学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
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「私のターン。2マナで《貝獣アンモ》を召喚。その効果で山札の上を捲り、それがムートピアならば手札に加えます」
現れたのは、アンモナイトのようなクリーチャー。
紫月はいつも通りムートピアのデッキを使っているようだ。
山札から捲られたカードは、《第四都市 ウツボイド》。ムートピアのクリーチャーのため、手札に加えられる。
流石紫月だぜ。新しいカードを早速投入しているな。
「あたしのターン。マナにカードを置いてターンエンドだ」
「多色カードばかりのようですね、デッキの中身が。5色コントロールでしょうか」
並べられたカードは《テック団の波壊Go!》に《トップ・オブ・ロマネスク》。多色カードなだけじゃない。文明もばらけているようだ。
既にこれでデッキの文明は4色以上であると割れている。
だけど、これじゃあ事故率が増えて却ってデッキが回りにくいんじゃねえかコレ……。
「3マナで《貝獣 アーヤコーヤ》召喚。ターンエンド」
「ほーん、ムートピアか。随分とまた物好きだねえ――あたしのターン」
カードを引いたトリスは、笑みを浮かべると2枚のマナをタップした。
「2マナで《爆砕面 ジョニーウォーカー》召喚! 此奴を自爆させ、マナを1枚チャージ。ターンエンドだ」
現れた仮面の戦士は、その命を犠牲にトリスの魔力を増幅させていく。
動き出しが遅い。この間に紫月も仕掛けていくようだ。
いつものように相手に先手を打って策略を仕掛ければ、紫月に勝機はあるはず。ブランも固唾を飲んで見守っている。
「私のターン――」
彼女の表情はどこか浮かない。
相手のデッキが掴めないからだろうか。そういえば、超次元ゾーンにカードも無いし……。
「取り合えず、2マナで《貝獣アンモ》を召喚。山札の上から1枚を表向きにして、それがムートピアならば手札へ」
再び表向きになる山札の一番上のカード。
それが彼女の眼前へ露わになる。
「――我が忠実なる僕、《深海の覇王 シャークウガ》を手札に加えます」
『っしゃあ!! マスター、俺に任せな!!』
並んだクリーチャーに、《アンモ》の効果でなかなか尽きない手札。
これだけを見れば動き出しだけが遅いトリスは劣勢のように見えた。
「あたしのターンだな?」
「早くしてください。私が勝てば、貴方達の事を洗いざらい全て吐いてもらいますから」
「ハッ、勝てば、なあ」
彼女はマナゾーンに4枚目のマナを置くと言った。
「まあ、無理な話だけどねえ!! 呪文、《裏切りの魔狼月下城》! 効果で、お前は手札を1枚選んで捨てる――」
轟!! と少女魔導司の背後から現れた幾多もの餓狼が赤い瞳をギラつかせて紫月の手札を狙う。
「そして[[rb:多色> レインボー]]マナ武装4で、あたしのマナゾーンに多色カードが4枚以上あれば、お前は手札をさらに2枚選んで捨てる!」
「っ……!」
紫月の顔が驚愕で見開かれた。
次の瞬間、更に餓狼が2匹、背後に表れた月下城から現れた。
併せて3匹の狼は、紫月に飛び掛かり、3枚の手札を全て残さずもぎ取ったのだった。
「嫌な予感はしましたが……!」
「ハハハ、滑稽だなァ、オイ」
「……このタイミングでのハンデス、そしてビマナ気味のムーブ、5色ジョリー・ザ・ジョニーJOEを疑った方がよさそうですね……にしてはやたらとマナにクリーチャーが多いような気がしますが」
「どうした? 怖気づいたか?」
「……まさか」
紫月は黙りこくる。
確かにこれは厳しいかもしれない。
クリーチャーは3体いる。しかし、手札はこちらは今の《裏切りの魔狼月下城》で0。
