学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第34話:体育大会の罠─囲い込み

 ※※※

 

 

 

「というわけで、この朝礼台に置かれてたんですネ? トロフィーは」

「ああ。そうなるな」

 

 朝礼台は、出来るだけ誰も触らないようにした上に誰も触っていない。

 とりあえず、手掛かりがあるとすれば此処にあるはずなんだが……。

 一体ブランは何処をどう探すというのだろうか。

 

「とりま、見てみマスか。朝礼台を!」

 

 と言ったって、朝礼台の周囲には砂や砂利が敷き詰められてるだけだぞブラン。

 朝礼台の上だって、そんなに変わったところはないはずだ。

 そんなところを這いつくばって探しても何にもならない。

 そもそも足跡とかはぐちゃぐちゃになってるだろうし……。

 

「第三者に見られる可能性がある上に、朝礼台のど真ん中に置かれてるようなトロフィーを何故盗ろうと思うのデショウか? 犯人は、クリーチャー。もしくは……ん?」

 

 ブランはふと、朝礼台の上に落ちているものを指差した。

 

「耀。これ、いつからありマシタか?」

「あ?」

 

 それは鳥の羽根だった。

 それもかなり巨大なものだ。カラスか、何かか?

 

「ハシボソガラスだな。付け目の色が白い」

 

 桑原先輩が羽根を見て言ってのける。

 流石、デッサンを沢山やってるだけあって詳しい。カラスの種類なんか見分けられないぜ。

 それに、仮にそれがカラスの羽根だったとして、だ。

 

「はぁ。まさかカラスが盗ったのか? それもそれで気付くと思うが」

「シャークウガ。朝礼台から魔力は感知しましたか」

『此処に立っていたという痕跡は見つからねえな。抹消された可能性もあるかもしれねぇが、そんな高度な術を持つ奴がこんなちゃっちぃことするかよ。だけど……』

 

 シャークウガは、羽根を手に取ると訝し気に言った。

 

『こいつは、クリーチャーのものじゃねぇが、根元の方に魔力を感じるぜ。……これは、透明魔法か!?』

「じゃあ、相手はそれで姿を消した、と」

『ああ。水文明でもよく使われる! 気配も、姿も全て消し、一瞬のうちにトロフィーを盗んだんだ!』

「はぁ? ってことは、カラスにワイルドカードが取り付いてるのか?」

「そうとも考えられますね。パンダネルラ将軍の前例がある以上は」

「Good、シャークウガ! ワンダータートル、同じ気配の魔力をサーチしてくだサイ!」

『御意!』

 

 言った宝石亀はブランの頭に乗っかった。

 そして、しばらく目を瞑っていた後、ブランが叫ぶ。

 

「Thanks、ワンダータートル! マップ、流れ込んできましタ!」

『あちこちにこれと同じ羽根が落ち取るわい! おまけに、これと同じで、しかも一際気配の濃い魔力が飛んでおる!』

「マジかよ!? 本当にカラスの仕業か!?」

 

 相変わらず優秀だな、ワンダータートルは。

 シャークウガが感知した魔力をもとに、本体の位置まで突き止めるなんて。

 これは捕まえるチャンスが出来た、と言いたいところだが……。

 

『いやでも、相手は飛んでるでありますよ? どうやって捕まえるでありますか?』

 

 ここまで何にもやっていないチョートッQがぼやく。

 そんなの飛べるお前が捕まえりゃ良いだけだろ。

 

「そんなのEasyデス! 追い込めばいいのデスよ! 此処には、優秀なクリーチャーが3体もいマス! 或瀬探偵事務所の強力な助手が3体も!」

『えー? 本当でありますかぁー?』

「ふふん、任せておいてくだサイ!」

「白銀先輩、これ大丈夫ですか?」

「……知らね」

「或瀬は色んな意味でぶっ飛んでるからなぁ……」

 

 画して、トロフィーを盗った容疑者のカラスの捕縛作戦が始まったのだった。

 そうそう上手くいくとは思えないんだがなあ。ブランのがばがばな頭で。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ステップその1! ワンダータートルの力で、この学校を迷宮化しマス! これで、この学校は私達が掌握したも同然!」

