学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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JO24話:魑魅魍魎

 ※※※

 

 

 

 

「──懲りずに、鬼になりに来たか」

「ならない。仲間を返してもらう」

 

 

 

 

 シェルター内部。

 その客間の奥に、デモーニオは腰かけていた。

 周囲には誰も居ない。

 この場には俺達だけだ。

 

「たったの1人で、守護獣も無しで、俺様に挑むのか? ハッハ!! 流石俺様が見込んだデュエリストよ!!」

「デモーニオ……!」

「俺様は挑戦者は嫌いじゃあない。どうせ、鬼には勝てん。だが諦めるのは面白くないからな」

「……1人で此処に来たわけじゃあねえ。仲間がいるから、此処まで来れたんだ」

「仲間。……俺様には必要のないモノだ。どうせ失うものを持っていても仕方がない事だからな、白銀耀」

 

 蓄えた髭を触ると──彼は座席から立ち上がり、その右手に槍を顕現させる。

 

「デモーニオ。お前には……子供がいるんだろ? 自分が何の為に頑張ってたのか、忘れちまったのかよ! 本当に!」

「──居ないさ」

 

 即答だった。

 彼の額からは角が生えており、目は赤くなっている。

 思わず俺も額に手をやると硬いものが当たった。

 ……角が、生え始めている。俺にも……!

 

「居たとしても、もう忘れた! 俺様にはもう、何も残っていない!」

「ッ……こんな事が、本当にやりたかったのかよ!!」

「俺様は灰燼だ!! 鬼の炎で自らを焼いた塵芥だ!! 鬼に魂を売った俺に残っているのは、ジャオウガと槍だけだッ!!」

「分かっちゃいたけど……力づくで止めるしかねえみたいだな!!」

「抜かせ! モモキングは既に俺様の手の中だからな!」

 

 そう言えば、あいつの声も聞こえない。

 ……ずっと、奴のデッキの中に入っているのか。

 鬼化している以上、モモキングも叩いてでも元に戻すしかないか。

 

「それに、少しは制御できるようになったのだ……この力もなッ!!」

 

 びきびき、と音を立てて、デモーニオの身体が血泥に飲まれていく。

 そして、その姿は、槍の怪物の如く。

 槍のようになった腕を俺に向けるなり、テーブルを破壊して突っ込んできた。

 

「ッ──!」

「どうだねっ!! これが鬼の力だッ!!」

「~~~重い……ッ!!」

 

 炉心をフル稼働。

 こっちもクリーチャーの力を使わなければ、とてもじゃないが対抗できない。

 互角? いや、当然だがそれ以上だ。

 壁際に追い詰められ、腕を抑え込まれている。

 それをダンガンオーの力を借りた掌で掴んでいる。

 

「君の力は、守護獣無しでは普通の人間の延長線でしかない。魔力が切れるのも時間の問題だ。対して、こちらはそれまで悠々と鬼化が進むのを待てば良い。脳まで鬼になった時が、君の最期だ」

「ッ……!!」

「俺様は気骨のある奴は好きだ、そのまま鬼にしてやろう」

「なって、堪るかよ……!!」

「圧倒的な戦力差を見せつけられても尚、か? 君はそれが全力だろうが、俺様はまだこれより一段階上があるのを忘れていないだろうな?」

「ぐっ、うううううーッ!!」

 

 ダメだ。

 目がクラクラしてきた。

 鬼化が既に始まりつつあるのか?

 あいつらは大丈夫だろうか。外の人たちは?

 

「鬼になれ、忘れてしまえ、辛い事も苦しい事も! 楽になるぞ、今に……ッ!!」

「馬鹿野郎……忘れられた側はどうなる……!!」

「どうせ皆同じになるのだ、構ったものでは無いよ!!」

「忘れる側だって……好きで忘れるわけじゃあ、ねぇんだぞ……!! どんなに辛い事でも、忘れて後悔する事だって幾らでもあんだよ……ッ!!」

「抜かせ、ガキがッ!!」

 

 頭を掴まれた俺は──そのまま投げ飛ばされる。

 ダメだ。

 馬力が違う……!

