学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第32話:塔の刺客─先輩の切札

 それは、確かに《ドルゲーザ》に似ていた。

 巨大なアースイーターは蝦蟇のようになっており、刀を背に差し、顔を隠し、指を組んだその姿は忍者そのもの。

 だが、巨大だ。あまりにも、でかすぎる。

 

「こいつは、パワー17000のT・ブレイカー。更に、登場時にマナからクリーチャーを3体まで手札に戻せル。その後、手札を3枚まで、タップしてマナに置く。回収するのは、《ドルゲユキムラ》2枚ダ。ソシテ、手札の3枚をマナに」

「なぁっ……!?」

「耐え凌げるカ? お前に《ドルゲユキムラ》の分身殺法ガ!!」

 

 次々に進化していくジャイアントたち。

 《土隠》、《ドルゲーザ》の姿が旋風と共に変化していく。

 《ドルゲユキムラ》が更に2体、現れてしまった。

 

「冗談じゃねえぞ!?」

「言ったはずダ。災厄を齎す、ト」

「くっ……!」

「さあ、行ケ。《ドルゲユキムラ》でT・ブレイク」

 

 飛び掛かる《ドルゲユキムラ》。

 そのまま、旋風と触手が俺のシールドを次々に叩き割っていく。

 

「トリガーはっ……来た! S・トリガー、《バイナラドア》だ! 効果で2体目の《ドルゲユキムラ》を山札の下送りだ!」

「馬鹿め、まだ《ドルゲユキムラ》1体、《バイケン》に《西南》が残っているゾ。《バイケン》でシールドをW・ブレイク」

 

 一瞬で割れる2枚のシールド。

 やべぇ。今回という今回は、本当に奇襲能力が高すぎて、気を抜けば負ける試合だった。

 だけど――

 

「S・トリガー! 《金縛の天秤》! 《ドルゲユキムラ》と《西南》の攻撃を封じる! さらに《バイナラドア》で《バイケン》を山札の下に!」

「チィッ……! ターンエンド、ダ。だが、俺の場にはまだ2体の《ドルゲユキムラ》に《西南》が居るゾ」

「何にも問題はねぇぜ。あんたはこのターン、クリーチャーを3体召喚した! それにより、手札から《バレット・ザ・シルバー》を出すぜ!」

 

 飛び出したのは黒銀の軍馬。

 こいつの力、また借りるぞ!

 

「よし、効果で山札の上を表向きにして、それがジョーカーズなら場に出す!」

 

 捲られる山札の上。

 頼むぜ。出すのはこいつだ!

 

「頼むぞ、《チョモランマッチョ》!」

 

 ダンベルで身体のパーツを構成されたクリーチャー、《チョモランマッチョ》。

 そして、こいつのパワーは驚異の18000。さらに、俺の他のクリーチャーの打点を2つ増やす。

 ……もっとも、俺は呪文を唱えられなくなる上に、クリーチャーに攻撃しなけりゃいけなくなるけどな。

 

「……何を考えていル?」

「さあな? 今度は、8マナをタップだ!」

「なにをするつもりダ。今更足掻いても、無駄だゾ」

「果たして、本当にそうかな? 出すのはこいつだ! 《ニヤリー》を進化!」

 

 桑原先輩が使っていた切札……使わせて貰うぜ! 

 此処で役に立つとは、夢にも思わなかったけどな!

 

「大地の切札(ワイルドカード)、借り受けるぜ! 頼むぞ、《グレート・グラスパー》!」

 

 降臨したのは巨大な蝗の王。

 杖を持ち、佇む王者だ。

 

「なっ、グランセクト……!!」

「さて。《グラスパー》の効果発動だ。タップされた《ドルゲユキムラ》をマナゾーンに送る! これで、俺はわざわざクリーチャーを殴らなくて済むわけだぜ。しかも、《チョモランマッチョ》の効果で、皆ブレイク数が+2されてるけどな!」

「ぐっ……!!」

「さあ、どこまで耐えられる? 《チョモランマッチョ》で攻撃――するとき、《グレート・グラスパー》の効果発動! 自分のNEOクリーチャーが攻撃するとき、そのパワーより小さいクリーチャーを場に出す! こいつのパワーは18000! このデッキの他のクリーチャー、全員を出せるぜ!」

 

 巨大な虫の力を借り、大地から道化の化身が姿を現す。

 頼むぜ、相棒! ここで奴に、択ゲーってやつを押し付けてやる!

