学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
俺と紫月のデュエルが始まった。
2ターン目、早速彼女は2枚のマナをタップし、クリーチャーを呼び出す。
「《【問2】ノロン
「俺のターン、2マナで《ピクシー・ライフ》を唱え、その効果で山札の上から1枚をマナゾーンに! ターンエンドだ!」
互いに準備に準備を重ねる段階。
しかし。彼女のあの動きは、墓地を貯めているのに対し、俺の場合はマナゾーンにカードを貯めている、と対照的だ。
――墓地にカードを溜めている……ブランみたいな墓地退化か……それともロマノフか……!
そう推理するが、すぐさま答えは見つかった。
「私のターン。3マナで《ノロン》を進化、《プラチナ・ワルスラS》に……! うっ、うぅ……!」
紫月の苦しそうな呻きと共に、槍のマークが交差し、目の前に現れた。
ぐにゃり、と青いゼリーが《ノロン》を取り込み、肥大化していき、巨大なクリーチャーとなった。
王冠と杖を持ち、宝石のようなパーツが取り付けられ、Sのイニシャルが浮かび上がる。
「……痛っ……シールドを攻撃、するときに――私はカードを3枚引き、そしてカードを1枚墓地へ」
「っ……マジかよ」
割られる2枚のシールド。
ガラスのようなそれが飛び散り、衝撃波が俺を吹き飛ばそうとする。
『いきなりパワー6000のW・ブレイカーが出てきたでありますよ!』
「《プラチナ・ワルスラS》は紫月が好きなカードの1枚……! その能力も強烈だ……! すぐに倒さねえと……!」
カードを引いた俺は、迷わず4枚のマナをタップする。
「4マナで《ドツキ万次郎》召喚! その効果で、相手のタップされたクリーチャーを1体、山札の一番下に送る! 《プラチナ・ワルスラS》を山札の一番下へ!」
「小癪な……!」
《ドツキ万次郎》の大量の拳が、《プラチナ・ワルスラS》の柔らかい身体に打ち込まれ、一瞬で粉砕する。
これなら、紫月の墓地を増やさずにクリーチャーの対処が出来る。
だけど、痛いな……早速シールドが2枚削られているなんて。
「……私のターン。呪文、《ストリーミング・シェイパー》。その効果で山札の上から4枚を表向きにし、水を手札に、それ以外を墓地へ」
捲られたカードは《ノロン》に《サイバー・チューン》、《ザ・クロック》に《トツゲキ戦車バクゲットー》。
その中から水の《ノロン》、《サイバー・チューン》、《ザ・クロック》が手札に加えられた。
苦しそうに頭を抑えた彼女。
血涙が流れる右目が、悲壮なものさえ感じさせる。
見れば、肌はだんだんひび割れて赤い光を放っており、だんだん彼女が彼女ではない何かに変わっていくようだった。
「……俺のターン。3マナで、《フェアリー・クリスタル》を使う! その効果で、山札の上から1枚をマナに置き、そしてそれが無色カードなら――」
置かれたカードは《ジョリー・ザ・ジョニー》。無色カードだ。
俺は小さくガッツポーズし、山札の上から更に1枚を表向きにした。
「山札の上からもう1枚マナゾーンに! これで俺のマナは、7マナ! 次のターンで8マナだ!」
今回のデッキは無色×自然のビマナ型ジョーカーズだ。
今のところは順調だが……。
「私のターン。3マナで《埋葬の守護者 ドルル・フィン》を召喚。そして、2マナで《学校男》を召喚」
「なっ……!」
「その効果で、《学校男》と《ドルル・フィン》を破壊し、《ドツキ万次郎》も破壊」
《学校男》は2コストパワー8000の強力なクリーチャーだが、登場時に自分のクリーチャーを2体破壊しなければならないというデメリット能力を持つ。
だが、同時にこの時、相手も自分のクリーチャーを選んで破壊しなければならないという効果も持っているのだ。
本当に厄介だ……!
「そして、《ドルル・フィン》は破壊されたとき、山札の上から5枚を墓地に置く。ターンエンド」
まずい。
墓地がどんどん増えていってる。
この流れは間違いなく、墓地ソース。このままでは、彼女の切札が現れるのは確実だ。
「3マナで《ニヤリー》を召喚! その効果で山札の上から3枚を表向きに!」
捲られる3枚のカード。
現れたのは《洗脳センノー》、《ピクシー・ライフ》、《ヤッタレマン》の3枚だ。
その中の無色カードである《センノー》と《ヤッタレマン》を手札に加える。
そして――
「《洗脳センノー》を召喚! ターンエンドだ!」
これで踏み倒しは禁止出来る。正直言って、気休め程度だけど……。
「――私のターン、ドロー」
言った紫月は、3枚のマナをタップした。
そして――
「呪文、《サイバー・チューン》。その効果でカードを3枚引き、2枚手札から捨てる……」
唱えられる呪文。
しかし、これだけでは終わらない。
嫌な予感がした。
彼女の残る手札から、何かを感じる。
「紫月――お前は――!」
「黙れ……黙れ黙れ。近づくな、喋るな!! 私のこんな姿を見た奴は、残さず息の根を止める!!」
カッ、と紫月の目が見開かれた。
その左の強膜も、黒く染まり、血涙を流している。
まずい。あいつは、どんどん変わっていく――!
