学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第二章:アルカナ研究会・凶来編
第24話:ビーチデュエル大会─師匠再来


「――ええ、というわけで来てくれない? 後1人足りなくって」

「貴様は本当に人遣いが荒いな」

「良いでしょ? どうせ暇なんだから」

「あいつも、居れば良かったのだがな。むしろ、力仕事はあいつの領分だろ」

「やめてよ。いつまでもあいつのことなんか引き摺ったりしないの、あたしはね」

「よく言う。疎遠になってるだけの癖に」

「……フン。とにかく、来て頂戴。玲奈ちゃんも連れて来てね」

「分かったよ――」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 夏――真っ先に連想するものは、海である。山である人もいるだろうが、此処では敢えて海とする。このクソ暑い日にわざわざ蒸し暑そうな山へ登りに行くなんて正気じゃねぇぜ、時代は海だヒャッハー、という人も居れば、何だこの野郎、そんな時にこそ頂上から臨む景色とあの澄んだ空気が旨いんだろうがという人もいるだろうが、やっぱり海としていただく。

 灼熱の砂浜に、降り注ぐ熱気。しかし、潮風の靡く先には確かに青々としたオアシス――海が人々の渇きを潤してくれる。

 それを求めて集まる人、人、人々、ピープル。そんな夏のある日の癒しを求めて、俺達も混じっていた。

 

「夏デース! 海デース! 水着デース!」

「はしゃぎすぎだブラン、……人がいっぱい、見ただけで酔いそうだぜ」

「むー、耀ももう少しはしゃいでも良いんじゃないデスか?」

「子供じゃねえんだよ」

 

 そう。俺達デュエマ部は海――それも近所の海水浴場を訪れていた。

 理由は、後輩が言っていたビーチデュエル大会なるものに参加するため、である。

 耀の中では単に保養のつもりで来たのは言うまでもないが。

 

「それに桑原先輩が受験勉強で来られないって話だったからなあ。男子俺だけじゃねえか」

「何言ってるデスか、女の子の水着姿が見られる超絶サービスデスヨ!」

 

 目の前のブランも、今日はビキニを着ていた。肩に紐を掛けているタイプのやつだ。こうしてみてみると、思ったよりも彼女は細い。

 活発に動くからか、筋肉の方が比率が多いのだろう。

 だが、淑やかで尚且つ豊かに腰のくびれははっきりとしており、ブロンドの髪と碧眼も合わさって本当にモデルのようだ。太腿を剥き出しにしたショートパンツも眩しい。

 だが、それどころではない。

 蒸し暑さ――異常な湿気と熱のコンビネーション。体が燃えそうになり、俺は溜息をつく。

 

「あれ、そういや――遅いなあいつら」

 

 そういえば、まだ、その後輩達が来ていない。

 暗野姉妹だ。今日は結局、紫月の双子の姉・翠月まで着いてきたのだ。

 さっき更衣室のある小屋に行ったんだが……にしても着替えるのが遅いな。理由は分からないが、どうしたんだろう。

 そんなことを思ってると――

 

「嫌ですよみづ姉! こんなの恥ずかしいです」

「だからって、いつまでもしづにあのスクール水着の延長のような服は勿体ないと思うのだけど。それにこないだ合わせたとき、胸の部分がぱっつんぱっつんだったでしょ」

「やめてください、その話は!」

 

 おっと、ようやく来たようだった。

 しかし、紫月は姉の翠月さんの後ろに隠れており、かなり恥ずかしがっているようであった。

 

「お、やっと来たじゃねえか……どうしたんだ?」

「シヅクー? ミヅキの後ろに隠れてないで、出てくるデス」

「そ、そう言われても」

 

 そう言って彼女は一向にこちらへ出てこない。

 

「ごめんなさい、先輩。私が選んだ水着なんだけど……」

「翠月さんが選んだんだ」

「はい。自分としづの分を」

 

 にしても翠月さん、なかなか水着がセンスあるな。

 彼女曰くオフショルダーと呼ばれる布がかかったようなデザインのものらしく、緑のカラーがよく似合う。洋服のようなデザインが、清楚な彼女のイメージに合っていて良い。華奢で、気品のある年相応の少女といった感じだ。

 