 

 

 

「これが俺の超切り札(ワイルドカード)! 起動しろ、皇帝(エンペラー)のアルカナ! 《超絶特Q(チョーゼツトッキュー) ダンガンテイオー》だ!」

 

 

 

 大地から飛び出した新幹線のロボット。

 その両手には刀が握られている。

 浮かび上がるのは、タロットカードのⅣ番。皇帝を意味する数字。

 さあ、これで一気に叩き込む!

 

『さあマスター! 生まれ変わった我の力、存分に振るうであります!』

「おうともよ! こいつの効果で、俺のクリーチャーは全員、場に出たターンに攻撃出来る!」

「関係なイ。ニンジャ・ストライク5、《佐助の超人(サルトビ・ジャイアント)》……!! 効果で、《バイケン》を捨ててバトルゾーンに出ス!」

 

 出たな。さあ、どれを除去してくる?

 

「《ダンガンテイオー》を……待テ? 進化している《グラスパー》をバウンスするべきカ? しかし、《チョモランマッチョ》を除去しなければ打点ガ……!」

「ふふん、気付いたみてーだな。どいつを除去しても、今のお前は絶対に不利になる。だって、そういう風に仕組んだもんなあ! マナには俺がたっぷりと貯めたジョーカーズが居る」

「しまっタ……! 2枚目の、《ダンガンテイオー》……!」

「しかも、俺の場にはまだ《バイナラドア》、《バレット・ザ・シルバー》もいる」

「ぐぬうっ……! おのレ! 此処は《グラスパー》をバウンス、ダ!」

「じゃあ、Q・ブレイク、いっけぇ!!」

 

 一気に叩き割られる4枚のシールド。

 その中にはシノビも入っているだろう。

 だけど、関係ない。キャパオーバーするまで、ぶん殴り続けるだけだ!

 

「次は《バレット・ザ・シルバー》で攻撃! その効果で、山札の一番上を捲り、それがジョーカーズなら場に出す! 出すのは、《洗脳センノー》だ! そして、最後のシールドをブレイク!」

「ぐぬウっ!!」

 

 叩き割られるシールド。

 どうやらトリガーに賭けたみたいだが、何もなかったらしい。よし。塔の罠、確かに攻略せしめたぜ!

 

 

 

「罠が仕掛けられたなら、ぶっ壊しながら進めばいいだけだ! 《ダンガンテイオー》でダイレクトアタック!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「どうやら、終わったようですね」

 

 背後からすぐ、声が聞こえてきた。

 紫月だ。まさか、本当に3体のクリーチャーを倒したというのか!?

 いや、そのまさからしい。3枚のカードが落ちている。本当にいざという時は頼りになる後輩だと再認識出来たぜ。

 

「やれやれ、口ほどにもなかったです」

『流石にバテたぜ……3体分は、魔力が……きゅう』

「シャークウガ、休んでいてください」

「つーわけで、この場は諦めて貰うぜ、ティンダロス」

「……フン」

 

 鼻で笑った彼は、フラフラではあるが笑みを浮かべた。

 どうやら流石に、反撃する気力も残ってねぇみたいだな。これ以上何かされたら、俺達も反撃する余力は残ってないが。

 

