学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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JO29話:灼炎

 ※※※

 

 

 

「……諦める? この俺が──?」

 

 

 

 鬼化が本能を呼び起こすならば。

 

 

 

「──それは、俺が一番嫌いな言葉なんだよーッ!!」

 

 

 

 デモーニオが「諦めろ」と俺に呼びかけたのは間違いであった。 

 意識が一気にふっと戻る。

 鬼化が止まったわけじゃあない。

 だけど、まだ──戦える。

 

「諦めもッ!! 肝心と言っとるだろうがッ!!」

「ぐぅっ……!?」

 

 最も、戦力差は未だに歴然だ。

 デモーニオは疲れた様子が全く見えない。

 

 

 

「鬼にならぬなら死ねい!! 白銀耀!!」

 

 

 

 床に組み伏せられる。

 だが──もう逃げようがない。

 デモーニオは自らの腕を槍のように尖らせるどころか、空中からも何本もの鬼の槍を召喚している。

 今度こそ万事休す──いや。

 

 

 

 

「……ったく。いつも、来るのがおせぇんだよ!!」

 

 

 

 

 ──俺には、それが来ることが分かっていた。

 デモーニオの身体はいきなり吹き飛び、槍は全て高速で叩き折られていく。

 後に残るのは炎のみ。

 炎を身に纏う猿人と、それを従える灼炎の将校。

 颯爽と部屋の中に現れた彼の名を俺は呼んだ。

 

「……火廣金!! 久々じゃねーか!!」

 

 彼は呼ばれるなり、更にデモーニオの方目掛けて炎の玉を何発もぶち込むと──俺の方に駆け寄った。

 

「すまない部長。こちらも立て込んでいてな。魔導司が鬼化したり分裂するもんで、対応に追われていたのだ」

「え? 魔導司って鬼になると分裂すんの?」

「俺達は人間に比べても精神力が尋常でないほど強いからな……そのまま鬼にならず、なまじ耐え切ってしまう所為で、鬼の部分だけがクリーチャーのように実体化するケースが発生してしまった」

 

 因みに火廣金の頭からも角は生えている。 

 この分だと、全世界に鬼化は進行していると見て良いか。

 

「世界は大変な事になっている。俺のようにじわじわと鬼化が進む者がいるのは勿論、空から鬼の槍が次々に振ってきて、刺された人は急激に鬼化が進んでいる」

「っ……!」

「止めるには、奴らを倒すしかないが、魔導司の鬼化・分裂事案も合わさって、対応が遅れた。申し訳ない」

「良いって事よ! 今こうして助けられたしな! それにしても奇遇だなー、丁度うちの紫月もそうなってたんだよ」

「……は?」

「……え?」

 

 何で驚いてんだコイツ。

 さっき自分で鬼化による分裂は有り得るって言ったばかりじゃね?

 

「部長……それは何かの勘違いではないか? もし本当なら大事件だぞ──っと」

 

 幾つも槍が飛んでくるのを俺達は避ける。

 デモーニオが起き上がったのだ。

 ……どうやら喋っている暇は無いらしい。

 

 

 

「こちらも本気で行く。スターMAX進化……ブランド─MAXッ!!」

 

 

 

 彼がそう唱えた途端、傍に立っていたブランドの身体は粒子となり、火廣金はそれに包まれていく。

 そして、腕が、足が、次々に重機の鎧と化していき、服は軍服のそれへと早変わり。

 機械の鈍重な腕と足を手に入れた将軍の如き姿へと変わった。

 

「お前、それって」

「新兵装。言わば、俺とブランドの──極点だ」

 

 スターMAX進化……魔導司なら、自分の眷属と合体出来るのか!

 ちょっとカッコいいじゃないか、火廣金。

 

「無視するなぁ!! 誰だ貴様は!!」

「デモーニオ・エティケッタ。貴方の行いは魔導司によって然るべき場所で断罪されるべきだ。大人しく着いて来てもらうか」

「ウィザードォ!? 知るかそんなもの! 皆鬼になるのだからな!」

 

 火廣金は俺の方を一瞥すると、1枚のカードを投げ渡した。

 

「分かってはいたが、奴は君でなければ抑えきれん。これを使え」

「おっと──これって」

「モモキングを奪われてるんだろう。どの道必要なものだ。アルカナ研究会の外付け魔力増幅装置……言わば、エリアフォースカードの超・簡易廉価版、デュエル・タロットと呼ぶ」

「サンキュー! 助かるぜ! だけど、これを俺に渡す為に?」

「君だけではないよ」

「え?」

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「夢幻の無に沈め──《∞龍 ゲンムエンペラー》でワールドブレイクッ!!」

「天網恢恢疎にして漏らさず!! 《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》でダイレクトアタックだ!!」

 

 吹き飛ぶローラン、そしてニコロ。

 そこには、アルカナ研究会製のデュエル・タロットを握り締めるレンとヒナタの姿があった。

 デュエルをするための空間さえ開ければ、こちらのものだ。

 