『迷宮化完了! もうこれで、あのカラスは学校の敷地内から飛んでも逃げることが出来んぞ。幻覚に惑わされ、飛んでも脱出は不可能じゃ!』

「ステップその2! 索敵デス! シャークウガ、エネミーの気配はWhere?」

『恐らく、屋上の辺りを飛んでるぜ。そして、何を勘違いしたのか、校舎の中に入り、……えーと、これって何だっけ、きゅー校舎の行き止まりをぐーるぐーる。ちなみにここは、ワンダータートルの仕掛けた誘導ルートだぜ!』

 

 成程。ワンダータートルを、等身大に実体化したシャークウガの頭に乗せるという発想は無かった。

 これなら、ワンダータートルの力を使いながら、シャークウガは索敵することが出来るというわけか。

 

「よーし、お疲れだ2体とも。場所は割れたな」

「最後にステップ3! 行き止まり、袋小路に追い詰めた犯人を捕まえる、デース!」

『我の出番でありますなぁ! 最速で、最短で、真っ直ぐに! 旧校舎に突撃するでありますよ! 掛け声は、ガングニールとかどうでありますか?』

「うん、それはやめとこうな」

 

 ワンダータートルで逃げられなくし、シャークウガで索敵を行い、チョートッQで捕まえる。

 やべーよこいつら。

 こいつらが手を組んだら脱獄囚を捕まえるのなんて容易いぜ。

 すぐさま旧校舎に駆け付けた俺達は、成程その天井でぐーるぐーると旋回している鳥らしきものの影を見つけた。しかも双眼鏡で見たブラン曰く、やはりトロフィーらしきものを足で掴んでいるらしい。

 ここから奥まで一直線。もう、やることは1つだ。

 

「よし、チョートッQ! お前の出番だ! この狭い場所だとダンガンテイオーにはなれないが、相手も逃げ場がない! 逃がすなよ!」

『了解、でありますよ! 標的を捕獲するであります!』

「凄いですね、とても完璧な作戦に見えます」

「これはもううまくいくんじゃねぇか」

 

 等身大サイズに実体化したチョートッQが一気に加速し、行き止まりで立ち往生しているカラスを目掛けて突っ走る。

 

 

 

 

「超超超可及的速やかにィィィィィィーッ!! ゴヨウ改めでありまァァァァァァァァァァァァァー!!」

 

 

 

 圧倒的速度。圧倒的パワー。

 流石だチョートッQ。これだけのパワーがあれば十分だ。

 ブランが、それを見て驚いたような表情で叫ぶ。

 

「あっ! 廊下の窓が勝手に開いて、カラスがそこから逃げたデス!」

「アアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオゴブッ」

 

 奥の扉にごしゃっ、という音と共に正面衝突したチョートッQ。

 見るも無残な様子でぶっ倒れていた。

 

『新幹線は()には止まれなぃ……であります……グフッ……』

「何だって!? リックドム!?」

「違います桑原先輩、グフカスタムです」

「どっちも一部の人にしか分からねえネタは止めろ!!」

 

 取り合えず逃げたカラスを追って、俺達も廊下を走り、開いた窓を覗く。

 見れば、人を小馬鹿にするかのように8の字を描きながら、カラスは鳴いていた。

 

「アホォーアホォー」

「畜生! あの野郎何なんだ! どうして急に窓が開いた!? あいつ魔法でも使えんのか!?」

 

 

 

 

「その通り。そいつは、魔法生物だ」

 

 

 

 声が響く。

 見れば、そこにはあのサングラスの魔導司、火廣金の姿があった。

 

「て、てめぇ!! 挟み撃ちか!?」

「本当にしつこいですね……エリアフォースカードの回収、ですか」

「逆だ! そいつはクライアントの魔導司から逃げ出した魔法動物だ! 名前はファルクス、人間以上の知能を持つスーパーカラスだ!」

 

 マジかよ。

 要するに逃げたペット探しをやらされているのかコイツ。

 ……何か可哀想になって来たな。

 

「……お前も大変だな」

「同情は要らん!」

「アホォーアホォーッ!」

「くっ……!」

 

 火廣金は悔しそうな笑みを浮かべる。

 

