学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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JO31話:剥離・虚脱

 ※※※

 

 

 

 辛うじて、身体は動く。

 ……一体どうなっている?

 モモキングが倒れていて、デモーニオも……倒れてる。

 勝ったのは間違いないけど……そうだ。

 

「モモキング!! モモキング、しっかりしろ!!」

「うごががが、効いたでござる、今のは……」

「……平気そーだなあ」

 

 ……無事そうだ。

 何とか引き剥がせたみたいだな……ジャオウガから。

 だけど問題は、まだ邪気が周囲に満ちている。

 そして俺の頭から角も生えたままだ。

 まだ、何も終わっていない。

 

「……マスター殿……!! ジャオウガは……!!」

「そうだ! あいつが居ねえ!」

 

 

 

「ジャハハハハハハハ!! 此処に居るぞ!! モモキング、白銀耀よ!!」

 

 

 

 ──全身が血泥の如き鎧に包まれた鬼が、宙に浮かんでいた。

 そして、その手には鬼の槍が握られている。

 ジャオウガは、まだ生きている……!

 

「全く、どいつもこいつも使えんばかりだ! しかし……おかげで学んだぞ。S─MAX進化というものをッ!!」

 

 デモーニオの身体が浮かび上がる。

 駆け寄ったが、もう遅い。

 それは、ジャオウガに飲み込まれていき、消えていく。

 

「……人と超獣が一心同体となる進化……我も習得してみせたぞッ!!」

 

 その邪気がより強まる。

 そして、より強大に強まっていき──膨れ上がる。

 空間が裂ける。

 そこから──無数の魑魅魍魎達が降ってくる。

 

「バカな……この量のマナを、一体何処から奴は調達したというのでござるか!!」

「くそっ、こうなりゃもう1回……! モモキング! JO退化で行くぞ!」

「了解でござ──」

「ふん……紙遊びはもう飽きたわ! 貴様等の相手などしておられん! 亜堕無とEVEがやられた以上、我自らが全世界の鬼化を行わねばならんからなぁ!!」

 

 次の瞬間だった。

 ジャオウガの指から三つ、光が放たれる。

 紫の──光──

 

 

 

 ばしゅっ ばしゅっ ばしゅっ

 

 

 

 何かが撃ち抜かれる音が聞こえた。

 身体に痛みは無い。

 そして、衝撃を感じたデッキケースを見やると、3つ共穴が開いている。

 

「まっ、まさかコイツ──!!」

 

 中身を取り出した。

 燃えている。

 それも、タダの燃え方ではない。

 炎の色は青く、ビニール製のスリーブ諸共焼き尽くさん勢いだ。

 

「あっつ……こいつ、やりやがった!! デッキが全滅……!?」

「ジャハハハハハハ!! 貴様等を狙っても死にはしないが、紙切れはすぐ燃えるからなァ!!」

「この野郎、高かったんだぞ、このデッキ全部!! 幾らしたと思ってんだーッ!!」

「早過ぎて、対応出来なかったでござる……!」

「無理もあるまいよ、モモキング。貴様は長らく我にレクスターズの力を与える為の養分となっていたからな」

 

 まずい。もう今手持ちのデッキは無いぞ。

 JO退化も、赤緑ボルシャックも、そして緑単ジョラゴンデリートも……!

 まとめて今、燃え尽きてしまった……!

 

「デュエリストの魂のデッキを狙うとは卑怯千万!!」

「卑怯? 鬼の歴史の辞書では、卑怯は誉め言葉よ!! ジャハハハハハハ!!」

 

 ジャオウガはそのまま飛び去って行く。

 モモキングのマナはまだ回復していない。

 このまま勝ち逃げするつもりだ──!