「魔法使いの知り合いって、今の赤い髪の奴か!? お前すげーな、レン!!」

「やれやれ、奴が来なければどうなっていた事やら」

「それより、幾年ぶりの共闘……やってやろうぜ!」

「ふん、浮かれているとケガをするぞ」

「嬉しい癖に~」

 

 背中併せで戦う二人のデュエリスト。

 そこにもう、死角はない。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──というわけだ」

「良かった……黒鳥さんもヒナタさんも無事なんだ……」

「最も、本物に比べて性能は大幅に劣るぞ。奴を結局抑え込まんことにはデュエルには持ちこめない」

 

 そもそも、もう本物と同等のものは今の魔導司には作れないし、作るべきではないということなのだろう。

 俺もそれでいいと思ってる。

 

「でも、今度は二人だ!」

「雑魚が二人に増えた所で、何も変わらんさ!」

「では試してみようか。雑魚かどうかを!」

 

 火廣金が両手に巨大な爪を顕現させる。

 俺もそれに続いて、拳をデモーニオを叩きつける。

 効いてる。さっきよりも明らかに。

 交互に入れ替わり入れ替わりで打撃を叩きこんでいるが、衝撃がやはり殺しきれないんだ。

 

「これなら──いけるッ!」

「俺達なら──勝てる」

「なら……サービスも付けてやろう。ガキ共!!」

 

 次の瞬間だった。

 今度はデモーニオの背後から──モモキングダムが実体化したのだ。

 

「んなっ、モモキング!? この野郎、奪い返してみろって言いたいばかりだな!」

「……今度は助ける。もう俺は間違えない!!」

「何人束になっても無駄な事だよ!」

 

 彼らは──突如、大量の槍を召喚する。

 そして、それがモモキングダムの身体の封印を外していく。

 ちょっと待て。これって……まさか。

 

 

 

「禁断解放──ッ!!」

 

 

 

 避ける間もなかった。

 モモキングダムの身体から、光が発せられた──

 

 

 

 

「部長!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 壁の向こうに、吹き飛ばされたのは確かだ。

 恐ろしい衝撃だった。

 一瞬、意識が飛びかけたが──何故か、まだ動ける。

 まだ、戦え──

 

「……火廣金?」

 

 俺の身体には、火廣金が横たわっていた。

 鎧は砕けちり、服も体もズタボロ。

 全身が火傷塗れになっている上に、瘴気が彼の身体を汚染している。

 

「火廣金ッ!!」

「……ああ、部長。無事か」

 

 何で。

 何で俺はどうってことないのに、こいつだけ──まさか。

 庇ったのか? 俺を……!?

 

「……咄嗟に君を、フルパワーで突き飛ばした」

「馬鹿野郎!! こんなになれだなんて、誰も言ってねえだろ……!」

「……合理的な理由だ。デモーニオを倒せるのは、君だけだ。鬼を倒せるのは、モモキングに選ばれた君だけだからな」

「ッ……うるせぇよ!! 理屈だとか何だで割り切れねえのが……人間だろうが!」

 

 彼は少しだけ笑みを浮かべると、俺に向かって手を伸ばす。

 

「……部長。少しは、あの時の……ロストシティでの借りを、俺は返せただろうか? 仲間がピンチな時、今度は命を賭しても守ると……決めていたんだ。君を守ると、決めていたんだ……!」

「そんな事しなくたって……借りなんて……!」

「恰好を付けただけだ……気にするな。すまないが、後は……頼む」

 

 手は──ふらり、と落ちる。

 それを一度握り締めると──俺は立ち上がり、敵を見やった。

 

「おやぁー? まだ両方共死んでなかったのか? 頑丈だな」

「……」

「ちっ、禁断解放1発で実体化が解除か。常々使えん。だが、トドメは俺様が刺せば良いだけだな」

 

 ……許せない。

 不甲斐ない俺自身が。

 そして、デモーニオが。

 もう、手加減なんて出来やしない。

 

「……ブランはお前の事を助けてやれねえかって言ってたけどよ」

「は?」

 

 

 

 気が付けば。

 地面を蹴り、デモーニオの身体を掴んでいた。

 

「ぬおっ、ぬおおおおおおおおおお!?」

 

 天井を突き破り。

 鉄パイプを幾つも壊し。

 壁をブチ壊し。

 そして──

 

 

 

 

 ──俺達は地上に飛び出した。

 

 

 

 

「あっ、あああっ、はぁぁぁーっ、死ぬかと思った!! 何処に、こんな力が……ッ!!」

 

 

 

 

 此処からなら。

 ……もう逃げ回ることも出来ねえよな?

 

 

 

「おいジャオウガ──返せ。人から奪ったモン全部よォ!!」

 

 

 

<Wild,DrawⅣ──EMPEROR!!>

 

 

 

 

「デモーニオ──お前も、さっさと鬼なんざ、手放しやがれッ!!」

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