学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
砂浜に上がり、ブラン、暗野姉妹の下に黒鳥さんを連れていくと彼女達もびっくりしていた。
「師匠!?」
「何で此処にいるデース!?」
「やれやれ、そんなに驚かなくても良いだろう? にしても白銀、貴様婦女子をそんなに侍らせてどうした? 全世界の非リアに対する嫌味か? ハーレム願望を持つのは良いが、一歩間違えたら血の雨が降る。覚悟しておけ」
「言い方!! 誤解を生むんで!!」
黒鳥レン。以前、俺達デュエマ部(と桑原先輩)に特訓をつけてくれた人。
紫月の師匠であり、翠月さんの師匠でもある彼は元・デュエリスト養成学校の生徒である凄腕デュエリストだが、何故か今は美大生として芸術の道を進んでいる。
そんな彼が何故――
「……レン、どうしたのよ?」
ひょこっ、と彼の影から少女が飛び出す。黒鳥さんに何処か似た風貌のボブカットの黒髪少女。
黒に白いフリルが付いたワンピースのような水着を身に纏っており、どこか子供っぽい。
あれ? 確かこの子って――
「貴様等にはまだ詳しく紹介していなかったな。彼女は従妹の
「あ、あれ、お兄さんとお姉さん達、こないだうちに来てましたよね……? よ、よろしく」
何処か警戒されてる?
人見知りなのだろうか。彼女は黒鳥さんの後ろに隠れてしまった。
「俺はデュエマ部の部長、白銀耀だ。よろしくな」
「うん、知ってます。レンから聞いたから……確か誰かにボロクソに負けてそれで助けを求めに来たっていう」
「合ってはいるけどその説明で俺の傷に塩塗りたくるのもうやめませんか、黒鳥さん!!」
「間違ってはないから良いだろうが」
子供に何てこと吹き込んでるんだこの人!!
言い方が悪いんだよ毎度毎度!!
「こっちがレンの弟子の紫月さんと翠月さん。で、紫月さんは重度のシスコンで――」
「ちょっと師匠、後で表出ましょう、そうしましょう」
「間違ってはいないだろうが」
「しづ、落ち着いて! デッキケースを振り上げないの! まともに角で殴ったら師匠が怪我するわ!」
ちょっと!! 止めて!!
アレ誰か止めて!! 血の雨が降るぞ!!
デッキケースの角を黒鳥さんに向けようとする紫月を何とか抑えつけた。
「ブランさんは耀の同級生、ハーフだって言ってました。ぶっちゃけ一番まともだって。ルー語さえ無ければ」
「Why!?」
「間違っていないだろう?」
「酷いデス!! 私は正真正銘、イギリス人と日本人のハーフデス!」
「あれ、そうだったのか。それはすまない」
「デース!?」
相変わらず悪意があるのか分からないけど棘がある人の説明だなオイ!!
ものの見事に俺達デュエマ部のメンタルを削り取っていった!! 流石闇文明使い、えっげつねぇなぁオイ!!
バロム・クエイクよりえっぐいや!!
「そうだ貴様等丁度いい。ビーチデュエル大会に出るのだろう?」
あ、露骨に話逸らしてきた。
全員の殺気を受けても尚マイペースとクールを貫き通すのか、すげぇなやっぱりこの人。
しかし。この露骨に逸れた会話は当然ここでは終わらなかった。
「それまで時間があるから
「……え?」
くるり、と振り向くと玲奈が怒ったように言った。
「あ、あのね、レン! あたしは別に1人でも、全然大丈夫だし! というか、海に来てまで子供扱いするのやめてよね!」
「すぐに迷子になるだろうが、貴様は。大人しくしてろ。僕は、少し用があるから外す」
「ちょっと! 自分から連れてきておいて、何よそれ!」
「彼らに遊んでもらえ。”子供はな”」
「ム、ムキーッ!! 子供じゃないわ!!」
その怒り方はむしろ子供っぽいと思うんだけど……。
成程、確かにちょっと背伸びしてる感があるな、この子は。
「用って何なんですカ?」
「今回のビーチデュエル大会、僕も運営側に係として雇われている身なのだ。夏休み、大学生はバイトにも勤しむもの。これはその一環に過ぎない」
「そうだったんすか……」
