学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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JO23話:突入

「──ネオエデン島に大規模な地下シェルターが……?」

「ああ。元々、亜堕無とEVEを収容するのに使っていたらしい。言わば研究施設だ」

「大会の時だけ、スタジアムに亜堕無とEVEを持って来ていたんデスよ!」

「コンクリートに囲まれた地下なら魔導司の目に付かなかった理由も納得がいく」

「本当に合ってるのか? もう逃げてるってオチは……」

 

 黒鳥さんとブランが持ち帰った情報は、ヒナタさんが思わず疑ってしまうほどに大きなものだった。

 実質的に本拠地が分かったようなもんじゃないか。

 でも、ジャオウガの強力なマナの気配からしても、この島にデモーニオが居るのは間違いないし、信ぴょう性は高い。

 

「シヅク、デッキの調整は大丈夫デス?」

「もう、カードの効果も暗記し直しましたよ。皆のおかげです。それと──ありがとうございます、ヒナタさん」

「俺に後出来る事はこれくらいなもんだからな。本当なら俺が出向いて戦いてえよ」

 

 ぱしっ、とヒナタさんは掌に拳を叩きつける。

 彼も、紫月の使うデッキの調整に付き合ってくれたのだ。

 

「今、この事態を解決できるのは君達3人しかいない。だけど──きっちり、生きて帰ってきてほしい。君へのリベンジもしたいし──何より白銀耀、或瀬ブラン。君達ともいつか戦いたいしな」

「ヒナタさん……何から何までありがとうございます」

「礼を言うのは、デモーニオをコテンパンにした後でも遅くねえぞ、白銀」

 

 差し出された手を──俺は握り返す。

 

「後は託したぜ──デュエマ部」

「っ……はい!」

 

 俺達は、黒鳥さんの借りたレンタカーに乗り込んでいく。

 ヒナタさんだけは、残って他の選手の面倒を見ているらしい。

 そのまま──地下シェルターの入り口がある場所に、俺達は進んでいく。

 道中、俺達は緊張からか黙ったままだったが、ぽつり、とブランが呟いた。

 

「……アカル」

「ん? 何だブラン」

 

 彼女は、何処か思いつめた顔で──言った。

 

 

 

 

「ひとつだけ、ワガママ言っても……良い、デスか?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「せいっ!!」

 

 

 

 ──地下シェルターの分厚い扉が破壊される。

 それを見届け、黒鳥さんは車のエンジンを再びかけた。

 この後、万が一に備えて街で待機しておくらしい。

 

「……僕は先に行くが……貴様等。死ぬなよ」

「……!」

「師匠も、どうか気を付けて」

「僕の心配はするな。慣れっこだ。何も出来る事は無いが、せめて祈るくらいはさせてくれよ」

「俺達も……助けられてますよ。黒鳥さんに」

「そうか。……無事で帰ってこい。以上だ」

 

 そう言って、彼はレンタカーを走らせて去っていく。

 そして、こじ開けられたシェルターに、俺達は足を踏み入れていくのだった。

 常にシャークウガとサッヴァークは実体化している状態だ。

 それほどまでに大気中のマナは濃くなっている。

 そして、こうでもしなければ、脚を怪我しているブランは動けない。サッヴァークが負ぶっているのだ。

 しばらくは何もない通路が続いていたが──人の気配がしたため、足を止める。

 

「やっぱり……こうなるデスね……!」

 

 サッヴァークに負ぶわれたままのブランが呟いた。

 視線の先には──鬼の角が生えた兵士たちが、銃を構えているではないか。

 デモーニオの揃えた私設兵なのだろうが、いずれも理性を失っているのか、バラバラに突貫し、鉛玉を躊躇なく放ってくる。

 

「ウッガガアッァァァァーッ!!」

「サッヴァーク!!」

「御意! 今度は撃ち漏らしなどせんわ!!」

 

 乱射される弾丸はサッヴァークの召喚した剣に阻まれ、全て弾かれてしまう。

 そして、鬼化した兵士たちは次々に水晶に飲まれていき、動きを止めていく。

 

「……無力化、できますか?」

「おうよ! このくらいの単純なマシンなら、バラバラだぜーッ!!」

 

 更にシャークウガが魔方陣を展開すると共に、銃はパーツ毎に分解されていく。

 やはり全力を取り戻しているだけあって、守護獣2体の力は凄まじい。

 例え鬼化していようと、人間なら何人居ても相手にならない。

 

「へっへっ、俺の魔法にかかりゃあチョロいもんだぜ! この調子なら簡単にデモーニオの所に辿り着けちまいそうだな──ッ!」

「それはどうかな?」

 

 突如、轟音が響く。

 兵士達を散らすようにして、砲弾が飛び──サッヴァークが撃ち返す。

 白い装甲に身を包んだ、鬼の鎧──亜堕無の姿がそこにはあった。

 その胴体は不気味な眼の付いた鬼の槍に貫かれており、全身からはさっきよりも禍々しい殺気が放たれている。

 そして、その傍らに立っているのは──

 

「ッ……来おったか!!」

「埃臭いデース! もっと静かに登場してくだサイ!」

「マスター!! ありゃあ……船でマスターをナンパしたヤツじゃねえか!? えーと名前は……10円ハゲ!!

