学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第5話:ディティクティブ・トリック─代打探偵

※※※

 

 

 

 どれだけ歩かされただろうか。

 小高い丘の草むらに、俺とブランは並んで這いつくばり、科学部の工房を眺めていた。

 双眼鏡で十数分の間観察して居たが、人が出入りする気配は既に無い。

 俺も一応(制服が汚れそうだから)、ブランに同じ帽子とコートを一着貸して貰ったが……既に棘の付いた草の実がズボンについてチクチクしている。本当、やるなら1人だけでやってくれって話だよな。

 そんなわけで、つまらない観察がいつまでも続いていた。

 いい加減やめよう、と俺が言いだそうとしたその時。

 

「……! アカル、伏せるデス!」

 

 いきなり、俺の頭は地面にたたきつけられた。ブランが俺の首を押さえつけたからだ。

 何かが俺の帽子を掠めた気がした。

 ブランが声を上げる。

 

「ラジコンカーデス! 屋根の上に設置されているのが撃っていマス! 上に小さな銃座が取り付けているデス!」

「嘘だろォ!?」

 

 科学部の改造ラジコンカー。これも奴らが作った嫌がらせ用のアイテムなのだろうか。ラジコンカーと言っても、通常のそれよりも一回り大きく、さながら銃座の付いた軍用車と言ったところか。そこには電動式で引き金が動くエアガンのようなものが取り付けられている。どうやら今まで、重なった屋根に隠れていて見えなかったらしい。移動してこっちまで来たのか。

 

「……ん? ちょっと、貸してくだサイ!」

「え!?」

 

 ブランは俺の帽子を手に取ると驚いたような顔をした。

 泡が立つような音が帽子からしている。掠めた弾道状に煙を上げてそれが溶けていた。

 

「お、オイ……マジかよ。何なんだアレ――」

「やれやれ、殺す気満々デスカ……でも、何なのでショウカ……」

 

 原因は間違いなくあのラジコンカーから放たれた弾だ。

 それも、どうやらただの弾ではないらしい。実弾なんかよりもよっぽど怖い、化学兵器か何かの類か。なんつーおっそろしいもんを――と戦慄した矢先、また弾が飛んでくる。

 危ない。今度は目の前の地面へ落ちた。命中率は高くないようだ。しかし、やはり地面から生えていた草が溶けている。

 

「ぼーっとしないで下サイ! もっと、周りを”観る”デス!!」

「見ていたよ!?」

 

 珍しく怒っているブラン。思わず俺も言い返すが、

 

「見ているだけで、アカルは観察していないのデス! もう少しで危なかったデス!」

「っ……!」

 

 残念だが今回ばかりは彼女の言う通りだ。

 俺は工房の”入口”だけをぼんやり眺めているだけだったが、こいつは注意深く工房の隅々まで観察してラジコンカーを発見した――もう少しで、下手したら俺の顔には穴が開いていたかもしれないのだ。

 どうしよう。帽子とあのラジコンカーが撃っている弾の事は彼女に言うべきだろうか。雀の鳴くような音と共に再び、弾が草むらに着弾する。見れば、掠めた草が溶けていた。俺達にあれが当たったらまずい。

 

「ともかく、仕留めマス! やらなきゃ、やられるデス! 相手が物なら、躊躇いは無いデス!」

 

 その前に言った彼女は、懐から巨大なパチンコのようなものを取り出した。

 スリングショット。狩猟用の巨大なパチンコだ。ゴムが強く、大きさも玩具のそれよりも大きい。

 そして、鉛弾をゴム部分にセットすると、彼女は伏せたまま強くゴムを引っ張る。

 いや、そもそも当たるのか? 此処からあそこまで20m以上離れているが――

 

「風よし――狙いよし――fire!!」

 

 ゴムが勢いよくもとに戻ると共に――甲高い金属音が鳴り響いてラジコンカーが屋根から落ちた。

 双眼鏡でみると、鉛弾が斜め上から銃座と本体を貫いている。もう、あれではまともに機能しないだろう。

 

「ふふん、鉛弾でも50m先までは飛ぶんデスヨ?」

「へ、へえ……」

 

 感心した。

 幾ら飛距離があると言っても、こうやって1発で命中させることが出来ているのは彼女の技能、腕前がかなり高い事を示している。

 やはり何だかんだ言って形から入っているだけの事はある。いや、射撃は昔からやっていたって言っていたような……まあいいか。

 ともあれ、邪魔なのは黙らせたな。

 