「まあ、これは友人に無理矢理連れて来られたからなのだが……僕はもう、あまり表舞台に出たくはないのでな。というわけで、玲奈を頼む。1人にするのは不安だから、作業でも手伝わせようと思ったが、気が変わった。貴様等なら丁度良い」
「あ、はい、そういうことなら是非」
「頼むぞ」
そう言い残すと、彼は手を振ってその場を去っていった。
こうして、俺達は子守(と言えば間違いなく玲奈ちゃんに怒られるのだろうが)をすることになったのである。
まあ、たまにはこういう事も良いだろう。
「じゃあ、よろしくな、玲奈ちゃん」
「ちゃん付けはやめて。子供じゃないんだから」
「あ、ハイ……」
※※※
「へえ、玲奈さんは中学2年生なのですね」
「うん。北第一中学のね」
「やっぱり隣の県だな」
海の家の近くにあるテーブルスペースで、取り合えず自己紹介を兼ねて俺達は話をしていた。
今回、親に連れられて隣の県からはるばるここまでやってきたのだから、海はかなり楽しみにしていたようだ。
「お兄さん、お姉さんたちは何処の高校なの?」
「鶺鴒学園高校だ。何の変哲もねぇ、普通の学校だけどな」
「デュエマ部があることを除いて、デスけどネ!」
「デュエマ部? やっぱりお兄さんとお姉さんたち、部活でデュエマとかやってたんだ」
「と言っても、部員は私と白銀先輩、そしてブラン先輩の3人しかいませんが」
「私は美術部だからねえ」
「で……強いんですか?」
「去年で強かった人が大分抜けちゃったからなあ……部としては大幅弱体化」
でも個人の話なら、どうなんだろう。
最近大会とかあんまり出てなかったから、イマイチ自分の実力を測りかねている。
確かに魔導司とかクリーチャーとか相手に戦ってたから、それなりに上がっているとは思いたいけど。
……いや、まだまだだろ。ジョーカーズも完全に使いこなせたとは言えねえし。
「で、個人の話なら俺とブランはまあまあ、紫月は一番強いぜ。何せ、お前の従兄の弟子だかんな!」
「レンの……弟子」
「そんなに持ち上げないでくださいよ」
「でも現に、俺らの中では紫月が一番強いだろ」
「一概には言えませんよ、強いかどうかは」
「あ、あのっ!」
がばっ、と立ち上がると玲奈は言った。
「紫月さん、何かレンの弱点とか知ってますか!?」
「え」
紫月も、翠月も、ブランも、そして俺も。
その場に困惑したような空気が流れる。
「え、えと、それはまた……どうして」
「悔しいんです! 私の従兄……レンとは、あの美学野郎とは小さい頃から度々会ってきましたが、ずっと私のことを子供扱い!」
美学野郎呼ばわりか。
「子供扱いって言うのは、具体的になんなんだ?」
「例えば、事あるごとに口うるさく小言を言ってくるし、会う度に説教臭いし、一緒にレストランに行った時に勝手にお子様ランチ頼むし! いや、好きなんだけど、そこはもう中二だし普通のメニューを勧めてくれてもいいと思うの! あたしだって、もう子供じゃないんだから!」
「あーうん……」
十中八九、この子供っぽい性格が原因じゃないかと思えてくる。
「それが今度はずっと家に居着いているんだから堪ったもんじゃない! 気に喰わないったらありゃしない! 得意なデュエマで見返そうと思ったことは何度もあるけど中退したと言ってもデュエリスト養成学校に居たあいつと養成学校の受験に落ちたあたしじゃ、実力は天と地の差……昔から、あいつに勝ったことは1回もないから……」
「師匠は、本当に強いですよ」
紫月は語るように言った。
そりゃそうだ。弟子として何度も黒鳥さんにぶつかっていったんだ。
前に彼女は、黒鳥さんを倒すために墓地ソースを組んだと話していたし、それはこの間の戦いで俺を大いに苦しめた。
だが、黒鳥さんは既に墓地ソースさえも克服しており、結局勝てなかったというのだ。
「相当な修羅場を踏んだと思わせる経験と勘、そして知識に基づいた構築。そして勝負運。全てにおいて師匠は高水準のデュエリストですから」
「うっ……」