「思ったよりも、強かったゾ、白銀耀。クックッ」

「あ?」

「だが、俺の部下のシノビの力も、そして大魔導司様の力はこんなものじゃぁ無イ。せいぜい、悪夢に怯えるがいイ」

「何だ何だ? 随分とまあテンプレ染みた捨て台詞じゃねぇか。しかも、やたらと潔いな」

「俺をトリスと一緒にするナ。俺は、任務は正道を持ってこなス。負ければ潔く退ク。最初の攻撃も、お前らのクリーチャーを呼び寄せる為にやったことダ。本気じゃなイ」

「はぁ、思ったよりもまともそうで安心したぜ。でも、何でお前みたいなのがアルカナ研究会に居るんだよ?」

「勘違いするナ。アルカナ研究会は、あくまでもクリーチャーの力が害意を及ばさないようにするための組織だということダ」

 

 そう言い残すと、ティンダロスの周囲を砂煙が呑み込んでいく。

 竜巻のようなそれは、瞬きする間に止まり、消えていた。

 あの大男の姿と共に。……何か、今までの連中の中じゃ一番まともだったな。

 

「……マジで、何なんだよ、アルカナ研究会って」

 

 クリーチャーの力が、害意を及ばさないように、か。

 それなら俺達の事はどうでも良いんだろうな。大のために小を切り捨てる。

 あくまでも奴等は、そういう連中なのだろう。

 

『とにかく、まだこの辺に潜んでないか、見てくるでありますよ!』

「おーう、頼んだ、チョートッQ」

 

 言った彼は飛んで行く。

 多分、もう近くにはいないんだろうが、ついでに周囲にクリーチャーとかいないか見て貰うとするか。

 

「何だろうと関係無いですよ、先輩」

 

 紫月が隣に歩み寄る。

 そして、ガラスのような丸っこい瞳を俺に向けた。

 

「敵対するなら、倒す。そうじゃないですか」

「……そうだな」

「先輩はお人好しが過ぎます。和解とか、話し合いが出来る相手ではないのは今までの事が示しているじゃないですか」

「……本当に、そうなのか」

「まあ、何でも良いです。帰りましょう」

「そうだな。っと、その前に、だ」

 

 俺はデッキケースの1つを漁る。

 このなかには、さっき剥いたパックのカードを入れていたのだが(勿論ゴミは持ち帰るぞ)……ちょっと良いものを見つけたんだ。

 

「おい紫月。もしかして、お前が探してたカードってコレか?」

「……? なんですかコレ」

 

 渡されたスリーブに入ったカードに目を凝らす紫月は、驚いた様子で「あっ」と声を上げた。

 

「へへへん、図星みてーだな」

「な、何でこれを……?」

 

 カードのホロを光に照らす彼女。

 どうやら、大当たりだったみたいだ。

 

「ふふん、種族も合ってるし、文明もお前に合う。おまけに高騰してると言えばこいつしかいねぇと思ってな。しかもシークレットバージョンだぜ、銀シク」

「せ、せんぱい……」

「やるよ。折角だ。後1枚なんだろ?」

 

 こくり、と頷いた紫月。

 

「ばかっ、こんなプレゼント……不意打ちしないでください。どうやってお返しすればいいのか、分からないじゃないですか」

「お返しなんか良いよ。お前の力になれるなら、それだけで十分だ」

「そ、そうですか。……あなたはそういう人、ですからね。ありがたく、受け取っておきます」

 

 良かった。喜んでくれたみたいだ。デッキケースにカードをしまった彼女は、いつもよりも上機嫌な様子で言った。

 

「……本当、お人好しみたいですね」

「おい?」

 

 だけど、声は妙に疲れている。どうしたんだ。

 ……嫌な予感が頭を過った。

 

「おい? 紫月。妙に声が掠れてるが、大丈夫か?」

「大丈夫に、決まって――」

 

 そう言いかけた彼女の身体が視界から消えた。

 

「うおいっ!!」

 

 思わず変な声が出た。

 そして、倒れかかった彼女をすんでのところで両手で受け止める。

 