「それじゃあ、早速突入しマスか」

「うええ!?」

「あんな武装をしていたということは、中に怪しいものがあるという動かぬ証拠デス!」

 

 俺は素っ頓狂な声を上げた。

 突入、ってでも鍵掛かってんだろ……なのにどうするつもりなんだろう。

 構わず、彼女は周り込むようにして工房の前に滑り降りる。

 そして、今度はポケットから何かを取り出した。

 

「前調べで、此処のカギが古っぽいことは調査済みデス!」

「ちょ、ちょっと待って、お前まさか――」

 

 それを見て俺は驚愕した。先がぐにゃぐにゃに曲がった如何にもそれっぽい針金。

 つまり、彼女はピッキングをしようと言うのだ。古い。それは一体いつの技術だ。

 しかも、これは犯罪だろう。と、俺は止めたのだが――

 

「大丈夫デス! ……バレなきゃ、犯罪じゃないのデス」

 

 バレなきゃ犯罪じゃない、っておめ……それ、どこのニャルさんだ!! 

 突っ込む間も無く、彼女は先をぐにゃぐにゃに曲げた如何にもそれっぽい針金を鍵の中に突っ込む。

 そして――しばらくしただろうか。

 俺は止めた。止めたんだぞ? でもこいつが止めなかったんだ。

 カチリ、と音がしたかと思うと鍵が開いたようだ。

 重々しい音を立てて扉が開く。

 思い切って、その中に踏み入る。その先にあったものを見て――

 

「――」

 

 ──思わず、言葉を失った。

 そこに広がっていたのは異様、の一言だ。

 科学部員と思しき部員達は、それぞれ工具のようなものを付けて広がっていた。

 溶接を行っている者がいれば、パーツを組み立てている者、取り付けを行っている者等様々だ。そして、その最奥には――

 

 

 

 

「ハハハハハハハハ!! もうすぐ完成だァァァァーっ!!」

 

 

 

 

 そう叫ぶ声が聞こえる。科学部部長のアフロハゲだ。

 しかし、問題は彼が大きく手を広げて見上げているものにあった。

 それは確かにロボットである。

 だが、それはロボットはロボットでも――俺達にとって、大いに見覚えのあるものだった。

 

「ア、アカル……あれ、見たこと……ありマスヨネ?」

「ああ……! 《S級不死(ゾンビ) デッドゾーン》だ――!!」

 

 ブランの声が震えている。

 予想していたロボットとは違うそれに戸惑いを隠せていない。

 《S級不死(ゾンビ) デッドゾーン》。紫色の機体を持つ、不死の力を持つ侵略者のクリーチャーだ。

 だが、これがブランに見えているという事は――クリーチャー、ワイルドカードの類じゃないのか?

 

「ワ、ワ、ワイルドカードでありますよ!!」

 

 ポン、と飛び出したのはチョートッQだ。

 その言葉に俺は驚愕した。

 

「ど、どういうことだよ!?」

「あの者達は皆、デッドゾーンの魂に命じられて、あの機械の体を作られているであります!! いち早く止めなければ、このままではデッドゾーンが本当の意味で現世に現れるでありますよ!!」

「んなあっ!?」

「さっきの銃も、おそらく奴の力を利用して作られたものであります! 弾が触れたら腐ったり溶けたりして有機物はゾンビになるでありますよ!」

「もっと早く言えよ!」

 

 つまり、あいつらはデッドゾーンによってデッドゾーンの本体やその他危ない発明品を作らされているってことか!? しかも、あのゴミを平行して作ってただなんて何て連中だ!

 ややこしいことになってきたが、要するに止めなきゃまずいってことか。

 ブランがこっちを向いて不思議そうな顔をしているが、そういえばこいつ何も知らないんだ。まずい、どうしよう。

 しかし、この間も部員達は黙々淡々と作業を進めるだけ。どうやら本当に操られているらしい。

 

「何だ貴様等はァ!! 俺の邪魔をするのかァ!!」

 

 げっ、アフロハゲがこっちに気付いた。とても怒った表情でこちらへ詰め寄ってくる。

 

「Yes!! 私達はバードウォッチングに来たのに、いきなりそっちのラジコンカーが撃ってきたデース!! 鍵はたまたま開いてたので文句を言いに入ってきましタ!!」

 

