学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
俺と桑原先輩のデュエル。互いにビッグマナ系統のデッキであるが、桑原先輩が使うそれはグランセクトの超高パワークリーチャーばかり。
俺の方から先に仕掛けて倒せるようにしないと……。
「2マナをタップ。《一番隊 ルグンドド》を召喚」
「《ルグンドド》……!?」
「これで俺のグランセクトのコストは-1される」
少し俺は驚いた。
グランセクトは大型のクリーチャーが多い種族。
だから、ちまちまとコスト軽減をする《ルグンドド》は一番隊サイクルじゃ不遇だと思っていたんだが……。
「俺のターン、2マナで《ヤッタレマン》召喚だ! 効果で俺のジョーカーズのコストもマイナス1ですよ!」
「なら俺のターン。3マナで《タバタフリャ》召喚だ! 此奴の効果で、俺のパワー12000以上のクリーチャーのコストはマイナス2される!」
「げっ……合計コストマイナス3……!」
「そうだ。これで、俺の次のターンに出せるクリーチャーは7。ターンエンドだ」
とにかく、相手が高コストのクリーチャーを出してくるのならば、俺は先手を打ってそれを封じられるように立ち回っていけばいいだけだ。
「3マナで《フェアリー・クリスタル》。この効果で、マナを山札の一番上から1枚置き、それが無色カードだったならもう1枚増やせる! 更に2マナで《洗脳センノー》召喚! ターンエンドです!」
「ほーう。だが、大したことはねぇな。その程度の軍勢なら、後から幾らでも塗りつぶせるぜ。見せてやるよ、芸術の華!」
《洗脳》で巨大クリーチャーの連鎖的な展開は防いでいる。
だけど、先輩の動きが不穏だ。
「まず、俺は2マナで《ジャンボ・ラパダイス》を使用! その効果により、山札の上から4枚を表向きにし、パワー12000以上のクリーチャーを全て手札へ加える!」
「パワー、12000以上!?」
「ああともよ! 手札に加えるのはこいつ等だ、出てこいテメェら!」
表向きになったカードは、《ブンドド・タンク》、《自然星人》、《ボントボ》、そして――《ハイパー・マスティン》の4枚だ。
「来たぜッ!! さあ、パワー12000以上の3枚を手札に加えるぜ! ターンエンドだ!」
「手札が一気に3枚……!」
「驚くのはまだ早いぜ! 震えて待ってなぁ!」
「俺は、《ニヤリー》を召喚……! その効果で山札の上から3枚を捲って、《バレット・ザ・シルバー》、《バイナラドア》、《ムッシュ・メガネール》を手札に加えてターンエンド……!」
まずい。
手札が一気に増えた上に、コスト踏み倒しも万全のようだ。
『マスター、何故展開を行わないのでありますか!?』
「無理だ。グラセクデッキなら、《パンプパンプ・パンツァー》が入ってるかもしれねぇし……」
『でも、味方を巻き込む可能性があるでありますよ』
「……それもそうか」
「さてと……俺は5マナで《自然星人》を召喚!」
言った先輩が繰り出したのは、毛むくじゃらで3つ目の怪物。
そして、同時に彼は山札の上から大量のカードをどさっ、とマナゾーンに置いた。
「此奴の効果で、俺はマナゾーンのカードを倍に増やす。俺のマナはこの時点で5枚。よって、5枚をマナゾーンへタップしておくぜ!」
「マジかよ……!」
既にこの差は圧倒的だ。
俺のマナは6枚、対して桑原先輩は既に10枚――!
「……怖いのは、《ハイパー・マスティン》か……! なら、こっちだって考えがあるぜ!」
俺がタップするのは7枚のマナ。
《ヤッタレマン》の効果でコストは1軽減されている。
だから――
「先輩! コレが俺の
「……成程。しかも、手札には《バレット・ザ・シルバー》。そいつでコスト踏み倒しを行うつもりか」
「そういうことですよ! ターンエンド!」
「……だがな、白銀。お前は何か勘違いしていねぇか?」
「え?」
「俺の切札は、《マスティン》だけじゃねぇんだよ」
にたぁ、と不遜に桑原先輩が笑った。
「考えてみなくても分かるはずだぜ! 俺だって、強くなってんだ! さぁ、受け止められるもんなら受け止めてみやがれ、デュエマ部部長・白銀耀! この抑えつけるには有り余る力、これが芸術だ!」
「先輩の、新しい切札……!?」
嫌な予感がした。
この状況で、確かに《ハイパー・マスティン》は意味を成さない――!