「まず、私の墓地にクリーチャーが6体以上いるため、G・ゼロ発動。《盗掘人形モールス》召喚。その効果で、墓地からクリーチャーを手札に加えます」
現れたのはガラクタで構成された人形。
しかし、そいつが墓場から掘り起こしたのは恐るべき切札だった。
「さらに、墓地にクリーチャーが6体以上いるため、G・ゼロ発動。アウトレイジ、《
次の瞬間、哀しい咆哮と共に灼熱の火器を背負った強大な無法龍が姿を現した。
G・ゼロは召喚――《センノー》の効果では封じられない!
そして、無法龍の様子がおかしい。
目は禍々しい紫色に輝いており、全身も黒いオーラが包み込んでいる。
まるで、持ち主の紫月に引き寄せられるように――
「そして、墓地にあるクリーチャーの数だけコスト軽減し、コストマイナス10……あ、ああああ、嗚呼亜阿唖アァァァァーッ!!」
絶叫を前にして、ぞっ、とした。浮き出る強大なシルエット。
これが彼女の成し得ようとしていたものの正体。
彼女が呼び出そうとしていた異形の正体――
※※※
――師匠。師匠が苦手なデッキは何ですか?
――苦手? 特にはない……いや、散々苦しめられたデッキならあるがな
――教えてください
――ちょっと、しづ。そんなに簡単に教えてもらえるわけがないじゃない
――墓地ソースだ。昔、ライバルがいつも使っていた。あいつの前では、僕の破壊は意味を成さない――本当に太陽のように燃え続けた諦めの悪い奴だった。
――そうですか。それじゃあ墓地ソースを組みますね。
――しづ!?
――ああ、待て。組むなら、かなり費用が掛かる。主に切札がな……。
――良いんですか!?
――師匠を超える為なら――
一瞬だけ頭に過った、在りし日の記憶。
しかし。
その破滅的な切札は今は、目の前のものを、そして自らを滅ぼす為に存在している。
最早、それは終末の暴走兵器。
元々手にしたのも、姉に近づくあの男を潰す為。
彼女が止まらなければ、その龍は決して止まらない――哀しみも、怒りも、憎悪さえも糧にして――力尽きても尚暴走する。
※※※
「数多の屍を乗り越え、暴走する――《[[rb:暴走龍 >ライオット]] 5000GT》!!」
浮かび上がる勝利――
そして現れたのは史上最強のアウトレイジの無法龍。
弱者を決して許さず、屍を踏み越えて暴走する恐怖と力の権化だ。
「あ、あははは……!! こんな醜い姿じゃ、もう誰にも愛してもらえない、みづ姉にも――!」
次の瞬間、俺の場のクリーチャーが全て焼き尽くされた。
《5000GT》は登場時に全てのパワー5000以下のクリーチャーと、サイキック・クリーチャーを破壊し、その召喚を禁止するという効果を持っている。
つまり、あいつが居る限り、俺のS・トリガークリーチャーを含めたパワー5000以下のクリーチャーも出せない。
おまけにあの2体は――揃いも揃ってスピードアタッカー……!
そう、このデッキこそが本気の紫月が使う最強デッキ。
圧倒的なパワーと速度で全てを蹂躙する無法者を駆る彼女に勝てたことは、殆ど無い。
――最近、あまり戦ってなかったけど……やっぱりつえぇ!!
「は、あははははははは!! 《5000GT》でシールドをT・ブレイク――!」
俺は卒倒しそうになった。
巨大な電動丸ノコが俺のシールドをまとめて両断する。
思わず腕で顔を覆った。
その破片が飛び散り、次々に俺の肉という肉に突き刺さっていく。
『マスター!!』
「っ……し、づく……!!」
「《クロスファイア》! トドメを刺しなさいッ!!」
迫りくる攻撃。
ズタボロの身体。
俺は今にも絶望しそうだった。
だ、駄目だったか――
割られたシールドを見る気力さえも、紫月を前に奪われていた。
もう、駄目なのか──!?
