学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第4話:ディティクティブ・トリック─探偵ブラン

 本日の放課後、俺は憂鬱だった。

 実に憂鬱であった。まあ、悩みの多い現役高校生に憂鬱というのはさして珍しい事ではないのだが――

 

「ぶわっはっはっはっは!! ようこそカモーン、諸君!! 我々科学部の週イチサイエンス発明ショォ、はっじまっるゾォ!!」

 

 くじ引きで無理矢理各クラスから集められた観客達による、なけなしの拍手が漂う放課後の裏庭ステージには、もじゃもじゃアフロの白衣の男がマイクを使ってそんな演説をしていた。

 かく言うこの俺・白銀 耀も昼休みのくじ引きでハズレを引いた結果、今こうしてこの場に観客として立っている。

 科学部――とは言うが、その実態は発明部と言っても良いだろう。こうして生徒を募り、週に1回自分たちの発明品を発表する場を設けているのだ。

 

「何でありますかぁー? 発明って」

「何て言ったって、そりゃ――って」

 

 俺は押し黙った。ふと、声のした方を向く。

 そこには、あの実体化したクリーチャー・チョートッQの姿があった。正直ビビった。何で出てきてるんだコイツ。

 周りに聞こえてるかと思ったが、幸い普通の人間にはクリーチャーの声は聞けないし姿も見えない。が、やはりこうやって人混みの多いところで話しかけられるのはやはり慣れない。余り好き勝手な事はしないでほしいのだが。

 

「おい、勝手に話しかけてくんじゃねえ、ビビっただろ」

「いい加減、慣れてくださっても良いと思うでありますよ」

「ざっけんな、落ち着かねえわ」

「で、その発明品は何でありますか?」

「……まあ、はっきり言って――ポンコツだな」

「言い切ったであります!?」

 

 傍から見れば1人事のでかい変人に見えるこのシチュエーションだが、敢えて何度でも言おう。その内容は例外無く発明品(ポンコツ)である。発明品と書いて、ポンコツである。

 それがまともだった覚えは、はっきり言って無い。例えば電子レンジに何故か鉛筆削り器を取り付けた奴を発明品と言ったり、カーテンのシャーッてなるやつがアレな時限定で最寄りのラーメン屋に買いに行ってくれるお使いアンドロイドだったり(当然だがラーメン屋にカーテンのシャーッてなるやつは売っていない)、掛けると目の前の人がズラか自毛かを即座に判定してス〇ウターの如くレンズに映し出す眼鏡など(尚、部長はこの発明品が元で自分のハゲがバレた)etc……このようにまともな発明品が出来た覚えが無いのだ。

 それでもいいなら、物好きだけ見に行けばいいのであるが、問題は各クラスから必ず1人は観客としてやってくるように勝手に義務付けていることだ。

 そんでもって、本人たちは謙虚に発明だけやっている熱心な奴等ならまだ好かれもしたろうが、問題はもし来なければそのクラスに嫌がらせを行っていることか。その嫌がらせというのが、そのクラスの教室に朝早くやってきて生卵を投げつけるというものであり、やたらと陰湿なのだ。後、食べ物を粗末にするんじゃねえ。

 

「……ポンコツかどうかは、私達が決めることじゃないと思いマスがネ」

 

 ……。

 振り返る。妙に歯切れの良い声、振り向くと見慣れたブロンドが目に入った。

 

「ブ、ブラン……お、お前も来てたのか」

「んー? お前”も”ってどういう事デスか?」

「あ、いや、何でもねえ、こっちの話」

「とにかく、あの人たちの発明デスケド、シャーロック・ホームズの言葉にこういうのが――」

「いや、そういうのは良いから」

「むぅ」

 

 不満げに頬を膨らませた少女――ブラン。

 どうやらこいつも来ていたらしい。

 

「おやおやあ、いつも”部室”とやらで一緒に居る彼女でありますなぁ?」

 

