学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第16話:審判(ジャッジ)─トリス・メギス

 帰路につくブランはすっかり怒りすぎたことを反省していた。

 しかし、同時にあの時はやむを得なかったとも思っている。

 あの場で喧嘩し始めた2人に、後で「何やってるデスか! 2人共、目的は違えどワイルドカードを倒す為に戦ってるんデショ!? 仲間割れなんて論外デース! 何で仲良くできないのデスカ! アカルはアカルでデリカシーのデの字も無いし、シヅクも大人気なさすぎマース! いやシヅクの方が後輩デスケド! あー、アカル、逃げようとしても無駄デスからネ! 大体――(以下割愛)」といった具合に説教したとはいえ、やり過ぎた感が否めない。

 しかも、2人とも反省はしていたが、結局意地を張って仲直りすることは出来なかった。

 どうしたものか、と頭を抱えていると、バス停で見覚えのあるちっこい影を見つける。

 

「……あ、桑原先パイ!」

「おお、或瀬じゃねえか」

 

 向こうも気付いたらしく、手を振った。

 駆け寄る彼女に、すかさず先輩が礼を言う。

 

「最近もワイルドカード退治をやってるようじゃねえか。協力出来なくてすまねぇな」

「イエ、仕方ないデスよ。先パイは部活もあるし、もう少ししたら受験も控えてるじゃないデスカ」

「それもそうか」

 

 自嘲気味に言った彼。

 しかし、すぐさまブランの浮かない表情を察したようだった。

 

「で、神妙な顔をしてどうしたんだ、テメェ」

「え? ……あー、バレてましたカ」

 

 ぽりぽり、と頭を掻くと、ブランは思いの丈を吐露する。

 具体的には今日あったことだった。

 

「最近、白銀と紫月の仲が悪い?」

「ハイ……2人共、立て続けに事件がやってきて、その度にキリキリしてるから、それでイライラが溜まってるのだと思いマース」

「むしろお前みたいに楽観的な奴が羨ましいんだろうな、あいつらは」

「失礼デスネ! 私だって悩んだりしマス! ……まあ、2人に頼ってるのは否定できませんケド」

 

 ジョーカーズという暴走弾丸特急集団を駆り、ひたすら諦めの悪い耀と、経験豊富でプレイングと厭らしい戦い方なら誰にも負けない紫月が今のデュエマ部の主力であることはまず間違いない。

 しかし。故に2人はかなり疲れていた。今回こそブランが戦ったものの、実際はブランが情報を集めて提供し、敵の居場所を特定してから、戦力が強い2人のどちらかがエリアフォースで敵を倒すというパターンが最近の王道中の王道であった。

 

「とはいっても、お前らはそれぞれ自分にしか出来ない役割がある。或瀬もそれを全う出来てるじゃねえか。情報収集はお前の十八番だろ」

「……そ、そうデスネ。でも、私のことは良いのデス。2人の方が心配デス」

「どうだろーな。喧嘩するほど仲が良いとも言うだろ。あいつらだって人間だ。そして高校生だ。多忙な毎日に揉まれる中で、あんな命懸けな戦いをしてりゃ、ストレスも溜まるさ」

「……」

 

 ブランは思い出す。

 そうだ。これは命が掛かったデュエルでもあるのだ。負ければ最悪死ぬ、とチョートッQは言っていた。必ずではないのだろうが、常に緊張感を持たなければならない。

 だからこそ、いつも前線に出て戦っている2人は、モチベーションこそ違うだろうがかなり精神的に負担がかかっていることは容易に想像がつくのであった。

 耀は困っている人を助ける為。

 紫月は双子の姉である翠月を事件に巻き込まない為。

 根幹で考えは似通っているようで違ってはいるものの、両者とも基本的に無関係な者や物を巻き込むことを良しとはしないし、互いに互いの考えを認めている節もある。

 だが、それでもすれ違いはやはり起きる。今日もそうだが、足並みがそろっていないのだ。切羽詰まった状況で、最早それは仕方ないのだろうが。

 

