学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
キキィーッ、と線路上に止まり、両腕の刀を振り上げる《ダンガンテイオー》。
その姿は列車の戦士という趣から、列車の武者というものに変わっており、まさにこのデッキの
合体、したのか――! チョートッQとダンガンオーの力が1つになって進化したのか!
「──ダンガンテイオー! 紫月を……助けるぞ!」
『我が主よ、承知した!』
走り出す《ダンガンテイオー》。
遂に反撃の始まりだ。
「行け!! 《ダンガンテイオー》でシールドをW・ブレイク!!」
飛び出した弾丸のように地面を蹴った《ダンガンテイオー》が刀を振り下ろすと共に、小気味の良い音が響いて、一気に2枚のシールドが真っ二つになる。
『二刀流・ダンガンインパクト!!』
着地の衝撃がこちらにまで伝わり、シールドが砕け散るのが俺の方からも見えた。
よし、これで残るシールドは3枚。
「S・トリガー」
しかし、シールドは光となって収束していく。
まずい、あの中身次第では俺は負ける。
頼む――!
「《サイバー・チューン》。その能力で3枚引いて2枚捨てる。捨てるのは《
「っ……!」
幸い、クリーチャーのトリガーではなかったが、バウンスされたことで俺は打点が足りなくなった。
このターンこれ以上攻撃しても旨みがない――
「命拾いしましたね……! 《ザ・クロック》なら私の勝ちだったのに……! うっ……!」
それでも、紫月の焦燥が強くなっていくのが分かった。
追い詰めている。あの彼女を、本気の彼女を確実に。
同時に、どんどん彼女の身体に黒いものが侵食していっている。
早く止めないと――
「あ……亜、あ……ああ!!」
彼女はふらつきながら頭を抑えた。
その眼は俺を見ていない。
今は何処にもいない何かに縋っていた。
※※※
――しづ。そろそろ私にばかり甘えるのはそろそろやめないと。
――甘えてなんかいません。みづ姉が頼りないからです。
――ふふっ、確かにその通りね。でも、最近は違うわ、しづ。
――何がですか。
――紫月、本当にうれしそうにデュエマ部の話をするのだもの。特に白銀先輩。
――別に。私はあの人の生き方は肯定していますが、それ以外は頼りない先輩です。
――またまたそんなこと言っちゃって。貴方も、心の何処かでデュエマ部や、先輩の皆さんを心の支えにしてるんだなって思うと、寂しいけど、嬉しいのよ。桑原先輩もあなたのことを気にかけてるみたいだし。
――別に……私は……みづ姉さえ、居れば――。
※※※
「私は、私はみづ姉だけいればそれでいいのに!! 私の、私の記憶に、入り込んでくるなァァァァァァァァーッ!!」
《ノロン》の上に重ねられることで、再び現れた巨大なスライムのイニシャルズ。2体目の《プラチナ・ワルスラS》だ。進化クリーチャーだから、すぐに俺にダイレクトアタックを決められる。
俺の場にはブロッカーはいないし、手札にはシノビもいない。
「《プラチナ・ワルスラS》ッ!! ダイレクトアタックッ!!」
だけど――俺には、《ダンガンテイオー》が残っている!!