「確かにそうデスね……信じられない程デス」
「そ、それじゃあ……やっぱりデュエマであいつを見返すことはできないのかぁ……」
机に突っ伏す玲奈ちゃん。
かなり黒鳥さんのことをライバル視してるんだろうなあ……。
「で、でも、諦めない! 諦めたらそこで終わりっ! あたしはめげないわ! 今日のビーチデュエル大会で優勝して、あいつに子供じゃないって認めさせてやるんだから!」
「その意気ですよ」
「どうやら、諦めは悪いようで何よりだぜ」
「デスね!」
「お兄さんとお姉さんたちも参加するんでしょ? あたしも参加するんです。ただ、借り物のデッキ、なんだけどね……」
「借り物?」
「うん。レンの友達が遊びにきた時に貸してもらって。……色んなデッキに触れる練習も兼ねて、これで一度は大会に出ると良いって言われたんです。本当なら自分で組んだデッキで出るに越したことはないんだけど、調整中だったから……」
「他人のデッキでも、使う人が違えば違う挙動がある。私は大いに意味があることだと思いますよ。その中で、自分に合うデッキを探して、自分でまた組めばいいのではないですか」
紫月は、コピーデッキや同意さえあれば他人の作ったデッキを使うことを否定はしない。
そこに自分なりの戦法や、学ぶものがあるなら良い、とのことだ。
成程な。よく考えてみたら、俺のジョーカーズも元々貰ったようなもんだし、自分のスタイルを固めるきっかけってのはどこかで必要なのかもしれない。
「……ありがとうございます。あたし、頑張りますから! それに私、一応目標はできました!」
びしぃっ、と玲奈は俺に指をさす。
多分、一流のレディは人に指差したりしないんだろうけど、敢えて何も言わないでおこう。
「レンに認められたプレイヤーの耀さんっ! あなたには負けたくないからっ!」
「……っ」
認められた、か……正直実感は無い。だけど、黒鳥さんが家で俺の事をどう言ってるのかは分からないからな。評価は概ね良い……のか?
まあ、だけどそれで驕るつもりはないし、売られた勝負は買うしかない。
俺だって、もっと強くならなきゃいけないんだ。
「お兄さん、成長するのがとっても速いってレンは言ってた。じゃあ、お兄さんを倒したら、レンにも近づけるってこと――お兄さんを倒して、レンを、見返してやるんだから!」
「ちょっと待ってくだサイ! 私もいマスよ!」
「そうですね。私の事を忘れてくれては困ります。精々、一回戦落ちしないように」
「ふふっ、皆やる気みたいで良かったわ。私も応援してるわよ」
「ああ、戦えるのが楽しみだ!」
※※※
『それでは、第一回! 古湊町海水浴場・ビーチデュエル大会を開催いたします!』
司会のポニーテールの女性がマイクを片手に持って砂浜に集まった出場者たちに手を振る。
モデルのようなプロポーションにキレッキレの声が様になっている。
全員が水着で参加しなければならない、という変わったルールのこの大会。皆水着姿で対戦するというのもなかなか滑稽な話だ。
成程。だからビーチデュエル大会。
『マスター。何で水着でデュエルするのでありますか?』
俺も聞きてぇよ。
「……夏だからだよ」
適当に答えちまったじゃねえか、俺。
これも夏だからか。仕方ないな。
「おい司会の姉ちゃん、レベル高くねぇ?」
「ああ、綺麗だよな……」
「そんなこと言ったらさっきもあっちに可愛い子見たぞ」
「マジかよ。参加者の中に? ナンパしに行こうかなあ、後で」
「アホ、古ぃーんだよ」
そんな会話が聞こえてくる。確かに司会の女の人はなかなか綺麗な……グラビアアイドルか? もうあれは。
今日は水着三昧だな、本当。海だから当然か。
「知ってますか? 先輩。あの司会をやっている人は如月コトハさんと言って、海戸の方で名を上げ、プロを目指しているデュエリストなんだとか」
「そうなのか、紫月」
紫月がそんなことを話しかけてくる。となれば、やはりデュエリスト養成学校の人なのかな。プロを目指してるってことは卒業生か?