「と言ってもなあ……或瀬よ、考えてみ? あの2人だぜ? どうせすぐに仲直りするっつーの」

「……まあ、そうデスね……」

 

 ブランは顔を伏せた。

 まあ、確かにいつも悪態を突いて突かれるの関係の2人なら元々珍しいことではない、と。

 

「ともかく、心配することでもねーように思えるが、あんまり続くようなら俺の方から言っておくさ。ま、お前が珍しくしこたま怒ったんだから、ちっとは考え直すだろうが」

「……うー、心配デス」

『やれやれ……人間は難儀じゃのう』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 今日の俺は完全に反省モードであった。

 最近、ワイルドカード事件が多過ぎてカリカリしていたとはいえ、我ながら大人気なかった気がする。

 こんなに案件が頻発するのだ。紫月が苛立つのも大体分かっていた。

 いや、思い当たり過ぎる理由がもう1つあるけど、最早敢えて掘り返すまい。

 俺は部室に向かいながら、何と言って紫月に謝ろうか考えていた。今日は金曜日、今日謝りそびれたら土日を置いて会わないから、結果的に更に気まずくなってしまうだろう。

 あいつ変に静かだから、謝ったら謝ったで却って素っ気なく返されそうな気がするけど。別に大した喧嘩じゃねえ。いつもの言い合いの延長じゃないか。

 そう考えたら何か俺の気分が心なしか楽になってきたぞ。

 

「……お」

 

 部室の前には、ブランと紫月が立っていた。

 俺はすぐさま駆け寄り、言いたかった事を言おうとした。

 

「ああ、紫月。丁度良か――」

「……白銀先輩、話は後です」

 

 しかし、そこで会話は途切れる。

 

「え?」

「これを見てくだサイ」

 

 ブランが手渡したのは、手紙であった。

 それも、妙に凝った装飾で飾り付けられたものであった。そして、そこに書かれてあったのは――

 

『通告ス。諸君ヲ我ガ僕トトモニ審判ス。定刻ニ迎エニクルガ故、相応ノ覚悟ヲ持ッテ臨メ――審判司書』

 

 ――とのことである。

 

「何だ、この文面も便箋も封筒も痛々しい手紙は」

「チューニビョーって奴ですカ?」

「言ってやるな」

「ですが、審判とは一体どういうことでしょうか」

「分かるか、んなモン」

 

 だが、こんなまどろっこしくて回りくどい真似をしそうな輩など1つしか思い当たらない。

 文面から見ても、考えられる組織は1つであった。

 

「アルカナ研究会……だろ」

「ってことは、火廣金先輩ですか」

「……いや、分からねえけど、あいつはこんな事しねぇと思う。だけど、司書って書いてある所を見ると、魔導司(ウィザード)の仲間であることは間違いない」

「やっぱり仲間は居たんデスネ!」

「ああ」

 

 俺は歯噛みした。

 またもや面倒そうなことになりそうだからだ。

 アルカナ研究会は、魔力を体に宿した人間にして人外・魔法使いの集まり。

 火廣金は魔導司(ウィザード)と自分の事を呼んでいたけど、それが何なのかはまだ分からない。

 しかし。俺達同様ワイルドカードを狩っていること、そしてその詳細な目的こそ分からないが、俺達のエリアフォースカードを狙っていることだけは間違いない。

 俺達としても怪しい連中にエリアフォースカードを取られるわけにはいかないので、抵抗しているわけだ。

 

 

 

「あー、役者は揃ったか」

 

 

 