「ありのままに、そして高潔に! 芸術は、力の爆発である! 《ルグンドド》、NEO進化!」
5枚のマナがタップされ、《ルグンドド》の頂にクリーチャーが重ねられた。
これは、まさか――
「
現れたのは
以前、紫月が相対した切札とはまた違うカードだ。
「さあ、このありのままの大自然こそ、芸術! 《グレート・グラスパー》の効果発動! クリーチャーを1体選び、相手のマナゾーンへ送る! 対象は当然、《ダンガンテイオー》だ!」
「なっ!?」
「さらにこれだけじゃあ終わらねぇよ! コストマイナス2、5マナで《ゼノゼミツ》召喚!!」
「げっ……あいつって……!」
「効果で《洗脳》と強制バトルを行い、破壊!! これで邪魔は居なくなったなぁ、白銀ェ!! これ以上展開しても良いんだが、うっかりクリーチャーを召喚すると《バレット・ザ・シルバー》が出てきちまうからよォ!!」
「流石に見えてたらそうだよなぁ……!」
「さあ行くぜ! 《グレート・グラスパー》で攻撃するとき、マナゾーンからこいつのパワー14000よりも低いクリーチャーを場に出す!」
そう言って先輩は、さらにクリーチャーをマナから場の《ゼノゼミツ》に重ねた。
「枠に囚われるな。その絵筆は刃、美しくも獰猛に――《ゼノゼミツ》、NEO進化!」
今度は何を出すつもりなんだ!?
これ以上クリーチャーが出てきたら、対処がしきれないぞ!?
「
叩きつけられたカードの頂きに描かれたのはカミキリムシのようなクリーチャー。
こいつの効果は確か――
「こいつもパワー12000のT・ブレイカー。ただし、攻撃時に手札からパワー12000以上のクリーチャーを場に出せる!」
「!」
「さぁ、覚悟しろ白銀! この芸術の極み、耐えきれるもんなら耐えてみなァ!! 《グレート・グラスパー》でシールドをT・ブレイク! 創造の前に破壊あり、ぶち壊せ!」
割られる3枚のシールド。
手札に来たカードは――
「S・トリガー! D2フィールド、《Dの爆撃 ランチャー・ゲバラベース》を展開! この効果で、先輩はクリーチャーで攻撃するとき、クリーチャーを1体、マナに置かなければならない!」
「それがどうしたァ!! 《メガロ・カミキュロス》でテメェに攻撃! その時、《ゲバラベース》の効果で《タバタフリャ》をマナに置き――《グラスパー》の能力で、こいつよりパワーの低いクリーチャー、《ボントボ》を場に出すぜ! そして、《カミキュロス》の効果で、パワー12000以上のクリーチャーを1体、手札から場に出す!」
先輩の手札から1枚のカードが叩きつけられた。
「風を斬れ、俺の中の俺を野に放て――《ボントボ》NEO進化!」
まずい。
今度こそ、俺は逃れられない。
あのクリーチャーは――
「
※※※
会場のモニターには2人の戦況が映し出されている。
元々イベント用のものだったのを借りているらしいが、それで観客は耀と桑原のデュエルを見届けることが出来ていた。
そして、その圧倒的な展開力を前に気圧されていたのは耀だけではない。
観戦していた翠月もブランも花梨も、一種の戦慄を憶えていたのである。
「す、すごいです、桑原先輩! 美術の才能だけじゃない、デュエマもこんなに強いなんて……!」
「デッキが完全に種族よりで洗練されてるよ。同じくブースト戦術をとる耀の常に一手上を進んでいることで、遅れをとってない」
「本当、パワフルデスネ……自然文明って」
「……」
翠月と花梨が試合の展開に息を呑む中、紫月だけが面白くなさそうな表情を浮かべていた。
「どしたの、しづ」
「みづ姉」
「あれ、そういえば紫月ちゃん、何か機嫌悪そうだけど……」
「いえ、別に……何でもありませんよ」
自分としたことが表情に表れていたか。先程から、紫月は胸の中に込み上げるもやもやが隠せなかった。
察しが良すぎるのも考え物だ、と紫月は頭を抱えた。
さっきの花梨の耀に対する表情。あれは友人と見ている男に対するものではないことは確か。