それは、俺を目掛けて突貫しようとしたが――スパン、という音と共に動かなくなる。
既に、《ダンガンテイオー》は巨大スライムの傍を通り過ぎていた。
ばたり、と気絶したように倒れてしまう。
『安心せよ。峰打ちだ』
「なっ!? なぜ動かないのですかっ……、《プラチナ・ワルスラS》!!」
「《ダンガンテイオー》の効果だ。お前のクリーチャーは、場に出たターンに俺を攻撃出来ない。進化クリーチャーも、スピードアタッカーも、出たターンに俺を殴ることは出来ねえんだ」
《ダンガンテイオー》の能力は、まさに守りと攻めの両方を兼ね揃えたものだ。
特に、この効果は相手の足止めをするには好都合な能力。
これで、ダイレクトアタックを止めることができた。
「ヒッ……! そ、そんな……! ぐ、ぐぬう、亜……阿……ぁ……!!」
我に返ったように怯えた表情を見せる紫月。
しかも、《ダンガンテイオー》のパワーは8000。《ワルスラ》では攻撃しても破壊出来ない。
つまり、彼女のターンはもう終わりだ。
もう、彼女は何も出来ない。
「俺のターン。9マナをタップし、《燃えるデット・ソード》を召喚だ!」
轟!! と燃え上がる鋏が俺の手札から勢いよく飛び出した。
「その効果で、お前はマナ、手札、場のカードを1枚ずつ選び、山札の下に置く!」
「ぅあっ……!」
紫月は手札から《バイケン》、マナから《クロック》、場の《ワルスラ》の下に重ねられた《ノロン》を山札の下に送る。
そして――
「《ダンガンテイオー》のもう1つの効果発動!! 俺のクリーチャーは、場に出たターンに相手を攻撃できる!」
『皆の者!! 今こそ出陣だ!!』
「つーわけで、攻め込むぜ!! 《デット・ソード》でお前のシールドをT・ブレイク!!」
飛び出した《デット・ソード》が紫月のシールドを全て切り裂いた。
トリガーは、無い。
彼女は怯えた表情で絶叫した。
全てを拒絶するように。
だけど俺は――その手を必ず掴んでみせる。絶対に、手放してたまるもんか!!
「――紫月。ちょっといてぇかもしれないけど、我慢しろよ!!」
「あ、亜、唖、阿、あああああああ……!!」
地面を蹴った皇帝のカード。
その刀は、確かに彼女を捉えていた。
「《
そのまま、線路が敷かれていき、疾走していく《ダンガンテイオー》の刀が、全てを断ち切ろうと振り降ろされる。
刃は、彼女の闇を、しがらみを、そしてどす黒い魔術さえも断ち切ったのだった。
「亜、ぁ……あ――せん、ぱい――」
※※※
――私は、あくまでもみづ姉さえ居ればそれでいいのです。
――ったく、本当にお前は変わらねえな! シスコンニート!
――ニートではありません。学生ですから。
――ストップ、ストップ! これでもシヅクは皆の為に動いてくれてるじゃないデスか!
――別に……最終的にみづ姉に被害が……。
――桑原先輩の時だって、そうデシタヨ! 何だかんだで助けたかったんじゃないデスか!
――むぅ……。
――本当素直じゃねえな、お前は。
――うるさいですね。
――それにこないだ言ってたデショ。何だかんだ、白銀先輩にも感謝はしてる、影響を与えてくれた、っテ。
――それは言わなくても良いでしょう!
――本当、素直じゃねえなあ……ま、ありがとよー。
――お礼を言われるようなことはしていません!
――あ、出て行っちゃいましタ。
――ほっとけよ。別にすぐ帰ってくるさ。
※※※
空間は解除された。
再び、地面に倒れた紫月を俺は抱き起こす。
見れば、血涙は既に乾いており、身体にあった裂け目も無くなっていた。
これで、元に――戻ったのか!?
『安心せよ、マスター。峰打ちだ』
「ああ。生きてるのは分かるぜ」
俺は紫月に駆け寄ろうとした。
しかし。
「オイコラ!! ほんっとに使えねえなあ!! まあ、想定内だけども!!」
怒号が聞こえる。
見れば、トリス・メギスが狂気の笑みを浮かべていた。
「今お前、すっげー疲れてるだろ? そこの2人も満身創痍みてーだし?」
「なっ……!」
振り返って俺は絶句した。
勝ってはいるのだろうが、足が震え、既に戦える状態ではないブランと桑原先輩の姿があった。
かく言う俺も、疲れはピークに達している。
この状況であの魔導司と戦えば――デュエル中にぶっ倒れるかもしれない!