 声が聞こえた。

 視線は廊下の奥へ向けられる。

 何だ此奴……子供? 少なくとも背丈は俺達よりも低い。

 現れたのはだぼだぼの白衣を身に纏った少女だった。髪の色は金。そして眼鏡を掛けている。

 風貌は研究者だが、背格好故その後ろに”ごっこ”を付けさせたい衝動に駆られる。

 だが、俺達がそいつを一瞬でただの子供じゃないと見抜いたのは、その背後にクリーチャーを従えていたことに他ならない。

 

「綺麗に3人、エリアフォースカードもこないだより増えてやがる。上等」

「誰だお前……魔導司(ウィザード)……?」

 

 完全に俺らの事を知っている風のこの少女は、にやりと不敵な笑みを浮かべると言った。

 

「いかにもー、あたしはアルカナ研究会の|一級魔導司書 >ファーストランクウィザード]]、トリス・メギス。異名は『[[rb:審判司書《ジャッジ》』。召喚書の罪を数える者」

「で、私達に何の用デスか?」

「決まってるじゃないかあ。ンなモン、エリアフォースカードを回収しに来たんだよ」

「回収って……」

「我が盟友は、誰もが恐れる『大魔導司(アークウィザード)』。しかし、その彼女でさえ恐れる物が1つだけある。それがエリアフォースカードだ。普通の人間があたし達に対抗できるのが気に喰わないんだろうね」

「言いがかりだぜ! 俺達は――」

「あーあーあー、聞こえない聞きたくない。お前ら人間に同意求めてねーから、うちら。御託とかそういうの全部どうでもいいから、さっさとエリアフォースカードを寄越せって話よなあ?」

「けっ、話は出来そうにねぇなこりゃ……」

「誰か1人前に出な! しっかりと可愛がってやる」

 

 外見がガキだからって、油断は出来ない。

 魔導司(ウィザード)であることが分かった上に、俺らの前にわざわざ現れたってことは、腕もそれなりに自信があるとみて良いだろう。

 

『マスター、我々の出番でありますな!』

「ああ、やってやるぜ!」

「待ってください」

 

 意気込む俺を手で制し、前に進み出たのは紫月だった。

 

「紫月!?」

「シヅク、どうしたんデス!?」

「……ここは、私が戦います」

「おい、待てよ紫月! お前、やっぱり昨日の事、怒ってるのか……!?」

「……別に胸を触られたことに関しては怒ってませんけど」

「いや、だから――」

「ですが、普段ぐーたらしていている分はしっかり働かないといけないようですからね。まさか、どっかの誰かさんは人の仕事を奪ったうえでプー太郎呼ばわりをするような事はしないでしょうし」

 

 ヤバい、完全に根に持ってる。

 早く謝った方が良かったよな、コレ! 言いそびれちまったよ!

 だが、最早彼女にとってはそれ以前に自分のプライドの問題になってしまってるみてーだし……。

 

「それに、私は信用できない相手にみづ姉へ危害を加える可能性のある人物の処理は任せられませんから」

「ぐっ……!」

「私は見損なったままですよ。先輩の事を」

「くぅ……! 言いたい放題言いやがって」

「シヅクに任せてあげてくだサイ、アカル!」

「そ、そうだけど――」

「それに、シヅクは強いデス!」

 

 確かに幾ら後輩と言えど、紫月はブランや俺よりも経験では勝っている上に強い。

 今でもジョーカーズでさえあまり勝てない程に。

 

「……じゃあ、任せたぜ」

「ええ。言われるまでもありません」

「話はまとまったか? 3人一緒でも良かったんだけどなぁ」

「あまり見くびらないで下さい。そんな口、叩けなくしてあげましょう」

 

 そういうと、彼女はデッキケースに手を掛けた。

 

「シャークウガ」

『マスター、任せときなァ!!』

 

 エリアフォースカードが飛び出し、紫月の手に渡る。

 そして、彼女が呟くと共にデュエルが始まる。

 

 

 

「デュエルエリアフォース」

 

 

 

 画して、彼女はあの空間に引きずり込まれることになったのだった――

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