 毅然とした顔で大嘘を並び立てるブラン。こ、これはブリカス……。

 嘘八百とハッタリも程々にしておけよ? と思ったが、コレで一応正当性は出来たか。

 

「ああ!? 知らないなあ、そんなことは。今我々の邪魔をするのは許さんぞ!! 周囲に近づく者は、皆始末してやる!!」

 

 やばい。おかんむりだ。

 それどころか――背後に影が見える。

 唸り声と共に、紫色に染まった不死の機体の姿が俺には見えた。

 

「特に貴様だ!! オラァッ!!」

 

 影の機体からアームが、伸びた。

 それが俺の首を掴み、そのまま床へ叩きつける。

 

「アカル!? 何で!? 急に吹っ飛んだデス!?」

 

 頭を打ち付けた上に壁に押さえられて身動きが取れない。ブランの悲痛な声が聞こえた。

 鋭い痛みに、俺の顔も歪んでいるだろう。

 

「吸い取ってやる、オラァ!!」

「ぐ、ぐあああああああ!?」

 

 アームに掴まれた首根っこから、体の力が抜けていく。

 こいつ、俺の力を吸い取っているのか――!?

 デッドゾーンは、相手のクリーチャーのパワーをマイナスする効果を持っている。こいつ、まさか現実世界でもそれを――

 

「アカル!!」

 

 にげろ、と口を動かそうとしたが声が出ない。

 このままじゃ、エリアカードも使えない。

 

「貴様。実体化するカードを持っているな? だから”俺”が見えるのか。本来の体が戻っていたら、お前の首を握り潰してやるところだが……今はこれで勘弁してやろう。だが、クリーチャーとエリアフォースだけは渡してもらうぞ!!」

「ど、どうなっているデスか!? 握り潰すって……!? クリーチャーって、エリアフォースって何が何なんですカ!? アカル!!」

「……!」

 

 狼狽えて俺の方に走ってくるブランだが、押さえつけられている今の俺じゃ彼女に何もできないし、何も言えない。頼む、頼むから逃げてくれ!! あいつの狙いは、俺とチョートッQなんだ!!

 ――そういえば。チョートッQの姿が見当たらない。あいつ、こんな時に一体何処へ行ったんだ!?

 

 

 

「そこの小娘、これを受け取るであります!!」

 

 

 

 刹那。

 チョートッQが、ブランへ向かって跳んだ。その手には、カードが握られているように俺には見えた。

 いや、彼女からすればカードがいきなりこっちへ向かってきたようにしか見えないだろう。

 

「おのれ、ちょこまかと!!」

 

 恨み言を上げるアフロハゲ……に取り付いたデッドゾーン。俺をねじ伏せていたアームを外し、今度はチョートッQの方へ飛ばすが、いとも容易くチョートッQはそれを躱してしまう。

 見るとあいつが握っていたのは――まさか、エリアフォースのカード!?

 

「え、何このカード!? 飛んでくるデス!?」

 

 いきなり飛んできたように見えたからか、それを思わずキャッチするブラン。

 次の瞬間、眩いほどのそれが俺の視界さえも覆いつくした――

 

 

 

 ※※※

 

 

 

気が付けば、あの工房のままでしタ。

 さっきから一体何なのでショウカ……。アカルは吹っ飛ばされるし、科学部の部長サンは変なことを言い出すし、変なカードが飛んできて、思わずキャッチしたら目の前が光って……。

 

「み、見えるでありますか!?」

「……うええ!?」

 

 私は狼狽えマシタ。

 何かいマス。変な子が私の前に浮かんでいるのが見えマス。

 そして、科学部の部長サンの後ろに機械のようなものが出てきました。

 これって――これって全部、覚えがありマス。

 デュエマの、クリーチャー……デスヨネ!?

 

「何で、クリーチャーが……Why!? 貴方は、いつもアカルが使ってるクリーチャー、デスヨネ!?」

 

 名前は、チョートッQだった気がシマス。

 

「話は後でありますよ!! 小娘、今は戦えない我がマスター、耀に代わってあのデッドゾーンとデュエルで決着を付けるであります!!」

「デ、デュエル!?」

「なあに、難しいことはないであります!! さっさとやるであります!! このカードの名前を読み上げるでありますよ!!」

「……そういうことなら、お安い御用デス!」

 

 私はせかされるがままに読み上げましタ。

 

 

 

「デュエルエリアフォース――!!」

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