これでも、相手の心理を読むことに関しては紫月はデュエルを通して学んでおり、通じていた。
おまけに、ただでさえ表情に感情が出やすい花梨。見れば一目瞭然だった。
「とにかく、勝てー! 耀ー! 絶対負けちゃダメなんだからねー!」
「桑原先輩! そのまま押し切っちゃってくださーい!」
「……やれやれ」
ほんの、からかい半分のつもりであった。
「刀堂先輩は、白銀先輩の事が大好きなんですね。そんなに応援して」
明らかにからかうように、いつもの軽口のつもりだったのだが――
「え、え……?」
フリーズ。
花梨の顔は林檎のようになっており、そのまま何も言えずに口をぱくぱくとしている。
「ちょっと、しづ……もう、先輩、ごめんなさい。しづが変な事言って」
「にゃ、大丈夫だよ! そ、それに……あいつはただの幼馴染だから」
「……そう、ですか。すみません、タチの悪い冗談を言って」
分かりやすすぎる。
何なのだろうか、このモヤモヤは。
同時に、花梨は耀の幼馴染。ある意味、最も彼に近い存在――
「……ですが、デュエマも最後は時の運。2人の実力が拮抗している以上、どちらが勝つかは分かりませんよ」
「そ、そうかなあ。桑原先輩が押しているように見えるけど、しづ」
「……ふぅーん。じゃあ、本当に分からないってことかぁ」
実際、花梨は耀の事をどう思っているのか。
そんなことを考えてしまっている自分自身に、紫月は嫌気がさしていたのである。
――はぁ、くだらない。取り合えず、試合の結末を見届けるとしましょうか。
※※※
俺と桑原先輩のデュエルは、まさに佳境。先輩の展開された切札を前に俺は追い詰められていた。
此処で攻撃を止めても、パワー3000以下のクリーチャーの攻撃はシャットアウトされてしまう。
まずは、あのバカでかいクリーチャー軍団、そしてこの猛攻を耐えきらないと――!
割られる2枚のシールド。
その中には――
「S・トリガー! 呪文、《タイム・ストップン》! そのスーパー・S・トリガー効果で、もう先輩のクリーチャーは攻撃できません!」
「ちっ、生き存えたか……まぁいい。ターンエンドだ」
「あ、あぶねぇ……だけど……」
桑原先輩の場には、パワー3000以下のクリーチャーの攻撃を封じる《ハイパー・マスティン》に、《グレート・グラスパー》、《メガロ・カミキュロス》、《自然星人》の合計4体のクリーチャーが存在している。
俺は卒倒しそうになった。いずれも、パワー12000以上の超巨大クリーチャーだ。
「……だけど、諦めなければ……! 勝機はあるはず……! 此処で、ひっくり返す!」
「ほう。見せてみろ、白銀ェ!! 俺に、テメェの芸術を見せてみろよ!!」
「はいっ!」
賭ける。この一手に。俺は、その可能性を秘めたカードに手を掛けた。
「俺のターンの始めに《ランチャー・ゲバラベース》の
「!」
「先輩のマナゾーンのカードは、11枚! 俺のデッキのクリーチャーは全てに場に出せる! 後は何が来るか、それだけ!」
俺が山札の上からマナに置いたカード。
それは――
「――これが
俺のもう1つの切札、マスターカードの《ジョリー・ザ・ジョニー》だった。
ここぞという時に来てくれるなんて!
「EXウィン狙いか……!? ハッ、だけど足りねぇな! 打点も、クリーチャーの数も! そのデッキには《ナッシング・ゼロ》は搭載されてねぇだろ!」
「足りますよ、先輩!」
そう。足りるんだ。これで決める!
「3マナで《ドツキ万次郎》召喚! その効果で、《グラスパー》を山札の一番下に送ります!」
「それでもまだ、打点が足りねぇよ!!」
「そして呪文、《カンクロウ・ブラスター》!! その効果で、俺のクリーチャーはこのターン、パワーが+4000され、シールドをさらに1枚ブレイクする!」
「なっ……!!」
この呪文の効果で、《ヤッタレマン》はW・ブレイカー、そして《ジョニー》はT・ブレイカーになる!
これで、打点は足りた!