「翠月さん、水着似合ってるじゃん。センスあるんだな」

「あら、ありがとうございます。白銀先輩」

「清楚な感じで似合ってマスよ!」

「紫月はどうだ? さっさと出て来いよ」

「先輩のスケベ、ムッツリ、犯罪者予備軍」

「何でだ!! 何でそこまで酷い言われ方をしなけりゃいけねぇんだ!!」

 

 くすくす、と翠月さんが笑う。

 ちょっと、貴方の双子の妹さんですよ? どうにかしてくれよ? 俺変態扱いだよ、一歩間違えたら。

 

「しづ、折角似合ってるのに、先輩方に見せないのは勿体ないわ」

「で、でも、ちょっと露出が多くないですか? 背中とお腹がすーすーして……パーカー脱げませんよ、これじゃあ」

「……しづは、私が選んだ水着、気に入らなかったのかしら?」

「うっ……」

 

 俯き加減になって、紫月の葛藤する様子が見えた。

 天然かわざとかは知らないが、やっぱり翠月さん、紫月の思考パターンを完全に知り尽くしているな……。

 大好きな姉ちゃんにあんな顔されて、罪悪感で押し潰されそうになってるぞ。

 

「し、仕方がありません。先輩……笑わないでくださいよ」

 

 そう言って、彼女はようやく翠月の後ろから出てくる。

 そして、羽織っていたボーダーのラッシュガードのチャックを降ろし、はだけると青紫色のホルターネックが露わになった。首にトップスの紐を掛けるタイプの水着で、背中が開いており、色っぽい。誰だこんな凝ったの買ったのは。……翠月さんだったな。

 それは翠月と比べてもアンバランスな紫月の体つきを更に強調するものになってはいるが、色合いが彼女特有のクールな品格は失わせない。本人は恥ずかしがっているからか、最終的にラッシュガードを羽織ることで手を打ったようであるが、ダウナーでクールな紫月と若干危ないその恰好のギャップが非常に良い。

 にしても、翠月さんと比べても本当に育ってるな。何処とは言わねえが。

 いや、いかん。煩悩を捨て去れ俺。

 相手は後輩だぞ? 確かに魅力的ではあるが、こんなことでいちいち動揺してどうする。

 心頭滅却すればモルネクも猿ループもまた涼しと言うし、どうってことはねぇはずだ。

 

「……白銀先輩、どうしたんですか」

「何でもねぇよ!? いや、何でも無くはねぇけど」

「スケベ、ムッツリ、犯罪者」

「何でさ!?」

 

 とうとう格上げだよ、予備軍が無くなってる!!

 

「もうアカル。感想! 感想を言わないト!」

「……先輩。実際の所、どう、でしょうか……? 私には少し、こういうのは早すぎる気がするのですが」

 

 慌てて取り繕うようなのが悔しいが、やはり2人共よく似合う。

 特に、いつも部室で顔を見合わせている紫月に関しても普段とは違う魅力が発掘出来たような気がする。

 翠月さん、グッジョブ。

 

「そ、そんなことはねぇぞ? 似合ってると思うぜ、俺は。うん、艶――可愛くていいと思うぜ」

「……そ、そうですか。先輩とみづ姉が言うなら、別にいいかな、と」

「ええ! 良いと思いマスよ!」

「ふふ、良かったじゃない、紫月」

「……はい」

 

 俯きがちに言った紫月。

 さて、これで役者は揃ったか。つっても、桑原先輩は居ないけどな。

 しかし、まだ大会が始まるまで若干時間がある。

 

「それじゃあ早速海で遊びまショウ!」

「賛成です! 色々持って来たんですよ、バルーンとか浮き輪とか!」

「はぁ……あまり動くのは好きではないのですが」

「お前ら取り合えず行って来いよ。俺は涼んでおく」

「何言ってるデスか! こんな美少女達と一緒に海で遊べるなんて最初で最後デスよ!」

「自分で言うか!?」

 

 いや、だから俺涼んでおきたいんだけど、という俺の意見はオール無視された。

 というわけで――

 

 

 

「冷たいデース!!」

 

 

 

 ばしゃぁん、と海に飛び込むブランの身体が飛沫を思いっきり立てて俺を濡らす。

 そして、そのままばしゃばしゃと泳ぎ始めた。

 海で泳ぐとか何年ぶりだよ。トランクス型の水着履いてきた俺も悪いんだけどさ。

 俺の隣で紫月の溜息が聞こえた。彼女も大方同意らしく。

 