 

 

 

 

「イチエンじゃーいッッッ!!」

 

 

 

 

 その肌は完全に青くなっており、額からは角が伸びているが、確かにイチエンだ。

 鬼化に際して理性がブッ飛んだと思っていたが、時間が経つと徐々に取り戻して来るのか。

 ……最も、その精神は既に人の物ではなく、鬼の物になっているのだろうが。

 

「白銀耀! お前に負けた後、デモーニオ社長が10万ドルをポンと出してくれたぜ」

 

 ああなるほど。

 病院に運び込まれたと思ってたが、それは表向きの話で、実際はデモーニオ側から手引きを受けていたのか。

 

「鬼の世界で、デモーニオ社長の下で暴れるだけで、俺っちは大金持ちでプロだ! あんなしみったれたスポンサーはもう要らねえぜ!」

「その結果が社長子飼いの犬っころとは、何処までも落ちぶれるもんだな」

「しゃらくせぇ! 俺っちが一番、亜堕無を上手く使えるらしいからな! 今にこの世界全部が鬼になるが……此処でお前らも鬼にしてやるよ!」

「悪いけど、此処は私が相手デスよ!」

 

 ブランは、サッヴァークの掌に飛び乗り、松葉杖を支えにして降り立った。

 

「……なんだぁ? お前は……もう1人の無名の──」

「無名とは失礼な。私こそ、世界の誰もが知るシャーロック・ホームズ──の意思を継ぐ者! 名探偵・ブランちゃんデース!!」

 

 やっぱり無名なんじゃねえか……。

 だけど、助かる。

 取り合えず、現状倒さなくてはならない3つの敵のうちの1つ、亜堕無を此処で彼女が止めてくれるのだから。

 いや──ブランなら、恐らく撃破してくれるはずだ。

 

「探偵。やれるな?」

「丁度、これ以上動かなくて済んで好都合デース! サッヴァーク! Are you ready?」

「うむ! 戦う準備は何時でも出来ておる!」

「面白ェ、お前から片付けてやるよ!」

 

 突貫する亜堕無と組み合うサッヴァーク。

 その場に、シールドが展開されていくのだった。

 

「ブラン先輩……! 後はお願いします……!」

「頼むぜー、マジで……! 大丈夫だとは思うけどな……!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 一際強い魔力に導かれるようにして、俺達は大きなホールに出た。

 通路を抜けた先に──”彼女”は立っていた。

 

 

 

「っあは! 耀君、待ってたよ」

「鬼月か……!!」

 

 

 

 巨大な土器のようなクリーチャー、EVENOMIKOTO。

 そして、それを従えるのは──何処で着替えたのか、和装束を身に纏った鬼月だ。

 

「オメー、デモーニオの言う事を聞くだけの根性があったんだな」

「取り合えずはね。ゴハンと、こんなかわいい服のお礼はしなきゃ、鬼としての義理が廃るってもんでしょ」

 

 俺を見るなり、彼女は恍惚とした笑みを浮かべてにじり寄ってくる。

 先のレイプされかけた記憶が過る。幾ら顔も姿も紫月と同じでも、放つ気配があまりにも禍々しい。

 近付いたら、喰い殺される。身も心も。

 

「オニヅキィ? あ、それもしかして私の事? 良いよ……耀君の好きに呼んで」

「阿婆擦れ、とでも呼んでやってください耀君」

「やめなって」

「ねぇねぇ、耀君。私と一緒に来てよ……私、耀君の事がこぉんなに好きなのに。耀君も、私の事……好きでしょ? それとも、ココが好き、なのかな?」

 

 くいっ、と彼女は襟下をずり下げる。

 俺は思わず目を逸らした。

 谷間が一気に露に……!

 

「フン、色仕掛けでしかアピール出来ないとは。貴女は私から色々奪ったと豪語してましたが、あまりにも抜け落ちた部分が多すぎです」

「……耀君はココが大好きだもんね。あんただって私なら、自分の魅力の一つや二つ、自分で分かってるでしょ?」

「耀君は渡しませんよ──鬼月」

 

 さっ、と紫月が前に進み出た。

 ……此処は任せて良さそうだ。

 

「あはっ、出て来たね、オリジナル。どっちが耀君に相応しいか、決めようよ」

「そんなもの、決める必要などありませんよ。貴女は私にとって倒すべき敵。そして、何があっても耀君は()を選び続けるでしょうから」

「ッ……随分と自信満々だね」

「当然です。それが……白銀耀という人です。あの人は……私の前だけはどうしようもないバカになってしまうんですよ」

 

 そして、と彼女は続ける。

 

「怒りがあろうが無かろうが。自分が何をするべきか、どういう人間なのか。漸く理解が出来ました」

「は?」

「──例え誰であろうとも。それが仲間を害するものならば排除する。それが暗野紫月だということ……貴女が私なら分かっているでしょう」

「貴女が? 私を排除する? ……決めた。やっぱあんたは殺す。鬼になれなかった残りカスなんて要らないもんね!」

「私だけではありませんよ。……シャークウガ!」

「おうよ!!」

 

 シールドが展開されていく。

 ひー、女の戦いってこえー……。

 

「わりーけど、返してもらうぜ。俺のマスターから奪ったモン全部をよ!!」

「私には……耀君だけでなく、シャークウガという最強の相棒が居る事もお忘れなく」

「じゃあこっちにはEVENOMIKOTOがいるもんね!!」

「先に行ってください。後で必ず行きます」

「ああ! 待ってる!」

 

 土器の姿をした鬼が、多脚をみしみし軋ませながら迫る。

 此処は紫月に任せるべきだ。

 今更心配することも無いだろう。

 シャークウガも居る事だし。 

 俺は──決意して、そのまま駆けだした。通りすがり様に──紫月は呟いた。

 

 

 

「……この戦いが終わったら決勝戦、してください」

「……おうよ! 約束だかんな!」

「絶対、ですよ」

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