学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
「──おおっ、聞こえる!! 聞こえるぞ!! 鬼の産声が!!」
全身が痛い。
だけど、デモーニオの声ははっきりと聞こえてくる。
今、どうなってる?
何が?
そうだ。デモーニオを、どうにかして空間に引きずり込まなきゃ。
だけど、あいつが暴れてる限り、どうしようもない……!
(モモキングが居りゃあ、この状態のヤツでもデュエルに持ち込めたんだがな……やっぱり、これが魔力の差って奴か……!!)
「どうれ、見せてやろうか? 今、お前の仲間がどうなっているか!」
「……?」
「モニター、オン!」
ホログラムだろうか。
デモーニオの近くに、2つの映像が映し出される。
そこには──イチエンと戦うブラン。
そして、鬼月と戦う紫月の姿があった。
しかし。
「あ、あああ、あぎっ、頭が、割れる……!!」
「はぁっ、はぁぁ……熱い、熱い……!!」
ブランは地面に転がり、額を抑えてのたうち回っている。鬼の角が、そして爪が伸びており、鬼化が更に進んでいることは明らかだ。
青い目は赤く染まっており、口からは牙が生えている。
一方の紫月も角こそ生えていないものの、苦しそうに俯き、膝を突いている。
周囲の空気は淀んでいる。陽炎? ということは、部屋の気温は相当上がっていることになる。
熱源は──槍が何本も刺さった、あの祭器の鬼……!
「どうかね?」
「……ブラン!! 紫月ーッ!!」
「呼んでも無駄だ、聞こえはせんよ……彼女達では、亜堕無とEVEの相手は重かったようだな」
「てめぇ……!」
「或瀬ブランは、亜堕無の力でもうじき完全に鬼化する。暗野紫月には……残念ながら死んでもらおう。あの部屋は既に、50℃近くまで上がっているようだ。完全体のEVEの熱量は凄まじいからね」
「ごじゅっ……!? ざっけんじゃねえ! こんなのデュエルと関係ないじゃねえか!」
「これが、君の信じた仲間の末路だよ! 君達は……守護獣の力で今まで死線を乗り越えてきたのかもしれないが、自分が如何に死と隣り合わせか、気付かなかったのかね?」
「……!」
こんな状態で、どうして戦え、頑張れ、だなんて言えるだろう。
あの鬼達の力は、今までの敵とは桁違いだ。
二人共、最早まともにデュエルを続けられるような状態じゃない。
「だから言ったのだ。諦めて鬼化を受け入れたまえ。君もまた、鬼化するのだぞ……?」
「あっ、ぐっぎ……!」
まずい。
頭が、揺れる。
吐き気が、凄イ。
喰ラウ。
俺が、俺じゃなくなる……!
犯ス。
殺ス……!!
「あっ、あああああ……!! クソッ、こんな、あぎっ、クソ……!!」
「良い顔だ。それでこそ、立派な鬼の顔だよ。もうすぐ、守護獣にも合わせてあげよう。君も……私の部下の仲間入りだ」
「あっ、あ”、あ……!」
もう、ダメだ。
諦メ……。
諦メル?
諦メルノカ? 俺ガ──
※※※
「クソったれ!! 皆揃いも揃って鬼化しやがった!!」
「僕達もだがな!! もう時間がないぞ!!」
ヒナタとレンは、街の中で背中合わせになっていた。
鬼化した住民たちが、そして選手たちが迫ってくる。
既に目は凶悪な赤に染まっており、理性を失ってしまっているようだ。
「……僕達とて負けるわけにはいかん! 白銀達が戦っているのだからな!」
「おいレン! 今までいろんなことがあったけどよ!」
「何だこの期に及んで! 遺言でも残すつもりか!」
「お前が鎧龍を出る前の日に、お前の食おうとしていた限定ティラミスを間違えて食ったのは俺だーッ!!」
げ ん こ つ
「何故それを今言ったッ!!」
「そのだな……やり残したことは、全部やっておきたいって思ってさぁ」
「……他に言い残したことがあるなら今のうちに言っておけ、ヒナタ」
「じゃあ……お前、結局……彼女とかまだいねーの?」
「居らん!! 貴様はどうだ? ……上手くやってるのか?」
「こないだ日本に帰った時に喧嘩して……3週間くらい口利いてねーぜ!!」
「慰めんぞ僕は」
「慰めてくれよ! 何がいけなかったんだ! 記念日を忘れた事か? デートに遅れた事か? それとも──」
「全部だバカモノーッ!!」
レンの渾身の拳が、ヒナタの頬に炸裂する。
ついでに、後ろにいた鬼も一緒にノックアウトした。
「あっ、あだだだだ、流石、お前のパンチは、効くぜ……」
「もう貴様等の間は取り持たんぞ……二度とな。貴様は少しくらい、白銀の律儀さを見習え」
「うるせー! コトハの奴、ワガママすぎんだよ……てか、白銀って俺にそんなに似てないの?」
「全く似とらん。貴様もノゾムもお調子者が過ぎるからな」
「……なるほどねえ」
「ただ一つ──似ている所を挙げるとするならば」
レンはヒナタの顔を見やる。
そこに──耀の顔が重なった。
「……たった1人でも、無茶をするところだ」
「……ははっ、違いねぇ」
「何を笑っている。貴様の悪い所でもあるんだぞ」
「でもそれ、レンも人の事言えねえじゃん」
「……否定はせん」
「だけど、今回ばっかりはヤバいんじゃね?」
ヒナタが指を差した方からは、ローラン、ニコロがじりじりと近寄ってくる。
彼らの背後には《砕慄接続グレイトフル・ベン》と《紅に染まりし者「王牙」》が現れている。
最も、2体共鬼の力によって汚染されているのか、見るからに凶悪化していると見えるが。
「何だよ、レン、まさか腕力でこいつらどうにかするとか言わねえよな? もう実体化してるクリーチャーまでいるんだぞ!?」
「大気中のマナが大分濃くなっていると見えるな……あまり使いたくなかったが、アレの使い方、覚えているか?」
「アレ……?」
「そうだ。決闘空間を自力で開く方法だ」
「……何も起こらなかったよ」
「無理か……」
守護獣も居ない。
ましてや体内に魔力も宿していない。
彼らにデュエルで相手と戦うのは土台無理な話であった。
「クソッ、せめて……あの時みたいにゲンムエンペラーが都合よく降りて来れば……」
「マジで!? 良いな!! 俺も5000GTとか天から降って来ねえかな!!」
「一生降って来ないから安心しろ」
「でもよ、ゲンムエンペラーは降って来ねえけど……なんか赤いのが降ってきてるぜ」
「……何?」
ヒナタが空を指差した。
そこには──ひと筋の赤い彗星が、煌めき──
──恐ろしい速度で、落ちてきたのだった。