「ま、まだいけるデス……」
「俺も……くそっ、駄目だ……そろそろヤバい」
『マ、マスター……くっ!』
俺の背後に立っていたダンガンテイオーが光と共に、小さくなって足元に転がった。
元のチョートッQの姿だ。
まずい。このままでは、満足に戦えない!
「てめぇ、どこまで腐ってやがるんだ!!」
「うっせぇ!! これでお前ら全員お終いだ! キング・アルカディアスで片付けて――」
「ハハハハハハ!!」
突如。わざとらしい三段笑いが闇夜に響き渡る。
振り返ると、マントが翻り――月夜に照らされ、闇夜の貴公子が姿を現す。
その姿に、俺は絶句しそうになったが、その名を呼ぶ。
「み、三日月仮面!?」
「また会ったな!! ハハハハハハハ!」
未だにノイズのかかった不気味な笑いを止めない彼は、トリス・メギスに歩み寄っていく。
「フハハハ、私は正義の味方。そして、同時に悪の敵でもある。魔導司、トリス・メギス。貴様の企みも此処までよ!」
「何だぁ、こいつ……はっ、お前も人間だろ? 邪魔をするんじゃねえ。潰せ、キング・アルカディアス!!」
襲い掛かる実体化したキング・アルカディアス。
しかし――その体は一瞬で打ち砕かれた。
トリス・メギスは今度こそ動揺を隠せないようだった。
「なっ……!」
「王の暴力的支配は、私の《オーパーツ》の前では無意味だ」
「多色クリーチャーか……クソっ!!」
三日月仮面の背後には、巨大な機械のようなクリーチャーが浮かんでいる。
あれは確か、《
『さっきの……良い知らせを忘れておったわ』
ワンダータートルの声が聞こえた。
『あの3体のクリーチャーの反応が、”同時に”蒸発したという情報じゃ。つまり、あの男が倒したということだ』
「なっ……!」
「本当、デスか!?」
「只モンじゃねぇな……」
結局勝ったのかよこの人……!
ってことは、滅茶苦茶強いんじゃねーか!?
「さあ、返してもらおうか? 彼女のエリアフォースカードを。それとも、此処で惨めな目に遭うか。私は貴公子であるが故、選択の余地を与えようではないか。YESかNOか。さあ、択べ」
「くっ、仕方ねぇな……!」
トリス・メギスは思いの外、あっさりと彼にエリアフォースカードを投げ渡す。
それを受け取った彼は、俺にそれを渡すのだった。
「今回の所は素直に引き下がってやるよ……!」
「てめ、待ちやが――」
「待て。深追いは危険だ。此処は互いに譲歩しようではないか」
「っ……」
三日月仮面に手で制され、俺は地面にへたりこむ。
確かにそうだ。もう、まともに戦える状況ではなかった。相手が渋々撤退していっただけじゃないか。
トリス・メギスは間もなくその姿を夜の森へ消す。
跡形も無く、その場に居たという痕跡さえも知らぬ間に抹消していく様はまさに魔法使いであった。
「……さて。何であれ、君達が無事で何よりだ」
「あ、ありがとうございました」
「何であれ。君の仲間の為に戦う姿、まさしく正義であった。だが、無茶はしないでくれよ? 命あってこその正義だ」
俺も、あと少し間違っていれば今度も死んでいたかもしれない。
改めて、危険な戦いであったことを思い返す。
「この辺りのクリーチャーは排除したし、他の魔導司の気配もない! 気を付けて戻りたまえ! ハーハッハッハッハ!!」
胡散臭い笑い声と共に、三日月仮面なる男は森の中へ消えていく。
追いかける気力もなく、俺は紫月を抱えたまま、地面にへたり込んだのだった。
「……やったか、白銀」
「みたい、デスね……」
「おう……」
彼女の穏やかな寝顔を見ながら、俺は安堵する。
そして、静かに言ったのだった。
「――帰ろう。俺達の街に」