 新幹線野郎のカードをこっそりデッキから取り出し、強く引っ張ってやると悲鳴が上がる。お、痛覚あったんだな、このカードに。

 それはともかく、ブランの事だし彼女もくじ引きでハズレを引いてやって来たのだろう。

 と思いきや――

 

「ま、発明は置いておいて、科学部に関するちょっとした情報を手に入れてデスネ……潜り込んでいたのデスヨ」

「噂ァ?」

「Yes。これでも私、”探偵”ですノデ!」

「オイオイ、探偵を部に入れた覚えはねーぞ」

 

 確かに探偵と言うのは、本来は諜報だとかそういったことを請け負うもの。

 推理小説や漫画にあるような、推理と言う名の大立ち回りを演じることはまずない。いや、こいつのやってることも大立ち回りだけど。つかこいつ、本当に将来探偵になるつもりか。

 

「はあ、そうか。気になることっつーのは?」

「科学部の部員が、何時に帰っているのか知っていマスカ?」

「7時半、じゃねえか? 最終下校時刻の――」

「No。違いマス。About……10時、くらいデスヨ」

「! マジかよ」

「去年の夏頃からこういう状態が続いているらしいデス」

 

 そいつは驚きだ。

 本来、最終下校時刻は7時半とうちの学校は決められてはいるが、どうやらそれを守らずに部室という名の学校の裏山にある工房に籠っているらしい。倉庫を改造した場所で、広さはそれなりにあるというその工房だが、俺はそこで量産されているのはてっきりゴミばかりかと思っていた。

 それに、1人だけではない。科学部の生徒全員が最近はそんな状態らしい。

 顧問の先生は、実質いるだけの状態なので機能していないらしく、生徒会も何故か口出ししていなかったらしい。

 

「それともう1つ――」

「?」

「科学部のミョーな噂、デスヨ。本当に知らないんデスカ?」

 

 ブランは俺に耳打ちした。

 ゴミを意気揚々と解説している科学部の部長の事など俺は既に興味はなく(いや、別の方面で興味は持ったが)、それに耳を傾けることにする。

 

「最近、その科学部の工房から変な音がするのデス」

「音?」

「工房には使用中の間、鍵が掛けられていて部外者が勝手に入ることは出来ないのデ、数日間私は部活が終わった後に工房を張り込んでいたのデスヨ」

「おい、また危ねぇ事をするな」

 

 仮にも女の子、それもハーフ故に目立った容姿のブランがそんなことをしていたとは。

 こいつ、もうちょっと危機意識を持て。お前のやってるそれは、アロハシャツ着た忍者が屋敷に忍び込んでるのと同じくらいリスクが高いぞ。

 

「そしたら、何か……変な音がするのデス。とても大きな音が……それも呻き声、のようなものデス。それで、窓を覗いたのデスガ、くっきりとsilhouetteだけは見えマシタ」

「何だよ」

 

 ごくり、と息を飲むとブランは言う。

 

 

 

 

「それは大きな、ロボットのよう――デシタ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「へえ、科学部が変な物を作ってる、ねぇ」

 

 部室でデュエマをしているのは、オーバーワークが原因で練習禁止になった幼馴染の花梨と、後輩の紫月だった。俺の話を聞きながら、花梨は頷きつつもこなれたカードさばきでデュエルを進めていく。

 花梨は、割とすぐにデュエマ部に馴染んだ。というのも、顔を知らないのが後輩の紫月くらいで、その彼女ともすぐ打ち解けた。どうやら紫月は、自分を満足させてくれる腕のデュエリストと戦えるのが表情には表れていないが楽しいらしく、寝ることはめっきり減った。

 さて、彼女が使っているのは、あの日暴走した彼女を倒した後に散らばっていたカードで組んだドギラゴンデッキ。どうやらもう、実体化する力は無いようなので、デュエマを復帰するらしい彼女に俺の方からプレゼントという形で渡しておくことにしたのだ。

 するとめきめきと彼女の腕前は上がっていく。いや、デッキが強いのもあるのだが、彼女自体が前のめりな性格だからか。

 