「……やれやれブラン先輩、はしゃぎすぎですよ」

「何言ってるデスか! 2人共、もっとはしゃがないと! Enjoy!」

「イマイチ乗り気にならないのですが」

「俺も同意だ」

 

 仕方なくブランの方へ向かおうとする俺と紫月。腰まで海水が浸かるところまで来ると、ブランが手を振って「こっちデース!」と言っているのが見える。

 追いついた俺達はそれ以上進んだら危ないぞ、と言おうとしたが、

 

「しづ、隙ありっ!」

「ひゃいっ!?」

 

 次の瞬間、紫月の身体が前のめりに倒れた。

 見れば、翠月さんが後ろから抱き着くようにして押し倒していた。

 すぐさまぷはっ、と浮き上がる紫月は怒ったように翠月に言う。

 

「みづ姉! いきなり胸を揉むのはやめてください! 押し倒さないでください! しかも先輩達の前で!」

「ぷはははは、シヅク、直前まで気付きませんデシたネ!」

「しづ……あなたに足りないのは子供の純真さよ。陽射しが輝く海は無限のキャンパス、ここに私達の思い出を無邪気に描くの! さあ、もっと、しづの中の夏を解放するのよ!」

「みづ姉、暑さで頭が……」

「結構ミヅキってはっちゃけるんデスね……シヅクあってこの姉あり、デスカ」

「どういう意味ですかブラン先輩、怒りますよ、もう怒ってますが」

「それにね、しづ。おっぱいのことをコンプレックスに病むことはないの」

「いきなり何言い出すんですか!? しかも先輩の前で!」

 

 俺そっちのけで始まるガールズトーク。

 あの、すいません? そろそろ踏み込んではいけない領域に片足突っ込んでる気がするんだけど。

 にしても、紫月は翠月の前だと割と表情豊かになるな。

 と言ってもベースはいつもの仏頂面だから、慣れてねぇとそんなに分からねえけど。

 

「確かに、着痩せするタイプデスよネー、シヅクって」

「ええ、一緒にお風呂入った時にぷかぷか浮かんでたりするんですよ、コレ」

「ひゃうっ!?」

 

 紫月の両胸が翠月の両手によって形を変えながら、とんでもないことが暴露された。

 うん、聞かなかったことにしておくか。つーか、浮くのかアレって。脂肪の塊だから?

 

「Really!? うぅ、羨ましいデス!」

「ちょっと何暴露してるんですか、みづ姉!? というか、手を離してください!」

「私ももう少しあれば……悔しいデス」

「ブラン先輩はモデルのようなスレンダーさがウリじゃないですか。先輩に憧れる女子、結構いるんですよ? 金髪碧眼のセットですし」

「い、いやぁ、照れマスね……」

 

 そうなのか……中身がこんな迷探偵だったら残念がるだろうな、その子達は。

 

「みづ姉……そ、そろそろ手の方を、ひゃぅ……」

「あら、ごめんね、しづ。しづの触り心地は最高だから」

「も、もう……みづ姉ったら……」

 

 はぁ、と紫月は顔を真っ赤にしながら窘める。が、やはり本気で怒りはしない。

 姉妹仲は本当に良いんだなあ、と常々思う。

 まあ、良すぎる気がしねぇでもないが。

 というかアレってむしろ――シスコン、翠月さんの方じゃねえの……。

 じーっとじゃれ合う3人組を見ていると、紫月の鋭い声が飛んできた。

 

「白銀先輩も、変な事考えてないですよね!」

「言いがかりだ!!」

 

 取り合えず、やましいことはこの際排除しよう。頭の中から。

 心頭滅却すればレッゾもまた涼し、だ。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『ひゃっほーい、泳ぐのは最高であります!』

『ぎゃははははははは!! 血が騒ぐぜ!! 海が覇王である俺様を呼んでいる!』

 

 クリーチャーは実体化して泳げるのか。

 シャークウガはともかく、チョートッQまでとは驚きであった。

 どうやら魔力生命体である以上、水で故障することもないんだとのことであるが。しかも、他の客には見えていないようだ。

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 俺は早速、再び面倒ごとにぶち当たっていた。

 