「な、何て言ってるんだ!?」

「くそっ、この『灼炎将軍(ジェネラル)』でさえも全く分からない……!」

「分かんねぇのかよ!」

『何だって!? クソ雑魚ナメクジコバンザメェ!?』

 

 この安い挑発に乗る魚類。

 ああ、やっぱり鮫は下等生物だったよ……。

 

「成程、私たちがどんな作戦を使うか、予め分かっていたし、そもそも効かなかったということデスね!」

「な、これも奴がスーパーカラスである所以か!?」

「違う。この俺が上にお前らのクリーチャーの力を報告したからに決まっているだろう、馬鹿なのか?」

「火廣金、おめーかよ、腹立つなぁ!!」

『武器なんか要らねぇ!! テメェなんか怖かねぇ!!』

「あっ、シャークウガ……」

 

 ブチ切れた鮫男は、開け放された窓から狙撃魔法で砲撃を始める。

 弾幕は数で押し切るの信念のもと、大量の水球がカラスを狙ったが、どれも当たらず避けられる始末。

 感情だけがヒートアップしているのが原因だ。案の定ガス欠に陥り、魔力不足で数分もしないうちにそこに伸びていたのだった。

 

『野郎ぶっ殺して……うぐぐっ』

「アホォーアホォー」

「くっ、煽ってるように聞こえてくる……本当に忌々しい奴だ」

「煽ってんだろうなぁ……つか、お前らも大変だなぁ」

 

 結果。

 チョートッQ、シャークウガはガス欠。

 このままだと逃がしてしまうぞ!? しかもあいつは空に居るのに!

 

『何? トロフィーを返して欲しかったらエリアフォースカードを寄越せ、じゃと!?』

「舐めてやがる……完全に」

『おらぁぁぁぁ!! まだだぁぁぁ!!』

 

 再び投げられる水球。

 おい無茶してんじゃねえシャークウガ!!

 このままだとこいつ、本当にぶっ倒れるぞ!!

 

 

 

 べちゃっ!

 

 

 

 次の瞬間、カラスの頭が真っ赤に染まる。

 その頭にブチ当てられたのはプラスチック玉。トロフィーが落ちる。

 それを放ったのは――ブランのスリングショットであった。シャークウガが弾幕を撃ってる間に、死角からぶち込んだのか!

 

「本命はこっち! 製作協力・桑原先パイのペンキ玉デース!」

「さらにタバスコ入りだ。果てなバカラス」

「ギャアアギャアアーッ!!」

 

 効いてるぞ! 完全に視界が真っ赤なペンキと唐辛子で塞がれてるんだ! えっげつねぇや、誰だよこんな対人武装作った奴!  

 まあいい、お灸をすえてやるとするか。

 

「よし、チョートッQ……あ、ダメだ。こいつ動かねぇ」

「ふっ、情けない奴等め」

「お前もどっちの味方なんだ、腹立つなぁ!」

 

 しかもこいつ、何にもやってねぇぞ今回!

 マジで解説だけしに来たようなもんじゃねぇか!

 

「それではシャークウガ――」

『ガス欠だ……もう無理ィ』

「語録、死亡フラグの乱立、おまけに魔力切れで自滅、恥は無いんですか恥は」

 

 どうするんだよ、これ……折角追い詰めたのに!!

 逃げられちまうぞ!?

 

「なら、私の出番デスね!」

 

 窓枠へ飛び移ったブラン。

 そして、彼女の帽子に乗っかったワンダータートルが叫んだ。

 

『探偵! 今回は我らの出番じゃな!』

「そうデスね! 人間じゃないとはいえ、相手はWizard! 油断は禁物デス!」

 

 キエエエエ、と怒りのままに叫ぶカラス。

 その背後に巨大な影が浮かび上がった。あいつのクリーチャーだろう。

 

 

 

 

「出てきたデスね……デュエルエリアフォース、デース!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 私と、ファルクスのデュエル。

 2ターン目、先攻の私は早速仕掛けにかかっていましタ。

 

「2マナで《ヘブンズ・フォース》デス! 効果で、《龍装者 バーナイン》召喚デス!」

『カカカ! このワタクシに挑もうだなんて、良い度胸ねぇ、人間!』

「しゃ、喋ったデス!?」

『お馬鹿さん、空間内ではワタクシは魔法で意思の疎通が出来るのよ!』

 