「――あ、ちょっと待って。いけるじゃん、これ――よっし、《ハムカツマン(バスター)》でダイレクトアタック! 勝った!」

「むぅ、私の負けです。刀堂先輩は強いですね」

「いや、そうでもないよ。前のあたしのデッキじゃ、勝てなかったかもしれないし」

「刀堂先輩とデュエルするのは、白銀先輩とよりは楽しいです。だから問題ありません」

「何で!?」

「ちなみにブラン先輩は、使ってるデッキにしっかりと拘りを感じるので嫌いじゃないです、白銀先輩と違って」

「オイ!!」

 

 何で紫月の俺に対する評価はこんなに低いんだ。

 そんな俺の悲痛な心の叫びはともかく、話題はブランのデッキにすり替わった。

 

「確かに趣味を感じるよね、ブランのデッキ。わざわざあのカードを入れてるってところにさ」

「あいつ、そのカードがあるからデュエマを始めたようなものだしな」

 

 ブランは大好きな推理小説の登場人物や作者の名前を冠したカードがあるという理由で、デュエマに釣られたようなものだ。

 その辺りは色々あったのだが、また今度話すとしよう。

 

「ふう、少し休憩! やっぱ頭を使うと疲れるわあ……で、耀。あんな山に工房とかあったんだ」

「元は倉庫らしいな。科学部が改造したんだ」

「ロボットですか……正直興味ないですね。調べるならブラン先輩と白銀先輩だけで行ってください。見間違いの可能性もありますから」

「でも科学部の人達、遅くまでそんなのを作るために残ってるんだ……」

「”そんなの”、ねえ……まあでも、あれがあいつらにとっては楽しいんだから、良いだろ。まあ、夜遅くまでやってるのは不安だけどな」

 

 発明発表会と嫌がらせだけは勘弁してほしいが、本当人に迷惑さえ掛けなければ後は自己責任。

 基本、俺はそういうスタンスだ。逆に言えば、今の科学部の活動には疑問を覚えている。

 そもそも、発明品と称したスクラップ自体は科学部の伝統のようなものだし今更だ。だが、昔から科学部が遅くまで居残りをするような部だったかというと――そうではない。去年の夏からというと丁度前の部長が引退して今の部長になったころだから、その時に方針が変わり、無理矢理他の部員を残してる可能性だってあるのだ。

 

「お待たせしたデース!!」

 

 扉を乱暴に開けて入ってきたのは、鹿追帽(ディアストーカー・ハット)二重マント(インバネスコート)、そしてシャボン玉がぷかぷか浮いているおもちゃの煙管を手に持ったブランだった。

 部室の視線は一気に彼女に注がれる。

 その姿は、さながら女子高校生版・シャーロックホームだった――

 

「おめーは一体何処のミルキーなホームズだァァァ!! 何でンなモン着て来てんだよ!?」

「何で、って今から科学部の工房に乗り込むからデス!!」

「乗り込むゥ!?」

「今までcheapな発明しかしてこなかった科学部が、いきなりBigなロボットを開発するなんてあり得ません! 何か裏があるはずデス!! それに、その……部員が夜遅くまで帰ってこないのも、心配デスし」

「最後言い淀んだぞコイツ、大義名分が大義名分になってねぇ!! 興味だ!! 興味本位の行動だよ!!」

 

 ともかく、こいつが自分の知識欲求を満たしたいがために行動しているのは分かった。そんでもって、その帽子とコートはどこから持ってきた。

 

「そこでワトソン……Youにも協力してもらいマース」

「ワトソンってもしかして俺の事じゃないよね? ねえ、ブランさん、何で俺の腕引っ張ってんの離して、俺ワトソンじゃな――ちょ、やめ、やめろおおお!」

「あ、あはは……それじゃあ行ってきてね……」

 

 苦笑いを浮かべて手を振る花梨に、机に突っ伏す紫月。

 どうやらこの部室に俺の味方は誰一人としていないらしい。

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