「折角デスし、泳ぎで勝負しまショウ!」

「マジかよ」

 

 俺はげんなりしながら言った。

 この期に来てまだ泳ぐとか言いますか、この娘は。

 いい加減、じりじりと照り付ける太陽が憎たらしくなってきた頃だというのに……。

 

「ふふん、コレでも泳ぎには自信があるのデスよ! 男子にも負けまセン!」

「確かにブランは体力あるからな」

「そうデス! このスリムボディは日々の鍛錬と探偵業務の賜物デス!」

「ああ、だけど探偵業務より日々の部活動をちゃんとやろうな!!」

 

 最近は俺達も探偵業務紛いのことがメインになってるけど、あくまでも俺達はデュエマをする部活、デュエマ部であることを忘れるなよ!?

 いや、最早今更か……。

 

「というわけで勝負デス、アカル! あの向こうの桟橋までどっちが先に着くか競いまショウ!」

「何でそうなるんだ……」

「夏と言えば海! 海と言えば泳ぎ! 泳ぎと言えば勝負!」

「シャーロックホームズもビックリの謎理論!! おめぇの頭が迷宮入りしてるよ!」

『かめー、そりゃあワシがおるからのう』

「ブラン先輩の頭が迷宮なのは仕様ですよ、ワンダータートル」

 

 しかも、この暴走探偵は一度こうと決めたら、もう絶対に曲げることはしない。 

 男子の俺に挑むってことはかなりの自信があるんだろうし、そもそも俺もあまり速く泳ぐのは得意ではないのだ。

 

「どうデスか? シヅクとミヅキも参加しマスか?」

 

 などと抜かして暗野姉妹をも巻き込もうとするこの迷探偵。

 しかし、

 

「私は結構です。私、泳ぐのはそこまで得意ではないですし、絶対負けます」

「わ、私も……競争になると自信がないかなぁって」

 

 流石にこの2人はパスしたようだった。

 

「それじゃあ、2人での真剣勝負デスね!」

「はぁ……これ、俺にメリットねぇよなぁ」

 

 と言いつつ、一応持って来たゴーグルを目に掛ける。

 彼女も同じだ。

 ……掛けたのが射撃用の防護ゴーグルだったのは最早突っ込むまい。何でいちいち残念なんだ、この探偵は。

 

「それでは、私達が審判をしましょう」

「じゃあ、私はスタート地点の方に行ってますね!」

「では、私がどちらが先に着いたか判定します」

 

 そんなわけで、俺とブランで泳ぎによる一騎打ちが始まってしまった。

 泳法はクロール。まあ、一番これがシンプルだしな。

 そして、遠さは凡そ20m程。桟橋の紫月が立っているところに先に着いた方が勝ちだ。

 

「それでは、位置について――」

 

 翠月さんの掛け声とともに、俺は水面に手を這わせた。

 ブランも同じだ。

 何であれ勝負は勝負。取り合えず、勝たなきゃ悔しいだけだ!

 

 

 

「ようい――ドン!」

 

 

 

 弾かれたように俺達は水の底の砂場を蹴り上げた。

 同時に、水の中へ潜るように両手を尖らせて勢いよく進んでいき、失速しかけたところで足をばたつかせ始める。

 右、左、右、左、と手で水を掬い、そして身体を前へ押し上げるために後ろへ捨てていく。

 そして、流石ブラン、言うだけあって俺を追い上げてきた。

 成程、やはり水が身体と同化していくこの感覚、心地がいい。

 とにかく、速く前へ前へ前へ――

 

「おっ!?」

 

 ――しまった。

 完全に前方に人が集まってきている。

 あれを避けていくのは至難の業だ。

 仕方ない、迂回して行くしかねぇ――

 

 

 

「何だ貴様。こんなところで何をしている」

 

 

 

 避けた先に突如、ぬうっと現れた人影。

 寸前で俺は海に潜るようにして泳ぐのをやめたのでぶつからずに済んだが、心臓が止まりそうになった。

 気付けば、桟橋の方でブランが「やったデース! 私の勝ちデスネ!」と宣っている。

 くっ、悔しい……!

 しかも、その人影の正体は――

 

 

 

「く、黒鳥さん……それはこっちの台詞なんすけど……」

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