 なるほど、確かに声が聞こえてきマス。流石にデュエル中に喋れないのは不便だったみたいデスね。

 しかも、声が女の子デスネ。雌だったのデスか。

 ファルクスも、2枚のマナをタップしましタ。いや、やつの念魔法で動いている、というべきデスか。

 火と闇のマナ。唱えられたのは《勇愛の天秤》デス。

 手札を1枚捨て、2枚引く……手札交換みたいデス。

 

「何を使ってくるのか知らないデスけど、こっちもガンガン行くデス! 3マナで、《緑知銀 フェイウォン》召喚! 効果で自身をタップして、ドロー、さらに《バーナイン》でも1枚ドローデス! ターンエンド、デスよ!」

 

 さて、ファルクスのターンデスね。タップされたのは3枚のマナ。

 そして、そこから悪しき儀式の第一歩が行われようとしていまシタ。

 

『呪文、《ボーンおどり・チャージャー》ですわ! カカカ!』

 

 《ボーンおどり・チャージャー》。山札の上から2枚を墓地に置き、チャージャー効果でマナに置かれる呪文デス。

 あんなに墓地を増やして何のデッキなんでしょうネ?

 これだけじゃ分からないデス。

 

「こっちも止まりませんヨ! 3マナで《タスリク》召喚、1枚ドロー! ターンエンドデス!」

 

 《奇石 タスリク》。相手の呪文を唱えるコストを+2するクリーチャーデス。

 これで相手は呪文を唱えにくくなるはず。

 

『カカカ、ワタクシに勝てるとでも、思っているのかしらぁ!?』

 

 盤面を固めたと思った矢先に不吉に響くファルクスの鳴き声。

 それは、まるで野獣の遠吠えのようにどんどん太く木霊していきマス。

 肌が震えて、凍えるような……何デショウ。死、を身近に体感するような冷たさデス。

 4枚の火と闇のマナがタップされマシタ。

 炎、そして死霊らしきものがバトルゾーンに満ち満ちマス。

 

『召喚、《神滅翔天 ポッポ・ジュヴィラ》ですわ! カカカ!』

「よりによってそのカード、ですか……」

 

 後ろの方で観戦している紫月が苦々しい表情で言いマシタ。

 それが、現れたクリーチャーの名前デス。私はよく知らないのデスが……。

 

「シヅク、どういう効果なんデスか?」

「登場時に、山札の上から3枚を墓地に置く、4コストのファイアー・バードでドラゴン・ゾンビです」

「何だ、思ったより強そうじゃないデス」

「いえ、このカードの真価は別の所にあるのですが……」

「私のターン、デス!」

 

 カードを引く私。

 どこか含みのある紫月の台詞に不安を隠せないデスが……。

 

「2マナで、《一番隊 クリスタ》召喚デス! 効果で1枚ドロー! そして、2マナで《フェイオン》を召喚してタップし、1枚ドローデース! これで、Endデス!」

「ギャァァ! ギャァァァ!」

 

 大量に手札を用意しつつも展開しマス。

 呪文のコストも増えてるし、もうひと押しでこれなら勝てそうデス。

 

『あなた、今、良い気になってるわね!?』

 

 4ターン目。後攻のファルクスのターン。

 タップされたのは4枚のマナ。何だ? 《ポッポ・ジュヴィラ》かと思ったのデスガ――

 

『4マナをタップ。ワタクシは、フェニックスを召喚するとき、《ポッポ・ジュヴィラ》の効果で自分の墓地のクリーチャーを進化元にすることが出来るのですわよ――カカカ!』

「What!? フェニックス、不死鳥デスか!?」

『カカカ! 焼け爛れて死ね! 墓地の《アバヨ・シャバヨ》、《コッコ・ルピア》で進化V(ボルテックス)!』

 

 墓地のクリーチャーを進化元に出来る!?

 それじゃあ、さっきまでの墓地肥やしは進化元を増やしていたってことデスか!?

 浮かび上がる数字は13。死神を意味する数字……嫌な予感がしマス。

 

 

 

『甘美なる死は、煉獄より齎される――《暗黒王 デス・フェニックス》!』

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