 このままじゃ、まともにデュエルに持ち込むことすら出来やしない。

 ……ダメだ。吐き気がする。爪が伸びてきた。角もさっきより長くなっている。

 鬼化が、確実に進んでいる……!

 

 

 

「……諦め給え。それこそが、楽になる唯一の道さ。白銀耀……!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「今泣いて許しを請うたら、俺っちのカノジョにしてやらねぇこともないけど?」

「お断り、デスよ!」

「なら、此処で死ね!! 《一番星 ザエッサ》を召喚ッ!!」

「3コスト《カーネンの心絵》で手札に《正義星帝<ライオネル.Star>》と《スロットンの心絵》を回収デス!」

 

 イチエンの場には、《ザエッサ》に加えてタマシードの《ジェニーの黒象》が設置されている。

 一方のブランの場には《ゲラッチョの心絵》と《カーネンの心絵》が立っている状態だ。

 一度ハンデスされたものの、ブランもそれを上回る勢いで立て直すため、戦況は膠着状態だ。

 

「シヅクにも声を掛けたらしいじゃないデスか。女なら誰でも良いってのは噂通りみたいデスね」

「俺っちだって選り好みはするぜ? 俺っちに……従順な女だよ! コストを1軽減! 3マナで《ナーガの海黒環(リング)》発動! 山札の上から3枚を墓地に置き、その中から《ジェニーの黒象》を手札に加える。更に、《ナーガの海黒環》で手札を破壊!」

「ッ……! 墓地からカードが離れる度にハンデスするのデス!?」

「しかもドローも選べるぜ! さあ、好きな手札を捨てろ!」

 

 蛇の牙が迫る。

 すかさずブランはカード1枚をそれに差し出した。

 

「……任意ハンデスなのが有情デスね。《アルカディアス・モモキング》を捨てるデス」

「まだ終わっちゃねえよ! 愉しもうぜ! 《ザエッサ》の効果で、各ターン初めてクリーチャーではないカードを使った時、カードを1枚引ける」

 

 現在。ブランの手札は後攻ということもあって4枚残っている。

 しかし、イチエンは《ジェニーの黒象》を回収しているだけあって、次もハンデスが来ることは確定だ。

 手札に抱えた切札である《正義星帝<ライオネル.Star>》が破壊されるのも、このままでは時間の問題である。

 

(相手がちょいちょいカードを引いてる所為で、意外と手札が減ってないんデスよね……なら!)

 

「私は4マナで、《剛力羅王 ゴリオ・ブゴリ》を召喚デース!」

「何ィ!?」

「この子は攻撃時にパワーが倍になるマッハファイター! 置きドローの《ザエッサ》を破壊しマース!」

 

 ブランが繰り出すのは、暴拳王国のキングマスター。

 その鎖が《ザエッサ》を縛り上げ、そのまま砕く。

 

「これで、ターンエンドデス!」

「ッ……チ! だが、安い損失だ!」

 

 どの道、このターンの動きは弱い。

 次のターンを耐え凌げば動くことは出来る。

 そう言い聞かせ、ブランはターンを終える。

 しかし──イチエンの方が一手早かった。

 

「いじめるのがさぁ、俺っちは胸が痛むね! こんなにきれいでカワイイのにさぁ! 残念だ。生意気な女は俺っちの好みじゃねぇ。鬼にでも喰わせてろ、ってなぁ!!」

「……!」

「俺っちは、場の《ナーガの黒海環》、手札の《ジェニーの黒象》、シールドのカードを1枚墓地に置き──コストを3軽減!! そして、このクリーチャーは……墓地から召喚出来る!!」

「墓地から……ッ!?」

「──《ジェニーの黒象》からスター進化ッ!! 《テラ・スザーク <ロマノフ.Star>》!!」

 

 イチエンの足元に巨大な魔方陣が現れる。

 そこから顕現したのは、邪眼の皇を継承したドルスザク。

 しかし、その姿も既に鬼へと成り果てており、頭からは凶悪な角が生えている。

 

「鬼レクスターズじゃないクリーチャーまで鬼に……ッ!?」

「探偵! 言っとる場合か!」

「ああ、そうデス! 殴り返しが、来る……!」

「しっかりと代償は払ってもらうぜ。《<ロマノフ.Star>》が攻撃する時、効果発動!」

 