 

「畜生! 折角組んだのに……デッキが無けりゃあ、あいつと戦えねえ……!」

「そればかりか、奴を倒さねば鬼化が……! マスター殿、もう目が真っ赤になっているでござるよ!」

「ッ……マジかよ、もう時間無いじゃねーか!」

 

 

 

「アカルーっ!!」

「耀君ッ!!」

 

 

 

 

 その時だった。

 サッヴァークとシャークウガ。

 そして、それに飛び乗った紫月とブランが、俺の開けた大穴から飛んでくる。

 ……た、助かったかもしれねえ……!

 

「聞いてくだサイ! 私、サッヴァークと合体して、スゴかったんデスよ!」

「さっきからこの話しかしないんですよ、ブラン先輩」

「合体? スターMAXの事か?」

「あっ、そうだ! モモキングは助かったデスね!」

「だけど、空が裂けている……どうして」

「まだジャオウガが倒せてないのだろう……部長」

 

 火廣金の声もする。

 見ると、ブランに負ぶわれている。

 無理して此処まで来なくて良いのに……!

 

「倒れていたので、救助したデスよ!」

「火廣金先輩も無茶をしますね」

「お前、大丈夫なのか!? 寝てた方が良いんじゃ──」

「平気だ……魔導司をナメるな。それよりも、相当消耗しているじゃないか」

「ああ。しかも、モモキングもまだ回復してないんだ。カード込みでも、次は魔力差で押し込まれるかもしれない」

「魔力勝負はデュエルだとリアルラックに響くからな……!」

 

 正直、デモーニオとの戦闘に加えて、此処までの連戦が相当響いている。

 この2日間だけで何回クリーチャーと戦っただろうか。

 

「それに──デッキがジャオウガに3つとも焼かれた」

「What!? デッキがオシャカになったらデュエマ出来ないじゃないデスか!」

「泣きそうだよ、正直今……泣いて良い?」

「全部高いデッキだったデスよね……それなりに」

 

 その通りである。

 しかもかなり思い入れのあるデッキだ。

 

「……何処までも鬼とは卑怯ですね」

「だが合理的だ。魔法使い同士の戦闘では、デュエルに持ち込まれる前に相手のデッキを狙う事もよくある」

「リアルファイトで制圧してデュエルで決着付けるのがスタンダードなのかよ、お前らの世界」

 

 空に広がる大穴。

 あそこから次々にクリーチャーが流れ込んで来る。

 このままじゃ、アメノホアカリが起こした新世界創造のように、クリーチャーの世界が完成するのも時間の問題だろう。

 

「つまり、現状の問題点は2つです。白銀先輩とモモキングの魔力不足。そして、先輩のデッキが無い事です」

「どれも割と深刻デスね……私達では、ジャオウガを倒すことが出来ないんデショ?」

「鬼は、桃太郎の力でなければ封じる事が出来んからな」

 

 紫月は──前に進み出る。

 あれ? こいつ、目の色が変わったような。

 

「だからこそ……耀君。こんな時こそ皆の力を合わせましょう」

「こんな時って──わっ」

 

 いきなり紫月は抱き着いてくる。

 み、皆の前で──

 

「……安心してください。私の力。耀君に託します」

「暗野……まさか君は、やはり──」

「おい紫月……!? ちょっと待てよ!? お前、身体から魔力が……!?」

「……耀君。どんな私でも……好きでいてくれますか?」

 

 身体に流れ込む力の本流。

 それがしみこんでいく。

 柔らかい。そして、温かい。

 彼女の体温を通して、元気が──湧いてくる。

 

「ああ、当たり前だ!」

「サッヴァーク! 私達も! アカルとモモキングに全てを託すデス!」

「……俺もやろう。まだ、魔力は残っている……ッ!」

「っしゃぁ! マスターに続くぜーっ!」

「皆殿……! かたじけない……!」

「……お前ら……!」

 

 行ける。

 戦える。

 皆の力が、俺に──そしてモモキングに集まっていく。

 

「……これで、全部です」

 

 ぎゅう、と彼女はもう1度俺を抱きしめる。本当に愛しいな。ずっとこのままで居たいくらいだ。

 

