学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
「……諦める? この俺が──?」
鬼化が本能を呼び起こすならば。
「──それは、俺が一番嫌いな言葉なんだよーッ!!」
デモーニオが「諦めろ」と俺に呼びかけたのは間違いであった。
意識が一気にふっと戻る。
鬼化が止まったわけじゃあない。
だけど、まだ──戦える。
「諦めもッ!! 肝心と言っとるだろうがッ!!」
「ぐぅっ……!?」
最も、戦力差は未だに歴然だ。
デモーニオは疲れた様子が全く見えない。
「鬼にならぬなら死ねい!! 白銀耀!!」
床に組み伏せられる。
だが──もう逃げようがない。
デモーニオは自らの腕を槍のように尖らせるどころか、空中からも何本もの鬼の槍を召喚している。
今度こそ万事休す──いや。
「……ったく。いつも、来るのがおせぇんだよ!!」
──俺には、それが来ることが分かっていた。
デモーニオの身体はいきなり吹き飛び、槍は全て高速で叩き折られていく。
後に残るのは炎のみ。
炎を身に纏う猿人と、それを従える灼炎の将校。
颯爽と部屋の中に現れた彼の名を俺は呼んだ。
「……火廣金!! 久々じゃねーか!!」
彼は呼ばれるなり、更にデモーニオの方目掛けて炎の玉を何発もぶち込むと──俺の方に駆け寄った。
「すまない部長。こちらも立て込んでいてな。魔導司が鬼化したり分裂するもんで、対応に追われていたのだ」
「え? 魔導司って鬼になると分裂すんの?」
「俺達は人間に比べても精神力が尋常でないほど強いからな……そのまま鬼にならず、なまじ耐え切ってしまう所為で、鬼の部分だけがクリーチャーのように実体化するケースが発生してしまった」
因みに火廣金の頭からも角は生えている。
この分だと、全世界に鬼化は進行していると見て良いか。
「世界は大変な事になっている。俺のようにじわじわと鬼化が進む者がいるのは勿論、空から鬼の槍が次々に振ってきて、刺された人は急激に鬼化が進んでいる」
「っ……!」
「止めるには、奴らを倒すしかないが、魔導司の鬼化・分裂事案も合わさって、対応が遅れた。申し訳ない」
「良いって事よ! 今こうして助けられたしな! それにしても奇遇だなー、丁度うちの紫月もそうなってたんだよ」
「……は?」
「……え?」
何で驚いてんだコイツ。
さっき自分で鬼化による分裂は有り得るって言ったばかりじゃね?
「部長……それは何かの勘違いではないか? もし本当なら大事件だぞ──っと」
幾つも槍が飛んでくるのを俺達は避ける。
デモーニオが起き上がったのだ。
……どうやら喋っている暇は無いらしい。
「こちらも本気で行く。スターMAX進化……ブランド─MAXッ!!」
彼がそう唱えた途端、傍に立っていたブランドの身体は粒子となり、火廣金はそれに包まれていく。
そして、腕が、足が、次々に重機の鎧と化していき、服は軍服のそれへと早変わり。
機械の鈍重な腕と足を手に入れた将軍の如き姿へと変わった。
「お前、それって」
「新兵装。言わば、俺とブランドの──極点だ」
スターMAX進化……魔導司なら、自分の眷属と合体出来るのか!