おまけに、マナはまだ3枚しか溜まっていない。
「……私のターン、ドロー」
カードを引く。
しかし、今は何も出来ない。マナに置いてそのままターンを終えるしかない。
と思われたが――
「ターン終了時、墓地の《貝獣 ジミーシ》の効果が発動し、場にムートピアがいるので手札へ戻します」
手札は途切れたわけではない。
墓地へ行っても戻ってくる《ジミーシ》がライフラインだ。
「へぇ、しぶといな。だが、そっちも迂闊には殴れねえだろ。その間に好き勝手させてもらうよ。《母なる星域》をチャージして、5マナをタップ」
言ったトリスのマナは全てタップされた。
そして、そこから激流が渦巻き、魔力が間欠泉となって噴き出す。
「現れろ、《
巨大な斧と共に顕現したのは、牛頭の獣人。
アイツの効果は俺もよく知っている。
登場時にマナゾーンからカードを2枚タップして置き、さらにマナゾーンからカードを手札に回収するという効果を持つ、非常に汎用性が高いクリーチャーだ。昔は、よくお世話になったが……。
「さあ、その効果でマナを2枚、タップして増やし――そして、マナゾーンからカードを1枚手札に戻す!」
「何を回収するのでしょうカ!」
「分からねぇ……たった今マナに落ちたカードかもしれねえし……」
当の紫月もその行く様をじっと見つめていた。
何処か、言いしれぬ不安を孕んだ眼差しで。
「あたしは《ジョニーウォーカー》を手札に加える。ターンエンドだ」
ほっ、と俺達は胸をなでおろした。
でも何故だろうか? 《トップ・オブ・ロマネスク》や《波壊Go!》みたいな強いカードじゃなくて、何故敢えてあのカードをわざわざ手札に加えたのか、意図が分かりかねる。
「とにかく、クリーチャーを展開しないと――私のターン、ドローです」
カードを引いた紫月は目を見開いた。
そして、すぐさま3枚のマナをタップする。
「呪文、《ストリーミング・シェイパー》! 効果で、山札の上から4枚を表向きにして、水のカードを全て手札へ」
激流に舞い、紫月の手札に加えられたのは《貝獣ホタッテ》、《異端流し オニカマス》、《放浪宮殿 トライデン》、《崇高なる知略 オクトーパ》の4枚だった。
「そして、1マナで《貝獣ホタッテ》を召喚してターンエンドです」
「それで終いか?」
「ええ、終わりです」
紫月には何か策があるのだろうか。
さっきからずっとクリーチャーを並べてばかりだが――
「……来たぜ、待ち侘びたよ。あたしのターン」
カードを引いた彼女は、マナにカードを置き、7枚のマナ全てをタップする。
ここまで、ハンデスの合間にマナを貯めてきた彼女が此処で動き出すのか。
手札からカードが1枚、悍ましい気配と共に《プロメテウス》の頂きに叩きつけられた――
「混沌の皇帝よ、異端審問の幕開けだ! 《闇鎧亜キング・アルカディアス》!」
浮かび上がるタロットカード、Ⅳ番――皇帝の文字。
バトルゾーンに突如、巨大な光が降り注ぎ、幾多にも束ねた漆黒の羽根、禍々しい黄金の鎧を身に纏った神の使いが現れた。
「キング……アルカディアス……!」
彼女はその名前を聞いて震える。
俺も聞き覚えがある。かつて、デュエル・マスターズで悪名を轟かせたカード、《聖鎧亜キング・アルカディアス》……多色クリーチャーからならば何でも進化元に出来る汎用性、そしてコスト7でありながら、多色以外のクリーチャーが場に出ることを封じる凶悪な能力を持っており、プレミアム殿堂入りになった怪物。
今、目の前に居るのは似て非なる存在であるとはいえ、大きな威圧感、そして恐怖を紫月、そして俺達に与えるには十分だった。
「効果発動。こいつが場にある時、お前の多色以外のクリーチャーの召喚コストはプラス5される」
「プ、プラス5……!」
駄目だ……!