 次の瞬間、イチエンの墓地のカードが浮かび上がっていく。

 そして、それが彼の場へと現れていった。

 

「──星獄の印(テラスザク・サイン)!! 墓地からコスト6以下になるようにタマシードを場に出す! 《ナーガの黒海環》と《ジェニーの黒象》を発動!」

「やっば……! デンジャラスデース!」

「手札破壊が、二度来る……!」

「《ナーガ》の効果で3枚墓地を肥やし、手札を1枚破壊。その後に……《ジェニーの黒象》でも破壊!」

「《ライオネル.Star》が!?」

 

 とうとう、手札に抱えていた《正義星帝<ライオネル.Star>》は破壊されてしまった。

 ぐぬぬ、とイチエンを睨むが時既に遅し。

 今度は《ゴリオ・ブゴリ》目掛けて《<ロマノフ.Star>》が飛ぶ。

 

「──バトル! 《<ロマノフ.Star>》で《ゴリオ・ブゴリ》をマナ送りだ!! カッカ!! どんなもんだ!! 所詮、無名のプレイヤーじゃあ俺っちに勝てっこねえのよ!! 俺はこれでターンエンド──」

 

 

 

 

「では──《バイナラドアの心絵》で《<ロマノフ.Star>》をマナ送りに!」

 

 

 

 イチエンの笑みはそこで消える。

 返しのターンとなった途端、ドルスザクの姿は地中に引きずり込まれていき、消え失せる。

 

「ぐっ、進化元の《ジェニー》は残る! 切札を落とされて、焦ってたんじゃねーのかよ……!!」

「ちょっと焦ったデスけど……戦えないわけじゃあないデスよ! それに、無名のプレイヤーでも、努力すればプロに追いつけるかも、デスよ?」

「抜かせ!! そう簡単に追いつかれて堪るかよ!!」

 

 カードを引いたイチエンは──

 

「俺っちが、今までどんな思いをして、この座にまで辿り着いたか、オメーには、分からないくせになぁ、勝手な事言うんじゃねーぜ!!」

 

 自らの身体に、そのカードを翳す。

 途端に、その身体は白い装甲に覆われていく。

 

「な、何デスか、これは……!!」

「いかん、こやつ……鬼と一体化するつもりか!!」

「鬼(スター)─MAX進化……!! 俺っちを、進化元にぃっ……!!」

 

 

 

<鬼S─MAX「亜堕無」ローディング>

 

 

 

 その身体には、鬼の槍が突き刺さる。

 バトルゾーンには、白い鎧の生ける戦艦が姿を現し、更に両手に鬼の槍を握り締めた。

 

「俺には、この力が必要だ……俺っちが、一生、金に困らないための力なんだ……!」

「何でそこまで、お金に執着を……!」

「しゃらくせぇ!! もう、何故かなんて忘れちまったよ!! ただただほしいんだから、仕方ねえだろが!!」

 

 ジェーン・ドゥは語った。

 鬼化の実験のために、そして亜堕無への適合者を探す為に、イチエンを実験台にしたこと。

 そのために恋人を奪われた彼の過去を調べ上げた事を。

 そして、そこには尋常ではないモノへの執着があったことを全部、ブランに話した──

 

「違う……貴方が執着してるのは、お金なんかじゃないはずなんデスよ……!」

「魑魅魍魎、悪鬼のさばる世の始まり……!!」

 

 最早、イチエンと亜堕無は一心同体。

 2人でその力を共有する鬼と化す。

 

「うぎっ、いぎぎぎぎぎっ、あぎゃあああああああああ!?」

「ッ……!?」

「ひっ、ぎぃっ、しかし、この痛みも……生の実感ってなぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」

 

 痛みに藻掻くイチエン。

 しかし。その身体は、装甲に纏われていく。

 その身体は鬼に蝕まれ、残る人の部分も喰われていく。

 だが、その顔は歓喜に満ち溢れていた──

 

 

 

 

「俺っちに力を寄越せ……《「亜堕無」─(オーガ)MAX》ッッッ!!」

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