うぜ」

「? で、でも──」

「一人で考えても浮かばないなら、二人で。三人がダメなら四人で! こんな時くらい、俺達の力を借りてデッキを組んでもバチは当たらないんじゃねーか?」

「っ……でも、今の私じゃ……」

「紫月。お前がこうなったのは、俺を庇ったからだろ? お前はやっぱすげーよ。鬼化も耐えきったし、俺の事も守ってくれた。これ以上ない自慢のカノジョだ」

「……私……っ」

 

 ──それも、100倍返しする番だ。

 

「紫月。お前、俺が紫月の事をどれだけ好きか分かってねーだろ」

「ふぇ?」

「かつての俺は、タイムマシンを作ってでもお前を助けようとした。今此処に居る俺だって、時を超えてでもお前を助けに来た。運命だって捻じ曲げた! 何でそれだけのことが出来るか、分かってねーだろ」

 

 こいつのためなら運命だって捻じ曲げられる。

 時だって超えられる。

 空間に穴だって開けてみせる。

 そんな理由、1つしかない。

 

「白銀耀はな……暗野紫月が絡むと、どーーーーーーっしようもないバカになっちまうってことだよ! それも、スケールの違う、時を超えたバカだ!」

 

 だから、お前が気負う必要なんて何処にも無い。

 あの運命を超えられたんだ。どんな試練だって超えられるって思わないか。

 少なくとも俺は、あの時程の絶望は感じていない。

 神に世界をブッ壊されて、異世界に飛ばされて……それでも戻って来たんだ。

 鬼くらいなんだ! かかってきやがれ!

 だから──

 

「お前はそんなバカに好かれたんだよ! どんなことだって……時を超えるよか100倍容易いぜ!」

 

 ──この手を取ってくれ、紫月。

 

「……足りない、です」

 

 漸く。紫月は──笑った。

 そして、俺に肩をもたれかかり、言った。

 

「じゃあ……証を、ください。言葉だけじゃ、足りないです。調子の良い事だけ言って、また居なくなったら、許さないですから……!」

 

 その目は──涙ぐんでいた。

 やっぱり、相当トラウマにさせちまったみたいだ。

 だけど……もう俺は居なくなったりしない。

 

「あいつに盗られる前に……証を、私にください。私が、先輩のものだって証を」

「くれてやるよ。そんなもん、幾らでもな」

 

 

 

 

 

「──イチャイチャするのは良いんだけどなー、俺が居ねえ時にしてほしかったなァー?」

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 ……。

 俺達は我に返り、振り返った。

 呆れた顔の鮫の魚人が腕を組んで立っていた。

 お前、何で此処に居るの?

 

「シャークウガ……!?」

「オメーら、今ヤベー事になってんの分かってんだろ?」

「い、今のは流れで……」

「流れで、じゃねーんだよ!! はぁー、わざわざ来てソンしたわ!! ……黒鳥から緊急の伝言だぜ」

「緊急ならスマホで連絡すれば良いのに」

「いえ。この島は今、全域が圏外になっています」

 

 そう言えば、そうだった……!

 

 

 

「……分かったんだよ。デモーニオの奴が何処に居るのか──!」

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