「……あーコホン」

 

 それを見てブランがわざとらしく咳き込んだ。

 ……やっべ、怒られそうだ。

 

「こほんっ、こほんっ! イチャイチャは後デスよ!」

「別にイチャイチャしてねーよ? こ、これはあくまで魔力補給だ」

「やらしいデスね……デッキは要らないんデスね! そのまま生身で戦ってきてくだサイ」

「死んじまうよ!! ……って、デッキ?」

「そうデス! ──アカル、モモキングの入っているデッキなら、私のこのデッキを使ってくだサイ!」

 

 彼女が俺に渡したのは《正義星帝<ライオネル.Star>》の入った白緑のタマシードデッキだ。

 中には《アルカディアス・モモキング》も入っている。

 

「多少、先輩用にチューンナップが必要ですね。パーツはあるので、少し組み替えても?」

「そうデスね。予備のスリーブが此処に。でも、シヅク、フラついてるじゃないデスか!」

「大丈夫ですよ。このくらいは平気です。……成程。《アルカディアス・モモキング》の入った《<ライオネル.Star>》……確かに相性が良いというわけですね。後は此処と此処を入れ替えて……」

「良いのか? ブラン」

 

 デッキを組み替えている紫月を横目に、俺はブランに問いかけた。

 ありがたいのはありがたいが、自分のデッキをポン、と俺に渡して良いんだろうか。

 

「ジョーカーズと言えば、アカルデショーっ! がつんっ、とブチかましてきてくだサーイ!」

「今度は帰ってこいよ、部長」

 

 皆……!

 

「……俺達ゃ待ってるぜ」

「ワシらは祈る事しか出来んがな」

「絶対に勝ってください。耀君」

 

 ……よし。

 

 

 

 

「──行くぞ、モモキング!!」

「御意でござるッ!」

 

 

 

 

 モモキングの背中から羽根が生える。

 そして、雷光と共にその身体に天使の鎧が纏われていく。

 《アルカディアス・モモキング》の姿だ──これなら、空に居るジャオウガにも届く!

 

 

 

「超超超可及的速やかに──ジャオウガを止める!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「ジャハハハハハハハハハハ!! 見えるか? デモーニオ!! 貴様の恨んだ世界が、壊れていく様を!!」

 

 

 

 デモーニオが槍を手にしたのはほんの偶然だった。 

 たまたま、彼が古物屋で買った槍に──ジャオウガは憑依していた。

 普通の人間が手に取っても何も起こらなかっただろう。

 しかし、強い恨みを持ち、更に鬼の力に目覚める素質があったデモーニオは、ジャオウガにそのまま憑依されてしまった。

 世界にクリーチャーが降りていく。

 人々は鬼となっていく。

 もうすぐそこに、鬼の世界は完成しようとしていた──

 

 

 

 

「──ジャオウガァァァァァーッ!!」

 

 

 

 一閃が、彼に襲い掛かるまでは。

 

「ッ……何じゃい!? モモキングに、白銀耀……!」

「お前の野望も、此処まででござる!!」

 

 剣をジャオウガの腕に突き立てながら、モモキングは叫ぶ。

 その背中には、白銀耀も乗っている。

 

「デッキも無しに我に挑みに来るとは愚かな──」

 

 

 

<Wild,DrawⅣ──>

 

 

 

 無機質なデュエル・タロットの起動音。

 それは、空間に引きずり込む合図であった。

 

 

「ッ……!? 馬鹿な、空間が──」

「よお、ジャオウガ。お前には思いつかなかったんだろうな──!」

 

 

 

 

<EMPEROR!!>

 

 

 

 

「困ったら、仲間の手を借りる……ってことをよォ!!」

「白銀耀、貴様ァァァァァァーッ!!」

 

 

 

 空間は開かれた。

 今此処に、切札と鬼札の最後の決戦が幕を開けたのである。

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