「……は、はは。ちょっと、無茶しちゃいました」

「ばっかやろう。無茶し過ぎだ。クリーチャー3体を相手に食い止めてたんだ。当然だろ」

「……ちょっと、こういうことを頼むのは、心を許したようで悔しいので嫌なんですが……」

 

 そっぽを向きながら紫月は言ってのける。

 おい、ここまでやってまだ心開いてくれてなかったのか? ショックだぞ。

 いや、違うな。分かりやすすぎるぜ、紫月。

 

「……また、おんぶしてくれませんか? 初めて会った日、みたいに……もう、動けそうにないです」

 

 本当に素直じゃねえな。照れ隠しなんか言いやがって。

 俺達はもう、仲間だろ。

 彼女を寝息と共に背負い、帰路につくことにした。翠月さんには、疲れて寝てしまったとでも言っておこう。

 

「……やれやれ、本当に世話が焼ける後輩だ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「随分と、遅かったね」

「ああ。塾があったからな」

「塾とかあったっけ?」

「ああ。つか、そっちも遅かったみてーだけど?」

「夏祭りだよ、夏祭り」

「はぁ、そうなのか。楽しかったか?」

「うん。久々に、耀とも花火見られたしね」

「おお、耀か」

「うん。……言ってたっけ?」

「あ、いや、お前がそんなこと話してたような気がしてな。それに、好きなんだろ?」

「にゃあ!? 違うよ! そんなのじゃないよ」

「……本当に?」

「ほんとだもん……」

「ははっ、悪かったよ、からかって。もう小さい頃から一緒なんだからよ」

「でも、向こうはあたしのこと、何とも思ってないよ。いつも妹みたいな扱いだもん」

「お前姉御肌だし、姉に見られてるかもな」

「ばかっ、絶対ないってば」

「ははは、冗談。で? 強くなってんだろ? 耀」

「うん。強いよ」

「強い、か――」

 

 

 

 

「――確かに、そうかもしれねぇなあ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ……私のバカ。まさか、あの先輩(ひと)にあんな無防備を曝してしまうなんて、思いませんでした。

 どうしましょう。結局、頼るだけじゃ嫌だと言ってたのに、頼ってしまったようなものです。

 あの人にはいつも借りを作ってばかりです。それも、出会った日からずっと。

 ……私がみづ姉に抱いてきた気持ちとはまた違う。師匠に向けていた感情とも違う。

 他の誰かが一緒に居たらもやもやするし、あのちょっとどんくさい所を見るとヤキモキするし……。

 好きの形はそれぞれと言いますが、そんなことを言ったら、私はみづ姉は勿論ですが、ブラン先輩も好きですし、桑原先輩にも一定の好感は持っているつもりです。師匠も、広義の形で言えば……いや、やっぱ何でしょう。なんかこの人に関してはまた違うような気がします。ですが、その種類は言ってしまえばどれも違う形です。

 親愛、友愛、敬愛……じゃあ、白銀先輩への感情とは何なのでしょう。

 ……何、なのでしょうね。本当に。

 先輩から貰ったカードを見て、顔が綻んでいる今の私。みづ姉に対するものとは違うこの感情。

 それが何なのか、1つずつ頭の中で挙げていった時、ある二文字が浮かんだその時、私の顔は禁断爆発しました。

 

 

 

「……そ、そんな訳、無いですよ。私は……みづ姉が……」[newpage]

 

「――ワイルドカードの詳細も分からない以上、それに対する唯一の対抗策・エリアフォースカードを只の人間に渡しておくのは、やはり危険だ。ティンダロスの映写装置で映された限りでは、絵柄が刻み込まれている。つまり、性質が変化したという事だ」

「しかも、あたし達魔導司が操るアルカナ属性の力を持つ。そうなんだろう? ロス」

「……ああ、その通りダ」

「おい、どう思う? 我が同胞。あたしは、さっさと潰すべきだと思うが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――臥薪嘗胆。今は、待つ。来るべき時が来るまでだ」

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