紫月のマナのカードは今、やっと5枚。
なのに、まともにクリーチャーが召喚できるわけがない。あいつのデッキには、多色クリーチャーなんか入ってないのに!
「それだけじゃない。此奴が居る時、お前がコストを支払わずにクリーチャーを召喚したら、そのクリーチャーを破壊する」
ぎりっ、と紫月は歯噛みした。
まるで、その効果さえ無ければまだ何とかなっていたかもしれない、と言わんばかりに。
「ターンエンド。さあ、どうする? バウンスするか? お前の手札はさっきの《シェイパー》で加えたカードだから、次のターンに《スパイラル・ゲート》でも今引き出来りゃ良いんじゃね?」
悔しさを押し殺せない表情でカードを引く紫月。
だが、最早打つ手なしと言わんばかりにクリーチャーを突撃させ始めた。
「《アンモ》でシールドを攻撃!」
「受ける」
ぱりん、と1枚目のシールドが砕け散った。
トリガーは無い。勢いに乗じて、必死の形相で紫月は攻め立てる。
「もう1体の《アンモ》でシールドをブレイクします!」
「S・トリガー、発動」
反転するカード。
挑発的な笑みが浮かび上がり、虚しき抵抗に悪しき専制の鉄槌が下る。
「――呪文、《テック団の波壊Go!》お前のコスト5以下のクリーチャーを全て手札に戻す!」
激流が巻き起こり、紫月のクリーチャーを全て彼女の手札へ巻き戻した。
バウンスと言えど、もう彼女は自分の配下を呼び戻すことは出来ない。なぜならば、既に戦場は混沌の王が支配してしまっているからだ。
無情にも、その完全なる圧政が敷かれようとしていた。
「さあ、此処から本番だ。《ジョニーウォーカー》を召喚。そして、6マナを払って《ジョニーウォーカー》進化」
もう1つ、白と黒の紫電が戦場へ舞い降りる。
俺は再び目を瞑った。
神々しい光が、満ち満ちていた。
浮かび上がるのはタロットカードのⅢ番、女帝の番号。
「満たされぬ愛、新たなる戦禍の火種となれ! 《聖鎧亜クイーン・アルカディアス》!」
今度はクイーンまで……!
神々しい鎧に身を包んだ神の遣いが揃ってしまった。
そして、その場の時間が止まる。
全ての時間も、空間も、彼らによって支配されてしまったのだ。
「《クイーン・アルカディアス》の効果発動。もう、お前は多色以外の呪文を唱えることはできない。そして、《キング》がいるから、コスト踏み倒しも多色以外のクリーチャーの召喚も制限されている!」
「あ、あう……!」
「法無き法、皇帝と女帝の審判、理想無き理想郷! 理不尽と虚構に塗れた魔女裁判の恐怖、思い知れ!!」
叫んだトリスの言葉の先は、明らかに怯える紫月へは向いてなかった。
何か、別の物に向けたような絶叫だった。
「《クイーン・アルカディアス》、奴を攻撃だ!」
女王の裁きと、降り注ぐ光が紫月のシールドを次々に叩き割っていった。
「紫月!!」
「っ……S・トリガーは――」
彼女はそこで絶句した。
どうやら、呪文のトリガーだったらしい。
「そして、《キング・アルカディアス》でシールドをW・ブレイク! ターンエンドだ」
これで、彼女は残る全てのシールドが吹き飛ばされたことになる。
だが、クリーチャーのS・トリガーすら出なかった以上、最早彼女に成す術は無い。
「――ターン、エンド……」
紫月はただ一言。
そう呟くだけだった。
皇帝の裁きが振り下ろされる。
激しい光は稲妻となり、鉄槌として彼女へ審判を突き付けるのであった。
「《クイーン・アルカディアス》で最後のシールドをブレイク」
S・トリガーは、来ない。
支配のもとで、希望も、抗うことさえも押し潰された。
絶望の表情を浮かべた咎人に、容赦なき審判が下される。
「――これにて閉廷。《キング・アルカディアス》でダイレクトアタック