ちょっとカッコいいじゃないか、火廣金。
「無視するなぁ!! 誰だ貴様は!!」
「デモーニオ・エティケッタ。貴方の行いは魔導司によって然るべき場所で断罪されるべきだ。大人しく着いて来てもらうか」
「ウィザードォ!? 知るかそんなもの! 皆鬼になるのだからな!」
火廣金は俺の方を一瞥すると、1枚のカードを投げ渡した。
「分かってはいたが、奴は君でなければ抑えきれん。これを使え」
「おっと──これって」
「モモキングを奪われてるんだろう。どの道必要なものだ。アルカナ研究会の外付け魔力増幅装置……言わば、エリアフォースカードの超・簡易廉価版、デュエル・タロットと呼ぶ」
「サンキュー! 助かるぜ! だけど、これを俺に渡す為に?」
「君だけではないよ」
「え?」
※※※
「夢幻の無に沈め──《∞龍 ゲンムエンペラー》でワールドブレイクッ!!」
「天網恢恢疎にして漏らさず!! 《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》でダイレクトアタックだ!!」
吹き飛ぶローラン、そしてニコロ。
そこには、アルカナ研究会製のデュエル・タロットを握り締めるレンとヒナタの姿があった。
デュエルをするための空間さえ開ければ、こちらのものだ。
「魔法使いの知り合いって、今の赤い髪の奴か!? お前すげーな、レン!!」
「やれやれ、奴が来なければどうなっていた事やら」
「それより、幾年ぶりの共闘……やってやろうぜ!」
「ふん、浮かれているとケガをするぞ」
「嬉しい癖に~」
背中併せで戦う二人のデュエリスト。
そこにもう、死角はない。
※※※
「──というわけだ」
「良かった……黒鳥さんもヒナタさんも無事なんだ……」
「最も、本物に比べて性能は大幅に劣るぞ。奴を結局抑え込まんことにはデュエルには持ちこめない」
そもそも、もう本物と同等のものは今の魔導司には作れないし、作るべきではないということなのだろう。
俺もそれでいいと思ってる。
「でも、今度は二人だ!」
「雑魚が二人に増えた所で、何も変わらんさ!」
「では試してみようか。雑魚かどうかを!」
火廣金が両手に巨大な爪を顕現させる。
俺もそれに続いて、拳をデモーニオを叩きつける。
効いてる。さっきよりも明らかに。
交互に入れ替わり入れ替わりで打撃を叩きこんでいるが、衝撃がやはり殺しきれないんだ。
「これなら──いけるッ!」
「俺達なら──勝てる」
「なら……サービスも付けてやろう。ガキ共!!」
次の瞬間だった。
今度はデモーニオの背後から──モモキングダムが実体化したのだ。
「んなっ、モモキング!? この野郎、奪い返してみろって言いたいばかりだな!」
「……今度は助ける。もう俺は間違えない!!」
「何人束になっても無駄な事だよ!」
彼らは──突如、大量の槍を召喚する。
そして、それがモモキングダムの身体の封印を外していく。
ちょっと待て。これって……まさか。
「禁断解放──ッ!!」
避ける間もなかった。
モモキングダムの身体から、光が発せられた──
「部長!!」
※※※
壁の向こうに、吹き飛ばされたのは確かだ。
恐ろしい衝撃だった。
一瞬、意識が飛びかけたが──何故か、まだ動ける。
まだ、戦え──
「……火廣金?」
俺の身体には、火廣金が横たわっていた。
鎧は砕けちり、服も体もズタボロ。
全身が火傷塗れになっている上に、瘴気が彼の身体を汚染している。
「火廣金ッ!!」
「……ああ、部長。無事か」
何で。
何で俺はどうってことないのに、こいつだけ──まさか。
庇ったのか? 俺を……!?
「……咄嗟に君を、フルパワーで突き飛ばした」
「馬鹿野郎!! こんなになれだなんて、誰も言ってねえだろ……!」
「……合理的な理由だ。デモーニオを倒せるのは、君だけだ。鬼を倒せるのは、モモキングに選ばれた君だけだからな」
「ッ……うるせぇよ!! 理屈だとか何だで割り切れねえのが……人間だろうが!」
彼は少しだけ笑みを浮かべると、俺に向かって手を伸ばす。
「……部長。少しは、あの時の……ロストシティでの借りを、俺は返せただろうか? 仲間がピンチな時、今度は命を賭しても守ると……決めていたんだ。君を守ると、決めていたんだ……!」
「そんな事しなくたって……借りなんて……!」
「恰好を付けただけだ……気にするな。すまないが、後は……頼む」
手は──ふらり、と落ちる。
それを一度握り締めると──俺は立ち上がり、敵を見やった。
「おやぁー? まだ両方共死んでなかったのか? 頑丈だな」
「……」
「ちっ、禁断解放1発で実体化が解除か。常々使えん。だが、トドメは俺様が刺せば良いだけだな」
……許せない。
不甲斐ない俺自身が。
そして、デモーニオが。
もう、手加減なんて出来やしない。
「……ブランはお前の事を助けてやれねえかって言ってたけどよ」
「は?」
気が付けば。
地面を蹴り、デモーニオの身体を掴んでいた。
「ぬおっ、ぬおおおおおおおおおお!?」
天井を突き破り。
鉄パイプを幾つも壊し。
壁をブチ壊し。
そして──
──俺達は地上に飛び出した。
「あっ、あああっ、はぁぁぁーっ、死ぬかと思った!! 何処に、こんな力が……ッ!!」
此処からなら。
……もう逃げ回ることも出来ねえよな?
「おいジャオウガ──返せ。人から奪ったモン全部よォ!!」
<Wild,DrawⅣ──EMPEROR!!>
「デモーニオ──お前も、さっさと鬼なんざ、手放しやがれッ!!」