「それにしてもさっきは私達の水着にちらちら目をやってたのに、今度はあの人に視線が釘付け。本当に先輩は節操がないですね」
「別にそんなことはねぇよ。他の奴が騒いでるだけだろ」
「……ふぅん」
おい、何だその顔は。何か誤解していないか。
既にわくわくして闘志100%のブランは既にデッキの最終調整を行っていた。かく言う紫月も、話しながらテーブルでデッキをシャッフルしている。
こいつら既に準備完了ですか、そうですか。
「では、先輩。大会で会いましょう」
「ああ。会えると良いな」
そう言葉を交わし、俺達は別れた。今はライバル同士。倒すべき相手だ。
俺も気を引き締めていかねぇとな。
※※※
そんなこんなで大会が始まった。形式はトーナメント制で、一回負ければそこで終了。
優勝者には、新発売のパックのBOXが貰えるんだとかなんとか。
だから皆張り切って練りに練った自慢のデッキを持っていってるのだが――
「《翔天》の効果で、《大迷宮亀 ワンダータートル》に攻撃誘導デス! バトルに勝ったから山札を捲って……《フェイウォン》をバトルゾーンに出しマス!」
「うわああ!! 2体攻撃誘導持ちが並んだ、詰んだぁぁぁ!!」
「墓地が6枚以上あるため、G・ゼロで《クロスファイア》を出します」
「ぎゃあああ! 今引きかよォ!?」
「うおおお!! 何でこんなところで《バトライ閣》の効果が外れるんだぁ!!」
「おい、あの水着のJKレベルパなくね?」
「いや、あっちの大学生くらいの姉ちゃんも良いぞ」
と、このように悲喜こもごものビーチデュエル大会。
俺もジョーカーズを駆り、勝ち進んでいく。
20人以上いる参加者がトーナメントで水着を纏い、互いを蹴落とし、勝ち進んでいくが、俺と紫月も一先ず2回は勝つことが出来ていた。
「そっちも終わったみてーだな」
「何とか。先輩も苦戦しつつですが、勝ってましたね」
「……ああ、何とかな。それで、ブランの対戦は?」
「まだ終わってないようです。確か、対戦カードだと――む」
対戦カードには、ブランとレナという名前が。早速知り合い同士でカチ合ったか。
おまけに、この試合で勝った方が次に俺と対戦することになっている。
こうしてはいられない。急いで、その対戦ペースに向かって観戦しようとする。
のだが――
「……う、うええ、攻撃誘導じゃあ防ぎきれないデース!」
時既に遅し。
ブランは負けており。
ふぅ、と緊張が解けない溜息をつく玲奈の姿がそこにはあった。
「ありがとう……ございました。は、はぁ……勝てたぁ」
「良いデュエルでしたヨ、レナ! その調子で勝ち上がってくだサイ! デモ……悔しいデス……」
なんてこった。
ブランを伸せるだけの実力はあるのか。
勿論、弱いと思っていたわけじゃない。だけど、それ以上に彼女の迷宮戦法を打ち破れるだけのデッキと、それを使いこなす技量を持っているようだ。
『マスター、なかなかあの小娘、油断ならないでありますよ!』
「ああ、同感だぜ。やっぱ、強い人の近くにいると自然に強くなるってのはこういうことだな……敵対心や対抗心だけじゃない。黒鳥さんから、知らねえうちにデュエマのいろはを叩きこまれてきたんだろうな」
「先輩。お伝えしたいことが」
俺とチョートッQが話している中、紫月が割り込んでくる。
「何だ?」
「次の対戦カード……先輩と玲奈さんですよ」
「マジかよ」
「勝つ気で挑まないと負けますよ、あれは」
「たりめーだろ。警戒するに越したことはねぇ、か……」
ブランは決して弱くは無いし、メタリカの攻撃誘導戦法も強力だ。
だけど、それを圧倒したという事は、それなりに玲奈のデッキも強かったし、彼女のプレイングスキルも高いことがうかがえる。
流石、黒鳥さんを倒す為にデュエマを続けてきただけはある、ってことか。
「耀さん! 次は、耀さんが相手! 私、全力で頑張りますから!」
そんな声が飛んでくる。
アナウンスが掛かり、準々決勝の準備に入った。
どうやら、もうここまで来たらやるしかないらしい。
「先輩。くれぐれも気を付けてください」
「ああ。勿論だ!」
俺はデッキケースに手を掛けて、そこから40枚の札を取り出す。
そして、デュエルテーブルでブランを今しがた屠った少女と相対した。
『それでは、準々決勝の試合を開始します! 各選手は配置についてください!』
「……よし、玲奈。勝負だ!」
「いきますからね! 耀さんを倒して、レンにちょっとでも認めてもらうんだから!」