──目の前の事に、今の事に真っ直ぐになれる白銀先輩を、私は花梨先輩やその音神先輩にも劣らないと思っています。
彼女の言葉が、頭の中で響く。
紫月。嘘つくんじゃねえよ。何も信じられない?
違う。お前は、俺の事をそう言って信じてくれたんだ。
目の前の事に、今の事に真っ直ぐになれるのが白銀耀って男だということを!
俺は、最後までそれを貫かなきゃいけねえのに、負けてられるかよ!
「……っハハ」
乾いた笑みが漏れる。
おい、紫月。
お前はやっぱり、生意気な後輩だ。
だけど、最高に頼れる後輩だ!
割られたシールドが俺に応えるようにして、光となる。
「S・トリガー、《ナチュラル・トラップ》!」
次の瞬間、大量の蔓が《クロスファイア》を地面へ引きずり込んでいく。
これで、紫月が俺を攻撃できるクリーチャーはもういない。
「わりーな、紫月――俺はとことんまで、地獄の鬼には嫌われてるみてーだ!」
「っ……!」
間一髪。
首の皮一枚繋がった。
やっぱり紫月に勝つには、構築、プレイングだけじゃねえ、運も全て完璧じゃねえと絶対に無理だ。
だが、勝負運なら、俺は負けない!
「紫月。怖かっただろ。……ちょっと、待ってろ」
「何を言って――」
「G・ゼロは召喚。お前がこのターンに召喚したクリーチャーは《モールス》、《クロスファイア》、《5000GT》の3体――つまり、お前の出番だ!」
浮かび上がるジョーカーズのマーク。
相手にターンにでも、出せるクリーチャーがいる!
カウンターだ!
「暗闇の中の一筋の光明へ勝利を撃ち抜け!! 《バレット・ザ・シルバー》!!」
俺の手札からノーコストで現れた白銀の銃馬、《バレット・ザ・シルバー》は俺の山札を目掛けて乾いた音と共に銃弾を放つ。
撃ち抜かれたカードは――
「出てこい、《バイナラドア》! これは召喚じゃねえから、《5000GT》の効果は受けない! 《5000GT》を山札の一番下に送り、1枚ドロー!」
「っ……おのれ……!」
顔を引き攣らせる紫月。
だけど、駄目だ。このままじゃ、俺はまだ勝てない。
もうひと押し、あいつを止められるカードを――
「――ひっくり返すぜ! 俺のターン、ドロー!」
カードを引く。
次の瞬間だった。
そこにあったのは――《チョートッQ》のカード。
「……どぇぇ!? 俺、お前入れてねぇんだけど!?」
『何を言ってるでありますか! マスターのピンチに駆け付けるのは当然であります!』
「てめぇ!! 勝手にデッキからカードを入れ替えて入りやがったな!!」
『だけど、マスターが今まで戦って成長してきたように――我も、成長しているであります! それを見て欲しいのであります!』
「成長……!? 何言ってんだお前――」
『見くびらないでほしいでありますよ! マスターカードだけが、マスターの切札ではないであります!』
俺は、はっとする。そうだ。俺のデッキのカードは、全て1枚1枚が切り札なんだ。
「そうか――だから
言いかけたその時、デッキケースに入っていたはずのエリアフォースカードが飛び出してくる。
白紙のはずのそのカードに――絵柄が突如、現れた。
そこに刻まれた数字は、Ⅳ。
タロットカードのⅣ番、皇帝の数字だった。
「何だ――これって――」
「おいおいおい! どうなってんだそのカード!」
いきなり声が入る。
見れば、今まで観戦していたであろうトリス・メギスがいら立った様子で叫んでいた。
「そのエリアフォースカードとやら、どうなってんだ! 人間に、
「俺だって分からねえよ! これって――」
『うおおおおおおおおおお!!』
次の瞬間、《チョートッQ》のカードが光に包まれていく。
『マスター! マナを全て払って、我を召喚するであります!』
「お、おう!!」
今ある8枚のマナを全てタップし、俺はカードを勢いに任せてバトルゾーンへたたきつけた。
ジョーカーズのマーク、そして、皇帝を意味するⅣ番の数字が浮かび上がる――その時。
チョートッQ、そして――《ダンガンオー》がバトルゾーンへ飛び出した。
どこからともなく線路が敷かれていき、後ろから走ってくる。
『
次の瞬間、ダンガンオーの身体がバラバラになり、チョートッQへパーツが組み込まれていく。
そして、チョートッQの顔も変形していき、胴となって足のパーツを構築していく。
新たな頭部が出現し、巨大な両腕には刀が握られた。
俺は、その名を――叫んだ。
「これが俺の超
《