「《ジョニー》は、場とマナにジョーカーズが5枚以上あれば、攻撃の終わりに相手のシールドもクリーチャーも居なければ、デュエルに勝利する!」
「へっ、分かってるぜ! かかってこいよォ、白銀ェ!!」
「《ヤッタレマン》でシールドをW・ブレイク!」
「っ……ハッ、ハハハハ!! トリガーは来た……だけど、《コクーン・マニューバ》だ! 《カンクロウ・ブラスター》の効果で、テメェのクリーチャーは呪文では選ばれねえってこったなァ……テメェはやっぱ面白ェよ!! 最高に芸術してるぜ!!」
「ええ、だから……これで終わりにしましょう、先輩! 《ジョリー・ザ・ジョニー》でシールドを攻撃……マスター・
焼き尽くされる桑原先輩のシールド。
これで、トリガーさえ無ければ俺の勝ちだ。
「まだだ、もう1枚《コクーン・マニューバ》、いや《ゼノゼミツ》さえ来れば――!」
シールドを捲る先輩。確かに前者はスーパー・S・トリガーでマナからクリーチャーを出せるし、後者はクリーチャーのS・トリガー。先輩の勝ち筋はこれらが来ることしかないとはいえ、俺にとっても痛手となる負け筋。
こうなったら、どっちが引けるかの勝負。
その瞬間に、緊張が走る。
そして――
「スーパー・S・トリガー――」
ごくり、と息を呑んだ。
しまった。まさか来てしまったか――2枚目の《コクーン・マニューバ》が――!?
「――《ハイウェイタス・デパーチャ》。効果でマナを加速し、スーパー・S・トリガーで相手のパワー5000以下を全てマナへ送る。もっとも、皆パンプアップしてるからこの効果も不発か」
……違う。と、いう事は――
「腑抜けてんじゃねえよ。お前の勝ちだぜ、白銀!」
「……はいっ、EXウィン――成立です!」
※※※
歓声が上がった。
無事、4連勝達成だ。正直、信じられないけど、どっと精神的な疲れが汗になって噴き出してくる。この緊張感はいつになっても慣れないんだろうなあ。
しかも、あの勝利の直後なのだから。
司会の人がマイクを持ってやってくる。
「おめでとうございます、白銀選手! それでは、景品をどうぞ!」
「確か、新パック10枚でしたっけ?」
「ええ、そうですね。これを贈呈します!」
まあ、俺は運が悪いからどんなカードが当たるか分からねえけど……みんなと一緒にパックを剥けば、ちょっとはマシになるかもしれない。
そうポジティブに捉えてパックの束を受け取り、俺は桑原先輩と向き直る。
「はっ、白銀。やっぱテメェはつえーじゃねぇか」
「あ、ありがとうございます。だけど、先輩も十二分に強くて、あと少しで俺は負けるところでした」
「ハハハハ!! 互いに、喉を刺すか刺されるかの試合だったわけだな!! とにかく、芸術的な試合だった!」
「は、はぁ……俺も、良い試合だったと思います、桑原先輩!」
改めて。この人の強さも今日は思い知った気がする。
本当に、頼りになる仲間程敵に回すと厄介……桑原先輩のグランセクトデッキには、今後もお世話になることになりそうだ。
ステージを2人で降りると、ブラン、紫月、翠月、花梨の4人が迎えにやってくる。
「うぅ……桑原先輩ぃ……本当に惜しかったですね」
「フン、何俺が負けたからってメソメソしてんだテメェは」
「アカル! 4連勝するなんてすごいデス!」
「本当だよ。冷や冷やした! やっぱり耀は凄いなぁ!」
「まぁな……すっげー疲れたけど」
ふと、見ると。
相変わらず不機嫌そうな表情の紫月の姿があった。
「おい紫月。4勝したぜ」
「そう、ですか。ところで――」
「ねえ耀!」
紫月が言いかけたところに、花梨が割り込んでくる。
何だ何だいきなり。こちとらまだ話してる途中だぞ。
「そういえば、そろそろ花火大会があるみたいだよ! 皆で見に行こうよ!」
「ほんとデスか!? 確か、神社からでも見えましたヨネ!?」
「見に行きましょうよ! あー、カメラ持って来て良かったぁ」
「芸術だな。夜の空はクレパスだ。花火は、まさに夜の空に咲く花だぜ」
花火大会か。
普段はあまりそういうのは見ないけど――折角だし、今日は皆で見てみるというのもオツか。
「……花火、大会か」
恨めしそうにしている紫月はさておき、とにかく最後に花火を見てみるのも良いかもしれない。
「――よし、折角全員揃ったし、見に行くか! 花火大会!」
こうして、俺達の海と夏祭りは、締めくくられようとしていた。
この後に控える事件の事なんか、誰も想像なんかしやしなかったんだ。
俺も含めて――